株主総会の体系|決議要件・瑕疵の争い方・株主の権利
株主総会の権限・招集手続・決議要件(普通決議・特別決議・特殊決議)・瑕疵の争い方(831条・830条)を体系的に解説。試験頻出論点を網羅します。
この記事のポイント
株主総会は、株式会社の最高意思決定機関であり、その権限範囲は取締役会設置会社か否かで大きく異なる。決議には普通決議・特別決議・特殊決議の3種類があり、それぞれ定足数と賛成要件が異なる。決議に瑕疵がある場合の争い方として、取消しの訴え(831条)・無効確認の訴え(830条2項)・不存在確認の訴え(830条1項)の3類型が用意されており、それぞれ訴えの性質・原告適格・提訴期間が異なる。 本記事では、招集手続から決議の瑕疵の争い方、さらには株主提案権に至るまで、株主総会に関する論点を体系的に整理する。
株主総会の権限(295条)
取締役会非設置会社の場合
取締役会非設置会社においては、株主総会は、会社法に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる(295条1項)。すなわち、万能の機関として位置づけられる。
取締役会設置会社の場合
取締役会設置会社においては、株主総会は、会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議をすることができる(295条2項)。これは、業務執行の決定権限を取締役会に委ねる趣旨に基づく。
区分 権限範囲 根拠条文 取締役会非設置会社 一切の事項 295条1項 取締役会設置会社 法定事項 + 定款で定めた事項 295条2項株主総会の法定決議事項(主要なもの)
取締役会設置会社においても株主総会の決議が必要とされる主要事項は以下の通りである。
決議事項 条文 決議要件 取締役・監査役の選任 329条1項 普通決議(341条) 取締役・監査役の解任 339条1項 取締役は普通決議、監査役は特別決議 計算書類の承認 438条2項 普通決議 剰余金の配当 454条1項 普通決議 定款の変更 466条 特別決議 事業の重要な一部の譲渡 467条1項2号 特別決議 合併の承認 783条・795条 特別決議 解散 471条3号 特別決議 役員報酬の決定 361条1項 普通決議招集手続(296条〜302条)
招集権者
株主総会の招集は、原則として取締役が行う(296条3項)。取締役会設置会社においては、取締役会が株主総会の招集を決定し(298条4項)、代表取締役が招集する。
なお、少数株主による招集請求(297条)も認められている。総株主の議決権の100分の3以上を6か月前から引き続き有する株主は、取締役に対し株主総会の招集を請求できる。請求後、遅滞なく招集の手続が行われない場合には、裁判所の許可を得て自ら招集することができる(297条4項)。
招集通知
区分 発送期限 方法 公開会社 総会日の2週間前まで 書面又は電磁的方法 非公開会社(取締役会設置) 総会日の1週間前まで 書面又は電磁的方法 非公開会社(取締役会非設置) 総会日の1週間前まで(定款で短縮可) 方法の制限なし招集通知には、以下の事項を記載しなければならない(299条4項、298条1項)。
- 株主総会の日時及び場所
- 株主総会の目的である事項(議題)
- 書面投票・電子投票を認める場合はその旨
- その他法務省令で定める事項
招集手続の省略
株主全員の同意がある場合には、招集の手続を経ることなく株主総会を開催することができる(300条)。これは後述する「全員出席総会」の根拠となる。
株主総会参考書類等の交付
取締役は、書面投票を認める場合には、株主に対し、株主総会参考書類及び議決権行使書面を交付しなければならない(301条、302条)。議決権を有する株主数が1000人以上の会社は、書面投票制度を採用しなければならない(298条2項)。
議決権(308条)
一株一議決権の原則
株主は、その有する株式1株につき1個の議決権を有する(308条1項本文)。これは株主平等原則(109条1項)の具体的な現れである。
議決権の例外
類型 内容 条文 単元未満株式 単元未満株式には議決権なし 308条1項ただし書 自己株式 会社が有する自己株式には議決権なし 308条2項 相互保有株式 4分の1以上を保有されている会社の株式には議決権なし 308条1項括弧書・施行規則67条 議決権制限株式 定款で議決権を制限された種類株式 108条1項3号議決権の代理行使
