賭博の罪とは
とばくのつみ
賭博とは、偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為をいいます。賭博の罪には、単純賭博罪、常習賭博罪、賭博場開張等図利罪、富くじに関する罪があります。
友人とのゲームで負けた人がジュースをおごる程度なら、だれも罪に問われません。ところが、現金を賭けて勝ち負けを争うと、働かずに運でお金を得ようとする風潮が広がり、借金や他の犯罪のもとにもなります。そこで刑法は、偶然の勝ち負けに財産を賭ける行為を賭博として処罰しています。くり返す習癖のある人や、場を開いてもうける人は、より重く処罰されます。賭けた本人の財産を守るための罪ではないので、参加者全員が納得していても成立します。
賭博とは、偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為をいい、賭博行為を開始すれば既遂になります
185条は、賭博をした者を50万円以下の罰金又は科料に処すると定めています。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは成立しません。その場で飲み食いする飲食物やたばこを賭ける場合がこれに当たります。賭博罪は、賭博行為をすること自体を処罰する罪ですから、賭博行為が開始されれば成立し、勝敗が決まったことや、賭けた金品が実際にやり取りされたことは必要ありません。判例は、花札の配付を受けた後、勝敗が決まらないうちに発覚した事案で賭博罪の成立を認めています(大判大正6年11月8日)。「賭博行為が開始されるだけでなく、勝敗が決し、金品の授受がなされなければならない」という肢は誤りです。
当事者の一方が勝敗を支配しているいかさま賭博は、賭博ではなく、だました側に詐欺罪だけが成立します
賭博といえるためには、勝敗が当事者の双方にとって偶然の事情にかかっていることが必要です。一方があらかじめ結果を知っていたり、細工をして勝敗を自由に決められたりする場合は、偶然の勝敗を争っていないので、賭博ではありません。最判昭和26年5月8日は、このような場合、欺く手段を用いた側には詐欺罪だけが成立し、相手方には賭博罪は成立しないとしています。あらかじめ勝敗の結果を知ったうえで、「その結果を知らない者との間で金銭を賭けて利益を得た場合、当事者全員に賭博罪が成立する」という肢は誤りです。不正な細工を施したトランプカードを用いて相手を負けさせ、支払債務を負担させた事例では、相手に対する詐欺罪が成立します。賭博による債務が公序良俗に反して無効であっても、詐欺罪の成立は妨げられません。
常習賭博罪の常習性は、賭博を反復累行する習癖があることをいい、賭博の前歴がなくても認められることがあります
186条1項は、常習として賭博をした者を3年以下の拘禁刑に処します。常習として賭博をしたとは、賭博を反復累行する習癖があり、その発現として賭博をしたことをいいます。常習性は、賭博の種類、賭けた金額、行われた期間や回数、前科などの事情から判断されます。最決昭和54年10月26日は、長期間営業を継続する意思で多額の資金を投下して多数の賭博遊技機を設置した遊技場の営業を始め、摘発されるまでの3日間営業した事案で、賭博を反復累行する習癖があり、その発現として賭博をしたと認めてよいとして、常習賭博罪の成立を認めました。それまで賭博行為をしたことがなかった者について、「数日間営業を行ったにすぎない場合には、甲に常習賭博罪が成立することはない」という肢は誤りです。
常習性は刑法65条2項の身分であり、常習者には常習賭博罪の共犯が、常習性のない者には単純賭博罪の共犯が成立します
判例は、賭博の常習性を、65条2項の「身分によって特に刑の軽重があるとき」の身分に当たるとしています。常習性のない者が常習者の賭博を幇助した場合、常習性のない者には通常の刑が科されるので、単純賭博罪の幇助犯が成立します(大判大正2年3月18日)。「常習性のない者には常習賭博罪の幇助犯が成立する」という肢は誤りです。反対に、常習者が常習性のない者の賭博を教唆・幇助した場合について、判例は、65条2項の趣旨により、常習者には常習賭博罪の教唆犯・幇助犯が成立するとしています(大判大正3年5月18日)。「賭博の常習性を有する者が有しない者に賭博を教唆した場合,同項の適用の余地はない」という肢は誤りです。