1この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
この条文の過去問 32問
正しい。硬性憲法とは通常の立法手続より加重された手続でなければ改正できない憲法をいい、96条1項前段が各議院の総議員の3分の2以上の賛成による発議を求めていることが、その根拠になる。
硬性憲法とは、通常の法律の改正手続よりも加重された手続によらなければ改正できない憲法をいい、法律と同一の手続で改正できる軟性憲法と対になる概念である。したがって、ある憲法が硬性憲法に当たる根拠は、その改正手続が通常の立法手続より厳格に定められている点に求められる。bが引く96条1項前段は、憲法改正について各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議を要求する。通常の法律の議決は、総議員の3分の1以上の出席を定足数とした上で出席議員の過半数で足りる(56条1項・2項)から、96条1項前段の要件がこれより著しく加重されていることは明らかである。加えて同項は、国会の発議の後にさらに国民投票における過半数の承認を要求しており、この点でも法律の制定手続とは質的に異なる。憲法によって作られた立法権が根本法である憲法を法律と同じ手続で変えられるのは筋が通らないから、改正手続を加重して憲法の安定性を守るのである。bは日本国憲法の改正手続が加重されていることを条文上示しており、aの結論を直接に基礎づける。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
| 物差し | 分類 | 意味 |
|---|---|---|
| 内容 | 固有の意味の憲法 | 国家の統治の在り方を定めた基本法。全ての国家が持つ |
| 内容 | 立憲的意味(近代的意味)の憲法 | 権力を制限して権利を保障する思想に基づく憲法。近代以降の憲法 |
| 存在形式 | 形式的意味の憲法 | 憲法という名称を与えられた成文の法典。内容は問わない |
| 存在形式 | 実質的意味の憲法 | 存在形式を問わず内容的に憲法と観念されるもの。国会法や公職選挙法の規定も含む |
| 改正手続 | 硬性憲法/軟性憲法 | 通常の立法より加重された手続で改正するのが硬性憲法(96条1項)、法律と同じ手続で改正できるのが軟性憲法 |
正しい。憲法改正原案の発議には衆議院で議員100人以上、参議院で議員50人以上の賛成を要し(国会法68条の2)、法律案の発議の衆議院20人以上、参議院10人以上より加重されている。
憲法96条1項は、憲法の改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定める。この国会の発議に先立って、議員が憲法改正原案を発議する際の要件は国会法が定めており、同法68条の2は、議員が憲法改正原案を発議するには、56条1項の規定にかかわらず、衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要するとする。これに対して通常の法律案の発議は、56条1項が衆議院では議員20人以上、参議院では議員10人以上の賛成を要するとし、予算を伴う法律案でも衆議院50人以上、参議院20人以上にとどまる。憲法は国の最高法規であり、その改正は主権者である国民の承認を要する重い手続であるから、原案の提出の段階から議院内の相当広い支持を求め、軽々な改正提案を抑える趣旨である。同じ発議という語でも、国会法68条の2の発議は議員が原案を提出することを指し、96条1項の発議は国民に提案する改正案を国会が決定することを指す。本肢は国会法の要件と法律案との比較を正確に述べており、正しい。

議員が日本国憲法の改正案(以下「憲法改正案」という。)の原案(以下「憲法改正原案」という。)を発議するには、第五十六条第一項の規定にかかわらず、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要する。
| 段階 | 要件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 憲法改正原案の発議 | 衆議院で議員100人以上、参議院で議員50人以上の賛成(法律案は衆20人・参10人) | 国会法68条の2 |
| 国会の発議 | 各議院の総議員の3分の2以上の賛成 | 憲法96条1項 |
| 国民の承認 | 特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票で、投票総数(賛成+反対)の2分の1を超える賛成。最低投票率の定めはない | 憲法96条1項、国民投票法126条1項 |
| 公布 | 天皇が国民の名で直ちに公布 | 憲法96条2項 |
| 国民投票の無効訴訟 | 投票人は中央選挙管理会を被告として告示の日から30日以内に東京高等裁判所に提起 | 国民投票法127条 |
誤り。違うのは末尾の「最高裁判所にのみ訴訟を提起することができる」の部分である。国民投票に関し異議がある投票人は、東京高等裁判所に訴訟を提起する(国民投票法127条)。
憲法96条1項後段は、憲法改正の承認には特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とすると定めており、承認の方式についての本肢の前半は条文どおりである。しかし国民投票の効力を争う訴訟について、日本国憲法の改正手続に関する法律127条は、国民投票に関し異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、投票結果の告示の日から30日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができると定める。第一審の管轄裁判所は東京高等裁判所であり、被告は中央選挙管理会、出訴期間は30日という短期である。第一審を高等裁判所とするのは、公職選挙法が選挙の効力に関する訴訟について高等裁判所を第一審とするのと同じく、争訟の迅速な解決を図る趣旨であって、最高裁判所を第一審とし、かつ唯一の裁判所とするものではない。憲法81条も最高裁判所を違憲審査権をもつ終審裁判所と定めるにとどまり、特定の争訟について最高裁判所を第一審とすることまで求めていない。本肢は、東京高等裁判所に提起すべき訴訟を最高裁判所にのみ提起できるとする点で法律の定めと異なる。

国民投票に関し異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、第九十八条第二項の規定による告示の日から三十日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができる。
| 段階 | 要件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 憲法改正原案の発議 | 衆議院で議員100人以上、参議院で議員50人以上の賛成(法律案は衆20人・参10人) | 国会法68条の2 |
| 国会の発議 | 各議院の総議員の3分の2以上の賛成 | 憲法96条1項 |
| 国民の承認 | 特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票で、投票総数(賛成+反対)の2分の1を超える賛成。最低投票率の定めはない | 憲法96条1項、国民投票法126条1項 |
| 公布 | 天皇が国民の名で直ちに公布 | 憲法96条2項 |
| 国民投票の無効訴訟 | 投票人は中央選挙管理会を被告として告示の日から30日以内に東京高等裁判所に提起 | 国民投票法127条 |
正しい。国会法68条の2は、憲法改正原案の発議に衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要するとしており、法律案の発議(衆議院20人以上、参議院10人以上)より加重されている。
憲法96条1項は、憲法の改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定める。これに先立って議員が憲法改正原案を提出する段階の要件は国会法が定めており、同法68条の2は、議員が憲法改正原案を発議するには衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要するとしている。これに対し通常の法律案の発議については、国会法56条1項が衆議院では議員20人以上、参議院では議員10人以上の賛成を要するものとし、予算を伴う法律案でも衆議院50人以上、参議院20人以上とするにとどまる。憲法改正原案の発議に必要な賛成議員数は、法律案よりはっきり加重されている。憲法が国の最高法規であり(98条1項)、その改正が主権者である国民の承認を要する重い手続であることから、原案の提出段階から相当程度広い議院内の支持を求め、軽々な改正提案を抑える趣旨である。

