司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 刑事訴訟法 / 補強証拠の適格と証明力

補強証拠の適格と証明力とは

ほきょうしょうこのてきかくとしょうめいりょく

刑事訴訟法 証拠法総論と自白

補強証拠の適格とは、どのような証拠が自白を補強する証拠になれるかという問題で、補強証拠は被告人の自白から独立した証拠でなければならず、被告人の供述書や手紙のように自白の実質を持つものは補強証拠になりません。補強証拠の証明力とは、補強証拠にどの程度の証明力が要るかという問題で、自白と相まって犯罪事実を認定できれば足り、補強証拠だけで犯罪事実を立証できる程度は要りません。

警察で殺人を自白した被告人が、二日後に同じ内容を手紙に書いて知人に送ったとします。検察官が「調書と手紙の二つがあるから自白だけではない」と言っても、同じ人が同じことを二度言っただけで、自白が本当かどうかを別の角度から支える力はありません。補強証拠は、自白した本人から離れたところにある証拠でなければ意味がないのです。その一方で、本人から独立した証拠でさえあれば、どれほどの力が要るかは厳しく求められません。自白と合わせて犯罪事実が認定できれば足り、その証拠だけで犯罪を証明できる必要はないというのが判例の立場です。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、法壇の上に「供述調書(自白)」と「知人A宛ての手紙」と書かれた二通の書類が並んでいる。男性の検察官(札「検察官」)が手紙を指して吹き出し「自白のほかに手紙もあります。二つの証拠です」。

補強証拠は被告人の自白から独立した証拠でなければならず、自白の実質を持つ被告人の書面は補強証拠になりません

補強法則の趣旨は自白偏重と自白強要の弊害を防ぐ点にあるので、補強証拠は自白とは別の、自白から独立した証拠でなければなりません。同じ人の供述をいくら積み重ねても、その供述の真実性を独立に担保する機能はないからです。「本人の自白」には、捜査機関に対する供述調書の自白だけでなく、被告人が自ら作成した供述書に記載された自白も含まれます。被告人が司法警察員に自白した二日後に、同じ内容を記載した知人宛ての手紙を作成して郵送した事例では、その手紙は自白の反復にすぎないので補強証拠になりません。「甲を殺人,死体遺棄の罪で有罪とするためには,Aに郵送された手紙以外の補強証拠が必要不可欠であり,甲の供述調書及びAに郵送された手紙以外の証拠がない場合には,甲を殺人,死体遺棄の罪で有罪とする余地はない。」という肢は正しいです。被告人の日記や手帳も、犯罪事実を認める記載であれば自白の実質を持つので、原則として補強証拠になりません。

嫌疑を受ける前に業務の一環として作られた被告人の帳簿は、自白とはみられず補強証拠になります

被告人自身の書面がすべて補強証拠適格を欠くわけではありません。最決昭和32年11月2日は、闇米の売渡しの事案で、被告人が犯罪の嫌疑を受ける前に、これと関係なく、販売未収金の関係を備忘のためその都度記入していた未収金控帳について、その記載内容は被告人の自白と目すべきものではないとし、323条2号の業務の通常の過程において作成された書面として証拠能力を有し、公判廷の自白に対する補強証拠となり得るとしました。嫌疑とは無関係に機械的・継続的に作られた記録は、自白のように取調べへの迎合や虚偽の危険を伴わないので、自白から独立した証拠と評価できるからです。被告人の書面が補強証拠になるかは、名義が被告人かどうかではなく、その記載が自白の実質を持つかで決まります。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、指し棒で板書を指している。黒板は左右二つの枠に分かれ、左の枠の見出し「補強証拠になる」の下に「嫌疑前の未収金控帳(最決昭32.11.2)/自白を端緒に出た被害届/押収された被害品/共犯

