第42条過去問 3
民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。
この条文の過去問 3問
国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が提起する、衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙において選挙権を行使する権利を有することの確認を求める訴えは、公職選挙法上の選挙訴訟であって、法第5条の民衆訴訟である。
解説
本肢は誤り。行政事件訴訟法5条の民衆訴訟とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいい、客観訴訟であるから、法律に定める場合において法律に定める者に限り提起することができる(同法42条)。公職選挙法203条・204条が定める選挙の効力に関する訴訟(選挙訴訟)はその典型例であり、選挙全体の効力を客観的に争わせる制度である。これに対し、本肢の訴えは、原告である在外国民自身が次回の選挙において選挙権を行使することができる地位にあることの確認を求めるものであって、自己の法律上の利益にかかわる地位の確認を求めるものである。したがって、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起される民衆訴訟には当たらず、また公職選挙法が定める選挙訴訟の類型にも当たらない。最高裁は、在外国民の選挙権をめぐる事案において、選挙権を行使する権利を有することの確認を求める訴えを、公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条後段の実質的当事者訴訟)として適法と認めた上で、在外選挙制度の対象を比例代表選出議員の選挙に限定していた公職選挙法の規定を違憲と判断した(最大判平成17年9月14日)。よって本肢は誤りである。
地方公共団体の長が情報公開条例に基づいてした自衛隊庁舎の設計図面の公開決定に対して国が提起する、当該決定の取消しを求める訴えは、国が建物の所有者として有する固有の利益が侵害されることを理由とするものであっても、行政主体間の権限の行使に関する紛争に該当し、法第6条の機関訴訟である。
解説
本肢は誤り。行政事件訴訟法6条の機関訴訟とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいい、民衆訴訟と同様に客観訴訟であるから、法律に定める場合において法律に定める者に限り提起することができる(同法42条)。もっとも、国又は地方公共団体が訴訟当事者となる場合であっても、その紛争が公権力の主体としての権限の行使をめぐるものではなく、財産権の主体として自己の権利利益の保護救済を求めるものであるときは、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、法律上の争訟(裁判所法3条1項)に当たり、通常の抗告訴訟によることができる。本肢の訴えは、地方公共団体の長がした設計図面の公開決定により、国が当該建物の所有者として有する固有の利益(防護上の安全性等)が侵害されることを理由とするものであるから、行政主体間の権限の行使に関する紛争ではなく、機関訴訟には当たらない。最高裁も、情報公開条例に基づく自衛隊関連施設の設計図書の公開決定に対し国が取消しを求めた事案において、当該訴えは法律上の争訟に当たり、国は原告適格を有するとした(最判平成13年7月13日)。よって本肢は誤りである。
下級行政機関の事務処理に関し、上級行政機関の指揮監督権の一つとして承認等を行う権限が認められることがあるが、上級行政機関により不承認とされた場合、下級行政機関は、その不承認の取消しを求めて抗告訴訟を提起することができる。
解説
本肢は誤り。抗告訴訟は行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟であり(行政事件訴訟法3条1項)、その中心である取消訴訟の対象たる処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。上級行政機関が指揮監督権の一環として下級行政機関の事務処理につき行う承認・不承認は、行政主体内部における意思形成過程の行為にすぎず、国民の権利義務に直接の法的効果を及ぼすものではないから、処分性を欠く。加えて、行政機関は権利義務の帰属主体たる法人格を有さず、その不服は行政組織内部における権限の分配をめぐる争いにとどまるから、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争とはいえず、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たらない。本肢のような上級行政機関と下級行政機関との間の争いは、まさに「国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟」として機関訴訟の定義に該当するところ(行政事件訴訟法6条)、機関訴訟は法律に定める場合において法律に定める者に限り提起することができるにすぎず(同法42条)、地方自治法251条の5が定める国の関与に関する訴えなどがその例である。以上より、下級行政機関が上級行政機関の不承認の取消しを求めて抗告訴訟を提起することはできない。よって本肢は誤りである。