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条件説とは|「あれなければこれなし」の限界がわかる

条件説とは何か、「あれなければこれなし」の公式の使い方を基礎から解説。条件関係と因果関係の違い、無限遡及・択一的競合・重畳的因果関係・仮定的因果経過・不作為の因果関係という条件説の限界を、答案の書き方まで整理します。

本記事の役割 — この記事は出発点である「条件説」に絞って解説する。
条件説の限界をどう乗り越えてきたかという学説の流れ全体
因果関係の判断基準|相当因果関係説から危険の現実化へにある。

この記事のポイント

条件説とは、行為と結果との間に「あれなければこれなし」の関係(条件関係)さえあれば、それだけで刑法上の因果関係を肯定してよいとする立場である。 判断が明確である反面、条件関係はどこまでもさかのぼるため、これだけで因果関係を決めると処罰範囲が際限なく広がる。そのため現在の通説・判例は純粋な条件説を採らず、条件関係を因果関係の「最低限の前提」と位置づけたうえで、さらに法的因果関係による絞り込みを行う。 押さえるべきは、択一的競合・重畳的因果関係・仮定的因果経過・不作為の因果関係という4つの限界事例を、公式の当てはめ方とセットで理解することである。


条件説とは(定義)

条件説とは、実行行為と結果との間に「あれなければこれなし」(ラテン語で conditio sine qua non)の関係が認められれば、それだけで刑法上の因果関係を肯定してよいとする立場をいう。

この立場は、結果の発生に寄与したすべての条件を等しい価値のものとして扱う点に特徴があり、等価説とも呼ばれる。凶器を振るった行為も、凶器を売った行為も、行為者を産んだ出産行為も、結果に対する「条件」であることに変わりはない――条件説は、この等価性を前提として、条件でありさえすれば因果関係ありと評価する。

ここで重要なのは、条件関係と因果関係は同じ概念ではないという点である。

  • 条件関係(事実的因果関係):その行為がなければその結果は発生しなかった、という事実レベルの結びつき
  • 法的因果関係:条件関係を前提に、なお結果をその行為者の所為として帰責してよいだけの規範的な結びつき

条件説は、この2階建ての構造のうち1階部分だけで因果関係を完結させる立場である。現在の通説・判例は1階を必要条件としつつ、2階を必ず要求する。条件説は今日そのままの形で支持されているわけではないが、条件関係の判定方法そのものは今も生きている。だからこそ、短答でも論文でも繰り返し問われる。


「あれなければこれなし」の判定手順

「あれなければこれなし」は、感覚で答えると必ずぶれる。次の3ステップで機械的に処理する癖をつけたい。

ステップ1:検討対象となる「行為」を特定する

どの行為を条件関係の対象とするのかを確定する。刑法上問題となるのは実行行為であり、漠然と「被告人の一連の言動」を対象にしてはならない。「角材で頭部を殴打した行為」というように、構成要件該当行為として切り出せる単位で特定する。

ステップ2:その行為を仮定的に取り除く

特定した行為を、思考実験として現実の因果経過から取り除く。ここで注意すべきは、取り除くのは当該行為だけであり、他の事情は現実のまま動かさないという原則である。「その行為がなければ被告人は別の方法で殺していたはずだ」といった仮定を勝手に付け加えてはならない(後述する仮定的因果経過の問題である)。

ステップ3:現実に発生した結果が発生しなかったといえるかを問う

行為を取り除いた世界で、現実に発生したのと同じ結果が発生しなかったといえるかを問う。発生しなかったといえれば条件関係あり、それでも発生したといえれば条件関係なし、である。

ここで決定的に重要なのが、結果をどの程度具体的に捉えるかである。結果を「人が死んだ」という抽象的なレベルで捉えると判定が不安定になる一方、「何時何分何秒に、この病態で死んだ」というレベルまで具体化すると、死期をコンマ数秒早めただけの行為にも条件関係が認められ、絞り込み機能が失われる。そこで通説は、現実に発生した結果を、その発生時期・場所・態様を含めた具体的なものとして捉えるという中間的な把握をとる。

