この編の規定により登記すべき事項は、当事者の申請により、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)の定めるところに従い、商業登記簿にこれを登記する。
1この編の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
2故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。
この条文の過去問 11問
誤り。違うのは「当該事項が不実であることを善意の第三者に対抗することができない」の部分である。908条2項は故意又は過失によって不実の事項を登記した者を対象とし、判例は、申請権者の申請に基づかない登記には、申請に基づく登記と同視できる特段の事情がない限り適用がないとした(最判昭55.9.11)。
会社法908条2項は、故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗できないと定める。不実の登記という虚偽の外観を自ら作り出した者に、その外観を信頼した第三者に対する責任を負わせる外観法理の規定であるから、適用には登記名義人の側の帰責性、すなわち不実の登記についての故意又は過失が要る。最判昭55.9.11は、この規定が適用されるためには原則としてその登記自体が登記申請権者の申請に基づいてされたものであることを要し、そうでない場合には、申請権者が何らかの形で登記の実現に加功し、又は不実の登記の存在が判明しているのに是正措置をとらずに放置するなど、申請に基づく登記と同視するのを相当とする特段の事情がない限り、登記名義人の責任を肯定する余地はないとした。本肢では申請者は正しい内容で申請しており、誤った内容が登記されたのは専ら登記官の過誤によるから、申請に基づく登記とはいえず、申請者に故意も過失もない。したがって908条2項の適用はなく、申請者は不実であることを善意の第三者に対抗でき、本肢は誤りである。

同条が適用されるためには、原則として、右登記自体が当該登記の申請権者の申請に基づいてされたものであることを必要とし、そうでない場合には、登記申請権者がみずから登記申請をしないまでもなんらかの形で当該登記の実現に加功し、又は当該不実登記の存在が判明しているのにその是正措置をとることなくこれを放置するなど、右登記を登記申請権者の申請に基づく登記と同視するのを相当とするような特段の事情がない限り、同条による登記名義者の責任を肯定する余地はない
- 登記前(1項前段):善意の第三者に対抗できない。悪意の第三者には対抗できる。登記官の過誤で登記されなかった場合も同じ
- 登記後(1項後段):善意の第三者にも対抗できる。正当な事由(災害・登記簿の滅失など客観的な障害。病気・負傷は含まない。最判昭52.12.23)がある第三者には対抗できない
- 訴訟上の代表権:908条1項は適用されず、登記前でも代表取締役は訴訟で会社を代表できる(最判昭43.11.1)
- 不実の登記(2項):故意又は過失で不実の事項を登記した者は、不実であることを善意の第三者に対抗できない。申請に基づかない登記には原則として適用がない(最判昭55.9.11)。就任登記を承諾した者には類推適用(最判昭47.6.15)
正しい。登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗できず、登記の後でも正当な事由によってその登記があることを知らなかった第三者には対抗できない(商法9条1項)。
商法9条1項は、商法総則の規定により登記すべき事項について、登記の前は善意の第三者に対抗することができず、登記の後は第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときを除いて対抗することができると定める。登記の前は、事実を知らない第三者に不利益を押しつける根拠が無いので対抗できず、登記の後は、登記簿を見れば分かる状態になっているから、見なかった第三者にも対抗できるという構造である。例外の「正当な事由」は、災害による交通の途絶や登記簿の滅失など、登記を知ることが客観的に困難であった事情に限られ、多忙や病気といった第三者側の主観的な事情は含まれない。会社に関する登記事項については会社法908条1項が同じ規律を置く。本肢は商法9条1項の前段と後段をそのまま述べたものであり、正しい。

