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盗品等関与罪の罪質と客体とは

とうひんとうかんよざいのざいしつときゃくたい

刑法 財産犯(詐欺・横領・背任ほか)

盗品等関与罪とは、盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を、譲り受け、運搬し、保管し、またはその有償の処分のあっせんをする罪です。判例は、被害者が盗品等を取り戻す権利(追求権)の行使を困難にする点に罪の本質があるとし、あわせて本犯を助長する性格も考慮しています。

盗まれた時計が、盗品と知っている買い手に次々と売られていくと、持ち主が取り戻すことはどんどん難しくなります。また、買い取ってくれる人がいるからこそ、泥棒は盗みを続けられます。盗品等関与罪は、盗んだ本人ではなく、その後に盗品に関わった人を処罰する罪です。持ち主が取り戻す権利を守ることと、盗みを割に合わないものにすることの二つが、この罪の役割です。

質屋の店先の場面。カウンターに腕時計が置かれ、売りに来た男性(札「本犯者:窃盗犯人」)と買い取る店主の男性(札「甲:盗品と知っている」)が向かい合う。店の外に、時計を探す被害者の男性(札「被害者」)が立ち、店内の時計に向かって伸ばした矢印に

盗品等関与罪は、被害者の追求権の行使を困難にし、本犯を助長する罪です

判例は、本罪の客体を、被害者が法律上追求することのできる物に限っており(大判大正12年4月14日)、被害者の追求権を保護法益とする立場に立っています。そのうえで、本罪には、本犯者の利益に関与して財産犯を助長し誘発するという性格もあると解されています。最決平成14年7月1日(有償処分あっせん罪の成否)は、盗品を被害者に買い取らせるあっせんについて、被害者による盗品等の正常な回復を困難にするばかりでなく、窃盗等の犯罪を助長し誘発するおそれのある行為であるとして、罪の成立を認めました。2項の罪の法定刑が10年以下の拘禁刑および50万円以下の罰金と、窃盗罪より重い面を持つのは、この本犯助長性と利欲的な性格によります。追求権の侵害だけで説明する見解に対しては、法定刑の重さや、被害者に返す方向の行為が処罰されることを説明しにくいという批判が向けられます。

客体は、財産罪に当たる行為によって直接領得された物に限られます

客体は「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」です。窃盗、強盗、詐欺、恐喝、横領などの財産罪で得られた物に限られます。「賄賂として収受された現金は,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たる」という肢は誤りです。収賄罪や賭博罪は財産に対する罪ではないので、賄賂や賭博で得た金銭は客体になりません。また、領得された「物」そのものでなければなりません。「会社が保管する秘密資料を窃取した者が,自宅で,そのコピーを作成した場合,当該コピーは,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たらない」という肢は正しいです。コピーは窃盗によって直接領得された物ではなく、会社の所有にも属さないので、追求権が及びません。財産上の利益も客体になりません。「甲は,乙がAを欺いて,乙の不動産に設定していたAの抵当権の設定登記を抹消させたことを知りながら,乙の不動産を譲り受けた。この場合,甲には盗品等有償譲受け罪が成立する」という肢は誤りで、抵当権の登記を抹消させたのは利益を得る2項詐欺であり、不動産そのものが領得された物ではないからです。これに対し、不動産そのものが詐取された場合は客体になります。「乙が本件不動産を譲り受けた行為には,盗品等有償譲受け罪が成立する」という肢は正しいです。自己の所有物であっても、他人が占有する物を無断で取り戻せば窃盗罪に当たり得るので(242条)、「この場合,車の所有権が乙にあったとしても甲には盗品等保管罪が成立する」という肢は正しいとされています。

本犯の行為は、構成要件に該当し違法であれば足り、本犯者が処罰されることは必要ありません

条文は「罪に当たる行為」としており、本犯の行為は、財産罪の構成要件に該当する違法な行為であれば足ります。本犯者に責任があることや、現実に処罰されることは必要ありません。追求権があるかどうかは、本犯者の責任や処罰の可否と関係がないからです。「甲は,刑法第41条の刑事未成年である乙が窃取した物を,盗品であると知りつつ,乙から無償で譲り受けた。甲には盗品等無償譲受け罪は成立しない」という肢は誤りです。「甲は,12歳の乙が電器店で窃取した携帯電話機を乙から買い,代金を支払ってその交付を受けた。この場合,甲には盗品等有償譲受け罪は成立しない」という肢も誤りです。大判明治44年12月18日は、刑事未成年者が窃取した物も盗品に当たるとしています。「親族間の犯罪に関する特例(刑法第244条)により刑が免除される犯人が窃取した物品は,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たらない」という肢も誤りです。親族間の犯罪に関する特例は、犯人の処罰について特例を設けたにすぎず、犯罪の成立を否定するものではありません(最判昭和25年12月12日)。「乙は,窃盗罪についての刑が免除されることから,甲には盗品等有償譲受け罪は成立しない」という肢も誤りです。本犯について公訴時効が完成していても同じです(大判明治42年4月15日)。「この場合,丙の窃盗行為について公訴時効が成立していれば,甲には盗品等有償譲受け罪は成立しない」という肢は誤りで、「甲は、乙が窃取した宝石であることを知りつつ、乙から同宝石を有償で譲り受けたが、その時点で乙の同窃取行為について公訴時効が完成していた。この場合、甲に盗品等有償譲受け罪が成立する」という肢は正しいです。

