この章において「問屋」とは、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れをすることを業とする者をいう。
この条文の過去問 2問
正しい。問屋には代理商の留置権の規定(商法31条)が準用され(557条)、別段の意思表示がない限り、販売又は買入れにより生じた債権の弁済を受けるまで、委託者のために占有する物又は有価証券を留置できる。
問屋とは、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れをすることを業とする者をいう(商法551条)。557条は代理商に関する規定のうち通知義務(27条)と留置権(31条)を準用している。商法31条本文は、代理商は取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまで商人のために占有する物又は有価証券を留置することができるとし、同条ただし書は当事者が別段の意思表示をしたときはこの限りでないとする。これが問屋に準用される結果、問屋は、販売又は買入れによって生じた報酬債権や費用償還請求権などの弁済期が到来していれば、その弁済を受けるまで委託者のために占有する物又は有価証券を留置でき、当事者の別段の意思表示によって排除できる。この留置権は、民事留置権と異なり被担保債権と留置物との個別の牽連性を要せず、商人間の留置権(商法521条)と異なり留置物が債務者の所有に属することも占有の取得が商行為によることも要しない点に特色がある。本肢は正しい。

代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまでは、商人のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない。
| 留置権 | 被担保債権と留置物の牽連性 | 留置物の所有・占有の取得 |
|---|---|---|
| 商人間の留置権(521条) | 不要。双方的商行為で生じた弁済期の債権 | 債務者の所有+債務者との商行為による占有が必要 |
| 代理商の留置権(31条)・問屋の留置権(557条) | 不要。代理・媒介(販売・買入れ)で生じた弁済期の債権 | 本人(委託者)のために占有する物でよく、所有・商行為による占有は不要。別段の意思表示で排除できる |
| 運送人・運送取扱人の留置権(574条・562条) | その運送品に関する債権に限る | 運送品 |
| 民事留置権(民法295条) | その物に関して生じた債権 | 他人の物の占有 |
誤り。違うのは「売買契約はA・B間に成立する」の部分である。問屋は自己の名をもって他人のために販売をする者であり(商法551条)、相手方に対して自ら権利を取得し義務を負うので(552条1項)、売買契約はC・B間に成立する。
商法551条は、問屋を、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れをすることを業とする者と定義し、552条1項は、問屋は他人のためにした販売又は買入れにより、相手方に対して自ら権利を取得し義務を負うとする。「自己の名をもって」とは、問屋自身が契約の当事者として相手方と契約を結ぶことであり、「他人のために」とは、その経済的な効果を委託者に帰属させることである。CがAから販売委託を受けた問屋であれば、Cは自分の名でBと売買契約を結び、Bに対する代金債権を取得し、商品の引渡義務を負う。売買契約の当事者はCとBであって、委託者Aと相手方Bの間には契約関係が生じない。Aは問屋Cとの間の委託契約(委任)に基づいて、Cが取得した代金の引渡しを受けるにとどまる。問屋がBとの関係で負った債務を履行しない場合に備えて、問屋は委託者に対して履行担保責任を負う(553条)。契約が委託者と相手方の間に成立する代理商や仲立人との違いである。肢は誤りである。

問屋は、他人のためにした販売又は買入れにより、相手方に対して、自ら権利を取得し、義務を負う。
| 形態 | Cの立場 | 売買契約の当事者 |
|---|---|---|
| 問屋(551条・552条) | 自己の名でAのために販売 | C・B間 |
| 仲立人(543条) | A・B間の商行為を媒介 | A・B間 |
| 媒介代理商(27条) | Aのために取引を媒介 | A・B間 |
| 締約代理商(27条) | Aのために取引を代理 | A・B間(顕名あり) |
| Bの代理人で顕名なし(504条) | Bのために商行為を代理 | 原則A・B間。善意無過失のAはA・C間を選べる(最大判昭43.4.24) |