議員が日本国憲法の改正案(以下「憲法改正案」という。)の原案(以下「憲法改正原案」という。)を発議するには、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要する。
- 原案の発議:国会法68条の2により、衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要する。関連する事項ごとに区分して行う
- 国会の発議:各議院の総議員の3分の2以上の賛成(96条1項)。国民に提案する改正案を国会が決定すること
- 国民の承認:特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票で、投票総数(賛成+反対)の2分の1を超える賛成。最低投票率の定めはない
- 国民投票の争訟:異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、告示の日から30日以内に東京高等裁判所に訴訟を提起できる(国民投票法127条)
- 公布:天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)
誤り。違うのは「最高裁判所にのみ訴訟を提起することができる」の部分である。国民投票法127条は、国民投票に関し異議がある投票人は中央選挙管理会を被告として東京高等裁判所に訴訟を提起できると定める。
憲法96条1項後段は、憲法改正の承認について、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票においてその過半数の賛成を必要とすると定めており、承認の方式に関する前段は正しい。しかし国民投票の効力を争う訴訟の管轄に関する後段が誤りである。日本国憲法の改正手続に関する法律127条は、国民投票に関し異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、結果の告示の日から30日以内に東京高等裁判所に訴訟を提起することができると定める。被告は中央選挙管理会であり、第一審の管轄裁判所は東京高等裁判所であって、しかも短い出訴期間が置かれている。第一審を高等裁判所とするのは、公職選挙法が選挙の効力に関する訴訟について高等裁判所を第一審とするのと同じく、争訟の迅速な解決と専門的な処理を図る趣旨であり、最高裁判所を第一審かつ唯一の裁判所とするものではない。憲法81条も最高裁判所を終審裁判所と定めるにとどまり、特定の争訟について最高裁判所を第一審とすることを求めてはいない。

国民投票に関し異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、第九十八条第二項の規定による告示の日から三十日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができる。
- 原案の発議:国会法68条の2により、衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要する。関連する事項ごとに区分して行う
- 国会の発議:各議院の総議員の3分の2以上の賛成(96条1項)。国民に提案する改正案を国会が決定すること
- 国民の承認:特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票で、投票総数(賛成+反対)の2分の1を超える賛成。最低投票率の定めはない
- 国民投票の争訟:異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、告示の日から30日以内に東京高等裁判所に訴訟を提起できる(国民投票法127条)
- 公布:天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)
誤り。違うのは「憲法上この点の例外は定められていない」の部分である。59条1項は「この憲法に特別の定のある場合を除いては」と留保しており、95条の特別法の住民投票が国会単独立法の原則の例外である。
国会単独立法の原則は、国の立法が国会以外の機関の関与を要することなく国会の議決のみで成立するという原則であり、59条1項が、法律案はこの憲法に特別の定めのある場合を除いては両議院で可決したとき法律となると定めてこれを表している。しかし同項の文言が示すとおり、憲法自身が例外を予定している。95条は、一の地方公共団体のみに適用される特別法は、その地方公共団体の住民の投票で過半数の同意を得なければ国会はこれを制定することができないと定め、住民投票という国会外の意思表示を法律の成立要件としており、特定の地域を狙い撃ちにする立法から地方自治を守るための、国会単独立法の原則に対する憲法上の例外である。憲法改正に国民の承認を求める96条1項を併せて挙げる見解もあるが、これは法律の制定ではない。他方で、天皇による法律の公布(7条1号)は成立後の効力発生手続であって成立要件ではなく、内閣の法律案提出も国会の審議と議決を拘束しないから、いずれも原則の例外には当たらない。肢は憲法上の例外がないとする点で59条1項の文言と95条の存在に反する。

法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。/一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
- ["国会中心立法の原則", "国の立法は、憲法に特別の定めがある場合を除き、常に国会が行う。例外は議院規則(58条2項)と最高裁判所規則(77条1項)"]
- ["国会単独立法の原則", "国会の立法は、国会以外の機関の関与を必要とせずに成立する(59条1項)。例外は一の地方公共団体のみに適用される特別法の住民投票(95条)"]
- ["例外にならないもの", "天皇の公布(7条1号)は成立後の行為、内閣の法律案提出は立法の準備行為であり、いずれも原則に反しない"]
- ["委任立法", "41条から白紙委任は許されず、法律による委任は個別具体的でなければならない"]
正しい。96条2項の「国民の名で」は、改正を最終的に決定したのが主権者である国民であり、改正権が国民に帰属することを公布の形式面でも明らかにする趣旨である。
96条2項は、憲法改正について国民の承認を経たときは、天皇は国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちにこれを公布すると定める。改正憲法の公布は7条1号に列挙された天皇の国事行為の一つであり、内閣の助言と承認に基づいて行われる(3条)から、天皇に改正の内容や成否を左右する実質的な決定権はなく、公布は既に成立した改正の内容を国民に周知させる形式的・儀礼的な行為にとどまる。その上で「国民の名で」という文言が置かれているのは、当該改正を最終的に決定したのが主権者たる国民であること、すなわち憲法改正権の帰属主体が国民にあることを、公布の形式面においても明示する趣旨だと解されている。96条1項が国会の発議に加えて国民投票による承認を要求するのはその制度的な現れであり、2項の「国民の名で」はその承認主体が国民であった事実を確認するものである。発議権を天皇に専属させた明治憲法73条との対比で、国民主権原理の徹底を示す文言である。

憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
- 原案の発議:衆議院100人以上・参議院50人以上の賛成(国会法68条の2)。内容において関連する事項ごとに区分する
- 国会の発議:各議院の総議員の3分の2以上の賛成(96条1項前段)。総議員は法定の議員数と解するのが通説
- 国民の承認:特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票で過半数の賛成(96条1項後段)。選挙は衆議院議員総選挙に限られず、直近という限定もない。現行法は発議から60日以後180日以内に国民投票を行う
- 公布:天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)。国民の名では改正権者が国民であることを明らかにする趣旨
誤り。違うのは「特別の国民投票又は直近の衆議院議員総選挙の際に行われる投票において」の部分である。96条1項は国会の定める選挙の際の投票と定めており、衆議院議員総選挙にも直近にも限定していない。
96条1項は、憲法の改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならず、この承認には特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とすると定める。発議と承認の骨格と過半数の要件は肢のとおりである。しかし、承認のための投票の機会について、条文は特別の国民投票と国会の定める選挙の際に行われる投票という二つの方式を並列的に掲げており、後者の国会の定める選挙は衆議院議員総選挙に限定されていない。参議院議員通常選挙の際に行うことも文言上当然に許され、どの選挙に併せて行うかは国会の定めに委ねられている。しかも条文には直近のという時間的な限定も存在しない。肢は投票の機会を直近の衆議院議員総選挙の際の投票に限る趣旨で述べており、この点で96条1項後段の定めに反する。なお、日本国憲法の改正手続に関する法律2条1項は発議から60日以後180日以内に国民投票を行うものとし、選挙と同時に実施する方式は採用していない。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- 原案の発議:衆議院100人以上・参議院50人以上の賛成(国会法68条の2)。内容において関連する事項ごとに区分する
- 国会の発議:各議院の総議員の3分の2以上の賛成(96条1項前段)。総議員は法定の議員数と解するのが通説
- 国民の承認:特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票で過半数の賛成(96条1項後段)。選挙は衆議院議員総選挙に限られず、直近という限定もない。現行法は発議から60日以後180日以内に国民投票を行う
- 公布:天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)。国民の名では改正権者が国民であることを明らかにする趣旨
正しい。緊急集会は国会の権能を代行するから法律や予算など国会の権能に属する事項を扱えるが、両議院の議決を要し緊急の必要にも当たらない憲法改正の発議は行えない。
参議院の緊急集会は、衆議院が存在しない期間に国会の機能を暫定的に代行する制度であり、法律の制定や予算の議決など、原則として国会の権能に属する事項を処理できると解されている。もっともその権能には限界がある。第一に、扱えるのは内閣が緊急集会を求めるに際して示した案件とこれに関連する事項に限られる(国会法101条)。第二に、参議院だけで構成される合議体である以上、両議院の議決を不可欠とする行為や、暫定的措置という性格に反する行為はできない。96条1項は憲法改正の発議に各議院の総議員の3分の2以上の賛成を要求しており、衆議院の議決を欠いては発議が成立しないから、衆議院が不存在の状態で開かれる緊急集会で憲法改正を発議することはできない。加えて、憲法改正の発議は国に緊急の必要があるときに当たらず、緊急集会の措置は衆議院の同意がなければ効力を失う臨時のものだから(54条3項)、最高法規の改正という恒久的な効果をもたらす行為はその権能になじまない。同じ理由で内閣総理大臣の指名も緊急集会では行えないと解されている。肢はこの理解のとおりである。

