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不可罰的事後行為とは|共罰的事後行為との違いまで一気に整理

不可罰的事後行為とはをわかりやすく解説。そもそも「不可罰」とは何かという前提から、成立要件、窃盗後の財物損壊・横領物の売却などの具体例、なぜ別罪が成立しないのかの理論的根拠(法条競合か包括一罪か)、答案での書き方までを一気に整理します。

この記事のポイント

不可罰的事後行為とは、ある犯罪が既遂に達した後に、犯人がその犯罪によって生じた違法状態を維持・利用するにとどまる行為を行った場合に、その事後行為について改めて別罪として処罰しない、という罪数上の処理をいう。 典型例は、窃盗犯人が盗んだ財物を壊しても器物損壊罪で重ねて処罰されない、という場面である。

理由は単純で、事後行為による侵害が、すでに先行犯罪の刑によって評価し尽くされているからである。 二重に処罰すれば過剰処罰(二重評価の禁止)になる。したがって判断のカギは常に一つ、「新たな法益侵害が生じたか」である。新たな被害者・新たな法益が登場した瞬間に、それはもはや不可罰的事後行為ではなく別罪になる。

近時は「不可罰的事後行為」ではなく「共罰的事後行為」と呼ぶのが有力である。 事後行為も構成要件には該当しており、決して適法になるわけではなく、先行犯罪と「併せて(共に)罰せられている」にすぎないからである。この呼称の違いは単なる言葉の問題ではなく、事後行為に加担した第三者に共犯が成立するかという具体的な帰結に直結する。

一言でいえば──「不可罰的事後行為=違法状態の後始末は、先行犯罪の刑に織り込み済み」。答案では「新たな法益侵害の有無」だけを見て切り分ければよい。


そもそも「不可罰」とは何か

「不可罰的事後行為」を理解する前に、刑法でいう「不可罰」という言葉の意味を押さえておきたい。不可罰とは、文字どおり「処罰されない」ことをいうが、処罰されない理由は一つではない。理由が違えば、共犯の成否や正当防衛の可否といった結論も変わってくる。

不可罰の理由 内容 例 構成要件不該当 そもそも条文の枠に当たらない 過失による器物損壊(過失の器物損壊罪は存在しない) 違法性阻却 構成要件には該当するが違法でない 正当防衛(36条1項)、正当行為(35条) 責任阻却 違法だが非難できない 心神喪失(39条1項)、14歳未満(41条) 一身的処罰阻却事由 犯罪は成立するが政策的に刑を科さない・免除する 親族相盗例(244条1項) 条文上の限定 条文が処罰範囲を絞っている 証拠隠滅罪(104条)は「他人の刑事事件」に限られる 罪数上の吸収 犯罪は成立するが、他罪の刑に包括して評価される 不可罰的事後行為

このように、「不可罰」には行為そのものが犯罪でないタイプと、犯罪ではあるが重ねて刑を科さないタイプがある。不可罰的事後行為は後者、すなわち罪数処理のレベルの話である。ここを混同すると、後述する第三者の共犯の問題で必ずつまずく。

犯罪成立要件のどの段階で何が問題になるかを俯瞰したい場合は、刑法総論の論点マップもあわせて確認しておくとよい。


不可罰的事後行為とは(定義)

定義

不可罰的事後行為とは、先行する犯罪が既遂に達した後、犯人がその犯罪によって生じた違法状態を維持し、または利用するにとどまる行為をした場合に、当該事後行為が形式的には別罪の構成要件に該当しても、先行犯罪の刑によってその違法性が評価し尽くされているため、別罪として重ねて処罰しないことをいう。

ポイントは三つある。

  1. 先行犯罪が既に既遂に達していること(未遂段階では話が違う)
  2. 事後行為が形式的には犯罪の構成要件に該当すること(該当しないなら、そもそも論じる必要がない)
  3. それでも重ねて処罰しないこと(=罪数処理の問題)