この編の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
- 登記前(1項前段): 善意の第三者に対抗できない。悪意の第三者には対抗できる。登記官の過誤で登記されなかった場合も同じ
- 第三者側からの主張: 登記前でも第三者は事実を主張できる(大判明41.10.12)。実体に合った取引は当事者も有効と主張できる(最判昭35.4.14)
- 登記後(1項後段): 善意の第三者にも対抗できる。正当な事由(災害・登記簿の滅失など客観的障害。病気・負傷は含まない。最判昭52.12.23)がある第三者には対抗できない
- 民法112条との関係: 退任・解任の登記後は民法112条の適用・類推適用なし(最判昭49.3.22)
- 訴訟上の代表権: 908条1項は適用されない。登記前でも代表取締役は訴訟で会社を代表できる(最判昭43.11.1)
- 推定力: 法律上の推定力はない
- 不実の登記(2項): 故意・過失で不実の登記をした者は善意の第三者に対抗できない。登記官の過誤には不適用。申請権者の申請に基づく登記であることが原則(最判昭55.9.11)
- 類推適用: 就任登記を承諾した者(最判昭47.6.15。429条1項の責任も負う)。辞任登記未了の放置は明示の承諾など特段の事情がある場合に限る(最判昭62.4.16)
正しい。登記すべき事項は登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、その第三者に対抗することができない(商法9条1項後段)。
個人商人が選任した支配人については、選任と代理権の消滅が登記事項である(商法22条)。商法9条1項は、前段で登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗できないとしたうえで、後段で、登記の後であっても第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは同様とすると定める。登記後は第三者の善意悪意を問わず対抗できるという積極的な公示力にも例外があり、第三者に正当な事由がある場合には、登記後でもなお対抗できない。ここでいう正当な事由とは、第三者の主観的・個人的な事情では足りず、交通の途絶や登記簿の滅失など、登記の存在を知ることが客観的に妨げられていた事情をいうと解されている。登記を見れば分かる状態なのに見なかった第三者まで保護すると、登記制度の意味がなくなるからである。したがって、支配人の代理権が消滅してその登記がされた後でも、第三者が正当な事由によりその登記があることを知らなかったときは、営業主は代理権の消滅をその第三者に対抗できない。本肢は正しい。

この編の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
- 選任: 商人(会社)が選任し営業所(本店・支店)で営業を行わせる。取締役会設置会社では取締役会の決議(会社法362条4項3号)。選任・代理権の消滅は登記(商法22条・会社法918条)
- 権限: 営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為(商法21条1項・会社法11条1項)。他の使用人の選任・解任(2項)。重要な使用人は取締役会の専決。制限は善意の第三者に対抗不可(3項)
- 登記の効力(商法9条1項・会社法908条1項): 登記前は善意の第三者に対抗できない。登記後は対抗できるが、正当な事由で知らなかった第三者には対抗できない
- 表見支配人(商法24条・会社法13条): 営業所の営業の主任者を示す名称を付した使用人は、その営業所の営業に関し一切の裁判外の行為の権限があるとみなす。営業所の実質を欠く場所(最判昭37.5.1)や名称を付された営業所以外の営業には適用されない
- 営業避止義務(商法23条・会社法12条): 許可なく自ら営業・競業取引・他の商人の使用人・会社の取締役等になれない
誤り。違うのは「商号の登記をしていない限り,その侵害の停止を請求することができない」の部分である。不正の目的による商号使用の停止の請求に、商号の登記は要件とされていない(商法12条2項)。
商法12条1項は、何人も不正の目的をもって他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならないと定め、2項は、これに違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その者に対して侵害の停止又は予防を請求することができると定める。要件は、相手方の不正の目的、誤認されるおそれ、営業上の利益の侵害又はそのおそれの3つであり、請求する商人が自己の商号を登記していることは要件に入っていない。商号の登記は商人がすることができるというにとどまる任意のものであり(11条2項)、登記しなくても商号は商人の営業上の信用を表す名称として保護に値するからである。かつては登記した商号についてだけ類似商号の排除が認められていたが、現行法はそのような区別を置いていない。肢は、12条2項にない「商号の登記をしていない限り」という限定を付け加えて請求を否定している点で条文と食い違う。

前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
誤り。違うのは「商号の登記をしていない限り,その侵害の停止を請求することができない」の部分である。不正の目的による商号使用の停止の請求に、商号の登記は要件とされていない(商法12条2項)。
商法12条1項は、何人も不正の目的をもって他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならないと定め、2項は、これに違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その者に対して侵害の停止又は予防を請求することができると定める。要件は、相手方の不正の目的、誤認されるおそれ、営業上の利益の侵害又はそのおそれの3つであり、請求する商人が自己の商号を登記していることは要件に入っていない。商号の登記は商人がすることができるというにとどまる任意のものであり(11条2項)、登記しなくても商号は商人の営業上の信用を表す名称として保護に値するからである。かつては登記した商号についてだけ類似商号の排除が認められていたが、現行法はそのような区別を置いていない。肢は、12条2項にない「商号の登記をしていない限り」という限定を付け加えて請求を否定している点で条文と食い違う。