前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
- ["時期", "衆議院の解散後、特別会が召集されるまでの間"]
- ["求める者", "内閣のみ。議員の側から開かせることはできない(臨時会の召集要求は総議員の4分の1以上・53条後段)"]
- ["扱える事項", "国会の権能に属する事項を代行するが、内閣が示した案件とその関連事項に限る(国会法101条)。憲法改正の発議や内閣総理大臣の指名はできない"]
- ["議員の特権", "緊急集会中の議員にも不逮捕特権(国会法100条)と免責特権(51条)が及ぶ"]
- ["措置の効力", "臨時のもので、次の国会開会後10日以内に衆議院の同意がなければ将来に向かって効力を失う(54条3項)"]
誤り。違うのは「ドイツ連邦共和国基本法のように,憲法改正が容易でこれまで繰り返し改正が成立してきた憲法のことをいう」の部分である。硬性か軟性かは改正手続が通常の立法手続より加重されているかで決まり、ドイツ基本法は硬性憲法である。
硬性憲法と軟性憲法の区別は、憲法改正の手続が通常の法律の制定改廃の手続と比べて加重されているか否かという法形式上の基準による。改正手続が加重されている憲法が硬性憲法であり、通常の立法手続と同一の手続で改正できる憲法が軟性憲法である。憲法によって創設された立法権が根本法である憲法を法律と同じ手続で変更できるのは筋が通らないから、改正手続は加重される。日本国憲法は96条1項で各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と国民投票における過半数の賛成を要求しており、法律の議決要件(56条2項)より著しく加重されているから硬性憲法に当たる。前段は正しい。しかしドイツ連邦共和国基本法を軟性憲法の例とする点が誤りである。同基本法79条2項は、改正法律の可決に連邦議会の構成員の3分の2及び連邦参議院の票数の3分の2の同意を要求し、通常の法律の議決手続より重い要件を課しているから、同基本法は典型的な硬性憲法である。多数回改正されてきたことは政治的な事情の問題にすぎず、改正回数が多いことで硬性憲法が軟性憲法になるわけではない。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。
| 区別の物差し | 概念 | 内容 |
|---|---|---|
| 内容による区別 | 固有の意味の憲法 | 国家の統治の在り方を定めた基本法。全ての国家が持つ |
| 立憲的意味の憲法 | 権力を制限し権利を保障する思想に基づく。近代以降の憲法 | |
| 存在形式による区別 | 形式的意味の憲法 | 憲法という名称を与えられた成文の法典。内容は問わない |
| 実質的意味の憲法 | 存在形式を問わず内容的に憲法と観念されるもの。国会法や公職選挙法の規定も含む | |
| 改正手続による区別 | 硬性憲法/軟性憲法 | 通常の立法手続より加重された手続を要するのが硬性(日本国憲法96条、ドイツ基本法79条)。改正の回数とは無関係 |
誤り。違うのは「ドイツ連邦共和国基本法のように,憲法改正が容易でこれまで繰り返し改正が成立してきた憲法」の部分である。硬性と軟性は改正手続が通常の立法手続より加重されているかどうかによる区別であり、改正の回数とは関係がない。
硬性憲法と軟性憲法の区別は、憲法改正の手続が通常の法律の制定改廃の手続と比べて加重されているか否かという法形式上の基準による。改正手続が加重されている憲法が硬性憲法であり、通常の立法手続と同じ手続で改正できる憲法が軟性憲法である。憲法によって作られた立法権が根本法である憲法を法律と同じ手続で変更できるのは筋が通らないから、改正手続は加重されるという理屈である。日本国憲法は96条1項で総議員の3分の2以上の賛成による発議と国民投票を要求し、法律の議決要件より著しく重いから硬性憲法であり、本肢の前段は正しい。しかしドイツ連邦共和国基本法は、改正法律の可決に連邦議会の構成員の3分の2と連邦参議院の票数の3分の2の同意を要求しており、通常の法律の議決手続より重い要件を課す硬性憲法である。同基本法が多数回改正されてきたことは改正頻度の問題にすぎず、改正回数が多いことで硬性憲法が軟性憲法になるわけではない。本肢は同基本法を軟性憲法の例とする点で誤っている。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
| 区別の物差し | 概念 | 意味 |
|---|---|---|
| 内容 | 固有の意味の憲法 | 国家の統治の基本を定めた法。時代を問わず全ての国家が持つ |
| 内容 | 立憲的意味の憲法 | 国家権力を制限して国民の権利を保障する思想に基づく憲法。近代以降の概念 |
| 存在形式 | 形式的意味の憲法 | 憲法という名称を与えられた成文の法典。内容を問わない |
| 存在形式 | 実質的意味の憲法 | 存在形式を問わず、内容的に憲法と観念されるもの。国会法や公職選挙法も含む |
| 改正手続 | 硬性憲法/軟性憲法 | 通常の法律より改正手続が加重されているか否か。改正の回数とは無関係 |
正しい。96条1項の発議は、原案を提出するという通常の議案の発議とは異なり、国民に提案すべき憲法改正案を各議院の総議員の3分の2以上の賛成によって国会が決定することを意味する。
96条1項は、憲法改正について各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定める。ここにいう発議は、通常の議案について用いられる発議、すなわち国会法56条1項が議員による議案の提出について定めるような原案の提出を意味するものではない。憲法改正手続における発議とは、国民に提案すべき憲法改正案を国会が国家機関としての意思として確定する行為、すなわち改正案の内容そのものを国会が決定することをいう。この決定は加重された多数の賛成を得て初めて成立するもので、審議の端緒にすぎない原案提出とは法的性質を異にする。国会法上も、憲法改正原案の発議には衆議院議員100人以上、参議院議員50人以上の賛成を要するものとされ(国会法68条の2)、これに続く両議院の議決による改正案の確定が96条1項の発議に当たると整理されており、原案の提出と憲法上の発議とが段階を異にすることは条文上も裏づけられる。本肢はこの理解に合致する。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- ["原案の発議", "国会法68条の2により、衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要する。内容において関連する事項ごとに区分して行う"]
- ["国会の発議", "各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国民に提案する改正案を国会が決定する。衆議院の優越はない"]
- ["国民の承認", "特別の国民投票または国会の定める選挙の際に行われる投票で、有効投票総数(賛成+反対)の過半数の賛成。最低投票率の定めはない"]
- ["公布", "天皇が、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)"]
正しい。96条1項の「その過半数」の母数には有権者総数、投票総数、有効投票総数という複数の解釈がありえたところ、日本国憲法の改正手続に関する法律は、賛成の投票の数と反対の投票の数の合計の2分の1を超える賛成、すなわち有効投票総数の過半数と定めた。
96条1項後段は、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票においてその過半数の賛成を必要とすると定めるが、その過半数の母数を何に求めるかは条文上明らかでなく、有権者総数の過半数、無効投票を含む投票総数の過半数、有効投票総数の過半数という複数の解釈がありえた。有権者総数を母数にすれば棄権が事実上反対と同じ効果を持って改正の成立が著しく困難になり、投票総数を母数にすれば無効票が反対票として働くなど、いずれの解釈にも一長一短があり、憲法の文言だけでは決着がつかないため、その具体化は法律に委ねられていると解された。これを受けて制定された日本国憲法の改正手続に関する法律は、憲法改正案に対する賛成の投票の数が、賛成の投票の数と反対の投票の数とを合計した数の2分の1を超えた場合に国民の承認があったものとすると定め(同法126条1項、98条2項)、有効投票総数の過半数という解釈を採用した。白票や無効票は母数に入らない。本肢は、憲法上複数の解釈がありえた中から法律によって有効投票総数の過半数と定められたという経緯を正確に述べている。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- ["原案の発議", "国会法68条の2により、衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要する。内容において関連する事項ごとに区分して行う"]
- ["国会の発議", "各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国民に提案する改正案を国会が決定する。衆議院の優越はない"]
- ["国民の承認", "特別の国民投票または国会の定める選挙の際に行われる投票で、有効投票総数(賛成+反対)の過半数の賛成。最低投票率の定めはない"]
- ["公布", "天皇が、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)"]
正しい。条約が憲法に優位するとすれば、憲法改正手続より簡易な承認手続で成立した条約によって憲法が実質的に改正されることになり、硬性憲法の建前と国民主権に反するから、改正手続の厳格さは憲法優位説の根拠になる。
憲法優位説の代表的な論拠の一つが、憲法改正手続と条約承認手続の厳格さの対比である。憲法の改正には、96条1項により各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と国民投票における過半数の賛成という重い手続が要求される。これに対して条約は、内閣が締結し(73条3号)、国会の承認を得れば成立するところ、その承認については61条が60条2項を準用しており、参議院が30日以内に議決しないとき、又は両院協議会でも意見が一致しないときは衆議院の議決がそのまま国会の議決となる。条約の承認は、衆議院の3分の2以上の再可決を要する法律の制定(59条2項)と比べてすら緩やかな場合があり、憲法改正手続とは比較にならないほど簡易である。仮に条約が憲法に優位すると解すれば、このように軽い手続で成立した条約によって憲法の内容が実質的に書き換えられることを認める結果になり、硬性憲法の建前も、改正に国民投票を通じた主権者の判断を要求した国民主権の原理も没却される。したがって改正手続の厳格さは憲法が条約に優位する効力を持つことの根拠になり、本肢は憲法優位説の理解として正しい。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
| 見解 | 主な論拠 |
|---|---|
| 憲法優位説(通説) | 条約の締結機関と手続は憲法が定めており、締結と承認は憲法の枠内でのみ許される。憲法改正手続(96条)より簡易な条約承認手続(61条)で憲法が改正される結果になるのは国民主権と硬性憲法の建前に反する。98条2項の遵守義務も憲法が課したもの |
| 条約優位説 | 81条の違憲審査の対象と98条1項の無効となる行為の列挙に条約がなく、憲法は条約との関係で必ずしも最高法規でない。98条2項が条約の誠実遵守を定め、前文が国際協調主義を掲げている |
正しい。96条1項の発議は、原案の提出ではなく、国民に提案すべき憲法改正案を国会が各議院の総議員の3分の2以上の賛成で決定することをいう。
憲法96条1項は、憲法改正について各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定める。ここにいう発議は、通常の議案について用いられる発議、すなわち国会法56条1項が議員による議案の提出について定めるような原案の提出を意味するものではない。憲法改正手続における発議とは、国民に提案すべき憲法改正案を国会が国家機関としての意思として確定する行為、つまり改正案の内容そのものを国会が決定することをいい、この決定が成立すればそれがそのまま国民への提案になる。この決定は両議院それぞれで総議員の3分の2以上という加重された多数の賛成を得て初めて成立するものであり、審議の端緒にすぎない原案の提出とは法的性質を異にする。国会法68条の2も憲法改正原案の提出を別に定めており、原案の提出と憲法上の発議が段階を異にすることは条文上も裏付けられている。本肢はこの理解に合致する。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- 原案の提出:衆議院議員100人以上、参議院議員50人以上の賛成(国会法68条の2)。内容において関連する事項ごとに区分する
- 国会の発議:各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国民に提案する改正案を国会が決定する。発議の成立がそのまま国民への提案になる
- 国民の承認:特別の国民投票または国会の定める選挙の際の投票で、賛成と反対の投票を合計した数の2分の1を超える賛成(国民投票法98条2項・126条1項)。最低投票率の定めはない
- 公布:天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)
正しい。96条1項の過半数の母数には有権者総数、投票総数、有効投票総数という解釈があり得たが、国民投票法は賛成と反対の投票を合計した数の2分の1を超える賛成で承認があったものとし、有効投票総数の過半数と定めた。
憲法96条1項後段は、憲法改正について特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票においてその過半数の賛成を必要とすると定めるが、その過半数の母数を何に求めるかは条文上明らかでなく、有権者総数の過半数、無効投票を含む投票総数の過半数、有効投票総数の過半数という複数の解釈があり得た。有権者総数を母数にすれば棄権が事実上反対と同じ効果を持って改正の成立が著しく困難になり、投票総数を母数にすれば無効票が反対票として作用するなど、どの解釈にも一長一短があり、憲法の文言自体からは決着がつかないため、その具体化は法律に委ねられていると解された。これを受けて制定された日本国憲法の改正手続に関する法律は、憲法改正案に対する賛成の投票の数が、賛成の投票の数と反対の投票の数を合計した数の2分の1を超えた場合に国民の承認があったものとすると定め(同法126条1項、98条2項)、有効投票総数の過半数という解釈を採用した。本肢はこの経緯を正確に述べている。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- 原案の提出:衆議院議員100人以上、参議院議員50人以上の賛成(国会法68条の2)。内容において関連する事項ごとに区分する
- 国会の発議:各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国民に提案する改正案を国会が決定する。発議の成立がそのまま国民への提案になる
- 国民の承認:特別の国民投票または国会の定める選挙の際の投票で、賛成と反対の投票を合計した数の2分の1を超える賛成(国民投票法98条2項・126条1項)。最低投票率の定めはない
- 公布:天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)
正しい。憲法改正の発議(96条1項)と予備費支出の承諾(87条2項)には衆議院の優越を定める規定がなく、両議院の議決は対等である。
憲法改正の発議について96条1項は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議すると定め、両議院がそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成による議決をすることを要求する。ここには、法律案における衆議院の再議決(59条2項)や、予算、条約の承認、内閣総理大臣の指名において衆議院の議決を国会の議決とする規定(60条2項、61条、67条2項)に相当するものは置かれていない。参議院が所定の多数で賛成しない限り発議は成立せず、両議院の議決は完全に対等である。国の根本を動かす場面では両院が対等に関与すべきだからである。予備費の支出の承諾について87条2項は、すべて予備費の支出については内閣は事後に国会の承諾を得なければならないと定めるにとどまる。予備費の設置自体は予算の一部として60条の適用を受けるが、事後の承諾については衆議院の優越を認める規定がなく、各議院がそれぞれ承諾の議決を行うものと解されている。本肢はこの二つを正しく挙げている。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- ["憲法改正の発議(96条1項)", "各議院の総議員の3分の2以上の賛成が要り、参議院が賛成しなければ発議できない"]
- ["予備費支出の承諾(87条2項)", "内閣は事後に国会の承諾を得なければならないが、衆議院の優越を定める規定はなく各議院が承諾する"]
- ["一院だけの権限", "内閣不信任決議(69条)は衆議院だけ、緊急集会(54条2項)は参議院だけ"]
正しい。97条は、基本的人権を侵すことのできない永久の権利と宣言することで、憲法が最高法規である実質的な理由を示している。
憲法98条1項は、憲法に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為が効力を有しないと定め、国法秩序における憲法の形式的な効力の優位を宣言する。しかし、憲法がなぜ頂点に立つのかを効力の序列という形式面だけで説明することはできない。硬性憲法である以上、法律より強い形式的効力をもつのは当然で、それだけでは憲法が他の法と質的に異なる理由にならないからである。憲法が最高法規である実質的な理由は、自由と人権という人類普遍の価値を保障する内容そのものにある。97条は、基本的人権を人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であり、侵すことのできない永久の権利として現在及び将来の国民に信託されたものと宣言しており、まさにその価値を示す規定である。だから97条は、98条1項の形式的最高法規性を内容の側から基礎づける実質的最高法規性の根拠規定と位置づけられる。97条が「最高法規」と題する第10章の冒頭に置かれ、98条、99条と一体の章をなすことも、この理解を裏づける。