なぜこのような処理が必要なのか

刑罰権の発動は、法益侵害の実態に見合った範囲でなければならない。窃盗罪(235条)の法定刑は「10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」であるが、この法定刑は、盗んだ犯人がその後その物を自分の物のように使い、消費し、あるいは壊すであろうことまで当然に織り込んで定められている。財物を奪われた被害者の所有権侵害は、窃取の時点ですでに完結しているからである。

にもかかわらず、盗品を壊した点をとらえて器物損壊罪(261条)を別に成立させ、併合罪として加重すれば、同一の法益侵害を二回数えたことになる。これは二重評価の禁止に反する。不可罰的事後行為の理論は、この過剰処罰を防ぐための調整装置である。

前提となる「状態犯」という理解

不可罰的事後行為は、先行犯罪が状態犯であることを前提とする。

分類 意味 例 状態犯 法益侵害の発生とともに犯罪が終了し、その後は違法状態のみが残る 窃盗罪、横領罪、傷害罪 継続犯 法益侵害が継続する限り犯罪も継続する 監禁罪、住居侵入罪(不退去) 即成犯 法益侵害の発生と同時に犯罪も違法状態も終了する 殺人罪、放火罪(既遂後)

状態犯では、既遂後も違法状態(他人の財物を犯人が事実上支配している状態)が残り続ける。この残された違法状態をどう扱っても、それは先行犯罪がすでに作り出した状態の後始末にすぎない、というのが不可罰的事後行為の発想である。


不可罰的事後行為の成立要件

答案であてはめる際は、次の四つを順に確認すればよい。

# 要件 確認する内容 1 先行犯罪の既遂 先行行為について犯罪が成立し、既遂に達しているか 2 法益・被害者の同一性 事後行為が侵害するのは、先行犯罪と同一の法益・同一の被害者か 3 新たな法益侵害の不存在 事後行為が、先行犯罪の作り出した違法状態の維持・利用の範囲にとどまるか 4 評価の包摂 事後行為の違法性が、先行犯罪の法定刑の枠内で評価し尽くされているか

要件2・3が実質的な決め手

四つ挙げたが、実際に勝負がつくのは要件2と3である。すなわち、

同一の被害者の同一の法益に対する、既に生じた侵害の延長にすぎないか。それとも、新しい被害者・新しい法益が登場したか。

この一点だけを見ればよい。新しい被害者が出てきた時点で、その被害者の法益は先行犯罪の刑では一切評価されていない。したがって別罪が立つ。逆に、被害者も法益も同じで、単に「すでに奪ったものをどうしたか」という話であれば、それは先行犯罪の刑に織り込み済みである。

要件1が欠ける場合の注意

先行行為がまだ未遂・予備の段階であれば、そもそも不可罰的事後行為の問題ではない。この場合、法益侵害を確定させたのは後の行為のほうなので、後行行為自体の犯罪の成否を独立に検討することになる。「事後行為」というためには、先行犯罪が既遂に達していることが論理的な前提となる。


具体例で理解する

例1:窃盗犯人が盗んだ財物を壊した

甲がAの自転車を盗み(窃盗罪既遂)、その後その自転車を壊した。

  • 形式的には器物損壊罪(261条)の構成要件に該当する。
  • しかし、Aの自転車に対する所有権侵害は、窃取の時点ですでに完結している。
  • 壊す行為はその侵害状態の延長にすぎず、Aに新たな法益侵害は生じていない。
  • 器物損壊罪は別罪として成立せず、窃盗罪一罪として処理される。

不可罰的事後行為の最も典型的な例であり、まずこの形を覚えるとよい。窃盗罪の成立時期や占有の考え方については窃盗罪の構成要件、判例の展開については窃盗罪の重要判例を参照されたい。