前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
誤り。違うのは「その登記の後でなければ,民事訴訟における当事者である株式会社を代表する権限を有する者とはならない」の部分である。判例は、民事訴訟で誰が会社を代表する権限を有するかを定めるにあたっては登記の対抗力の規定の適用はないとした(最判昭43.11.1)。
会社法908条1項(旧商法12条)が民事訴訟における会社の代表権者の確定にも適用されるかが問題になる。判例は、旧商法12条は会社と実体法上の取引関係に立つ第三者を保護するために清算人が誰であるかについて登記を対抗要件としたものであり、それ自体実体法上の取引行為でない民事訴訟において誰が当事者である会社を代表する権限を有する者であるかを定めるにあたっては適用がないとした(最判昭43.11.1)。この立場では、訴訟上の代表権の有無は登記の有無ではなく実体法上の権限の有無で決まる。したがって適法に代表取締役に選定されて就任した者は、就任の登記がされる前でも、当事者である株式会社を代表する権限を有する者として訴訟行為ができる。逆に、退任して実体上代表権を失った者は、退任の登記が未了でも訴訟上会社を代表することはできない。訴訟手続の安定は追認などの手続法上の処理で図れば足り、取引の安全のための公示制度である商業登記の対抗力を持ち込む必要はないというのが判例の理解である。肢は登記を経なければ訴訟上の代表権者にならないとする点で判例と食い違う。

会社と実体法上の取引関係に立つ第三者を保護するため、株式会社の清算人が誰であるかについて、登記をもつて対抗要件としているものであり、それ自体実体法上の取引行為でない民事訴訟において、誰が当事者である会社を代表する権限を有する者であるかを定めるに当つては、・・・適用はない
- 登記前(1項前段): 善意の第三者に対抗できない。悪意の第三者には対抗できる
- 第三者側からの主張: 登記前でも第三者は事実を主張できる(大判明41.10.12)
- 登記後(1項後段): 善意の第三者にも対抗できる。正当な事由(災害・登記簿の滅失など客観的障害)がある第三者には対抗できない
- 民法112条との関係: 退任・解任の登記後は民法112条の適用・類推適用なし(最判昭49.3.22)
- 訴訟上の代表権: 908条1項は適用されない。登記前でも代表取締役は訴訟で会社を代表できる(最判昭43.11.1)
- 不実の登記(2項): 故意・過失で不実の登記をした者は善意の第三者に対抗できない
誤り。違うのは「その登記をしなくとも,悪意の第三者に対抗することができる」の部分である。商号の譲渡は登記をしなければ第三者に対抗できず(商法15条2項)、この第三者は善意・悪意を問わない。
商法15条2項は、商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができないと定める。商業登記の一般原則を定める商法9条1項は、登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗できないとして、善意の第三者だけを保護し、悪意の第三者には登記がなくても対抗できることを前提としている。これに対して15条2項は「善意の」という限定を付けておらず、不動産の物権変動における民法177条と同じく、登記を対抗要件とする趣旨の規定と解されている。商号の譲渡は譲渡人と譲受人の合意だけで効力を生じる財産権の移転であるから、二重譲渡の譲受人のように商号について正当な利害関係を持つ第三者との優劣は、その者の知・不知ではなく登記の先後で画一的に決めるのが適切だからである。したがって、商号の譲渡を受けた者は、登記をしていなければ、譲渡の事実を知っている第三者に対しても自分が商号の権利者であることを対抗できない。肢は15条2項の第三者を善意者に限る読み方をしており誤りである。