株主は、代理人によってその議決権を行使することができる(310条1項)。定款で代理人の資格を株主に限定する旨の規定を置くことが多く、判例はこの規定を有効と解しつつ、その趣旨に照らし合理的な理由による制限として認めている(最判昭43.11.1)。ただし、弁護士を代理人とすることを拒否することは許されない場合がある。
議決権の不統一行使
株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる(313条1項)。ただし、取締役会設置会社においては、総会日の3日前までに不統一行使をする旨及びその理由を通知しなければならない(313条2項)。会社は、株主が他人のために株式を有するものでないときは、不統一行使を拒むことができる(313条3項)。
決議要件の3類型
株主総会決議は、決議要件の厳格さに応じて3つの類型に分かれる。
普通決議(309条1項)
項目 内容 定足数 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席 賛成要件 出席した株主の議決権の過半数 定款による変更 定足数は定款で排除・軽減可能 主な決議事項 取締役・会計参与の選任(329条)、計算書類の承認(438条)、剰余金の配当(454条)、役員報酬の決定(361条)取締役の選任・解任の決議においては、定足数を議決権の3分の1未満に下げることはできない(341条)。
特別決議(309条2項)
項目 内容 定足数 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席 賛成要件 出席した株主の議決権の3分の2以上 定款による変更 定足数は3分の1まで軽減可能、賛成割合は加重のみ可能 主な決議事項 定款変更(466条)、事業譲渡(467条)、合併承認(783条・795条)、会社分割承認、資本金の額の減少(447条)、監査役の解任(339条・343条4項)、募集株式の有利発行(199条・201条)特殊決議(309条3項・4項)
309条3項の特殊決議
項目 内容 定足数 なし(頭数要件あり) 賛成要件 議決権を行使できる株主の半数以上であって、かつ当該株主の議決権の3分の2以上 主な決議事項 非公開会社における株式の内容について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定款変更(109条2項)309条4項の特殊決議
項目 内容 賛成要件 総株主の半数以上であって、かつ総株主の議決権の4分の3以上 主な決議事項 非公開会社が定款で株主ごとに異なる取扱いを定める場合(109条2項に基づく定款変更のうち特に重要なもの)決議要件の比較表
定足数 賛成要件 定足数の軽減 普通決議 過半数 出席議決権の過半数 排除可能 特別決議 過半数 出席議決権の2/3以上 1/3まで 特殊決議(3項) 頭数の半数以上 議決権の2/3以上 不可 特殊決議(4項) 総株主の半数以上 総議決権の3/4以上 不可全員出席総会
意義
招集手続に瑕疵があっても、株主全員が出席し、開催に同意した場合には、適法な株主総会として決議の効力が認められる。これを「全員出席総会」の法理という。
判例の立場
最判昭60.12.20は、招集手続を欠く株主総会であっても、株主全員がその開催に同意して出席した場合には、その総会における決議は有効であると判示した。
要件
- 株主全員が出席していること
- 株主全員が開催に異議なく同意していること
株主の一部が出席していない場合や、出席していても招集手続の瑕疵を理由に異議を述べた場合には、全員出席総会とはならない。
書面決議(319条)
意義
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす(319条1項)。
趣旨
実際に総会を開催する手間を省き、特に株主数の少ない閉鎖会社において簡便な意思決定を可能にする趣旨である。
要件
- 取締役又は株主が株主総会の目的事項について提案をすること
- 当該提案につき株主全員が同意の意思表示をすること
- 同意は書面又は電磁的記録によること
書面決議の場合、株主総会の決議があったものとみなされるため、議事録の作成が必要である(319条2項)。決議があったものとみなされた日から10年間、同意の意思表示を記載・記録した書面等を本店に備え置かなければならない。
株主提案権(303条〜305条)
制度趣旨
株主提案権は、株主が株主総会における議題又は議案を提案する権利であり、株主の経営参加の機会を実質的に保障する趣旨の制度である。
