物品運送契約は、運送人が荷送人からある物品を受け取りこれを運送して荷受人に引き渡すことを約し、荷送人がその結果に対してその運送賃を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
1荷送人は、運送人の請求により、次に掲げる事項を記載した書面(次項において「送り状」という。)を交付しなければならない。運送品の種類運送品の容積若しくは重量又は包若しくは個品の数及び運送品の記号荷造りの種類荷送人及び荷受人の氏名又は名称発送地及び到達地
1 運送品の種類
2 運送品の容積若しくは重量又は包若しくは個品の数及び運送品の記号
3 荷造りの種類
4 荷送人及び荷受人の氏名又は名称
5 発送地及び到達地
2前項の荷送人は、送り状の交付に代えて、法務省令で定めるところにより、運送人の承諾を得て、送り状に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により提供することができる。この場合において、当該荷送人は、送り状を交付したものとみなす。
荷送人は、運送品が引火性、爆発性その他の危険性を有するものであるときは、その引渡しの前に、運送人に対し、その旨及び当該運送品の品名、性質その他の当該運送品の安全な運送に必要な情報を通知しなければならない。
1運送賃は、到達地における運送品の引渡しと同時に、支払わなければならない。
2運送品がその性質又は瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、荷送人は、運送賃の支払を拒むことができない。
運送人は、運送品に関して受け取るべき運送賃、付随の費用及び立替金(以下この節において「運送賃等」という。)についてのみ、その弁済を受けるまで、その運送品を留置することができる。
運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間にその運送品が滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ、又は運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、運送人がその運送品の受取、運送、保管及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
この条文の過去問 4問
正しい。運送品の全部が滅失したときは、荷受人は物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得するので(商法581条1項)、運送人に対して損害賠償を請求できる。
運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間にその運送品が滅失したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負い、運送品の受取・運送・保管・引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときに限って免責される(商法575条)。被用者の過失による滅失は運送人の履行補助者の過失であり、運送人が注意を怠らなかったとはいえないので、運送人は責任を免れない。問題は請求できる者である。物品運送契約の当事者は荷送人と運送人であるから、本来、損害賠償を請求できるのは荷送人であるが、商法581条1項は、荷受人は運送品が到達地に到着したとき、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得すると定める。運送品が全部滅失すれば到着という事実が生じないので、改正前は荷受人が請求できない不都合があり、現行法はこれを明文で解決した。荷受人が損害賠償を請求したときは荷送人はその権利を行使できない(同条2項)。本肢は荷受人が運送人に損害賠償を請求できるとしており、正しい。

荷受人は、運送品が到達地に到着し、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する。
- 581条1項: 運送品の到着 又は 全部滅失(平成30年改正で追加)→ 荷受人は荷送人と同一の権利を取得。受益の意思表示不要
- 581条2項・3項: 荷受人が引渡し・損害賠償を請求すると荷送人は権利を行使できない。荷受人は受取時に運送賃等を支払う
- 請求権競合: 債務不履行責任と不法行為責任の両方を追及できる(最判昭38.11.5)
- 宅配便の責任限度額は不法行為責任にも適用され、運送を容認していた荷受人も信義則上限度額を超えて請求できない(最判平10.4.30)
- 587条: 576条・577条・584条・585条を荷送人・荷受人に対する不法行為責任に準用。あらかじめ運送を拒んでいた荷受人には準用なし
- 588条: 運送人の責任が免除・軽減される限度で被用者の不法行為責任も免除・軽減。被用者の故意・重過失は除く
正しい。商法576条の賠償額の定型化は運送品の滅失又は損傷の場合に限られ、延着による損害の賠償額は債務不履行に関する民法の規定(民法416条)によって定まる。
商法575条は、運送人は運送品の受取から引渡しまでの間に運送品が滅失・損傷し、又は延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負い、運送品の受取、運送、保管及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは免れると定める。賠償額については、576条1項が運送品の滅失又は損傷の場合の損害賠償の額を引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格によって定めるとし、民法416条の特則として賠償額を定型化している。大量の運送品を低廉な運賃で扱う運送人の責任を予測可能なものにする趣旨である。この定型化の対象は条文上「滅失又は損傷」に限られており、延着は含まれていない。したがって延着による損害の賠償額には特則がなく、債務不履行による損害賠償の一般原則である民法416条により、通常生ずべき損害と、予見すべきであった特別の事情による損害が賠償の範囲になる。本肢は、延着の賠償額が民法の規定によって定められるとするもので、正しい。