例2:窃盗犯人が盗品を売却・運搬した

甲が盗んだ物を、自ら運搬したり、有償で第三者に売却したりした。

  • 盗品等関与罪(256条)は、盗品の運搬・保管・有償譲受け・有償処分あっせん等を処罰する。
  • しかし、本犯者(=盗んだ本人)は盗品等関与罪の主体とならないというのが確立した理解である。
  • 理由は、本犯者が盗品を処分することは窃盗罪の刑ですでに評価されていること(不可罰的事後行為)に加え、自ら盗んだ物を処分しないよう期待することが困難であること(期待可能性)にも求められる。
  • → 甲には窃盗罪のみが成立する。

なお、盗品等関与罪の保護法益は被害者の追求権であり、これは窃盗の被害者Aの権利そのものである点に注意したい。被害者が同じだからこそ、不可罰的事後行為として処理できる。

例3:横領した物をさらに売却した(横領後の横領)

ここは判例が動いた重要な場面なので、正確に押さえたい。

最大判平15.4.23(最高裁大法廷判決)は、委託を受けて他人の不動産を占有する者が、これに無断で抵当権を設定してその旨の登記を了し、その後さらにこれを第三者に売却して所有権移転登記を了したという事案について、次の判断を示した。

先行する抵当権設定行為が横領罪に当たるとしても、後行の所有権移転(売却)行為について、横領罪の成立自体を肯定することができる。先行行為が存在することは、後行行為につき犯罪の成立自体を妨げる事情にはならない。

これは、後の売却行為は不可罰的事後行為にとどまり横領罪を構成しないとしていた従来の判例(最判昭31.6.26)を変更したものである。大法廷が判断したのは、まさに判例変更のためである。

ここで誤解してはならないのは、この判決が「先行行為と後行行為を重ねて二重に処罰してよい」と述べたものではない、という点である。本判決の意義は、後行行為も横領罪の構成要件に該当し、犯罪としては成立していることを正面から認めた点にある。処罰が一回で足りることは、罪数処理(包括一罪)の側で調整される。

この判例を素材とした横領罪の既遂時期・共犯の詳細は不可罰的事後行為と横領後の横領(最判平15.4.23)で扱っている。横領罪と背任罪の区別自体が問題となる場面については横領罪と背任罪の区別を参照されたい。

例4:不可罰的事前行為(共罰的事前行為)

理屈は事後行為の裏返しである。殺人予備(201条)を経て殺人既遂(199条)に至った場合、予備行為は既遂の評価に吸収され、殺人罪一罪となる。同様に、殺人未遂は既遂に吸収される。前段階の行為が後の完成した犯罪の刑で評価し尽くされるという点で、発想は完全に同じである。


別罪が成立する場合──限界を押さえる

不可罰的事後行為は、答案では「別罪が成立しない」という消極の結論を導く道具である。しかし出題者が本当に試したいのは、その限界、すなわち「どこからは別罪が立つのか」である。

判断基準は「新たな法益侵害」の一点

事案 結論 理由 盗んだ物を壊した 別罪なし 被害者・法益が同一。侵害の延長 盗んだ物を自分で売却した 別罪なし 追求権侵害は窃盗の評価に包摂 盗んだ物を、事情を知らない第三者に売りつけた 詐欺罪成立 買主という新たな被害者の財産を侵害 盗んだ物を、被害者本人に買い取らせた 詐欺罪成立 被害者に新たな財産的損害が生じる 盗んだ通帳で銀行窓口から払戻しを受けた 詐欺罪成立 銀行という別の被害者の財産を侵害 盗んだキャッシュカードでATMから現金を引き出した 窃盗罪成立 銀行が占有する現金に対する新たな侵害 横領物を売るために売買契約書を偽造した 文書偽造罪成立 文書に対する公共の信用という異質な法益 殺人後に死体を遺棄した 死体遺棄罪成立 死者に対する社会的風俗という異質な法益(併合罪)

表を眺めれば、切り分けの軸が一本であることがわかる。被害者が増えたか、法益の質が変わったか。これだけである。

特に狙われやすい二つの型

① 新たな被害者が登場する型(盗品を第三者に売りつける、盗んだ通帳で銀行から払戻しを受ける)。窃盗の被害者Aの法益は窃取時に評価済みだが、買主や銀行の財産は誰にも評価されていない。したがって詐欺罪・窃盗罪が別に成立し、先行の窃盗罪とは併合罪となる。