この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
| 形式的最高法規性 | 実質的最高法規性 | |
|---|---|---|
| 内容 | 憲法に反する法律・命令・国務に関するその他の行為は効力を有しない | 憲法が基本的人権を侵すことのできない永久の権利として保障する内容をもつ |
| 根拠条文 | 98条1項(硬性憲法である96条から派生) | 97条 |
| 位置づけ | 効力の序列を定める | 形式的最高法規性を内容の側から基礎づける。99条の尊重擁護義務は根拠ではなく憲法を守る仕組み |
正しい。憲法改正の発議(96条1項)と予備費支出の承諾(87条2項)には衆議院の優越を定める規定がなく、両議院の議決は対等である。
憲法96条1項は、憲法の改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議すると定め、両議院がそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成による議決をすることを求めている。ここには、法律案における衆議院の再議決(59条2項)や、予算、条約の承認、内閣総理大臣の指名において衆議院の議決を国会の議決とする規定(60条2項、61条、67条2項)に相当するものは置かれていない。参議院が所定の多数で賛成しない限り発議は成立せず、両議院の議決は完全に対等である。国の根本を動かす場面では両院が対等に関与すべきだという考えによる。予備費の支出の承諾についても、87条1項は予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基づいて予備費を設け内閣の責任で支出できるとし、同条2項はすべて予備費の支出について内閣は事後に国会の承諾を得なければならないと定めるにとどまる。予備費の設置自体は予算の一部として60条の適用を受けるが、支出の事後の承諾については衆議院の優越を認める規定がなく、各議院がそれぞれ承諾の議決を行う。本肢の述べるとおり、いずれの議決でも両議院は対等である。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。/すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
| 案件 | 参議院が異なる議決をしたとき | 参議院が議決しないとき | 先議権 |
|---|---|---|---|
| 法律案(59条) | 衆議院で出席議員の3分の2以上の再議決。両院協議会は任意 | 60日で否決とみなすことができる | なし |
| 予算(60条) | 両院協議会を開いても一致しなければ衆議院の議決が国会の議決 | 30日で衆議院の議決が国会の議決 | あり |
| 条約の承認(61条) | 予算と同じ | 30日で衆議院の議決が国会の議決 | なし |
| 内閣総理大臣の指名(67条) | 両院協議会を開いても一致しなければ衆議院の議決が国会の議決 | 10日で衆議院の議決が国会の議決 | なし |
| 憲法改正の発議(96条)・予備費支出の承諾(87条2項) | 優越なし。両院は対等 | 優越なし | なし |
正しい。国会法68条の2は憲法改正原案の発議に衆議院で議員100人以上、参議院で議員50人以上の賛成を求め、同法68条の3は内容において関連する事項ごとに区分して発議するものとしている。
憲法96条1項は、憲法改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定めるが、その前提となる憲法改正原案を国会内でどう発議し審議するかは法律事項であり、国民投票法の制定に伴って改正された国会法が定めている。国会法68条の2は、議員が憲法改正原案を発議するには衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要すると定める。通常の議案の発議要件(同法56条1項、衆議院20人以上、参議院10人以上)に比べて大きく加重されており、最高法規の改変を提案する以上、相当の広がりをもった支持を求める趣旨である。次に同法68条の3は、憲法改正原案の発議に当たっては内容において関連する事項ごとに区分して行うものとすると定め、個別発議の原則を採る。無関係な複数の改正事項が一括して提案されると、国民は賛成したい部分と反対したい部分を切り分けられず、主権者が個々の改正内容を自ら判断するという96条1項の趣旨が損なわれるからである。