運送品の滅失又は損傷の場合における損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)によって定める。ただし、市場価格がないときは、その地及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によって定める。
- 575条: 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着について責任。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条: 滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格で定額化。故意・重過失があれば適用なし。延着は民法416条による
- 577条: 高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失
- 581条: 運送品の到着又は全部滅失で荷受人は荷送人と同一の権利を取得
- 584条: 異議をとどめない受取で損傷・一部滅失の責任消滅。直ちに発見できないものは2週間以内の通知。運送人が知っていたときは適用なし
- 585条: 引渡しから1年以内に裁判上の請求が無いと消滅
誤り。違うのは「消滅時効期間は,運送人に悪意があるときを除き,1年である」の部分である。現行法では、引渡しの日から1年以内に裁判上の請求がないと責任が消滅する期間制限であり、運送人の悪意を除く例外はない(商法585条1項)。
本肢は出題後の法改正で結論が変わっており、現行法を基準にした。商法585条1項は、運送品の滅失等についての運送人の責任は、運送品の引渡しがされた日(全部滅失の場合は引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求がされないときは消滅すると定める。平成30年商法改正で設けられた規定で、この1年は消滅時効ではなく、期間内に裁判上の請求をしなければ責任が消滅する除斥期間であり、時効の完成猶予や更新の規定は働かない。運送人に悪意がある場合を除外する規律も置かれておらず、悪意の有無を問わず1年の期間制限が及ぶ。荷主の保護は、損害が発生した後に限り合意でこの期間を延長できるとする同条2項によって図られている。出題当時の旧589条が準用する旧566条は、運送人の責任は1年の時効で消滅し、運送人に悪意があるときはこの短期時効を適用しないと定めていたので、本肢は出題当時は正しく、公式の正解2(ア・オ)もこれを前提にしている。現行法では正しいのはオだけで、正しいものの組合せは選択肢の中にない。

運送品の滅失等についての運送人の責任は、運送品の引渡しがされた日(運送品の全部滅失の場合にあっては、その引渡しがされるべき日)から一年以内に裁判上の請求がされないときは、消滅する。
- 575条: 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条: 滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格(定額化)。運送賃等は控除。故意・重過失があれば適用なし。延着は民法416条
- 577条: 高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失(2項)。一見明瞭に高価な巨大物は高価品でない(最判昭45.4.21)
- 584条: 異議をとどめない受取で損傷・一部滅失の責任消滅。直ちに発見できないものは2週間以内の通知。運送人が知っていたときは適用なし
- 585条: 引渡し(全部滅失は引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求が無いと消滅。悪意の例外なし。損害発生後は合意で延長可
誤り。違うのは「当該従業員に対する監督を怠っていなければ,損害賠償の責任を負わない」の部分である。運送人が免責されるには、運送人自身とその使用する者が運送品の取扱いについて注意を怠らなかったことを証明する必要があり、従業員の選任監督に注意を払っただけでは足りない。
旅客運送人は、旅客から引渡しを受けた手荷物については、運送賃を請求しないときであっても、物品運送契約における運送人と同一の責任を負う(商法592条1項)。預かった以上は無償でも物品運送と同じ責任を負わせたのである。物品運送における運送人の責任は575条が定め、運送人は受取から引渡しまでの間の滅失・損傷・延着について損害を賠償する責任を負い、運送品の受取、運送、保管及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときに限り免責される。ここで証明すべき注意は、運送人自身の注意に尽きるものではなく、運送のために使用した従業員が運送品の取扱いについて注意を怠らなかったことを含む。判例も、運送人は使用した者に過失が無かったことを立証しない限り、その選任監督について注意を怠らなかったことを証明しても責任を免れないとしている(大判昭5.9.13)。使用者責任(民法715条1項ただし書)の免責事由とは異なる。したがって従業員の監督を怠っていなければ責任を負わないとする肢は誤っている。

運送人は、旅客から引渡しを受けた手荷物については、運送賃を請求しないときであっても、物品運送契約における運送人と同一の責任を負う。
1運送品の滅失又は損傷の場合における損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)によって定める。ただし、市場価格がないときは、その地及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によって定める。
2運送品の滅失又は損傷のために支払うことを要しなくなった運送賃その他の費用は、前項の損害賠償の額から控除する。
3前二項の規定は、運送人の故意又は重大な過失によって運送品の滅失又は損傷が生じたときは、適用しない。
この条文の過去問 4問
正しい。商法576条の賠償額の定型化は運送品の滅失又は損傷の場合に限られ、延着による損害の賠償額は債務不履行に関する民法の規定(民法416条)によって定まる。
商法575条は、運送人は運送品の受取から引渡しまでの間に運送品が滅失・損傷し、又は延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負い、運送品の受取、運送、保管及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは免れると定める。賠償額については、576条1項が運送品の滅失又は損傷の場合の損害賠償の額を引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格によって定めるとし、民法416条の特則として賠償額を定型化している。大量の運送品を低廉な運賃で扱う運送人の責任を予測可能なものにする趣旨である。この定型化の対象は条文上「滅失又は損傷」に限られており、延着は含まれていない。したがって延着による損害の賠償額には特則がなく、債務不履行による損害賠償の一般原則である民法416条により、通常生ずべき損害と、予見すべきであった特別の事情による損害が賠償の範囲になる。本肢は、延着の賠償額が民法の規定によって定められるとするもので、正しい。