② 法益の質が変わる型(死体遺棄、文書偽造、放火)。財産罪の刑は財産法益の侵害しか評価していない。社会的法益や公共の信用を侵害した以上、別に評価しなければ処罰の空白が生じる。

迷ったときの発想

「この事後行為を不可罰とすると、誰かの法益が誰からも評価されないまま放置されないか」と問うとよい。放置されるなら別罪を立てるべきであり、放置されないなら不可罰的事後行為として処理してよい。


なぜ別罪が成立しないのか──理論的根拠

ここが本記事の核心である。「不可罰的事後行為だから成立しない」と結論だけ書く答案は多いが、なぜ成立しないのかを説明できるかどうかで差がつく。

二つの説明

説明 位置づけ 事後行為の構成要件該当性 帰結 法条競合(吸収関係)説 本来的一罪 該当しない/適用が排除される 事後行為はそもそも犯罪にならない 包括一罪説(共罰的事後行為) 本来的一罪 該当する(犯罪は成立する) 成立するが、先行罪と包括して一罪として処断

法条競合説は、先行犯罪の罰条が事後行為の罰条を吸収し、後者の適用が排除されると説明する。罪数論の教科書では、不可罰的事後行為は法条競合の「吸収関係」の例として挙げられることが多い。

包括一罪説は、事後行為も構成要件に該当し違法・有責であることを認めたうえで、先行犯罪と同一法益に向けられた一連の行為として全体を包括的に一罪と評価する、と説明する。この立場からは、事後行為は「不可罰」なのではなく、先行犯罪と共に罰せられていることになる。だから共罰的事後行為と呼ぶ。

罪数論全体における法条競合と包括一罪の位置づけは罪数処理の実践で体系的に整理している。

どちらを採るかで結論が変わる場面

説の対立が「言葉遣いの違い」で終わらないのは、次の二つの場面で具体的な差が出るからである。

① 事後行為に加担した第三者の共犯

事後行為だけに関与した第三者Yがいたとする。共犯が成立するには、正犯行為が構成要件に該当し違法でなければならない(制限従属性説)。

  • 法条競合説を徹底すると、事後行為はそもそも構成要件該当性を欠くことになり、Yに共犯が成立しないという説明になりやすい。
  • 包括一罪説(共罰的事後行為)なら、事後行為も構成要件に該当し違法である以上、Yには共犯が成立しうる。不可罰という効果は、先行犯罪を犯した本人に固有の罪数上の処理にすぎないからである。

前掲・最大判平15.4.23が後行行為の犯罪の成立自体を肯定したことは、この第二の理解と親和的である。「本人は重ねて処罰されないが、加担した第三者は処罰されうる」という非対称が生じる点が、この論点の面白さであり、出題価値でもある。

② 先行犯罪が処罰されない場合

先行の窃盗について親族相盗例(244条1項)により刑が免除される場合や、公訴時効が完成している場合はどうか。

  • 事後行為を「そもそも犯罪でない」と捉えれば、先行犯罪が処罰できなくても事後行為は処罰できない。
  • 事後行為を「犯罪は成立するが共に罰せられているだけ」と捉えれば、先行犯罪の刑による評価がそもそも働かない以上、事後行為を独立に処罰する余地があるという説明が可能になる。

この場面をどう処理するかは学説上争いがあり、確立した解答があるわけではない。答案では、自分が採る理論的根拠から一貫した結論を導けているかが評価される。


共罰的事後行為との違い

タイトルにも掲げた論点なので、要点を整理しておく。

不可罰的事後行為 共罰的事後行為 着目点 「罰せられない」という結果 「共に罰せられている」という構造 事後行為の構成要件該当性 否定的に語られやすい 肯定する 罪数上の位置づけ 法条競合(吸収関係)と説明されやすい 包括一罪 呼称の評価 伝統的な呼称 近時有力(より正確とされる)

