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用語集 / 刑法 / 窃取と既遂時期

窃取と既遂時期(実行の着手・不動産侵奪を含む)とは

せっしゅときすいじき

刑法 財産犯(窃盗・強盗)

窃取とは、占有者の意思に反して財物の占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことをいいます。占有を侵害する現実的な危険のある行為を始めた時点で実行の着手が認められ、占有を取得した時点で既遂になります。

万引きをしようと商品を上着のポケットに入れた人は、店を出る前に捕まっても窃盗の既遂です。一方、空き巣に入ろうと玄関に足を踏み入れただけの人は、まだ窃盗の未遂にもなりません。窃盗罪は他人の占有を自分に移す罪なので、占有を奪う危険が現実になった時点で着手が認められ、占有が実際に移った時点で既遂になります。物の大きさや置かれた場所によって、その時点は変わります。

深夜の店舗の中の場面。暗い店内を懐中電灯で照らす男性(札「甲」)が、電気器具の並ぶ棚の前を通り過ぎて、奥のレジに向かって歩いている。床に男性の足取りを示す点線の矢印があり、入口のところに札「侵入しただけ:着手なし」、レジの手前に札「レジに近

窃取は、占有者の意思に反して財物の占有を自己又は第三者に移すことをいいます

窃取とは、占有者の意思に反してその占有を侵害し、財物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。ひそかに行う必要はなく、ひったくりのように公然と行っても窃取に当たります。占有者の意思に反することが要件なので、占有者が容認している方法で取得した物は窃取したことになりません。最決平成21年6月29日は、パチスロ機を針金で誤作動させてメダルを取得する共犯者の隣で、その犯行を隠す役割を担いながら通常の方法で遊戯した者について、自ら取得したメダルは「被害店舗が容認している通常の遊戯方法により取得したもの」であるから窃盗罪は成立しないとしました。「実行者の隣で通常の遊戯方法によりメダルを取得した場合,そのメダルを被害品とする窃盗罪は成立しない」という肢は正しいです。共犯者が不正な方法で取得したメダルについては、窃盗罪の共同正犯が成立します。

実行の着手は、財物の占有を侵害する現実的な危険のある行為を始めた時点で認められます

住居に侵入して盗む場合、住居に入っただけでは着手にならず、財物を物色する行為か、これに密接な行為を始めた時点で着手が認められます。金庫の現金を盗む目的で無施錠のドアから玄関に入ったところで発見された事例について「甲には窃盗未遂罪が成立する」という肢は誤りです。最決昭和40年3月9日は、深夜に店舗に侵入し、懐中電灯で照らして電気器具類があると分かったが、なるべく金を取りたいのでタバコ売場の方に行きかけた時点で、窃盗の着手を認めました。「現金がある精算レジに近づいた。この場合,未だレジ内を物色していないので,窃盗罪の実行の着手は認められない」という肢は誤りで、電器店でレジの前に至ったところで発見された事例について「甲には窃盗罪の実行の着手が認められる」という肢は正しいです。被害者に電話でうそを述べ、金融庁職員を装って被害者宅を訪れ、キャッシュカード入りの封筒を偽の封筒とすり替えて取る計画の事案でも、判例は、すり替え役が被害者宅付近の路上まで赴いた時点で着手を認めています(最決令和4年2月14日)。うそが述べられた後は、被害者が訪問者の指示に従って封筒から注意をそらし、その隙に占有を侵害される危険性が明らかに認められるからです。土蔵や倉庫のように財物を保管するためだけの建物では、中に入れば直ちに財物を取れるので、侵入に取りかかった時点で着手が認められます。すりについては、判例は、財布をすり取ろうとしてポケットの外側に触れた時点で着手を認めています(最決昭和29年5月6日)。「財布に触っていないので,窃盗罪の実行の着手は認められない」という肢は誤りです。金品があるかどうかを探るだけの段階ではなく、取るために手を差し伸べているからです。電話線を盗むために電柱に登って切断を始めた時点、盗むために不正に入手したスペアキーで自動車の運転席のドアを開けた時点、不正に取得したキャッシュカードを現金自動預払機に挿入して暗証番号を入力した時点でも、着手が認められます。暗証番号の入力を誤って払戻しを受けられなかった場合でも着手は否定されません。