運送品の滅失又は損傷の場合における損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)によって定める。ただし、市場価格がないときは、その地及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によって定める。
- 575条: 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着について責任。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条: 滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格で定額化。故意・重過失があれば適用なし。延着は民法416条による
- 577条: 高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失
- 581条: 運送品の到着又は全部滅失で荷受人は荷送人と同一の権利を取得
- 584条: 異議をとどめない受取で損傷・一部滅失の責任消滅。直ちに発見できないものは2週間以内の通知。運送人が知っていたときは適用なし
- 585条: 引渡しから1年以内に裁判上の請求が無いと消滅
誤り。違うのは「その価額を限度とする」の部分である。滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格によって定まり(商法576条1項)、送り状に記載された価額を限度とする規定はない。
商法576条1項は、運送品の滅失又は損傷の場合における損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品についてはその相場)によって定め、市場価格がないときはその地及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によって定めるとする。滅失・損傷のために支払うことを要しなくなった運送賃その他の費用は控除され(同条2項)、運送人の故意又は重大な過失によって滅失・損傷が生じたときはこの定型化は適用されない(同条3項)。送り状は荷送人が運送人の請求により交付する書面であり、運送品の種類や価額などが記載される(571条)が、そこに記載された価額が賠償額の上限になるという規定は商法にはない。価額の記載が意味を持つのは、貨幣・有価証券その他の高価品について荷送人が種類及び価額を通知したかどうかが運送人の責任の有無を分ける高価品の特則(577条)においてである。それ以外の運送品では、送り状の記載にかかわらず576条の市場価格で賠償額が決まる。本肢は、送り状の価額を賠償の限度とする点で誤っている。

運送品の滅失又は損傷の場合における損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)によって定める。ただし、市場価格がないときは、その地及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によって定める。
- 575条: 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着について責任。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条: 滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格で定額化。故意・重過失があれば適用なし。延着は民法416条による
- 577条: 高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失
- 581条: 運送品の到着又は全部滅失で荷受人は荷送人と同一の権利を取得
- 584条: 異議をとどめない受取で損傷・一部滅失の責任消滅。直ちに発見できないものは2週間以内の通知。運送人が知っていたときは適用なし
- 585条: 引渡しから1年以内に裁判上の請求が無いと消滅
正しい。運送品の滅失の場合の損害賠償の額は、引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格によって定まり、運送人に故意・重過失がなければこの定額賠償による(商法576条1項・3項)。
商法576条1項は、運送品の滅失又は損傷の場合における損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品についてはその相場)によって定めると規定し、定額賠償主義をとる。大量・反復・迅速に処理される運送取引で、民法416条による個別の損害算定を排し、賠償額を客観的な基準で画一化することによって運送人の責任の範囲を予測可能にし、運送賃を低く抑える趣旨である。したがって運送品の全部が滅失した場合の賠償額は、到達地において引渡しがあるべきであった時点の運送品の価格を基準に算定され、本肢の記述はこれに合致する。滅失のために支払うことを要しなくなった運送賃その他の費用は賠償額から控除される(同条2項)。この定額賠償は、滅失等が運送人の故意又は重大な過失によって生じたときには適用されず、その場合は民法416条の一般原則により一切の損害を賠償しなければならない(同条3項)。本肢は運送人に重大な過失を除く過失があるにとどまる場合なので、576条1項が適用される。

運送品の滅失又は損傷の場合における損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)によって定める。ただし、市場価格がないときは、その地及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によって定める。
- 575条: 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条: 滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格(定額化)。運送賃等は控除。故意・重過失があれば適用なし。延着は民法416条
- 577条: 高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失(2項)。一見明瞭に高価な巨大物は高価品でない(最判昭45.4.21)
- 584条: 異議をとどめない受取で損傷・一部滅失の責任消滅。直ちに発見できないものは2週間以内の通知。運送人が知っていたときは適用なし
- 585条: 引渡し(全部滅失は引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求が無いと消滅。悪意の例外なし。損害発生後は合意で延長可
誤り。違うのは「荷送人又は荷受人に損害が全く生じなかったとしても」賠償責任を負うとする部分である。判例は、全部滅失でも荷送人・荷受人に全く損害が生じない場合には運送人は損害賠償責任を負わないとする(最判昭53.4.20)。
運送品の滅失又は損傷の場合の損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格によって定まる(商法576条1項)。大量の物品を運ぶ運送人の責任を一定限度にとどめて保護し、賠償額を画一化して紛争を防ぐ趣旨であり、実際の損害がこの価格を下回る場合でも原則として運送人はこの価格相当額を賠償する。最判昭53.4.20はこの趣旨を確認したうえで、この規定は、運送品が全部滅失したにもかかわらず荷送人又は荷受人に全く損害が生じない場合についてまで運送人に損害賠償責任を負わせるものではなく、そのような場合には運送人は何ら損害賠償責任を負わないと判示した。576条1項は損害が生じたことを前提に賠償額の算定方法を定型化した規定であって、損害が無いのに賠償義務を作り出す規定ではないからである。したがって損害が全く生じなくても到達地の価格による額の賠償責任を負うとする肢は誤っている。