指している現象そのものは同じである。どちらの語を使っても誤りではない。ただし、「不可罰」という語は「事後行為が適法になる」という誤解を招きやすく、その誤解のまま第三者の共犯を論じると破綻する。答案では「不可罰的事後行為(共罰的事後行為)」と併記しておけば、いずれの立場の採点者にも対応でき、かつ理解していることも示せる。

呼称をめぐる学説の対立の経緯や、共罰的事後行為という概念の射程に関するより立ち入った議論は、共罰的事後行為とはで詳しく扱う。


罪数処理のなかでの位置づけ

不可罰的事後行為は、罪数処理の検討順序では最初のブロックに位置する。

罪数の検討順序
1. 一罪か?
   ├── 法条競合(特別関係・補充関係・吸収関係)
   │     └── 不可罰的事後行為/不可罰的事前行為 ← ここ
   └── 包括一罪(接続犯・共罰的事後行為 など)
2. 科刑上一罪か?(観念的競合・牽連犯/54条1項)
3. いずれでもなければ併合罪(45条以下)

順序が重要なのは、先に併合罪を疑うと過大評価になるからである。まず「そもそも一罪に括れないか」を確認し、括れるものを括ってから、残った単位どうしの関係を検討する。事後行為の処理を飛ばして併合罪と書いてしまう答案は、この順序を踏んでいない。


答案での書き方

基本の型

不可罰的事後行為は、長く論じる論点ではない。配点も大きくない。以下の型で端的に処理するのが正解である。

  1. 先行犯罪の成立と既遂を認定する
  2. 事後行為が形式的に別罪の構成要件に該当することに触れる
  3. 新たな法益侵害の有無を判断する
  4. 結論(別罪不成立/別罪成立+罪数)

1行論証の例

① 別罪を否定する場合(窃盗後の器物損壊)

甲には窃盗罪(235条)が成立する。甲がその後本件自転車を損壊した行為は、
形式的には器物損壊罪(261条)の構成要件に該当するが、Aの所有権に対する
侵害は窃取の時点で既に完結しており、新たな法益侵害を伴わない。したがって
右行為は不可罰的事後行為(共罰的事後行為)として窃盗罪の評価に包摂され、
別罪を構成しない。

② 別罪を肯定する場合(盗品を第三者に売却)

甲が盗品であることを秘してBに本件時計を売却した行為は、Bという新たな
被害者の財産を侵害するものであり、先行する窃盗罪の評価に包摂されない。
よって詐欺罪(246条1項)が別に成立し、窃盗罪とは併合罪(45条前段)となる。

③ 第三者の共犯を論じる場合

事後行為も構成要件に該当し違法である以上、事後行為に加担した乙については、
共犯の従属性の観点から横領罪の共犯が成立しうる。不可罰的事後行為による
不処罰は、先行犯罪を犯した甲に固有の罪数上の処理にすぎないからである。

書くときの注意点

  • 「不可罰的事後行為だから不成立」で終わらせない。 「新たな法益侵害がないから」という理由を必ず一言添える。ここが評価の分かれ目である。
  • 先行犯罪の既遂を先に固める。 既遂に達していなければ、そもそも事後行為の問題ではない。
  • 第三者が出てきたら要注意。 事後行為だけに加担した人物が事案に登場したら、それは共犯の成否を書かせるための仕掛けである可能性が高い。
  • 異質な法益を見落とさない。 死体遺棄・文書偽造・放火が絡む事案で「事後行為だから不可罰」と書くのは重大な誤りである。
  • 罪数の結論を書き切る。 別罪が成立するなら、併合罪か科刑上一罪かまで示して締める。

よくある質問(FAQ)