前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
| 商法9条1項(登記事項一般) | 商法15条2項(商号の譲渡) | |
|---|---|---|
| 登記前の第三者 | 善意の第三者に対抗できない。悪意の第三者には対抗できる | 善意・悪意を問わず対抗できない |
| 性質 | 登記の一般的効力(消極的公示力) | 対抗要件(民法177条と同じ構造) |
| 例 | 支配人の選任・解任、代表取締役の退任など | 商号の譲渡 |
誤り。違うのは「当該取引が有効であると主張することができない」の部分である。支配人の選任は登記事項であるが、現に選任された支配人が商人のためにすることを示してした取引は有権代理として商人に帰属し、商人は登記がなくてもその有効を主張できる(最判昭35.4.14)。
商法22条は、商人が支配人を選任したときはその登記をしなければならないとし、9条1項前段は、登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗することができないと定める。しかしこの規定は、登記すべき事項が存在するのにそれを知らない第三者に対して、その事項を主張して不利益を与えることを禁じる趣旨である。支配人の選任の登記がない場合に9条1項が働くのは、たとえば商人が、支配人でない者がした取引について、実は支配人を選任していたからその者には権限がなかった、と主張するような場面である。これに対して本肢では、商人が実際に支配人を選任し、その支配人が商人のためにすることを示して取引をしているから、代理の効果帰属の要件はそろっており、取引は有権代理として商人と相手方の間に有効に成立する。相手方も取引の有効を望んで契約したのであり、登記がないことを理由に商人の側から有効の主張を封じる理由はない。判例も、登記前であっても実体に合った取引の効力を当事者が主張できることを認めている(最判昭35.4.14)。肢は9条1項の射程を取り違えており誤りである。

この編の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
- 登記前(1項前段): 善意の第三者に対抗できない。悪意の第三者には対抗できる
- 第三者側からの主張: 登記前でも第三者は事実を主張できる(大判明41.10.12)。実体に合った取引は当事者も有効と主張できる(最判昭35.4.14)
- 登記後(1項後段): 善意の第三者にも対抗できる。正当な事由(災害・登記簿の滅失など客観的障害)がある第三者には対抗できない(最判昭52.12.23)
- 民法112条との関係: 退任・解任の登記後は民法112条の適用・類推適用なし(最判昭49.3.22)
- 不実の登記(2項): 故意・過失で不実の登記をした者は善意の第三者に不実を対抗できない
正しい。支配人の代理権の消滅は登記事項であり(商法22条)、登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗できないので(9条1項前段)、解任の登記をしていない商人は解任を知らなかった第三者に解任を対抗できない。
商法22条は、商人が支配人を選任したときはその登記をしなければならず、支配人の代理権の消滅についても同様とすると定める。解任は代理権の消滅事由であるから登記事項である。そして9条1項前段は、商法の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければこれをもって善意の第三者に対抗することができないとする。支配人は営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする包括的な代理権を持ち(21条1項)、取引の相手方は登記によってその存否を確かめることが予定されているから、商人が解任の登記を怠っている間は、登記を信頼して元支配人と取引した善意の第三者を保護する必要がある。そこで商人は、解任の登記をするまでは、解任を知らなかった第三者に対して解任の事実を主張できず、元支配人がした取引は商人に帰属する。これに対し、解任を知っていた悪意の第三者には登記がなくても対抗できる。肢は9条1項前段のとおりであり正しい。

この編の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
- 登記前(1項前段): 善意の第三者に対抗できない。悪意の第三者には対抗できる
- 第三者側からの主張: 登記前でも第三者は事実を主張できる(大判明41.10.12)。実体に合った取引は当事者も有効と主張できる(最判昭35.4.14)
- 登記後(1項後段): 善意の第三者にも対抗できる。正当な事由(災害・登記簿の滅失など客観的障害)がある第三者には対抗できない(最判昭52.12.23)
- 民法112条との関係: 退任・解任の登記後は民法112条の適用・類推適用なし(最判昭49.3.22)
- 不実の登記(2項): 故意・過失で不実の登記をした者は善意の第三者に不実を対抗できない
正しい。判例は、登記事項については登記後は専ら商法9条1項(会社法908条1項)のみが適用され、第三者に正当な事由がない限り善意の第三者にも対抗でき、別に民法112条を適用又は類推適用する余地はないとする(最判昭49.3.22)。
商法9条1項後段により、登記の後は、正当な事由によって登記を知らなかった第三者を除き、善意の第三者にも登記事項を対抗できる。問題は、支配人を解任しその登記をした後に、元支配人がなお支配人と称して取引をした場合に、相手方が民法112条の代理権消滅後の表見代理を主張できるかである。最判昭49.3.22は、株式会社の代表取締役の退任と代表権喪失が登記事項とされている以上、これについては専ら商法の登記の効力の規定のみが適用され、登記後は正当な事由がない限り善意の第三者にも対抗できるのであって、別に民法112条を適用ないし類推適用する余地はないとした。登記によって解任を公示した商人に、なお第三者の善意無過失を理由とする表見代理の責任を負わせたのでは、登記制度の意味が失われるからである。支配人の解任の登記についても同じ理が当てはまる。正当な事由とは災害による交通の途絶や登記簿の滅失のような客観的な障害をいい、病気などの主観的事情は含まれない。肢は判例のとおりであり正しい。