なお、判例が条件関係の公式を意識した説示をした例として、米兵ひき逃げ事件(最決昭42.10.24)がある。同決定は、死因となった頭部の傷害が被告人の運転行為によるものか同乗者が引きずり降ろした行為によるものかを確定できないとしつつ、いずれにしても被告人の運転行為がなければ死亡結果は発生しなかったとして因果関係を肯定した。個別の判例の詳細は刑法上の因果関係の判例解説に譲る。


条件説の第1の限界――因果関係の無限遡及

条件説に向けられる最も古典的かつ決定的な批判が、因果関係の無限遡及である。「あれなければこれなし」の関係は、時間をさかのぼればいくらでも連鎖する。殺人犯が凶器を購入した行為、その凶器を製造した行為、犯人を産んだ出産行為――どれも取り除けば結果は発生しなかったのだから、条件説を貫けばすべてに因果関係が認められることになる。

条件説の側からは、「因果関係が認められても、故意・過失がなければ処罰されないのだから実害はない」という反論がなされてきた。しかし、因果関係は客観的構成要件要素であり、そこで果たすべき限定機能を主観的要素に丸投げすることになる点で体系上難がある。また、予見可能性が緩やかに認められる過失犯では歯止めにならないという実質的な難点もある(過失犯の構造参照)。

そして、無限遡及の問題以上に実務的に切実なのが、行為後に異常な事情が介在した場合である。行為者が軽微な暴行を加えた後、搬送中の救急車が無関係の落雷で炎上して被害者が死亡したというような事案でも、条件説を貫けば暴行と死亡との因果関係が肯定され、傷害致死罪が成立してしまう。これは明らかに行為者に酷である。

ここに、条件関係の次の判断として法的因果関係が必要となる決定的な理由がある。 法的因果関係の判断枠組みについては、危険の現実化説の解説および相当因果関係説と危険の現実化説の違いで扱う。本記事は、そこに至る手前の「条件関係のレイヤー」に絞って解説する。


条件説の第2の限界――択一的競合

択一的競合とは(本記事における用法)

択一的競合という語は論者によって用法に幅があるため、本記事では次の意味で用いる。

択一的競合とは、単独でも同一の結果を発生させるに足りる複数の行為が独立して行われ、それぞれが現実に結果に作用して結果が発生した場合をいう。

典型例は次のものである。

甲と乙が、意思の連絡なく、それぞれ独立にAの飲み物に致死量の毒物を混入した。Aは両方を摂取して死亡した。甲の毒だけでも、乙の毒だけでも、Aは死亡していた。

形式的な公式では条件関係が否定されてしまう

ここで「あれなければこれなし」を機械的に当てはめると、甲の投与を取り除いても乙の毒によりAは死亡し、乙の投与を取り除いても甲の毒によりAは死亡する。つまり両者とも条件関係が否定され、殺人未遂にとどまるという結論になる。しかし現実にはAは2人の毒によって死亡しており、この結論はいかにも不合理である。ここが「あれなければこれなし」という仮定的除去の公式の弱点として、古くから指摘されてきた。

学説の対応

対応は大きく2つに分かれる。

(1) 公式を修正するアプローチ(一括除去による修正)

複数の行為をすべてまとめて取り除けば結果が発生しなかったが、一部だけを取り除いても結果が発生するという場合には、そのすべての行為に条件関係を認める、という修正公式を用いる見解である。これによれば甲・乙いずれにも条件関係が認められ、殺人既遂となる。もっとも、公式への例外的な付け足しであり、なぜ例外が許されるのかの説明を要する点に難がある。

(2) 公式そのものを使わないアプローチ(合法則的条件説)

近時有力なのが合法則的条件説である。これは、「行為を取り除いたらどうなるか」という仮定的な問いを立てるのではなく、現実に生じた因果経過をたどり、その行為が経験則・自然法則に従って結果に結びついているといえるかを直接問う立場である。択一的競合の事例では、甲の毒も乙の毒も現実にAの体内で作用して死亡結果に至っている以上、修正公式のような技巧を用いずに両者の条件関係を素直に肯定できる。この点が合法則的条件説の最大の長所とされる。