Q1. 不可罰的事後行為とは、結局どういう意味ですか。

A. 犯罪が既遂になった後、犯人がその犯罪で生じた違法状態を維持・利用するだけの行為をしても、別罪として重ねて処罰しない、という罪数上の処理のことです。盗んだ物を壊しても器物損壊罪が別に成立しない、というのが典型例です。理由は、その侵害がすでに先行犯罪の刑で評価済みだからです。

Q2. 「不可罰」というのは、その行為が適法だという意味ですか。

A. いいえ。事後行為も構成要件に該当し、違法であることに変わりはありません。単に、先行犯罪の刑で一括して評価されるため、独立した刑罰を科さないだけです。この点を強調して「共罰的事後行為」と呼ぶのが近時の有力な呼び方です。

Q3. 不可罰的事後行為と共罰的事後行為は違うものですか。

A. 指している現象は同じです。違うのは着眼点で、「罰せられない」という結果に着目するのが前者、「先行犯罪と共に罰せられている」という構造に着目するのが後者です。ただし後者のほうが実態に忠実で、第三者の共犯を説明する際に破綻しません。詳しくは共罰的事後行為とはで扱います。

Q4. 別罪になるかどうかは、どう見分ければよいですか。

A. 「新たな法益侵害があるか」の一点です。被害者が増えた(盗品を第三者に売った)、法益の質が変わった(死体遺棄、文書偽造)という場合は別罪が成立します。同じ被害者の同じ法益に対する侵害の延長にとどまるなら、不可罰的事後行為です。

Q5. 横領した物をさらに売った場合、後の売却は犯罪になりませんか。

A. 最大判平15.4.23は、先行する抵当権設定行為が横領罪に当たるとしても、後行の売却行為について横領罪の成立自体は肯定できるとし、従来の判例を変更しました。ただしこれは二重処罰を認めた趣旨ではなく、後行行為も犯罪として成立していることを明らかにした点に意義があります。

Q6. 事後行為に協力した友人は処罰されますか。

A. されうる、というのが有力な理解です。共犯が成立するには正犯行為が構成要件に該当し違法であれば足りるところ(制限従属性説)、事後行為はこれを満たしています。不可罰という効果は先行犯罪を犯した本人に固有のものなので、加担した第三者にまで及ぶわけではありません。

Q7. 不可罰的事前行為というものもあるのですか。

A. あります。殺人予備が殺人既遂に、未遂が既遂に吸収される場合などです。「前段階の行為が完成した犯罪の刑で評価し尽くされる」という発想は、事後行為の場合とまったく同じです。


まとめ

不可罰的事後行為とは、犯罪が既遂に達した後、犯人がその犯罪で生じた違法状態を維持・利用するにとどまる行為について、別罪として重ねて処罰しないという罪数上の処理である。根拠は二重評価の禁止にあり、判断基準は「新たな法益侵害が生じたか」という一点に尽きる。

具体例としては、窃盗後の財物損壊、窃盗犯人自身による盗品の売却・運搬が典型である。反対に、盗品を第三者に売りつける(新たな被害者)、盗んだ通帳で銀行から払戻しを受ける(新たな被害者)、死体を遺棄する・文書を偽造する(異質な法益)といった場面では、別罪が成立し併合罪となる。

理論的根拠については、法条競合(吸収関係)と捉える説明と、包括一罪(共罰的事後行為)と捉える説明がある。後者は事後行為の構成要件該当性を肯定するため、事後行為に加担した第三者に共犯が成立しうるという帰結を無理なく導ける。横領後の横領について後行行為の犯罪の成立自体を肯定した最大判平15.4.23も、この理解と親和的である。

答案では、①先行犯罪の既遂を固め、②事後行為が形式的に別罪の構成要件に該当することに触れ、③新たな法益侵害の有無を判断し、④結論と罪数を示す、という四段階で端的に処理すればよい。長く論じる論点ではないが、「新たな法益侵害がないから」という理由を一言添えるだけで、答案の精度は目に見えて上がる。

#不可罰的事後行為 #共罰的事後行為 #刑法 #包括一罪 #法条競合 #状態犯 #罪数

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