  • 住居への侵入窃盗物色行為、又は金品のある場所へ近づく行為の時点。玄関に入っただけでは足りない
  • 土蔵・倉庫侵入に取りかかった時点
  • すりすり取ろうとしてポケットの外側に触れた時点
  • 電話線切断を始めた時点
  • 自動車盗むためにドアを開けた時点
  • 現金自動預払機カードを挿入して暗証番号を入力した時点
  • キャッシュカードのすり替えうそが述べられた後、すり替え役が被害者宅付近の路上まで赴いた時点

既遂は、財物の占有を取得した時点で認められ、物の大きさと場所によって時点が変わります

窃盗罪は、行為者が財物を自己の事実上の支配に移した時点で既遂になります。財物を安全な場所まで運び去ることや、自由に処分できる状態にすることまでは必要ありません。小さな物は、ポケットやかばんに入れた時点で占有を取得したといえるので、店内や被害者方から出る前でも既遂になります。大きな物や重い物は、その場に置いたままでは管理者の支配を排除できないので、屋外に運び出した時点や、容易に持ち出せる状態にした時点で既遂になります。東京高判平成4年10月28日は、スーパーマーケットで買物かごに入れた商品35点を、レジを通さずにレジの外側に持ち出した時点で既遂を認めました。レジの外側に出れば、代金を支払った買物客と「外観上区別がつかなくなり」、商品を取得する蓋然性が飛躍的に増大するという理由です。既遂の後に取り押さえられて財物を取り返されても、既遂であることは変わりません。事後強盗罪の既遂・未遂は窃盗の既遂・未遂で決まるので、この時点の判断がそのまま影響します。

スーパーマーケットのレジ付近を上から見た見取図ふうの場面。売場、レジの列、その外側の袋詰め台(札「サッカー台」)が描かれ、買物かごを持った男性(札「甲」)がレジの脇を通り抜けて袋詰め台の前に立っている。レジの列に沿って太い線が引かれ、線の売

不動産侵奪罪は、他人の不動産の占有を排除して自己の占有を設定した時点で成立します

不動産は持ち去ることができないので、窃盗罪ではなく不動産侵奪罪(235条の2)の客体になります。侵奪とは、不法領得の意思をもって、不動産に対する他人の占有を排除し、これを自己又は第三者の占有に移すことをいいます。隣の工場の敷地の一部にまたがって無断で鉄筋コンクリート製の倉庫を建てた事例では、不動産侵奪罪が成立します。すでに土地を使っている者でも、占有の態様を質的に変えれば侵奪に当たります。最決平成12年12月15日は、直ちに撤去できる屋台営業だけを認められていた土地に、解体・撤去が格段に困難な本格的店舗を構築した事案で、所有者の占有を「新たに排除した」として侵奪を認めました。最決平成11年12月9日は、所有者が事実上廃業して土地を現実に管理することが困難になっていても占有を喪失していたとはいえないとし、利用権限を超えて大量の廃棄物を堆積させ、容易に原状回復できないようにした行為に不動産侵奪罪の成立を認めました。不動産侵奪罪にも未遂を罰する規定があり、親族間の犯罪に関する特例も適用されます。

刑法235条

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

論文ではこう使う

論文では、着手時期と既遂時期を、事後強盗罪や共犯の離脱、中止犯の前提として認定することが多くなります。着手については、実行の着手の一般的な基準(結果発生の現実的危険性、構成要件該当行為との密接性)を示したうえで、財物がどこに保管されていたか、行為者がどこまで近づき何をしたか、建物の構造と用途を拾って、占有侵害の危険が現実化したかを評価します。既遂については、占有を取得した時点という基準を示し、財物の大きさ・重さ、持ち出しの容易さ、被害者や管理者の支配の強さ、店舗であればレジや出入口との位置関係から、管理者の支配を排除して自己の支配を確立したといえるかを当てはめます。現金を狙って金庫に向かった、商品をかばんに入れた、といった一つ一つの動作が、物色か、占有の取得かを言葉にして区別すると、未遂と既遂の結論を明確に示せます。

試験ではこう問われる

「窃取と既遂時期」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型7件と関係する過去問の肢12本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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