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用語集 / 刑事訴訟法 / 自白・供述の信用性

自白・供述の信用性(秘密の暴露・被害者供述)とは

じはくきょうじゅつのしんようせい

刑事訴訟法 証拠法総論と自白

自白・供述の信用性とは、証拠能力の認められた自白や証言を、どの程度信じて事実認定の基礎にしてよいかという証明力の評価の問題です。秘密の暴露とは、捜査官が知らず自白によって初めて明らかになった事実が、後の捜査で客観的に裏付けられたことをいい、自白の信用性を強く支える事情です。

任意にされた自白で補強証拠もあるとしても、その自白が真実とは限りません。取調べの圧力がなくても、人は記憶違いや思い込みで、あるいはその場を切り抜けたくて事実と違うことを話すことがあります。証拠能力の門をくぐった後に、その供述をどこまで信じるかを決めるのが信用性の判断です。決め手になるのは、客観的な証拠と合っているか、話が不自然に変わっていないか、そして犯人しか知らないはずの事実を話していてそれが後で裏付けられたか(秘密の暴露)です。目撃者や被害者の証言も同じ目で見ます。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、手元に「自白調書」と「捜索差押調書(凶器発見)」の二通の書類を並べて見比べている。男性の検察官(札「検察官」)が吹き出し「被告人は凶器を川底に捨てたと自白し、その場所から実際に凶器が見

信用性は証拠能力とは別の問題で、自由心証の下で論理則・経験則に従って判断します

自白の任意性(319条1項)と補強の有無(319条2項)は証拠能力と有罪認定の形式的な要件で、これらを満たした自白をどの程度信じるかは証明力の問題として裁判官の自由な判断に委ねられます(318条)。自由といっても恣意は許されず、論理則・経験則に従った合理的な評価でなければなりません。証人の証言の信用性を判断する際には、供述内容の合理性や一貫性、客観的証拠や他の供述との整合性、利害関係の有無のほか、公判廷での供述態度も考慮することができます。「裁判官が,証人の証言の信用性を判断する際には,その証人の公判廷での供述態度を考慮することができる。」という肢は正しく、「その証言内容のみによって判断しなければならず,その証人の公判廷での表情や態度を考慮してはならない。」という肢は誤りです。ただし、供述態度は印象に流されやすいので、これに重きを置きすぎた判断は直感的で主観的なものになる危険があり、他の指標に比べて補充的な位置づけにとどめるべきだとした裁判例があります。信用性の評価が論理則・経験則に照らして不合理であれば、控訴審で事実誤認(382条)として是正されます。

自白の信用性は、客観的証拠との整合、自白に至る経過、内容の合理性を総合して判断します

最判平成12年2月7日は、少年らが揃って自白した後に否認に転じた事件に関する民事の損害賠償請求事件で、自白の信用性の判断は、自白を裏付ける客観的証拠の有無、自白と客観的証拠との整合性を精査し、さらに自白がどのような経過でされたか、その過程に捜査官による誤導その他虚偽供述が混入する事情がないか、自白の内容自体に不自然・不合理な点がないかを吟味して総合考慮すべきだとしました。そのうえで、任意性を失わせる事情がなくても共犯者が揃って虚偽の自白をすることはあり得ないことではないとし、客観的証拠の裏付けに乏しく内容に変遷があり一部に虚偽が含まれる自白の信用性を漫然と肯定した原審の判断過程には経験則違反があるとして破棄差し戻しました。信用性を支える最も強い事情が秘密の暴露です。捜査官が知らず自白によって初めて明らかになった事実(遺留品の隠し場所など)が、後の捜査で客観的に裏付けられれば、その自白が犯人でなければ語れない内容を含んでいることになるからです。逆に、自白の内容が捜査官のすでに知っていた事実の範囲にとどまり、客観的証拠と食い違う部分があり、供述が取調べの進行に合わせて変遷しているときは、信用性は大きく下がります。四人が強盗殺人の共同正犯として起訴され、共犯者とされた者の供述と自白の信用性をめぐって上告と差戻しが繰り返された八海事件は、自白と共犯者供述の信用性評価の難しさを示す事件として知られています。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立ち、指し棒で板書を指している。黒板の上部に「供述の信用性を見る目」と書かれ、その下に縦に「客観的証拠と合うか」「自白に至る経過に誤導はないか」「内容に不自然な点はないか」「秘密の暴露がある

被害者供述が唯一の証拠である事件では、供述の内容と行動の整合性を特に慎重に判断します

最判平成21年4月14日は、満員電車内の痴漢事件で物的証拠がなく被害者とされる女性の供述が唯一の証拠であった事案について、この種の事件では被害事実や犯人の特定について客観的証拠が得られにくく被害者供述が唯一の証拠である場合も多いうえ、思い込み等により被害申告がされて犯人と特定された場合には有効な防御を行うことが容易ではないという特質があるから、これらを考慮して特に慎重な判断が求められるとしました。そのうえで、供述する被害が執拗かつ強度であるのに車内で積極的な回避行動を執っていないこと、それと被告人に対する積極的な糾弾行為とが必ずしもそぐわないこと、いったん下車しながら車両を替えずに再び被告人のそばに乗車しているのが不自然であることなどを指摘し、供述の信用性を全面的に肯定した原判断は必要とされる慎重さを欠くとして、破棄自判して無罪を言い渡しました。被害者の供述だからといって当然に信用できるわけではなく、供述する被害の内容とその時の行動が整合しているかを、経験則に照らして具体的に検討するという判断の仕方です。

  • 客観的証拠との整合凶器・遺留品・鑑定結果・防犯カメラなどと自白の内容が合っているかを精査します
  • 自白に至る経過捜査官の誤導や虚偽供述が混入する事情がないか、どの段階でどう変わったかを見ます
  • 内容の合理性自白の内容自体に不自然・不合理な点がないかを吟味します
  • 秘密の暴露捜査官が知らず自白で初めて明らかになった事実が後に裏付けられれば、信用性を強く支えます
  • 供述態度考慮できますが補充的な位置づけにとどめます
  • 被害者供述が唯一の証拠の事件供述する被害の内容とその時の行動が整合するかを特に慎重に検討します(最判平成21年4月14日)

刑事訴訟法318条

証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。

論文ではこう使う

供述の信用性を論じる答案では、まず証拠能力(任意性・伝聞)の問題と切り分けたうえで、最判平成12年2月7日の枠組みに沿って、客観的証拠との整合、供述の経過(変遷の有無とその理由の合理性)、内容の自然さ、秘密の暴露の有無の順に事実を当てはめます。被害者供述だけの事件では、最判平成21年4月14日の視点から、供述する被害の内容とその場での行動が経験則に照らして整合するかを具体的に書きます。供述態度に触れるときは、補充的な指標であることを一言添えます。

試験ではこう問われる

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