運送品が全部滅失したにもかかわらず荷送人又は荷受人に全く損害が生じない場合についてまで運送人に損害賠償責任を負わせるものではなく、このような場合には、運送人はなんら損害賠償責任を負わない。
- 575条:受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条:滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格(定額化)。運送賃等は控除。故意・重過失があれば適用なし。損害が全く無ければ責任なし(最判昭53.4.20)
- 577条:高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失(2項)。一見明瞭に高価な巨大物は高価品でない(最判昭45.4.21)
- 592条:旅客から引渡しを受けた手荷物は、無償でも物品運送の運送人と同一の責任
1貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない。
2前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。
1 物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。
2 運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。
この条文の過去問 3問
正しい。高価品は荷送人が種類及び価額を通知しなかった限り運送人は責任を負わず、運送人が契約締結の当時高価品であることを知っていたとき又は故意・重過失があるときだけが例外である(商法577条)。
商法577条1項は、貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人はその滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わないと定める。高価品は小さくても高額の損害を生じやすく、運送人は種類と価額を知らされて初めて運賃を高く設定したり特別の注意を払ったりできる。通知を怠った荷送人が高額の賠償を得られるのは公平を欠くので、通知がなければ運送人を一切免責することにした。普通品としての価額の賠償も認められない。同条2項は例外として、物品運送契約の締結の当時に運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき(1号)と、運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失・損傷・延着が生じたとき(2号)には1項を適用しないとする。知っていた運送人は通知を受けたのと同じ立場にあり、故意・重過失のある運送人を免責で守る必要もないからである。本肢は、通知がなかった場合に2項の例外を除いて運送人が責任を負わないとするもので、577条のとおりであり正しい。

貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。
二 運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。
- 575条: 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着について責任。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条: 滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格で定額化。故意・重過失があれば適用なし。延着は民法416条による
- 577条: 高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失
- 581条: 運送品の到着又は全部滅失で荷受人は荷送人と同一の権利を取得
- 584条: 異議をとどめない受取で損傷・一部滅失の責任消滅。直ちに発見できないものは2週間以内の通知。運送人が知っていたときは適用なし
- 585条: 引渡しから1年以内に裁判上の請求が無いと消滅
誤り。違うのは「運送品が高価品でなかったとしたときに生ずるであろう損害の額が上限となる」の部分である。種類と価額の通知がない高価品については、運送人は普通品相当額についても一切責任を負わない(商法577条1項)。
商法577条1項は、貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たってその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人はその滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わないと定める。通知を欠く場合の効果は、賠償額を普通品相当額に縮めることではなく全部の免責であり、運送人は高価品としての責任を負わないのはもちろん、普通品としての価額の限度でも責任を負わないと解されている。運送品が高価品であることを運送人に知らせ、割増運賃の請求や特別の保管・監視、保険の付保といった対応をとる機会を与える趣旨であり、その機会を与えなかった荷送人に不利益を負わせるものだからである。もっとも免責は絶対ではなく、契約締結の当時に運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき、又は運送人の故意若しくは重大な過失によって滅失等が生じたときは適用されない(同条2項)。本肢は通知のない場合に普通品を前提とする損害額を上限とする責任が残るとしており、全部免責とする577条1項に反する。

貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない。
- 575条: 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条: 滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格(定額化)。運送賃等は控除。故意・重過失があれば適用なし。延着は民法416条
- 577条: 高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失(2項)。一見明瞭に高価な巨大物は高価品でない(最判昭45.4.21)
- 584条: 異議をとどめない受取で損傷・一部滅失の責任消滅。直ちに発見できないものは2週間以内の通知。運送人が知っていたときは適用なし
- 585条: 引渡し(全部滅失は引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求が無いと消滅。悪意の例外なし。損害発生後は合意で延長可
正しい。判例は、容積重量とも相当巨大で高価なことが一見明瞭な品種は高価品に当たらないとするので(最判昭45.4.21)、種類及び価額を通知しなくても高価品の免責は働かず、滅失について損害賠償を請求できる。
貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は滅失・損傷・延着について損害賠償の責任を負わない(商法577条1項)。高価品は小さくても損害が巨額になるので、運送人に通知を受けて特別の注意を払い、相応の運賃を得る機会を与えないと不公平だからである。最判昭45.4.21は、この高価品とは容積又は重量の割に著しく高価な物品をいうとしたうえで、容積重量ともに相当巨大であって高価なことも一見明瞭な研磨機は高価品に当たらないと判示した。見れば高価と分かる巨大な物については、通知が無くても運送人は注意を払えるので、免責で保護する理由が無いからである。高価品に当たらない以上、荷送人は通知をしていなくても575条により滅失の損害賠償を請求できる。平成30年改正で新設された577条2項1号は、契約締結の当時に運送品が高価品であることを運送人が知っていたときにも免責を否定しており、同じ結論に至る。したがって肢は正しい。