3つの類型
類型 条文 内容 行使要件 議題提案権 303条 一定の事項を総会の目的(議題)とすることを請求 総株主の議決権の1/100以上又は300個以上の議決権を6か月前から保有 議案提案権 304条 総会の場で議案を提出する権利 制限なし(単独株主権) 議案通知請求権 305条 議案の要領を招集通知に記載することを請求 総株主の議決権の1/100以上又は300個以上の議決権を6か月前から保有令和元年改正による株主提案権の濫用防止
令和元年会社法改正により、1人の株主が提案できる議案の数は10個までに制限された(305条4項)。役員等の選任・解任議案は候補者ごとに1個と数える。
また、株主が不正の目的で提案権を行使する場合、会社はこれを拒むことができる(304条ただし書、305条6項)。
議題提案権と議案提案権の区別
議題提案権(303条) 議案提案権(304条) 意味 「何を審議するか」(例:取締役選任の件) 「どう決するか」(例:Aを取締役に選任する件) 少数株主権か 少数株主権 単独株主権 行使の時期 総会日の8週間前まで 総会の場で行使可能決議の瑕疵(830条・831条)
株主総会決議の瑕疵を争う訴えには3つの類型がある。これは民法の法律行為の瑕疵(取消し・無効)の考え方を基礎としつつ、会社法独自の訴訟制度として整備されたものである。
3類型の比較
取消しの訴え(831条) 無効確認の訴え(830条2項) 不存在確認の訴え(830条1項) 瑕疵の程度 比較的軽微 重大 最も重大 瑕疵の原因 手続的瑕疵・内容の法令違反(軽微)・特別利害関係人の議決権行使 決議の内容が法令に違反 決議が物理的に存在しない、又はこれに準ずる重大な瑕疵 訴えの性質 形成の訴え 確認の訴え 確認の訴え 原告適格 株主、取締役、監査役等(限定列挙) 確認の利益のある者 確認の利益のある者 提訴期間 決議日から3か月以内 なし なし 判決の効力 対世効あり(838条) 対世効あり(838条) 対世効あり(838条)決議取消しの訴え(831条1項)の取消事由
号数 取消事由 具体例 1号 招集の手続又は決議の方法が法令・定款に違反し、又は著しく不公正なとき 招集通知漏れ、説明義務違反、議長の不公正な議事運営 2号 決議の内容が定款に違反するとき 定款で定めた員数を超える取締役の選任 3号 特別利害関係人が議決権を行使したことにより、著しく不当な決議がされたとき 利益相反関係にある株主が議決権を行使して自己に有利な決議を成立させた場合特別利害関係人(831条1項3号)の意義
「特別の利害関係を有する者」とは、決議の結果について、株主の一般的利益とは異なる個人的・特殊な利害関係を有する者をいう。
典型例として、取締役の責任免除決議における当該取締役たる株主、競業承認決議における当該競業取締役たる株主が挙げられる。ただし、特別利害関係人の議決権行使自体は適法であり、その結果「著しく不当な決議」がされたことが要件である点に注意が必要である。
決議無効確認の訴え(830条2項)
決議の内容が法令に違反する場合に認められる。例えば、株主平等原則(109条1項)に反する決議、違法な利益配当を内容とする決議などが該当する。
決議不存在確認の訴え(830条1項)
株主総会が物理的に開催されていない場合や、一部の株主への招集通知が全くなされず決議が成立していないとみなされる場合などに認められる。不存在は極めて重大な瑕疵であるため、提訴期間の制限もなく、確認の利益のある者であれば誰でも訴えを提起できる。
判例上の不存在事由の例:
- 株主総会が全く開催されていないにもかかわらず、議事録だけ作成された場合
- 一部株主に対する招集通知の欠缺が甚だしく、総会の実体を欠くと認められる場合
裁量棄却(831条2項)
意義
株主総会の招集の手続又は決議の方法が法令・定款に違反する場合であっても、違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる(831条2項)。
趣旨
軽微な手続違反により決議の効力が覆ることは法的安定性を害するため、裁判所の裁量による棄却を認めたものである。
要件
- 招集の手続又は決議の方法の瑕疵であること(決議の内容の瑕疵は対象外)
- 違反する事実が重大でないこと
- 決議に影響を及ぼさないものであること
裁量棄却が認められた例と認められなかった例