  • 本犯者が刑事未成年盗品性あり。盗品等関与罪が成立する(大判明治44年12月18日)
  • 本犯者が親族相盗例で刑を免除される盗品性あり。犯罪の成立は否定されていない
  • 本犯の公訴時効が完成している盗品性あり。盗品等関与罪が成立する
  • 賄賂として収受された現金財産罪で領得された物ではない。客体にならない
  • 盗んだ資料のコピー直接領得された物ではない。客体にならない

被害者が追求権を失えば盗品性は失われますが、盗品・遺失物は2年間は盗品性が残ります

客体は被害者が追求できる物でなければならないので、被害者が所有権を失えば盗品性も失われます。第三者が民法192条により即時取得した場合が典型です(大判大正6年5月23日)。もっとも、「窃取された物品を買い受けた者が,平穏に,かつ,公然とその占有を開始し,その際,善意無過失である場合,当該物品は,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たる余地はない」という肢は誤りです。盗品または遺失物については、被害者は盗難または遺失の時から2年間、占有者に対して回復を請求できるので(民法193条)、その間は盗品性が失われません(最決昭和34年2月9日)。詐欺や横領で領得された物にはこの回復請求の規定が適用されないので、即時取得によって盗品性が失われます。盗品に手を加えた場合は、加工や付合によって被害者が所有権を失ったかで決まります。「甲は,自転車Aが,乙が自ら窃取した自転車Bからサドルを取り外し,乙所有の別の自転車本体に容易に着脱可能な状態で取り付けて完成させたものであると知りつつ,乙から自転車Aを購入した。甲には盗品等有償譲受け罪が成立する」という肢は正しいです。最判昭和24年10月20日(盗品の同一性)は、盗品の自転車の車輪とサドルを別の自転車の車体に取り付けても、原形のまま容易に分離できるので盗品性は失われないとしました。盗品を売却して得た代金は、領得された物そのものではないので、原則として盗品に当たりません。

教室の黒板の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板を指す。黒板には横向きの時間の矢印が引かれ、左端に「盗難の時」、右に「2年」の目盛り。矢印の途中に「第三者が善意無過失で買い受け(即時取得)」の点。左端から2年の目盛りまでの区間に帯が引かれ

故意は、財産罪で領得された物であることの未必的な認識で足ります

本罪の故意として、客体が盗品等であることの認識が必要です。この認識は、何らかの財産罪によって領得された物であることの認識で足ります。「盗品等有償譲受け罪の客体に対する故意は,財産罪に当たる行為によって領得された物であることの認識があれば足り,いかなる財産罪に当たるかの認識までは不要である」という肢は正しく、誰のどのような犯行によるものかを具体的に知っている必要はありません。認識の程度も、確定的である必要はありません。最判昭和23年3月16日(未必の故意)は、盗品であるかもしれないと思いながらあえて買い受ける意思があれば足りるとしました。「甲は、乙が窃取したバッグを、これが盗品かもしれないがそれでも構わないと思って購入した。この場合、甲に盗品等有償譲受け罪が成立する」という肢は正しいです。「盗品かもしれないと認識していたが,値段が安いのでそれでも構わないと思って有償で譲り受けた。この場合,甲には盗品等有償譲受け罪は成立しない」という肢は誤りです。「甲は,乙から,乙が窃取してきた貴金属類を,乙が盗んできたものかもしれないと思いながら,あえて買い取った。甲には盗品等有償譲受け罪の故意が認められる」という肢も正しいです。

刑法256条1項

盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の拘禁刑に処する。

刑法256条2項

前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の拘禁刑及び五十万円以下の罰金に処する。

論文ではこう使う

論文では、本罪の罪質をどう理解するかが、個々の論点の結論を導く根拠になります。答案では、本罪の保護法益を被害者の追求権としたうえで、本犯助長的な性格をあわせ持つことを冒頭で示します。客体については、追求権が存続しているかを基準に、本犯が財産罪の構成要件に該当する違法な行為であること、被害者が所有権を失っていないことを確認します。即時取得、加工、付合が問題になるときは、民法上の所有権の帰属を先に認定します。被害者に買い取らせるあっせんや、被害者のもとへ運ぶ行為が問題になるときは、追求権の行使を困難にしたかを、被害者が無償で取り戻せるはずの物に対価を払わされていないか、本犯者の利益のために行われていないかという観点から評価し、本犯助長性にも触れて結論を出します。故意については、盗品等であることの未必的な認識を、取引の経緯、価格、相手方の素性などの事実から認定します。

試験ではこう問われる

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