商法五七八条所定の高価品とは、容積または重量の割に著しく高価な物品をいうものと解すべきところ、原審の確定する事実によれば、本件研磨機は容積重量ともに相当巨大であつて、その高価なことも一見明瞭な品種であるというのであるから、本件研磨機は同条所定の高価品にはあたらない。
1陸上運送、海上運送又は航空運送のうち二以上の運送を一の契約で引き受けた場合における運送品の滅失等(運送品の滅失、損傷又は延着をいう。以下この節において同じ。)についての運送人の損害賠償の責任は、それぞれの運送においてその運送品の滅失等の原因が生じた場合に当該運送ごとに適用されることとなる我が国の法令又は我が国が締結した条約の規定に従う。
2前項の規定は、陸上運送であってその区間ごとに異なる二以上の法令が適用されるものを一の契約で引き受けた場合について準用する。
この条文の過去問 1問
誤り。違うのは「運送営業に関する規定は,適用されない」の部分である。湖上を航行する船舶による旅客の運送は海上運送に当たり(商法569条3号・747条)、運送営業の規定が適用される。
出題当時の商法は、陸上又は湖川・港湾における運送を陸上運送として運送営業の章の対象にしており、湖上の遊覧船は陸上運送人として同章の適用を受けた。平成30年改正後の商法569条は、運送人を陸上運送、海上運送又は航空運送の引受けを業とする者と定義し(1号)、海上運送を684条の船舶による運送としたうえで、専ら湖川・港湾その他の海以外の水域で航行する非航海船(747条)による運送も海上運送に含めている(3号)。湖上を航行する遊覧船はこの非航海船に当たるので、遊覧船の事業者は海上運送人であり、顧客との契約は旅客運送契約(589条)として、商法第2編第8章の運送営業の規定が適用される。遊覧という目的であっても、船舶により旅客を場所的に移動させることを引き受ける以上、旅客の運送であることに変わりはない。したがって、出題当時の規律でも現行法でも、運送営業の規定が適用されないとする肢は誤っている。

海上運送 第六百八十四条に規定する船舶(第七百四十七条に規定する非航海船を含む。)による物品又は旅客の運送をいう。
1数人の運送人が相次いで陸上運送をするときは、後の運送人は、前の運送人に代わってその権利を行使する義務を負う。
2前項の場合において、後の運送人が前の運送人に弁済をしたときは、後の運送人は、前の運送人の権利を取得する。
3ある運送人が引き受けた陸上運送についてその荷送人のために他の運送人が相次いで当該陸上運送の一部を引き受けたときは、各運送人は、運送品の滅失等につき連帯して損害賠償の責任を負う。
4前三項の規定は、海上運送及び航空運送について準用する。
荷送人は、運送人に対し、運送の中止、荷受人の変更その他の処分を請求することができる。この場合において、運送人は、既にした運送の割合に応じた運送賃、付随の費用、立替金及びその処分によって生じた費用の弁済を請求することができる。
1荷受人は、運送品が到達地に到着し、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する。
2前項の場合において、荷受人が運送品の引渡し又はその損害賠償の請求をしたときは、荷送人は、その権利を行使することができない。
3荷受人は、運送品を受け取ったときは、運送人に対し、運送賃等を支払う義務を負う。
この条文の過去問 3問
正しい。運送品の全部が滅失したときは、荷受人は物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得するので(商法581条1項)、運送人に対して損害賠償を請求できる。
運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間にその運送品が滅失したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負い、運送品の受取・運送・保管・引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときに限って免責される(商法575条)。被用者の過失による滅失は運送人の履行補助者の過失であり、運送人が注意を怠らなかったとはいえないので、運送人は責任を免れない。問題は請求できる者である。物品運送契約の当事者は荷送人と運送人であるから、本来、損害賠償を請求できるのは荷送人であるが、商法581条1項は、荷受人は運送品が到達地に到着したとき、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得すると定める。運送品が全部滅失すれば到着という事実が生じないので、改正前は荷受人が請求できない不都合があり、現行法はこれを明文で解決した。荷受人が損害賠償を請求したときは荷送人はその権利を行使できない(同条2項)。本肢は荷受人が運送人に損害賠償を請求できるとしており、正しい。