事実認定との区別に注意

答案上の落とし穴として、そもそも択一的競合ではない事案を択一的競合として扱ってしまう誤りがある。上の例で、Aが甲の毒だけを摂取して死亡し乙の毒は摂取していなかった場合、乙の行為はAの死亡に何ら作用しておらず、乙は単に条件関係を欠く(殺人未遂)というだけである。択一的競合は「複数の原因が現実に結果へ作用した」ことが前提である。


条件説の第3の限界――重畳的因果関係

重畳的因果関係とは(本記事における用法)

こちらも用法が揺れるため、本記事では次の意味で用いる。

重畳的因果関係とは、単独では結果を発生させるに足りない複数の行為が重なり合うことによって、はじめて結果が発生した場合をいう。

典型例は次のものである。

甲と乙が、意思の連絡なく、それぞれ独立にAの飲み物に致死量の半分の毒物を混入した。Aは両方を摂取し、合計して致死量に達したため死亡した。

条件関係は素直に肯定される

重畳的因果関係の事例では、「あれなければこれなし」の公式がそのまま機能する

  • 甲の投与を取り除けば、残るのは致死量の半分にすぎず、Aは死亡しなかった → 甲に条件関係あり
  • 乙の投与を取り除いても同様 → 乙に条件関係あり

つまり、重畳的因果関係は条件関係のレベルでは問題を生じない。ここは択一的競合と正反対であり、両者を取り違えると結論まで逆になる。短答での引っかけポイントでもあるので、「どちらが公式で処理できて、どちらができないのか」を必ずセットで記憶しておきたい。

もっとも、論じるべきことがなくなるわけではなく、争点は次のレイヤーへ移る。すなわち、①他人が同時に毒を盛るという事態が当該行為の危険の現実化と評価できるか(法的因果関係)、②意思の連絡がない以上、共同正犯(刑法60条)は成立せず同時犯として各自の罪責を個別に検討すること、③致死量の半分しか投与していない者の故意の内容、である。答案では条件関係を1文で通過させ、争点のあるレイヤーに時間を割くのが正しい配分である。

表1:択一的競合と重畳的因果関係の整理

項目 択一的競合 重畳的因果関係 設例 甲・乙がそれぞれ致死量の毒を投与 甲・乙がそれぞれ致死量の半分の毒を投与 各行為の単独での結果発生力 あり(単独でも死亡した) なし(単独では死亡しない) 一方を除去したら 結果は依然として発生する 結果は発生しない 「あれなければこれなし」の帰結 双方とも条件関係が否定されかねない 双方とも条件関係が肯定される 公式の修正の要否 必要(一括除去による修正・合法則的条件説) 不要 主たる争点の所在 条件関係そのもの 法的因果関係・共犯・故意

条件説の第4の限界――仮定的因果経過

定義と設例

仮定的因果経過(仮定的因果関係)とは、現実に結果をもたらした原因のほかに、仮にその行為がなくても、別の原因によっていずれ同じ結果が生じたであろうといえる場合をいう。典型例は次のものである。

死刑執行の直前、執行を待つ死刑囚Aに対し、甲が拳銃を発射してAを射殺した。甲の行為がなくても、Aは数分後に死刑の執行によって死亡していた。

原則――仮定的原因は付け加えない

処理は明快である。条件関係の判断において、仮定的な代替原因を付け加えてはならない。判断の対象はあくまで現実に生じた因果経過であり、「どのみち死んでいた」という仮定的事情は考慮しない。

理由は2つある。第一に、結果を具体的に捉えれば、甲の射撃による死亡と数分後の死刑執行による死亡は別個の結果であり、そもそも「同じ結果」が発生したとはいえない。第二に、仮定的原因の考慮を許すと、「どうせ他の誰かが殺していた」という弁解によって因果関係が広く否定されることになり、不当である。したがって、設例の甲には殺人既遂罪(刑法199条)が成立する。

なお、過失犯における結果回避可能性(注意義務を尽くしていても同じ結果が生じた、という合義務的代替行為の問題)は、これと区別される。そこで問われているのは「行為者が別の行為をした場合」であって、「第三者の別の原因が働いた場合」ではないからである。