判例 結論 理由 一部株主への招集通知漏れ(当該株主の議決権が僅少) 裁量棄却を肯定 決議結果に影響を及ぼさない 大株主への招集通知漏れ 裁量棄却を否定 議決権数が大きく決議に影響 説明義務の不十分な履行 事案による 質問の重要性と説明の程度による決議取消しの訴えの原告適格
原告となりうる者(831条1項柱書)
- 株主(決議の時点で株主である必要はなく、提訴時に株主であればよい)
- 取締役
- 清算人
- 監査役
- 執行役
「株主」の範囲に関する論点
- 決議後に株式を取得した者: 原告適格が認められる(取消しの訴えは提訴時に株主であることを要件とするため)
- 株式を譲渡した元株主: 原告適格を失う(訴えの利益が消滅する)
- 議決権制限株主: 当該決議事項について議決権を有しない株主にも原告適格が認められるかが問題となるが、831条1項は「株主」と規定するのみで議決権の有無を要件としていないため、原告適格ありと解される
試験対策での位置づけ
出題傾向
株主総会に関する論点は、司法試験・予備試験の短答式・論文式いずれでも頻出である。
- 短答式: 決議要件の数字(定足数・賛成割合)の正確な記憶が問われる。特別決議と普通決議の区別、特殊決議の要件は正確に暗記すべきである。
- 論文式: 決議の瑕疵の争い方が中心テーマとなる。特に、招集通知漏れの事案で取消しの訴えの原告適格、裁量棄却の可否が問われる。
答案の書き方のポイント
- 決議の瑕疵を論じる場合: まず瑕疵の内容を特定し、3類型のいずれに該当するかを判断する。取消事由の場合は831条1項各号の要件に当てはめ、裁量棄却(831条2項)の可否も忘れずに検討する。
- 全員出席総会: 招集手続の瑕疵がある事例で必ず検討すべき論点。全員が出席・同意しているかを丁寧に認定する。
- 特別利害関係人: 3号取消事由を論じる場合は、特別利害関係人の該当性→議決権行使→著しく不当な決議の3段階で検討する。
よくある質問(FAQ)
Q1. 普通決議の定足数を定款で完全に排除できますか?
はい、普通決議の定足数は定款で完全に排除(廃除)することができます(309条1項)。ただし、取締役の選任・解任決議については、定足数を議決権の3分の1未満にすることはできません(341条)。
Q2. 決議の内容が法令に違反する場合は「取消し」ではなく「無効」になるのですか?
原則としてそうです。決議の内容が法令に違反する場合は無効確認の訴え(830条2項)の対象となります。一方、招集手続や決議方法の法令違反は取消しの訴え(831条1項1号)の対象です。ただし、決議内容が定款に違反する場合は取消事由(831条1項2号)となる点に注意が必要です。
Q3. 取消しの訴えの提訴期間(3か月)を過ぎたらもう争えないのですか?
取消しの訴えとしては争えませんが、瑕疵が極めて重大で決議不存在と評価できる場合には、不存在確認の訴え(830条1項)として争う余地があります。不存在確認の訴えには提訴期間の制限がないためです。
Q4. 株主提案権の「10個まで」の制限はいつからですか?
令和元年(2019年)会社法改正で導入され、令和3年(2021年)3月1日に施行されています。これ以前は議案数の制限がなく、大量の議案を提出する濫用的行使が問題となっていました。
Q5. 書面決議(319条)と書面投票(311条)は何が違うのですか?
書面決議(319条)は、株主全員が書面で同意することにより総会決議があったとみなす制度であり、実際に総会を開催する必要がありません。一方、書面投票(311条)は、実際に総会を開催したうえで、出席できない株主が書面で議決権を行使する制度です。前者は全員の同意が必要ですが、後者は全員の同意は不要です。
まとめ
- 株主総会は株式会社の最高意思決定機関であり、取締役会設置会社では権限が法定事項+定款で定めた事項に限定される(295条2項)
- 招集通知は公開会社で2週間前、非公開会社で1週間前までに発送が必要
- 決議要件は普通決議(過半数/過半数)、特別決議(過半数/2/3以上)、特殊決議(頭数・議決権の加重要件)の3類型
- 決議の瑕疵は取消しの訴え(831条)・無効確認の訴え(830条2項)・不存在確認の訴え(830条1項)の3つで争う
- 取消しの訴えは形成訴訟で提訴期間3か月、無効・不存在は確認訴訟で期間制限なし
- 裁量棄却(831条2項)は手続的瑕疵が軽微で決議に影響しない場合に認められる
- 全員出席総会と書面決議は、いずれも株主全員の同意を要件とする簡易な決議方法
- 株主提案権は令和元年改正で議案数上限10個の制限が導入された