荷受人は、運送品が到達地に到着し、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する。
- 581条1項: 運送品の到着 又は 全部滅失(平成30年改正で追加)→ 荷受人は荷送人と同一の権利を取得。受益の意思表示不要
- 581条2項・3項: 荷受人が引渡し・損害賠償を請求すると荷送人は権利を行使できない。荷受人は受取時に運送賃等を支払う
- 請求権競合: 債務不履行責任と不法行為責任の両方を追及できる(最判昭38.11.5)
- 宅配便の責任限度額は不法行為責任にも適用され、運送を容認していた荷受人も信義則上限度額を超えて請求できない(最判平10.4.30)
- 587条: 576条・577条・584条・585条を荷送人・荷受人に対する不法行為責任に準用。あらかじめ運送を拒んでいた荷受人には準用なし
- 588条: 運送人の責任が免除・軽減される限度で被用者の不法行為責任も免除・軽減。被用者の故意・重過失は除く
正しい。運送品の全部が滅失したときは、荷受人は物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得し(商法581条1項)、運送人に損害賠償を請求できる。
商法581条1項は、荷受人は、運送品が到達地に到着し、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得すると定める。荷受人は物品運送契約の当事者ではないが、運送品を受け取る立場にあり、運送品が到達地に到着すれば引渡しや損害賠償を請求する利益を持つ。運送品の全部が滅失した場合には到着ということがあり得ないので、到着した場合と同じく荷受人に権利を認めなければ、荷受人の保護に欠ける。そこで平成30年の改正で全部滅失の場合が明文で加えられた。荷受人は受益の意思表示をしなくても権利を取得し、荷受人が運送品の引渡し又は損害賠償の請求をしたときは荷送人はその権利を行使できなくなる(同条2項)。したがって、運送人の過失で運送品の全部が滅失したときは、運送人は荷送人だけでなく荷受人に対しても、滅失によって生じた損害を賠償する責任を負う。賠償額は576条により引渡しがされるべき地及び時の市場価格で定まる。本肢は581条1項のとおりであり、正しい。

荷受人は、運送品が到達地に到着し、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する。
誤り。違うのは「荷受人が運送契約によって生ずる権利を取得することはない」の部分である。荷受人は、運送品が到達地に到着し又は全部滅失したときに、荷送人と同一の権利を取得する(商法581条1項)。
商法581条1項は、荷受人は、運送品が到達地に到着し、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得すると定める。荷受人は運送契約の当事者ではないが、運送品の到達などの事実の発生により、法律上当然に運送品の引渡請求権や運送人に対する損害賠償請求権を取得するのであり、第三者のためにする契約(民法537条)と異なり受益の意思表示は要らない。到達地で運送品について経済的な利益を持つのは荷受人であるという実質に即して、法が政策的に権利を与えたものである。荷送人の権利が直ちに消滅するわけではないが、荷受人が運送品の引渡し又はその損害賠償の請求をしたときは、荷送人はその権利を行使できなくなる(同条2項)。他方で荷受人は、運送品を受け取ったときは運送人に対して運送賃等を支払う義務を負う(同条3項)。全部滅失の場合が明文で加えられたのは平成30年改正によるが、荷受人が権利を取得すること自体は出題当時から同じであり、荷受人が運送契約上の権利を取得することはないとする本肢は条文に反する。

荷受人は、運送品が到達地に到着し、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する。
1運送人は、荷受人を確知することができないときは、運送品を供託することができる。
2前項に規定する場合において、運送人が荷送人に対し相当の期間を定めて運送品の処分につき指図をすべき旨を催告したにもかかわらず、荷送人がその指図をしないときは、運送人は、その運送品を競売に付することができる。
3損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある運送品は、前項の催告をしないで競売に付することができる。
4前二項の規定により運送品を競売に付したときは、運送人は、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を運送賃等に充当することを妨げない。
5運送人は、第一項から第三項までの規定により運送品を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、荷送人に対してその旨の通知を発しなければならない。
前条の規定は、荷受人が運送品の受取を拒み、又はこれを受け取ることができない場合について準用する。この場合において、同条第二項中「運送人が」とあるのは「運送人が、荷受人に対し相当の期間を定めて運送品の受取を催告し、かつ、その期間の経過後に」と、同条第五項中「荷送人」とあるのは「荷送人及び荷受人」と読み替えるものとする。
1運送品の損傷又は一部滅失についての運送人の責任は、荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取ったときは、消滅する。ただし、運送品に直ちに発見することができない損傷又は一部滅失があった場合において、荷受人が引渡しの日から二週間以内に運送人に対してその旨の通知を発したときは、この限りでない。
2前項の規定は、運送品の引渡しの当時、運送人がその運送品に損傷又は一部滅失があることを知っていたときは、適用しない。
3運送人が更に第三者に対して運送を委託した場合において、荷受人が第一項ただし書の期間内に運送人に対して同項ただし書の通知を発したときは、運送人に対する第三者の責任に係る同項ただし書の期間は、運送人が当該通知を受けた日から二週間を経過する日まで延長されたものとみなす。
この条文の過去問 1問
正しい。直ちに発見できる損傷・一部滅失についての運送人の責任は、荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取ったときに消滅し、引渡しの当時に運送人がその損傷・一部滅失を知っていたときだけが例外である(商法584条1項・2項)。
商法584条1項本文は、運送品の損傷又は一部滅失についての運送人の責任は、荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取ったときは消滅すると定める。同項ただし書は、直ちに発見することができない損傷又は一部滅失があった場合に、荷受人が引渡しの日から2週間以内に運送人に通知を発したときは責任が消滅しないとする。本肢のように直ちに発見できる損傷・一部滅失であれば、ただし書の適用はなく、異議をとどめない受取によって責任は消滅する。運送人は多数の運送品を扱うので、引渡しの時に異議がなければ運送品に異常がなかったものとして法律関係を早く確定させる必要があり、荷受人は受取の時に点検して異議を述べることが期待できるからである。同条2項は、運送品の引渡しの当時、運送人がその運送品に損傷又は一部滅失があることを知っていたときは1項を適用しないとする。瑕疵を知りながら黙って引き渡した運送人を、荷受人が異議を述べなかったことを理由に免責する必要はないからである。本肢は584条のとおりであり、正しい。