議員が憲法改正原案を発議するには、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要する。/前条の憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする。
- ["原案の発議", "国会法68条の2により、衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要する。内容において関連する事項ごとに区分して行う(同法68条の3)"]
- ["国会の発議", "各議院の総議員の3分の2以上の賛成(96条1項)。成立すればそのまま国民への提案になる"]
- ["国民の承認", "特別の国民投票、又は国会の定める選挙の際に行われる投票で、有効投票総数の過半数の賛成。どちらの投票にも日本国憲法の改正手続に関する法律が適用される"]
- ["国民投票運動", "戸別訪問の禁止はなく、投票事務関係者や特定公務員の運動、地位を利用した運動、組織的な買収などだけを禁じる。公務員の政治的行為の制限も緩和される"]
- ["公布", "天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)"]
誤り。違うのは「これらの選挙の際に行われる場合は日本国憲法の改正手続に関する法律は適用されない」の部分である。同法は特別の国民投票と選挙の際の投票を区別せず、憲法改正の承認に係る国民投票の手続一般を定めている。
憲法96条1項後段は、改正に対する国民の承認について、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票においてその過半数の賛成を必要とすると定める。国会の定める選挙とは衆議院議員総選挙や参議院議員通常選挙といった国政選挙を指すと解されているから、承認の投票を国政選挙と同じ機会に行うこと自体は憲法が許容しており、本肢の前段は誤りではない。誤っているのは後段である。日本国憲法の改正手続に関する法律1条は、同法が96条1項に定める憲法改正についての国民の承認に係る投票に関する手続を定めるものとしており、適用対象を特別の国民投票に限定していない。同法は、承認の投票が単独で実施されるか国政選挙と同じ機会に実施されるかを問わず、憲法改正の国民投票一般の手続法である。実際に同法は、投票の期日、満18年以上の日本国民という投票権者、改正案ごとに賛否を記載する投票方式、有効投票の過半数という承認の要件を一律に定め、国政選挙と同時の場合の適用除外を置いていない。同法が適用されなければ承認の手続そのものが実施できない。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- ["原案の発議", "国会法68条の2により、衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成を要する。内容において関連する事項ごとに区分して行う(同法68条の3)"]
- ["国会の発議", "各議院の総議員の3分の2以上の賛成(96条1項)。成立すればそのまま国民への提案になる"]
- ["国民の承認", "特別の国民投票、又は国会の定める選挙の際に行われる投票で、有効投票総数の過半数の賛成。どちらの投票にも日本国憲法の改正手続に関する法律が適用される"]
- ["国民投票運動", "戸別訪問の禁止はなく、投票事務関係者や特定公務員の運動、地位を利用した運動、組織的な買収などだけを禁じる。公務員の政治的行為の制限も緩和される"]
- ["公布", "天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)"]
正しい。公布は天皇の国事行為であり、天皇にも助言と承認を行う内閣にも改正の当否を審査して公布を留保する権限はないから、96条2項の「直ちに」は公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものである。
96条2項は、憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちにこれを公布すると定める。憲法改正の公布は天皇の国事行為であり(7条1号も公布を国事行為として掲げる)、天皇の国事行為はすべて内閣の助言と承認により行われ、天皇は国政に関する権能を有しない(3条、4条1項)。したがって天皇に公布の可否を判断する実質的裁量はない。助言と承認を行う内閣も、国民投票による承認という主権者国民の意思決定を受けてその形式を整えるにすぎず、改正の当否を審査して公布を拒否したり留保したりする権限を持たない。96条2項が「直ちに」と定めるのは、こうした趣旨を確認し、国民の承認を経た憲法改正の効力発生を政治的思惑によって引き延ばすことを許さない趣旨、すなわち公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものと解される。「国民の名で」という文言も、改正の主体が国民であって天皇や内閣ではないことを示している。本肢はこの理解を正しく述べている。

憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
- 原案の発議は、衆議院で議員100人以上、参議院で議員50人以上の賛成を要し、内容において関連する事項ごとに区分して行う(国会法68条の2・68条の3)
- 国会の発議は各議院の総議員の3分の2以上の賛成による(96条1項)。国民に提案する改正案を国会が決定することであり、原案の提出とは別である
- 国民の承認は、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際の投票で、賛成と反対の合計である投票総数の2分の1を超える賛成があれば成立する。最低投票率の定めはない
- 承認を経たときは、天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する(96条2項)。「直ちに」は公布を恣意的に遅らせてはならない趣旨である
正しい。憲法改正の公布は内閣の助言と承認による天皇の国事行為であり、天皇にも内閣にも公布を拒否・留保する権限はないから、96条2項の「直ちに」は公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものと解される。
憲法96条2項は、憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は国民の名でこの憲法と一体を成すものとして直ちにこれを公布すると定める。憲法改正の公布は天皇の国事行為であり、7条1号も公布を国事行為として掲げる。天皇の国事行為はすべて内閣の助言と承認により行われ、天皇は国政に関する権能を有しない(3条・4条1項)から、天皇に公布の可否を判断する実質的な裁量は認められない。また助言と承認を行う内閣も、国民投票による承認という主権者国民の意思決定を受けてその形式を整えるにすぎず、改正の当否を審査して公布を拒否したり留保したりする権限を持たない。96条2項が「直ちに」と定めるのは、こうした趣旨を確認し、国民の承認を経た憲法改正の効力発生を政治的思惑によって引き延ばすことを許さない趣旨、すなわち公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものと解される。国民の名で公布するという文言も、改正の主体が主権者国民であることを示している。本肢はこの理解のとおりである。

憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
- 原案の発議:国会法により衆議院100人以上・参議院50人以上の賛成を要し、関連する事項ごとに区分して行う
- 国会の発議:各議院の総議員の3分の2以上の賛成。「総議員」は法定の議員数と解するのが通説。発議とは国民に提案する改正案を国会が決定すること
- 国民の承認:特別の国民投票又は国会の定める選挙の際の投票で過半数。国民投票法は母数を賛成票と反対票の合計(投票総数)とし、白票・無効票は算入しない。最低投票率の定めはない
- 公布:天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに公布する。「直ちに」は公布を恣意的に遅らせてはならない趣旨
- 限界:限界説は改正権を制度化された制憲権とみて国民主権・基本的人権の尊重・平和主義・96条の手続は改正できないとし、無限界説は制憲権と改正権を同質とみて理論上の限界を否定する
正しい。硬性の憲法改正手続は憲法の同一性と連続性を守る事前の保障、違憲審査制は最高法規性を担保する事後の保障であり、いずれも憲法の保障の方法に位置付けられる。
憲法の保障とは、最高法規である憲法の規範内容が下位の法規範や国家機関の行為によって侵害され、あるいは実質的に変質させられることを未然に防ぎ、事後的に是正するための制度と方法の総称である。憲法典自身が用意する保障には、最高法規性の宣言(98条1項)、公務員の憲法尊重擁護義務(99条)、権力分立の仕組みのほか、肢が挙げる憲法改正規定と違憲審査制がある。96条1項は、憲法改正に各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と国民投票における過半数の賛成を要求し、通常の法律より加重された手続を課すことで、その時々の議会多数派による安易な改変から憲法を守り、その同一性と連続性を維持する事前の保障として働く。81条の違憲審査制は、一切の法律、命令、規則又は処分の憲法適合性を裁判所が審査することで、98条1項が宣言する最高法規性を現実に担保する事後の保障である。肢は両制度を憲法の保障の方法として正しく位置付けている。

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
| 区分 | 内容 | 日本国憲法での扱い |
|---|---|---|
| 憲法改正手続(96条) | 各議院の総議員の3分の2以上による発議と国民投票の過半数を要求し、安易な改変から憲法の同一性と連続性を守る事前の保障 | 明文あり(硬性憲法) |
| 違憲審査制(81条) | 裁判所が法律・命令・規則・処分の憲法適合性を審査し、最高法規性を事後的に担保する | 明文あり(付随的審査制) |
| 最高法規性の宣言・尊重擁護義務(98条1項・99条) | 憲法に反する国家行為を無効とし、公務員に憲法を尊重し擁護する義務を課す | 明文あり |
| 国家緊急権 | 国家の存立が脅かされる非常事態に立憲的秩序を一時停止して非常措置をとる権限 | 明文なし(フランス・ドイツには明文あり。明治憲法には緊急勅令・戒厳・非常大権があった) |
| 抵抗権 | 権力の濫用で立憲主義秩序が破壊され他に救済手段がないとき国民が反抗する権利 | 明文なし(ドイツ基本法20条4項に明文あり。否定されているとは解されない) |
正しい。国会単独立法の原則とは、国会による立法が国会の議決のみで完結し、他の国家機関の参与を要しないで成立するという原則である。
国会単独立法の原則とは、国会による立法が国会の議決のみで完結し、他の国家機関の関与を要しないで成立するという原則をいう。明治憲法の下では法律の成立に天皇の裁可が必要とされ、帝国議会の議決だけでは法律は成立しなかった。これに対し59条1項は、法律案はこの憲法に特別の定めのある場合を除いては両議院で可決したとき法律となると定め、両議院の可決という国会内部の意思決定のみによって法律が成立することを明示している。天皇による法律の公布(7条1号)は内閣の助言と承認に基づく国事行為であって法律の成立要件ではなく、成立した法律を国民に周知するための形式的行為にすぎない。本肢の定義はこの原則の内容として正確である。憲法上の例外としては、一の地方公共団体のみに適用される特別法について住民投票の過半数の同意を要求する95条が挙げられる。内閣の法律案提出権(内閣法5条)は、国会が自由に修正・否決できる準備行為であるから原則に反しないと解されている。

