結果的加重犯の共同正犯とは
けっかてきかじゅうはんのきょうどうせいはん
結果的加重犯の共同正犯とは、強盗や傷害といった基本となる犯罪を共謀した者が、共犯者の一人が生じさせた死傷などの重い結果についても、強盗致死傷罪や傷害致死罪の共同正犯として責任を負うことです。
二人で人を殴ると決めて殴ったところ、仲間の一発が思いがけず急所に入り、相手が亡くなってしまったとします。自分の拳が原因ではなかったとしても、殴るという危険な行為を一緒にすると決めたのは自分です。殴る行為には、相手が大けがをしたり亡くなったりする危険が初めから含まれています。そこで、基本となる犯罪を一緒にすると決めた者は、そこから生じた重い結果についても、仲間と同じ責任を負います。
基本犯を共謀した者は、共犯者の一人が生じさせた重い結果についても共同正犯になります
結果的加重犯は、基本となる犯罪から重い結果が生じたときに、刑を重くする犯罪です。判例は、重い結果について過失を要求せず、基本犯と重い結果との間に因果関係があれば足りるとしています。この立場からは、基本犯を共謀して実行した以上、そこから生じた重い結果は共謀者全員に帰責されます。最判昭和26年3月27日は、強盗を共謀して着手した後、逃走中に共犯者の一人が逮捕を免れるため警察官に切りつけて死亡させた事案で、強盗について共謀した者は全員が強盗致死罪の共同正犯の責任を負うとしました。判例は、傷害致死罪についても結果的加重犯の共同正犯を認めています。基本犯には重い結果を生じさせる危険が含まれており、その危険な行為を共同して行った者は、危険が現実になった結果についても共同で責任を負うという説明がされます。
強盗を共謀した者は、強盗の機会に共犯者の一人が生じさせた傷害について、強盗致傷罪の共同正犯になります
強盗致傷罪は、強盗の機会に人を負傷させたときに成立します。負傷させたのが共犯者の一人であり、他の者がその暴行を認識していなかったとしても、強盗を共謀した以上、全員が強盗致傷罪の共同正犯になります。負傷が共犯者の過失によって生じた場合でも変わりません。強盗の機会に共犯者の一人が被害者を負傷させた事例について、「甲が過失によってAに傷害を負わせた場合,甲及び乙に強盗致傷罪の共同正犯が成立する」という肢は正しいです。「その強盗の機会に、甲が過失によりAに傷害を負わせた。この場合、乙に強盗致傷罪の共同正犯が成立することはない」という肢は誤りです。二人で強盗に入って物色中に家人に見つかり、一人が捕まり、もう一人が逮捕を免れるため別の家人の腕を包丁で切り付けて傷害を負わせた事例について、「甲には,住居侵入罪のほか強盗致傷罪の共同正犯が成立する」という肢は正しいです。捕まった者は切り付けていませんが、強盗の機会に生じた傷害について責任を負います。12歳の長男に強盗を指示した親についても同じです。長男が現金を強取して外に出ようとした際に、腕をつかんだ被害者を振り払って負傷させたときは、親は負傷させる行為を指示していなくても、強盗罪の共同正犯にとどまらず、強盗致傷罪の共同正犯になります。
暴行・傷害を共謀した者は、死亡の結果が生じたときに傷害致死罪の共同正犯になります
二人が共同して傷害を負わせる意思で被害者に向けて発砲し、被害者が死亡した事例について、「甲及び乙には傷害致死罪の共同正犯が成立する」という肢は正しいです。どちらの弾が命中したか分からなくても、共謀に基づく行為から死亡の結果が生じているからです。暴行を共謀したところ、共犯者の一人が暴行の最中に殺意を生じて被害者を殺害した場合も、殺意のない者は死亡の結果について責任を負います。最決昭和54年4月13日は、殺意のない者に傷害致死罪の共同正犯が成立するとしました。この事例について「甲には傷害罪の共同正犯が成立するにとどまる」という肢は誤りであり、「この場合,甲には,傷害罪の共同正犯が成立する」という肢も誤りです。ただし、重い結果は、共謀に基づく行為やその機会から生じたものでなければなりません。共謀と無関係の新たな犯意に基づく行為から生じた結果については、責任を負いません。
暴行を教唆・幇助した者にも、結果的加重犯の教唆犯・幇助犯が成立します
結果的加重犯の共犯は、共同正犯に限られません。大判大正13年4月29日は、人を教唆して他人に暴行を加えさせた以上、その暴行の結果被害者が傷害を負って死亡したときは、教唆した者も傷害致死の罪責を負うとしました。暴行を教唆された者が被害者の頭部を1回殴り、被害者が転倒して死亡した事例について、「この場合,甲には傷害致死罪の教唆犯が成立する」という肢は正しいです。暴行を教唆された者が暴行の途中で傷害の故意を生じ、その後の暴行で死亡させた事例について、「その後の暴行による傷害が致命傷となってAは死亡した。甲には,傷害致死罪の教唆犯が成立する」という肢も正しいです。判例は重い結果について過失を要求しないので、教唆した者が死亡を予見していなくても結論は変わりません。「甲は同教唆の時点でAが死亡する可能性を予見していなかった。この場合、甲には、傷害致死罪の教唆犯が成立する」という肢は正しいです。傷害を幇助する意思で凶器を貸したところ正犯が被害者を死亡させた場合には、傷害致死罪の幇助犯が成立します。
責任主義から重い結果について過失を要求する見解では、各人の予見可能性を個別に検討します
学説には、責任主義の観点から、結果的加重犯の成立には重い結果について過失、すなわち予見可能性が必要であるとする見解があります。この見解からは、結果的加重犯の共同正犯が成立するためにも、重い結果を自ら生じさせていない共謀者に、その結果についての予見可能性が必要になります。暴行や強盗には死傷の結果を生じさせる危険が含まれているので、通常は予見可能性が認められますが、共犯者が凶器を隠し持っていたことを知らなかった場合のように、重い結果を予見できなかった共謀者については、基本犯の共同正犯にとどまるという結論になります。判例の立場では、このような個別の検討をせず、基本犯の共謀と因果関係があれば重い結果について共同正犯を認めます。
刑法60条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
刑法205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期拘禁刑に処する。
論文ではこう使う
論文では、強盗致死傷罪や傷害致死罪の共犯事例で使います。まず、基本犯について共謀が成立していることを認定します。次に、重い結果を生じさせた行為が、共謀に基づく行為であること、強盗致死傷罪であれば強盗の機会に行われたことを認定します。共謀と無関係の新たな犯意による行為でないかを、ここで確認します。続いて、その行為と重い結果との間の因果関係を認定します。そのうえで、結果的加重犯は基本犯に重い結果を生じさせる危険が含まれているから、基本犯を共同して実行した者は重い結果についても共同正犯の責任を負うと述べて、結論を出します。実行者に殺意があった事例では、殺意のない共謀者について、殺人罪と重なり合う傷害致死罪や強盗致死罪の限度で共同正犯になると書きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。