幇助の因果性と中立的行為による幇助とは
ほうじょのいんがせいとちゅうりつてきこういによるほうじょ
幇助の因果性とは、幇助行為が正犯の実行を物理的又は心理的に容易にしたという関係のことで、幇助犯が成立するために必要です。中立的行為による幇助とは、日常の取引や誰でも適法に使える道具・技術の提供が、結果として他人の犯罪を容易にした場合に幇助犯が成立するかという問題です。
リレーで走る友人に水を渡そうとコースの脇で待っていたのに、友人は気づかないまま走り抜けたとします。この場合、応援するつもりはあっても、友人の走りを少しも助けていません。幇助犯も同じで、手助けするつもりがあるだけでは足りず、その行為が実際に正犯の実行をやりやすくしたといえて初めて成立します。共犯が処罰されるのは、正犯を通じて結果の発生に関わったからです。
幇助犯が成立するには、幇助行為が正犯の実行を物理的又は心理的に容易にしたことが必要です
幇助行為が正犯の実行を容易にする経路は二つあります。一つは、渡した道具が使われる、邪魔な人を遠ざけるというように、実行そのものをやりやすくする物理的因果性です。もう一つは、励ましや見張りによって正犯が安心し、決意が強まるという心理的因果性です。どちらも認められなければ、幇助犯は成立しません。兄貴分が殺害を決意して出かけたのを察した舎弟が、反撃されそうになったら自分が殺害しようと考え、何も告げずに拳銃を持って先回りして隠れていたが、兄貴分が一人で殺害を遂げたという事例を考えます。舎弟は何もしておらず、兄貴分は舎弟がいることを知らないので、物理的にも心理的にも実行を容易にしていません。「甲には,乙の殺人罪の従犯が成立する」という肢は誤りです。同じ構造の事例について「この場合,Aには殺人既遂罪の幇助犯が成立する」という肢も誤りです。これに対し、強盗の最中に草むらへ入ろうとした住民をうそを言って追い払った者は、正犯がそのことを知らなくても、邪魔が入らないようにして実行を物理的に容易にしています。この者には強盗罪の従犯が成立します。
幇助がなくても結果は同じだったとしても、実行が容易になり結果の発生が促進されていれば足ります
単独犯の因果関係では、その行為がなければ結果は発生しなかったという関係が出発点になります。幇助犯で同じことを求めると、空き巣に入ると決めていた者に頼まれて見張りをしたが何も起きなかったという場合、見張りがいなくても空き巣は成功していたのだから因果関係がない、という結論になりかねません。しかし、判例は、幇助犯については、正犯の実行が容易になり、結果の発生が促進されたという関係があれば足りるとしています。頼まれて見張りをした者がいることで正犯が安心して実行できたのであれば、心理的に実行を容易にしたといえ、幇助犯が成立します。反対に、空き巣に入ることを知って正犯に黙って見張りをしていたが何も起きなかったという場合は、正犯は見張りの存在を知らないので安心することもなく、物理的にも心理的にも実行を容易にしていません。この場合に幇助犯は成立しません。正犯に知られずに手助けする片面的幇助が成立するのは、玄関の施錠を外しておくというように、実行を物理的に容易にした場合です。
渡した道具が使われなかった場合は、正犯の意図を維持・強化したかどうかで決まります
空き巣に使えるように合鍵を渡したが、行ってみると無施錠だったので合鍵は使われなかったという場合、合鍵は実行を物理的に容易にしていません。それでも、合鍵を受け取ったことで正犯が心強く思い、犯行の決意を維持・強化したといえれば、心理的因果性によって幇助犯が成立します。東京高判平成2年2月21日は、正犯が地下室で被害者を射殺する計画を立てていたので、銃声が漏れないよう地下室の入口に目張りをした者について、正犯が計画を変えて走行中の車内で実行した以上、目張りは現実の実行に役立たなかったとしました。そのうえで、役に立たなかった行為が幇助といえるには、その行為自体が正犯を精神的に力づけ、その意図を維持ないし強化することに役立ったことを要するとし、目張りをしたことが正犯に認識されていたとも認められないとして、目張りについて幇助の成立を否定しました。他方、別の車で正犯の車に追従した行為については、正犯がこれを認識して意図を強化したとして、幇助の成立を認めています。
誰でも適法に使える技術の提供は、具体的な侵害の認識・認容がある場合などに限って幇助になります
金物店が包丁を売る、ソフトウェアを公開するといった行為は、それ自体は適法で社会に役立つものですが、買った者や利用者が犯罪に使うこともあります。利用される一般的な可能性を認識していただけで幇助犯とすると、有用な行為まで萎縮させてしまいます。最決平成23年12月19日(Winny事件)は、適法な用途にも著作権侵害の用途にも利用できるファイル共有ソフトを公開・提供した者について、幇助犯が成立する場合を限定しました。一つは、ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識、認容しながら公開・提供し、実際にその侵害が行われた場合です。もう一つは、ソフトの性質、客観的利用状況、提供方法などに照らし、入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で、提供者もそのことを認識、認容しながら公開・提供し、実際に侵害が行われた場合です。この事件では、提供者がそこまで認識、認容していたとは認められないとして、幇助犯の故意が否定されました。
刑法62条1項
正犯を幇助した者は、従犯とする。
論文ではこう使う
論文では、手助けが結果的に役に立たなかった事例と、日常的な取引行為が犯罪に使われた事例で使います。役に立たなかった事例では、まず、幇助犯の因果性は正犯の実行を容易にし結果の発生を促進したことで足りると述べます。次に、物理的因果性を検討し、道具が使われなかった、準備した場所で実行されなかったという事実から否定します。続いて、心理的因果性を検討します。正犯が手助けを知っていたか、知ったことで安心し決意を強めたかを事実から拾い、認められれば幇助犯を肯定し、正犯が知らなかったのであれば否定します。日常的な取引行為の事例では、行為が犯罪を容易にしたことを認めたうえで、相手が具体的な犯罪に使おうとしていることを認識、認容していたかを検討して、幇助犯の成否を論じます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。