共同正犯と幇助犯の区別(見張り)とは
きょうどうせいはんとほうじょはんのくべつ
共同正犯と幇助犯の区別とは、犯罪に関与した者が、自己の犯罪を行った者として正犯になるのか、他人の犯罪を手助けした者として幇助犯にとどまるのかを分ける問題です。見張りのように実行行為そのものではない行為をした者について、動機、利益の帰属、役割の重要性から判断します。
友人の引っ越しを頼まれて荷物を運んだ人と、自分も一緒に住む新居へ荷物を運んだ人とでは、同じ作業をしていても立場が違います。前者は他人の用事を手伝っただけで、後者は自分の用事をしています。犯罪への関与でも、同じ見張りをした者が、自分の犯罪としてしたのか、他人の犯罪を手伝っただけなのかで、共同正犯と幇助犯に分かれます。幇助犯の刑は正犯の刑を減軽するので、この区別は刑の重さに直結します。
判例は、自己の犯罪として関与したか、他人の犯罪に加担したにとどまるかで区別します
共謀共同正犯が認められているため、実行行為を分担したかどうかでは共同正犯と幇助犯を区別できません。練馬事件の判旨に対して、共同正犯を教唆及び幇助と区別することが困難になるとの批判が向けられるのはそのためであり、「【判旨】に対しては、共同正犯を教唆及び幇助と区別することが困難になるとの批判がある」という肢は正しいです。そこで実務は、関与者が自己の犯罪を行う意思であったか、他人の犯罪に加担する意思にとどまっていたかを、客観的な事情から認定して区別しています。最決昭和57年7月16日(大麻密輸入事件)は、自ら実行することは断りながら、大麻を入手したい欲求から、知人を身代わりとして引き合わせ、密輸入した大麻の一部をもらい受ける約束で資金の一部を提供した者について、謀議を遂げたものとして共同正犯としました。実行者との間に意思の連絡があるというだけで共同正犯になるわけではなく、意思の連絡があっても幇助犯や教唆犯にとどまる場合があります。スワット事件の判旨について「およそ実行行為者とその背後者の間に意思連絡がある場合には,背後者について狭義の共犯が成立することはなく,共謀共同正犯が成立することとなる」という肢は誤りです。区別にあたっては、次の事情を総合して考えます。
- 動機自分にも犯罪を実現したい理由があったか、頼まれて断り切れなかっただけかを見ます
- 利益の帰属犯罪で得た物や金を分配する約束があったか、わずかな謝礼を受け取るだけかを見ます
- 役割の重要性計画の立案、道具や資金の提供、実行に不可欠な作業を担ったか、誰でもできる補助的な作業をしただけかを見ます
- 共謀者との関係・犯行前後の行動主導的な立場にあったか、犯行後に利益を受け取り証拠を隠すなどの行動をしたかを見ます
見張りをした者は、利益の分配や役割の重要性によって共同正犯にも幇助犯にもなります
見張りは、窃取や暴行・脅迫といった実行行為そのものではありません。それでも、強盗を一緒に計画し、利益を折半する約束で現場に同行して見張りをした者は、自分の犯罪として関与し、実行者が安心して犯行をするための重要な役割を担っているので、共同正犯になります。判例も、共謀のうえ見張りをした者を共同正犯としています。これに対し、先輩の依頼を断り切れずに実行者を車で送り、路上で周囲を見張り、強取した100万円のうち10万円を報酬として受け取ったという事例では、評価が分かれます。行為者の主観的事情を重視すれば、依頼を断り切れなかったにすぎず報酬も少額なので、他人の犯罪に加担したとして幇助犯の方向に傾きます。行為の客観面を重視すれば、送迎と見張りによって実行者が安心して強盗を完遂できたのだから、重要な役割を果たしたとして共同正犯の方向に傾きます。どちらか一つの事情で決めるのではなく、動機、利益、役割を合わせて結論を出します。
既に犯行を決意している者の決意を強めた場合は、教唆犯ではなく幇助犯になります
教唆は、まだ犯罪を決意していない者に新たに決意させることです。相手が既に特定の犯罪の実行を確定的に決意しているときは、実行を勧めても新たに決意させたことにならないので、教唆犯は成立しません。もっとも、勧めたことで決意が強固になれば、正犯の実行を心理的に容易にしたといえるので、幇助犯が成立します。大判大正6年5月25日は、助言が犯行の故意を決定させたときは教唆犯であり、既に生じている犯意を強固にしたにとどまるときは幇助犯であるとしました。「これによってその者の決意が強固になった場合、幇助犯は成立し得るが、教唆犯は成立しない」という肢は正しいです。
犯罪が終了した後に初めて関与した者は、その犯罪の共同正犯にも幇助犯にもなりません
共同正犯も幇助犯も、正犯の犯罪が終わる前に関与していることが前提です。実行者がキャッシュカードを奪って現場を離れた後に、首謀者から初めて計画を知らされてカードの運搬を引き受けた者は、奪う行為に何も寄与していません。当初からその者に運搬させる計画だったことや、運搬が計画にとって重要な役割であることは、既に終わった犯罪への関与を基礎づけません。「その運搬は重要な役割であるから、丙には盗品等運搬罪ではなく窃盗罪の共同正犯が成立する」という肢は誤りです。この者には盗品等運搬罪が成立します。犯罪の途中から関与した場合に、関与する前の行為についてまで責任を負うかは、承継的共犯の問題になります。
刑法62条1項
正犯を幇助した者は、従犯とする。
刑法63条
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
論文ではこう使う
論文では、見張り、運転手、道具の調達、受け子のように関与が小さく見える者の罪責で使います。まず、実行行為を分担していなくても共謀共同正犯が成立し得ることを示し、共同正犯と幇助犯は自己の犯罪として関与したかどうかで区別すると述べます。次に、事実を動機、利益の帰属、役割の重要性、共謀者との関係、犯行前後の行動に分けて拾います。分け前の約束があるか、その額が全体のどの程度か、その者がいなければ犯行が難しかったかは、必ず触れます。共同正犯を肯定する方向の事実と否定する方向の事実の両方を挙げてから結論を出します。共同正犯を否定したときは、正犯の実行を容易にしたことを認定して幇助犯の成立を論じます。
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