法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
- 「立法」の意義:法律という形式の制定行為(形式的意味の立法)ではなく、一般的・抽象的な法規範の定立(実質的意味の立法)を指す。形式的意味で読むと41条は当然のことを述べたにすぎなくなる
- 国会中心立法の原則:国の立法は、憲法に特別の定めがある場合を除き、常に国会が行う。憲法上の例外は議院規則(58条2項)と最高裁判所規則(77条1項)。政令(73条6号)は法律の執行・委任に基づくので例外ではない
- 国会単独立法の原則:国会の立法は、国会以外の機関の参与を必要とせずに成立する(59条1項)。例外は一の地方公共団体のみに適用される特別法の住民投票(95条)。天皇の公布は成立後の行為
- 内閣の法律案提出権(内閣法5条)は、国会が自由に修正・否決できる立法の準備行為なので単独立法の原則に反しないと解されている
正しい。憲法改正の国民投票は、国民自身が国政のあり方を最終的に決定する権力を現実に行使する場面であるから、国民主権の権力的な契機の表れである。
国民主権の原理には二つの契機が含まれると説明される。一つは、国家権力の行使を正当づける究極的な権威が国民に存するという正当性の契機であり、もう一つは、国の政治のあり方を最終的に決定する権力を国民自身が行使するという権力的な契機である。正当性の契機だけを強調すれば、国家権力の行使が全国民の名の下に行われていればよく、国民の意思を的確に反映する仕組みまでは要請されないが、権力的な契機を重く見れば、選挙制度や直接民主制的な制度の整備が要請される。憲法96条1項は、憲法改正について各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民に提案してその承認を経なければならず、承認には国民投票における過半数の賛成を必要とすると定める。これは、憲法改正の是非を最終的に決定するのが国民であることを定めたものであり、国民が代表者を通じてではなく自ら投票によって国の根本法のあり方を決める制度であるから、権力的な契機がもっとも端的に現れた場面といえる。したがって本肢は正しい。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- 統治権:立法権・行政権・司法権を包括する国家権力そのもの。ポツダム宣言8項の「日本国ノ主権」はこの意味である
- 国家権力の最高独立性:対内的には最高、対外的には独立という国家権力の属性。前文第3段の「自国の主権を維持し」は対外的独立性に重点を置いた用法である
- 国政の最高決定権:国の政治のあり方を最終的に決定する権力又は権威。前文第1段の「主権が国民に存する」と1条の「主権の存する日本国民」はこの意味である
- 権力的契機:国民自身が国政のあり方を実際に決定する側面。96条1項の憲法改正国民投票はその表れである
- 正当性の契機:国家権力の正統性の究極の根拠が国民にあるという側面。この面だけを強調すると、国民の意思を反映する仕組みまでは要請されない
正しい。条約の締結要件(73条3号・61条)は憲法改正手続(96条1項)より緩やかであるから、条約が優位するなら条約によって実質的に憲法を改正できてしまうという批判が、憲法優位説の論拠の一つである。
憲法優位説は、憲法が条約に優位するという立場であり、その論拠の一つとして、条約優位説を採った場合に生ずる帰結の不当性を挙げる。条約の締結は内閣が行い、事前に、時宜によっては事後に国会の承認を経ることを必要とするにとどまる(73条3号)。その承認は出席議員の過半数による通常の議決で足り、しかも衆議院の優越が認められている(61条・60条2項)。これに対し憲法の改正には、各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民投票における過半数の賛成という著しく加重された手続が要求される(96条1項)。仮に条約が憲法に優位するとすれば、憲法改正よりはるかに緩やかな要件で成立する条約によって憲法の内容を実質的に変更できることになり、硬性憲法を採用した趣旨が没却され、憲法改正について国民の意思を直接問うこととした国民主権の要請にも反する。憲法優位説はこの不都合を指摘して条約優位説を批判するのであり、肢はこの論拠を正確に述べている。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。/条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
| 憲法優位説(通説) | 条約優位説 | |
|---|---|---|
| 条約の効力の根拠 | 条約締結権は憲法が授権した権限であり、条約の国内的効力は憲法に由来する | 国際法秩序そのものに求め、憲法の条約締結の規定は組織・手続規定にすぎないとみる |
| 主な論拠 | 締結要件(73条3号・61条)が改正手続(96条)より緩やかで、条約優位なら条約で実質的に憲法を改正できてしまう。98条1項の列挙に条約がないのは条約の国内法上の効力を争えなくする趣旨ではない | 国際協調主義(前文・98条2項)。98条1項の列挙に条約がないこと |
| 条約の違憲審査 | 肯定説(国内では法律と同様に適用される)と、否定説(81条に条約がない・98条2項の誠実遵守)に分かれる。砂川事件(最大判昭34.12.16)は一見極めて明白に違憲無効でない限り審査しない | 否定される |
正しい。条約の締結には国会の通常の議決による承認で足りるのに対し、憲法改正には各議院の総議員の3分の2以上の発議と国民投票が要るから、条約が優位するなら緩やかな要件で憲法を実質的に改正できてしまうという批判が憲法優位説の論拠の一つである。
憲法優位説は憲法が条約に優位するとの立場であり、その論拠の一つとして、条約優位説を採った場合に生ずる帰結の不当性が挙げられる。条約の締結は内閣が行い、事前に、時宜によっては事後に国会の承認を経ることを必要とするにとどまる(73条3号)。その承認は各議院の出席議員の過半数による通常の議決で足り、しかも衆議院の優越が認められている(61条・60条2項)。これに対し憲法の改正には、各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民投票における過半数の賛成という著しく加重された手続が要求される(96条1項)。したがって、仮に条約が憲法に優位するとすれば、憲法改正よりはるかに緩やかな要件で成立する条約によって憲法の内容を実質的に変更することが可能となってしまう。これでは硬性憲法を採用した趣旨が没却され、憲法改正について国民の意思を直接問うこととした国民主権の要請にも反する。憲法優位説はこの不都合を指摘して条約優位説を批判するのであり、本肢はこの論拠を正確に述べている。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。
| 憲法優位説(通説) | 条約優位説 | |
|---|---|---|
| 条約締結権の規定の意味 | 憲法が授権した権限であり、条約の国内的効力の根拠を定めた規定 | どの機関がどの手続で締結するかを定めた組織・手続規定にすぎず、効力の根拠は国際法秩序にある |
| 主な論拠 | 条約の締結要件(国会の承認)は憲法改正手続より緩やかで、条約優位では条約で憲法を実質的に改正できてしまう。98条2項の誠実遵守も憲法自身の定めである | 98条2項の条約尊重、81条・98条1項に条約が列挙されていないこと、国際協調主義 |
| 条約の違憲審査 | 肯定説:条約も国内では法律と同じく適用されるから審査できる/消極説:81条に条約がなく98条2項が誠実遵守を宣言するから控えるべき | 憲法に優位する以上、審査の対象にならない |
誤り。違うのは「憲法がいかなる基本価値を体現しているかということとは関係がない」の部分である。憲法の最高法規性は、硬性憲法であることによる形式的な効力の優位だけでなく、基本的人権を保障する内容に求められる実質的な根拠にも支えられている。
通常の法律の改正より加重された手続によらなければ改正できない憲法を硬性憲法、法律の改正と同一の手続で改正できる憲法を軟性憲法と呼ぶ点は、本肢の前半のとおりである。誤りは後半にある。憲法の最高法規性は二つの側面から根拠づけられる。一つは形式的な側面であり、98条1項が憲法に反する法律・命令・詔勅等はその効力を有しないと定めるように、憲法が国法秩序において最も強い形式的効力を持つことは、96条の加重された改正手続によって支えられている。しかしそれだけでは、なぜ憲法にそのような特別の地位が与えられるのかは説明できず、国家権力から侵されない権利として基本的人権を保障するという基本価値を体現している点に、最高法規性の実質的な根拠が求められる。97条が基本的人権を侵すことのできない永久の権利と位置付け、それが「最高法規」と題する第10章の冒頭に置かれていることは、この実質的最高法規性を示している。本肢は最高法規性を硬性という形式面に尽きるとしており、実質的な根拠を見落としている。