条件説の第5の限界――不作為の因果関係

除去ではなく付加で判断する

作為犯では、存在する行為を取り除いて結果の有無を問う。ところが不作為犯では、そもそも取り除くべき身体的動作が存在しない。そこで公式が裏返る。

期待された作為(法的に義務づけられた行為)を行っていたならば、結果は発生しなかったといえるか

作為犯が「現実の行為の除去」であるのに対し、不作為犯は「義務づけられた行為の付加」によって条件関係を判定する。仮定的な判断が構造上避けられない点で、作為犯とは性質を異にする。不作為犯の成立要件全般については不作為犯の体系を参照されたい。

確実性はどこまで必要か――「十中八九」

もっとも、「作為をしていれば確実に結果を回避できた」と証明できる場面は多くない。救急搬送していれば助かったかどうかを100パーセントの確実性で立証することは通常不可能である。

この点で重要なのが最決平元.12.15である。同決定は、覚せい剤を注射された13歳の少女を放置して死亡させた事案について、直ちに救急医療を要請していれば、少女が年若く生命力が旺盛で特段の疾病がなかったことなどから十中八九同女の救命が可能であったと認定し、保護責任者遺棄致死罪(刑法218条・219条)の成立を認めた。

ここから、不作為の因果関係については、合理的な疑いを超える程度に結果回避が可能であったと認められれば足りるという理解が導かれる。逆にいえば、救命の可能性が五分五分にとどまる場合には、条件関係が認められず既遂責任を問えない。


表2:条件関係が問題となる5類型の一覧

類型 設例のイメージ 「あれなければこれなし」の当てはめ 結論・処理 無限遡及 凶器の製造・販売、行為者の出産 取り除けば結果なし → 条件関係あり 法的因果関係で限定する 択一的競合 甲・乙が各々致死量の毒を投与 一方を除いても結果が残る → 否定されかねない 一括除去による修正、または合法則的条件説で肯定 重畳的因果関係 甲・乙が各々致死量の半分を投与 一方を除けば結果なし → 条件関係あり 争点は法的因果関係・共犯・故意へ 仮定的因果経過 死刑執行直前の死刑囚を射殺 仮定的原因は付け加えない → 条件関係あり 現実の因果経過を基準に既遂を認める 不作為の因果関係 要救助者を放置して死亡させた 作為を付け加えれば結果を回避できたか 十中八九救命可能なら肯定(最決平元.12.15)

条件関係の次に何を判断するのか

ここまでみたとおり、条件関係は因果関係の必要条件ではあるが十分条件ではない。そこで判断は次のレイヤーへ進む。

  1. 条件関係(本記事の守備範囲):行為と結果との事実的な結びつきがあるか
  2. 法的因果関係:その結びつきが、結果を行為者の所為として帰責するに足りる規範的なものか

2の判断基準をめぐって、歴史的には相当因果関係説が通説の地位を占め、近時の判例は危険の現実化という枠組みで判断している。両者の内容と対立の詳細は、それぞれ危険の現実化説の解説相当因果関係説と危険の現実化説の違いに譲る。介在事情がある事案の代表例である大阪南港事件については大阪南港事件の判例解説を、因果関係論全体の見取り図は因果関係の判断基準および因果関係の判断枠組みを参照されたい。刑法総論全体の中での位置づけは刑法総論の論点マップで確認できる。


答案での書き方

条件関係に争いがない場合(1行論証)

大半の事案では、条件関係は争点ではない。次のように1文で通過させ、法的因果関係の検討に進む。

まず、甲の暴行がなければAの死亡結果は現実に発生したとおりの
時期・態様において発生しなかったといえるから、条件関係は認められる。

条件関係は短く、法的因果関係は厚くが原則である。

択一的競合が問題となる場合

甲・乙はそれぞれ独立に致死量の毒物を投与しており、いずれか一方の行為を
除去してもAの死亡結果は発生する。そのため「あれなければこれなし」の公式を
形式的に適用すると、双方につき条件関係が否定されることになりかねない。
しかし、現実にはいずれの毒物もAの体内で作用して死亡結果に至っている以上、
双方の行為を結果から切り離すのは不当である。
そこで、条件関係は、行為が経験則上結果に結びついているといえるかにより
判断すべきであり(合法則的条件説)、本件では甲・乙いずれの行為についても
条件関係が認められる。