自白を端緒として得られた証拠でも補強証拠になり、自白より前に存在している必要はありません

補強証拠に求められるのは自白の真実性を担保できることであって、その収集の時期や端緒は問われません。自白に先立って存在し又は収集された証拠でなければならないという制限は、憲法38条3項にも319条2項にもなく、補強法則の趣旨からも導かれません。被告人の自白を端緒に捜査を開始した結果、被害者が被害に気付いて被害を届け出たという経緯であっても、その被害届は自白とは別個独立の証拠であり、自白の真実性を裏付ける働きをします。「平成23年4月3日より前にV2が前記被害を届けていることについての補強証拠が必要不可欠であり,前記甲の自白を端緒に捜査を開始した結果,V2が前記被害に気付いて被害を届けた場合,甲を住居侵入,窃盗の罪で有罪とする余地はない。」という肢は誤りです。被害届の存在自体が不可欠なわけでもなく、侵入口の破壊痕や被告人から押収された被害品でも補強できます。

補強証拠の証明力は、自白と相まって犯罪事実を認定できれば足り、細部まで独立に立証する必要はありません

補強証拠にどの程度の証明力が要るかについて、補強証拠だけで犯罪事実を合理的な疑いを超えて証明できる必要があるとする絶対説を徹底すると、自白がなくても有罪にできる場合にしか自白を使えなくなります。判例は、被告人の自白と補強証拠とが相まって犯罪構成要件たる事実を総体的に認定することができれば足りるとしており(最判昭和24年4月7日)、相対説に立ちます。「補強証拠の証明力については、自白と補強証拠とが相まって犯罪構成要件たる事実を総体的に認定することができればそれで足り、補強証拠だけでその事実を立証できる程度の証明力までは必要ない。」という肢は正しいです。窃盗の事例で、被害者が被害直後に現金10万円と時計1個を盗まれたと届け出ており、被告人から被害品の時計が押収されていれば、侵入と財物奪取という罪体の重要部分と被害品の同一性が裏付けられ、自白の真実性は十分に担保されます。被害金品のその後の所在や使途は窃盗罪の構成要件要素ではなく、現金は費消されれば追跡できない性質の物なので、「被害に係る現金10万円の使途を全て明らかにする補強証拠がない限り,甲を現金10万円及び時計1個を窃取した旨の窃盗の罪で有罪とする余地はない。」という肢は誤りです。盗品等有償譲受けの罪で被害者の盗難届しかない場合も、譲受けの事実を盗難届で補強できるとするのが判例で、補強証拠に求められる証明力の低さを示しています。

  • 被告人が自白の2日後に同じ内容を書いて知人に郵送した手紙自白の反復で、補強証拠になりません
  • 犯罪事実を認める記載のある被告人の日記・手帳自白の実質を持つので、原則として補強証拠になりません
  • 嫌疑を受ける前に備忘のためその都度記入していた未収金控帳自白とはみられず、323条2号の書面として補強証拠になります(最決昭和32年11月2日)
  • 被告人の自白を端緒に被害者が気付いて提出した被害届自白に先行していなくても補強証拠になります
  • 被害直後の被害届と押収された被害品の時計自白と相まって窃盗の事実を認定でき、現金の使途まで補強する必要はありません
  • 共犯者の供述被告人本人の自白ではないので補強証拠適格があります。詳しくは共犯者の自白の語で扱います

憲法38条3項

何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

論文ではこう使う

補強証拠の適格を論じるときは、補強法則の趣旨(自白偏重と自白強要の防止)から、補強証拠は自白から独立した証拠でなければならないという規範を立て、問題の証拠が被告人の供述を内容とするか、嫌疑と無関係に作られた記録かを事実で評価します。証明力については、相対説に立って「自白と相まって犯罪事実を認定できるか」を基準にし、罪体の重要部分と被害品の同一性が裏付けられているかを見ます。自白との時間的先後や収集の端緒は適格を左右しないことを一言添えると、肢の引っかけに対応できます。

試験ではこう問われる

「補強証拠の適格と証明力」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型5件と関係する過去問の肢4本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、刑事訴訟法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語

証拠法総論と自白

自由心証主義とその制約

証拠法総論と自白

自白の意義と自白法則の根拠