運送品の損傷又は一部滅失についての運送人の責任は、荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取ったときは、消滅する。ただし、運送品に直ちに発見することができない損傷又は一部滅失があった場合において、荷受人が引渡しの日から二週間以内に運送人に対してその旨の通知を発したときは、この限りでない。
2 前項の規定は、運送品の引渡しの当時、運送人がその運送品に損傷又は一部滅失があることを知っていたときは、適用しない。
- 575条: 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着について責任。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条: 滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格で定額化。故意・重過失があれば適用なし。延着は民法416条による
- 577条: 高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失
- 581条: 運送品の到着又は全部滅失で荷受人は荷送人と同一の権利を取得
- 584条: 異議をとどめない受取で損傷・一部滅失の責任消滅。直ちに発見できないものは2週間以内の通知。運送人が知っていたときは適用なし
- 585条: 引渡しから1年以内に裁判上の請求が無いと消滅
1運送品の滅失等についての運送人の責任は、運送品の引渡しがされた日(運送品の全部滅失の場合にあっては、その引渡しがされるべき日)から一年以内に裁判上の請求がされないときは、消滅する。
2前項の期間は、運送品の滅失等による損害が発生した後に限り、合意により、延長することができる。
3運送人が更に第三者に対して運送を委託した場合において、運送人が第一項の期間内に損害を賠償し又は裁判上の請求をされたときは、運送人に対する第三者の責任に係る同項の期間は、運送人が損害を賠償し又は裁判上の請求をされた日から三箇月を経過する日まで延長されたものとみなす。
この条文の過去問 1問
誤り。違うのは「消滅時効期間は,運送人に悪意があるときを除き,1年である」の部分である。現行法では、引渡しの日から1年以内に裁判上の請求がないと責任が消滅する期間制限であり、運送人の悪意を除く例外はない(商法585条1項)。
本肢は出題後の法改正で結論が変わっており、現行法を基準にした。商法585条1項は、運送品の滅失等についての運送人の責任は、運送品の引渡しがされた日(全部滅失の場合は引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求がされないときは消滅すると定める。平成30年商法改正で設けられた規定で、この1年は消滅時効ではなく、期間内に裁判上の請求をしなければ責任が消滅する除斥期間であり、時効の完成猶予や更新の規定は働かない。運送人に悪意がある場合を除外する規律も置かれておらず、悪意の有無を問わず1年の期間制限が及ぶ。荷主の保護は、損害が発生した後に限り合意でこの期間を延長できるとする同条2項によって図られている。出題当時の旧589条が準用する旧566条は、運送人の責任は1年の時効で消滅し、運送人に悪意があるときはこの短期時効を適用しないと定めていたので、本肢は出題当時は正しく、公式の正解2(ア・オ)もこれを前提にしている。現行法では正しいのはオだけで、正しいものの組合せは選択肢の中にない。

運送品の滅失等についての運送人の責任は、運送品の引渡しがされた日(運送品の全部滅失の場合にあっては、その引渡しがされるべき日)から一年以内に裁判上の請求がされないときは、消滅する。
- 575条: 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着。注意を怠らなかったことの証明で免責
- 576条: 滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地・時の市場価格(定額化)。運送賃等は控除。故意・重過失があれば適用なし。延着は民法416条
- 577条: 高価品は種類・価額の通知が無ければ全部免責。例外は運送人が高価品と知っていたとき・故意重過失(2項)。一見明瞭に高価な巨大物は高価品でない(最判昭45.4.21)
- 584条: 異議をとどめない受取で損傷・一部滅失の責任消滅。直ちに発見できないものは2週間以内の通知。運送人が知っていたときは適用なし
- 585条: 引渡し(全部滅失は引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求が無いと消滅。悪意の例外なし。損害発生後は合意で延長可
運送人の荷送人又は荷受人に対する債権は、これを行使することができる時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。
第五百七十六条、第五百七十七条、第五百八十四条及び第五百八十五条の規定は、運送品の滅失等についての運送人の荷送人又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任について準用する。ただし、荷受人があらかじめ荷送人の委託による運送を拒んでいたにもかかわらず荷送人から運送を引き受けた運送人の荷受人に対する責任については、この限りでない。
この条文の過去問 1問
誤り。違うのは「債務不履行責任のみを追及することができ,不法行為責任を追及することはできない」の部分である。判例は債務不履行責任と不法行為責任の競合を認める(最判昭38.11.5)。
最判昭38.11.5は、運送契約上の債務不履行責任と不法行為責任は、成立要件と効果を異にする別個の請求権であり、一方が成立することによって他方が排斥されるものではないとして、運送品の滅失について荷送人が運送人に不法行為に基づく損害賠償を請求することを認めた。運送人の故意又は過失によって運送品という荷主の所有権が侵害された以上、民法709条の要件を満たす限り不法行為は成立し、荷送人はどちらの構成によるかを選んで請求できる。もっとも、不法行為の構成を選べば商法の責任軽減の規定を免れられるという不均衡が生じるので、平成30年改正後の商法587条本文は、定額賠償(576条)、高価品の特則(577条)、責任の消滅(585条)などの規定を、荷送人・荷受人に対する運送人の不法行為責任にも準用することにした。宅配便の約款の責任限度額が荷受人に対する不法行為責任にも及ぶとした最判平10.4.30も同じ発想に立つ。これらは不法行為責任を追及できることを前提にその内容をそろえる規律であり、本肢は不法行為責任の追及自体を否定する点で誤っている。