株式会社の代表取締役の退任及び代表権喪失は、…によって登記事項とされているのであるから、前記法の趣旨に鑑みると、これについてはもっぱら商法…条のみが適用され、右の登記後は同条所定の「正当ノ事由」がないかぎり、善意の第三者にも対抗することができるのであって、別に民法112条を適用ないし類推適用する余地はないものと解すべきである。
誤り。違うのは「当該選任の事実を知らない第三者に対して契約が有効であることを主張することはできない」の部分である。現に選任された支配人が商人のためにした契約は有権代理として商人に帰属し、登記がなくても商人はその有効を主張できる(最判昭35.4.14)。
商法22条は支配人の選任を登記事項とし、9条1項前段は登記すべき事項を登記の後でなければ善意の第三者に対抗できないとする。しかしこの規定は、登記すべき事項の存在を知らない第三者に対して、その事項を主張して不利益を与えることを禁じる趣旨である。選任の登記がない場合に9条1項が働くのは、たとえば商人が、支配人でない者がした取引について、実は支配人を別に選任していたからその者には権限がなかったと主張するような場面である。本肢では商人が実際に支配人を選任し、その支配人が商人のために第三者と契約を締結している。代理の効果帰属の要件はそろっており、契約は有権代理として商人と第三者の間に有効に成立する。第三者も契約の有効を望んで取引したのであって、登記がないことを理由に商人からの有効の主張を封じる理由はない。判例も、登記前であっても実体に合致した取引の効力を当事者が主張できることを認めている(最判昭35.4.14)。登記の有無は、実体関係を知らない第三者を保護するために働くのであって、実体どおりの主張を妨げるものではない。肢は誤りである。

商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。支配人の代理権の消滅についても、同様とする。
この編の規定により登記した事項に変更が生じ、又はその事項が消滅したときは、当事者は、遅滞なく、変更の登記又は消滅の登記をしなければならない。
この条文の過去問 1問
正しい。商号の登記は任意であるが、いったん登記した事項に変更が生じたときは、遅滞なく変更の登記をしなければならない(商法10条)。
個人商人の商号は、商法11条2項が「商人は、その商号の登記をすることができる」と定めるとおり任意的登記事項であり、登記をするかどうかは商人の自由である。小商人には商法7条により11条2項の適用が無いので、本肢は括弧書で小商人を除き、商号を登記できる個人商人が現に登記した場合を問う。商法10条は、商法総則の規定により登記した事項に変更が生じ、又はその事項が消滅したときは、当事者は遅滞なく変更の登記又は消滅の登記をしなければならないと定め、その事項が必要的登記事項か任意的登記事項かを区別していない。登記によって一定の事実を公示した以上、内容が現実と食い違ったまま放置されれば公示を信頼した者を害するから、登記した者に変更の登記の義務を課したものである。したがって、商号を登記した個人商人がその商号を変更したときは変更の登記をしなければならず、本肢は正しい。会社の商号が設立の登記の必要的登記事項である(会社法911条3項2号)のと異なり、個人商人は登記するかどうかだけが任意である。

この編の規定により登記した事項に変更が生じ、又はその事項が消滅したときは、当事者は、遅滞なく、変更の登記又は消滅の登記をしなければならない。
- 義務(絶対的登記事項): 未成年者の営業(5条)、後見人の営業(6条)、支配人の選任と代理権の消滅(22条)、商号の譲渡の対抗要件としての登記(15条2項。任意だが登記しなければ第三者に対抗できない)
- 任意(任意的登記事項): 商号の登記(11条2項)。会社の商号は必ず登記される(会社法911条3項2号)
- 変更・消滅(10条): 登記した事項に変更・消滅があれば遅滞なく登記。任意で登記した商号も同じ
- 登記できないもの: 支配人の代理権の制限(21条3項。登記事項でない)
- 小商人(7条): 上の登記の規定はすべて不適用
- 登記の効力(9条): 登記前は善意の第三者に対抗できない。登記後は正当な事由がある第三者を除き対抗できる。不実の登記は故意・過失があれば善意の第三者に対抗できない