正犯に単純賭博罪が成立するにすぎない事例について、「丙が賭博の常習者であったとしても、丙に単純賭博罪の教唆犯が成立するにとどまる」という肢も誤りです。見解問題では、65条1項と2項の関係をどう理解するかによって、非常習者が常習者に賭博を教唆した事例の罪名が変わります。1項を真正身分犯の成立と科刑の規定、2項を不真正身分犯の成立と科刑の規定と解する見解からは、常習性を身分と解すると、非常習者には2項により単純賭博罪の教唆犯が成立するという結論になります。1項を真正身分犯・不真正身分犯を通じた共犯の成立の規定、2項を不真正身分犯の科刑の規定と解する見解からは、非常習者に常習賭博罪の教唆犯が成立し、科刑は単純賭博罪の刑になるという結論になります。後者の見解に対しては、成立する罪名と科される刑が分かれてしまうという批判が向けられます。
賭博場開張図利罪は、賭博者を一定の場所に集めなくても成立し、開張者に知らせずに客を誘い入れた者には幇助犯が成立します
186条2項は、賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者を3月以上5年以下の拘禁刑に処します。賭博場を開張するとは、自ら主宰者となって、その支配のもとに賭博をさせる場所を開設することをいいます。利益を図る目的があれば足り、実際に利益を得たことは必要ありません。最決昭和48年2月28日は、賭博場開張図利罪が成立するためには、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しないとして、電話で客の申込みを受けて野球賭博をさせた事案で同罪の成立を認めました。「事務所の固定電話を利用して参加者と連絡を取り合って賭博をさせた場合であっても、賭博場開張図利罪が成立する」という肢は正しいです。賭博場を開張している者に知らせずに客を誘い入れて賭博をさせた者は、自ら賭博場を主宰しているわけではなく、開張者との意思の連絡もないので、賭博場開張図利罪の正犯や共同正犯にはなりません。しかし、幇助犯は正犯との意思の連絡がなくても成立するので、開張者の犯行を容易にした者として幇助犯になります(大判大正14年1月22日)。「この場合,Aには賭博場開張図利罪の幇助犯が成立する」という肢、「甲と乙との間に意思連絡がなくとも、甲に賭博場開張図利罪の幇助犯が成立する」という肢は、いずれも正しいです。
- 単純賭博罪(185条)賭博をする。50万円以下の罰金又は科料。一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは不成立
- 常習賭博罪(186条1項)常習として賭博をする。3年以下の拘禁刑
- 賭博場開張等図利罪(186条2項)賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図る。3月以上5年以下の拘禁刑
- 富くじ発売等の罪(187条)富くじの発売は2年以下の拘禁刑又は150万円以下の罰金、発売の取次ぎは1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、授受は20万円以下の罰金又は科料
- 富くじあらかじめ番号札を発売して金銭などを集め、抽選などの偶然の方法で購買者の間に不平等な利益の分配をするもの
刑法185条
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
刑法186条2項
賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
論文ではこう使う
論文で賭博の罪そのものが主題になることは多くありませんが、共犯と身分の事例の素材として使われます。常習者と非常習者が関与した事例では、まず正犯の行為が賭博に当たること、正犯に常習性があるかどうかを事実から認定します。次に、常習性が65条2項の身分に当たることを示し、共犯者それぞれについて、常習性のある者には常習賭博罪の共犯、常習性のない者には単純賭博罪の共犯が成立すると結論づけます。賭博を装って相手から金銭を得た事例では、勝敗が双方にとって偶然といえるかを検討し、一方が勝敗を支配していれば、賭博罪ではなく詐欺罪を検討します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。