この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
- 形式的最高法規性:硬性憲法として最も強い形式的効力を持ち、条規に反する法律・命令・詔勅等は効力を有しない(98条1項)。改正手続の加重(96条)がこれを支える
- 実質的最高法規性:基本的人権を侵すことのできない永久の権利として保障する内容を持つことが、憲法を他の法と質の異なる最高法規にする根拠(97条)。第10章「最高法規」の冒頭に置かれている
- 尊重擁護義務:公務員に憲法を尊重し擁護する義務を課す(99条)。最高法規性の根拠ではなく、憲法を守るための仕組み
- 違憲審査制:最高法規性を裁判で担保する制度(81条)。最高法規性から司法審査制が当然に導かれるわけではない
正しい。判例は、火災発生のおそれと通謀による罪証隠滅のおそれを理由に、未決拘禁者に喫煙の自由を一般に認めないのはやむを得ない措置であり、必要かつ合理的な制限であるとした(最大判昭45.9.16)。
最高裁は、未決拘禁者が旧監獄法施行規則の喫煙禁止を違憲として国家賠償を求めた事件で、監獄の現在の施設および管理態勢のもとでは、喫煙に伴う火気の使用に起因する火災発生のおそれが少なくなく、喫煙の自由を認めることにより通謀のおそれがあり、監獄内の秩序の維持にも支障をきたすと述べた。喫煙を許せば罪証隠滅のおそれがあり、火災発生の場合には被拘禁者の逃走が予想され、直接拘禁の本質的目的を達することができないうえ、集団内の火災は人道上重大な結果を生じさせる。他面、煙草はある程度普及率の高い嗜好品にすぎず、喫煙の禁止は人体に直接障害を与えるものではないから、喫煙の自由が憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。拘禁の目的、制限される人権の内容、制限の必要性などを総合考察すると、喫煙禁止という程度の制限は必要かつ合理的であるというのがその結論であり、本肢はこの理由づけをそのまま述べている。

喫煙を許すことにより、罪証隠滅のおそれがあり、また、火災発生の場合には被拘禁者の逃走が予想され、かくては、直接拘禁の本質的目的を達することができないことは明らかである。のみならず、被拘禁者の集団内における火災が人道上重大な結果を発生せしめることはいうまでもない。
| 事案 | 判例 | 結論 |
|---|---|---|
| 未決拘禁者の喫煙禁止 | 最大判昭45.9.16 | 火災・通謀による罪証隠滅のおそれから、一般に認めないのはやむを得ない。拘禁の目的・人権の内容・制限の必要性を総合考察し、必要かつ合理的 |
| 未決拘禁者の新聞記事の抹消(閲読の制限) | 最大判昭58.6.22(よど号ハイジャック記事抹消) | 一般的、抽象的なおそれでは足りず、規律及び秩序の維持上放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が必要。制限は必要かつ合理的な範囲にとどまる |
| 受刑者の親族でない者との信書の発受の制限 | 最判平18.3.23 | 規律及び秩序の維持、身柄の確保、改善更生の点で放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性がある場合に限って制限できる |
正しい。96条1項は、国民の承認の方法として、特別の国民投票と国会の定める選挙の際行われる投票の二つを認めており、参議院議員通常選挙の際に投票を求めることもできる。
96条1項は、憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定め、この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とすると定める。憲法は承認の方法として二つを並べており、憲法改正のためだけに行う特別の国民投票のほかに、国会の定める選挙の際に併せて行う投票によることも認めている。ここにいう選挙は、全国の有権者が投票する機会となる国政選挙を指し、衆議院議員総選挙に限られないから、参議院議員通常選挙の際に投票を求めることもできる。国民主権の下で憲法改正の最終的な決定権は国民にあり、国民の承認という実質が確保される限り、投票の機会の設け方は国会の判断に委ねられているのである。日本国憲法の改正手続に関する法律は、発議後60日以後180日以内で国会の議決した期日に国民投票を行うと定めているが、これは法律による制度の選択であり、憲法が二つの方法を認めていることに変わりはない。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
誤り。違うのは末尾の「国民投票における有効投票の過半数を意味すると解すべきである」の部分である。憲法改正の重要性や硬性憲法であることを重視するなら、より多くの賛成を要する有権者総数又は投票総数の過半数とする見解に結びつく。
96条1項の過半数の賛成の分母については、有権者総数とする見解、無効票を含む投票総数とする見解、有効投票の総数とする見解がある。有権者総数を分母とすれば、棄権した者はすべて反対したのと同じ扱いになり、投票総数を分母とすれば、無効票が反対と同じ扱いになる。有効投票を分母とする見解は、棄権者と無効票を計算から除くから、最も少ない賛成票で改正が成立する。憲法改正の重要性や硬性憲法であることを重視するのであれば、改正の成立にはより多くの積極的な賛成を要求する方向に傾くはずであり、その理由づけは有権者総数又は投票総数を分母とする見解と結びつく。有効投票の過半数とする見解は、棄権者や無効票を投じた者の意思を反対と擬制するのは不合理であることを論拠とするのであって、改正の重要性や硬性憲法性を論拠とするものではない。本肢は理由と結論の対応が逆である。日本国憲法の改正手続に関する法律は、賛成の投票の数と反対の投票の数を合計した数を投票総数とし、その2分の1を超える賛成で承認があったものとしている。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
| 分母 | 棄権・無効票の扱い | 改正の成立 |
|---|---|---|
| 有権者総数 | 棄権も無効票も反対と同じに働く | 最も成立しにくい |
| 投票総数(無効票を含む) | 無効票が反対と同じに働く | 中間 |
| 有効投票の総数 | 棄権も無効票も計算から除く | 最も成立しやすい |