修正公式で書く場合は、後段を「複数の行為をすべて除去すれば結果が発生しないが、一部を除去しても結果が発生する場合には、そのすべてに条件関係を認めるべきである」と置き換えればよい。

不作為の因果関係が問題となる場合

不作為の因果関係は、期待された作為を行っていれば結果を回避できたかにより
判断すべきである。もっとも、結果回避が確実であったことまでは要せず、
合理的な疑いを超える程度に回避可能であったと認められれば足りる。
本件では、甲が直ちに救急車を呼んでいれば十中八九Aの救命が可能であったから、
甲の不作為とAの死亡との間には条件関係が認められる。

よくある質問

Q1. 条件関係と因果関係は同じ意味ですか。

異なる。条件関係は事実レベルの結びつきにすぎず、因果関係の判断の第1段階にとどまる。刑法上の因果関係が認められるには、条件関係に加えて法的因果関係が必要である。条件関係だけで因果関係を肯定する立場が条件説であり、現在の通説・判例はこれを採らない。

Q2. 択一的競合と重畳的因果関係の見分け方は。

各行為が単独でも結果を発生させるだけの力を持っていたかで見分ける。単独で足りるものが複数重なったのが択一的競合、単独では足りないものが合わさってはじめて結果に至ったのが重畳的因果関係である。なお、これらの語は論者により用法が揺れるため、答案では設例の構造を言葉で示してから論じるのが安全である。

Q3. 「どのみち死んでいた」という弁解は通りますか。

通らない。条件関係の判断において仮定的な代替原因は考慮しない。ただし、過失犯において「注意義務を尽くしていても同じ結果が生じた」といえる場合(結果回避可能性の欠如)は別問題であり、こちらは注意義務違反と結果との結びつきを否定する方向に働きうる。

Q4. 合法則的条件説は答案で使ってよいですか。

使ってよい。ただし、通常の事案でわざわざ持ち出す必要はない。択一的競合のように「あれなければこれなし」の公式が機能しない場面に限って、公式の限界を指摘したうえで用いるのが効果的である。

Q5. 条件関係が否定されて未遂にとどまるのは、どんな場合ですか。

典型的には、行為が現実の結果に何ら作用していない場合である。毒を盛ったが被害者が摂取せず別の原因で死亡した場合、狙撃したが弾が外れ被害者が心臓発作で死亡した場合などがこれにあたる。この場合、結果は行為に帰責されず、殺人未遂罪(刑法203条・199条)にとどまる。不作為犯では、作為をしても救命できたとはいえない場合が同様の扱いとなる。


覚えるべき要点

  • 条件説=「あれなければこれなし」だけで因果関係を肯定する立場(等価説とも呼ばれる)
  • 条件関係は因果関係の必要条件であって十分条件ではない――次に法的因果関係の判断が必要
  • 条件説の弱点は、①無限遡及、②択一的競合、③異常な介在事情の処理
  • 択一的競合(各自が致死量)→ 公式が機能しない → 一括除去による修正 or 合法則的条件説
  • 重畳的因果関係(各自が致死量の半分)→ 公式で条件関係は肯定される
  • 仮定的因果経過 → 仮定的な代替原因は考慮しない(死刑囚射殺でも殺人既遂)
  • 不作為の因果関係 → 作為を付加して判断。「十中八九救命可能」で足りる(最決平元.12.15)
  • 答案では条件関係は1行で通過し、法的因果関係に紙幅を割く

まとめ

条件説は、「あれなければこれなし」という単純明快な公式によって因果関係を判定する立場であり、判断のぶれにくさという長所を持つ。しかし、条件関係は無限にさかのぼるうえ、行為後に異常な事情が介在した場合にも因果関係を肯定してしまうため、これだけで刑法上の帰責を決めることはできない。

公式そのものにも限界がある。択一的競合では形式的な当てはめが不合理な結論を導くため、一括除去による修正や合法則的条件説といった手当てを要する。他方、重畳的因果関係では公式が問題なく機能する。仮定的因果経過では仮定的原因を考慮しないという原則が働き、不作為犯では公式が「付加」の形に裏返る。

条件関係は簡潔に確定し、勝負は法的因果関係のあてはめでつける――これが因果関係の答案作法の要諦である。

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