第五百七十六条、第五百七十七条、第五百八十四条及び第五百八十五条の規定は、運送品の滅失等についての運送人の荷送人又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任について準用する。ただし、荷受人があらかじめ荷送人の委託による運送を拒んでいたにもかかわらず荷送人から運送を引き受けた運送人の荷受人に対する責任については、この限りでない。
- 581条1項: 運送品の到着 又は 全部滅失(平成30年改正で追加)→ 荷受人は荷送人と同一の権利を取得。受益の意思表示不要
- 581条2項・3項: 荷受人が引渡し・損害賠償を請求すると荷送人は権利を行使できない。荷受人は受取時に運送賃等を支払う
- 請求権競合: 債務不履行責任と不法行為責任の両方を追及できる(最判昭38.11.5)
- 宅配便の責任限度額は不法行為責任にも適用され、運送を容認していた荷受人も信義則上限度額を超えて請求できない(最判平10.4.30)
- 587条: 576条・577条・584条・585条を荷送人・荷受人に対する不法行為責任に準用。あらかじめ運送を拒んでいた荷受人には準用なし
- 588条: 運送人の責任が免除・軽減される限度で被用者の不法行為責任も免除・軽減。被用者の故意・重過失は除く
1前条の規定により運送品の滅失等についての運送人の損害賠償の責任が免除され、又は軽減される場合には、その責任が免除され、又は軽減される限度において、その運送品の滅失等についての運送人の被用者の荷送人又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任も、免除され、又は軽減される。
2前項の規定は、運送人の被用者の故意又は重大な過失によって運送品の滅失等が生じたときは、適用しない。
この条文の過去問 1問
誤り。違うのは「債務不履行責任のみを追及することができ,不法行為責任を追及することはできない」の部分である。判例は債務不履行責任と不法行為責任の競合を認める(最判昭38.11.5)。
最判昭38.11.5は、運送契約上の債務不履行責任と不法行為責任は、成立要件と効果を異にする別個の請求権であり、一方が成立することによって他方が排斥されるものではないとして、運送品の滅失について荷送人が運送人に不法行為に基づく損害賠償を請求することを認めた。運送人の故意又は過失によって運送品という荷主の所有権が侵害された以上、民法709条の要件を満たす限り不法行為は成立し、荷送人はどちらの構成によるかを選んで請求できる。もっとも、不法行為の構成を選べば商法の責任軽減の規定を免れられるという不均衡が生じるので、平成30年改正後の商法587条本文は、定額賠償(576条)、高価品の特則(577条)、責任の消滅(585条)などの規定を、荷送人・荷受人に対する運送人の不法行為責任にも準用することにした。宅配便の約款の責任限度額が荷受人に対する不法行為責任にも及ぶとした最判平10.4.30も同じ発想に立つ。これらは不法行為責任を追及できることを前提にその内容をそろえる規律であり、本肢は不法行為責任の追及自体を否定する点で誤っている。

第五百七十六条、第五百七十七条、第五百八十四条及び第五百八十五条の規定は、運送品の滅失等についての運送人の荷送人又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任について準用する。ただし、荷受人があらかじめ荷送人の委託による運送を拒んでいたにもかかわらず荷送人から運送を引き受けた運送人の荷受人に対する責任については、この限りでない。
- 581条1項: 運送品の到着 又は 全部滅失(平成30年改正で追加)→ 荷受人は荷送人と同一の権利を取得。受益の意思表示不要
- 581条2項・3項: 荷受人が引渡し・損害賠償を請求すると荷送人は権利を行使できない。荷受人は受取時に運送賃等を支払う
- 請求権競合: 債務不履行責任と不法行為責任の両方を追及できる(最判昭38.11.5)
- 宅配便の責任限度額は不法行為責任にも適用され、運送を容認していた荷受人も信義則上限度額を超えて請求できない(最判平10.4.30)
- 587条: 576条・577条・584条・585条を荷送人・荷受人に対する不法行為責任に準用。あらかじめ運送を拒んでいた荷受人には準用なし
- 588条: 運送人の責任が免除・軽減される限度で被用者の不法行為責任も免除・軽減。被用者の故意・重過失は除く