第96条過去問 29
1この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
この条文の過去問 29問
a.日本国憲法は、硬性憲法に該当する。
b.日本国憲法第96条第1項前段は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」と規定する。
解説
本肢は正しい。硬性憲法とは、通常の法律の改正手続よりも加重された手続によらなければ改正することができない憲法をいい、これに対し法律と同一の手続で改正しうる憲法を軟性憲法という。したがって、ある憲法が硬性憲法に該当することの根拠は、その改正手続が通常の立法手続よりも厳格に定められている点に求められる。bが引用する憲法96条1項前段は、憲法改正につき「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」による国会の発議を要求している。これに対し、通常の法律の議決は、総議員の3分の1以上の出席を定足数とした上で(憲法56条1項)、出席議員の過半数で足りる(同条2項)。両者を比較すれば、96条1項前段の要件が通常の立法手続よりも著しく加重されていることは明らかである。加えて同項は、国会の発議の後さらに国民投票における過半数の承認を要求しており、この点でも法律の制定手続と質的に異なる。すなわちbは、日本国憲法の改正手続が加重されていることを条文上示すものであり、aの結論を直接に基礎づける。よってbはaの見解の根拠となっており、本肢は正しい。
憲法改正の手続は国会の発議により始まるが、国会法によれば、憲法改正原案の発議は、衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要することとされ、法律案を発議する場合よりも、賛成議員数が加重されている。
解説
本肢は正しい。憲法96条1項は、憲法の改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定める。この国会の発議に先立つ手続、すなわち憲法改正原案を議員が発議する際の要件については国会法が定めを置いており、同法68条の2は、議員が憲法改正原案を発議するには、衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要するとしている。これに対し、通常の法律案の発議については、国会法56条1項が、衆議院においては議員20人以上、参議院においては議員10人以上の賛成を要するものとし、予算を伴う法律案についても衆議院50人以上、参議院20人以上とするにとどまる。したがって、憲法改正原案の発議に必要な賛成議員数は、法律案を発議する場合よりも明らかに加重されている。これは、憲法が国の最高法規であり(憲法98条1項)、その改正が主権者たる国民の承認を要する重大な手続であることに鑑み、原案の提出段階から相当程度広い議院内の支持を要求し、軽々な改正提案を抑制する趣旨に出たものと解される。よって本肢は正しい。
憲法改正には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票による国民の承認が必要とされており、その重要性に鑑み、国民投票に関し異議がある投票人は、最高裁判所にのみ訴訟を提起することができる。
解説
本肢は誤り。憲法96条1項後段は、憲法改正について「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定めており、承認の方式に関する本肢前段の記述自体は正しい。しかし、国民投票の効力を争う訴訟の管轄に関する後段の記述が誤りである。この点について日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)127条は、「国民投票に関し異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、第九十八条第二項の規定による告示の日から三十日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができる」と定めている。すなわち、被告となるのは中央選挙管理会であり、第一審の管轄裁判所は東京高等裁判所とされ、しかも国民投票の結果の告示の日から30日以内という短期の出訴期間が置かれているのである。第一審を高等裁判所とするのは、公職選挙法が選挙の効力に関する訴訟について高等裁判所を第一審とするのと同様、争訟の迅速な解決と専門的処理を図る趣旨によるものであり、最高裁判所を第一審かつ唯一の裁判所とするものではない。また、憲法81条は最高裁判所を違憲審査権を有する終審裁判所と定めるにとどまり、特定の争訟について最高裁判所を第一審裁判所とすべきことまで要求するものではない。よって、国民投票に関し異議がある投票人が最高裁判所にのみ訴訟を提起できるとする点で、本肢は誤りである。
憲法改正の手続は国会の発議により始まるが、国会法によれば、憲法改正原案の発議は、衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要することとされ、法律案を発議する場合よりも、賛成議員数が加重されている。
解説
本肢は正しい。憲法96条1項は、憲法の改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定める。この国会の発議に先立つ手続、すなわち憲法改正原案を議員が発議する際の要件については国会法が定めを置いており、同法68条の2は、議員が憲法改正原案を発議するには、衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要するとしている。これに対し、通常の法律案の発議については、国会法56条1項が、衆議院においては議員20人以上、参議院においては議員10人以上の賛成を要するものとし、予算を伴う法律案についても衆議院50人以上、参議院20人以上とするにとどまる。したがって、憲法改正原案の発議に必要な賛成議員数は、法律案を発議する場合よりも明らかに加重されている。これは、憲法が国の最高法規であり(憲法98条1項)、その改正が主権者たる国民の承認を要する重大な手続であることに鑑み、原案の提出段階から相当程度広い議院内の支持を要求し、軽々な改正提案を抑制する趣旨に出たものと解される。よって本肢は正しい。
憲法改正には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票による国民の承認が必要とされており、その重要性に鑑み、国民投票に関し異議がある投票人は、最高裁判所にのみ訴訟を提起することができる。
解説
本肢は誤り。憲法96条1項後段は、憲法改正について「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定めており、承認の方式に関する本肢前段の記述自体は正しい。しかし、国民投票の効力を争う訴訟の管轄に関する後段の記述が誤りである。この点について日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)127条は、「国民投票に関し異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、第九十八条第二項の規定による告示の日から三十日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができる」と定めている。すなわち、被告となるのは中央選挙管理会であり、第一審の管轄裁判所は東京高等裁判所とされ、しかも国民投票の結果の告示の日から30日以内という短期の出訴期間が置かれているのである。第一審を高等裁判所とするのは、公職選挙法が選挙の効力に関する訴訟について高等裁判所を第一審とするのと同様、争訟の迅速な解決と専門的処理を図る趣旨によるものであり、最高裁判所を第一審かつ唯一の裁判所とするものではない。また、憲法81条は最高裁判所を違憲審査権を有する終審裁判所と定めるにとどまり、特定の争訟について最高裁判所を第一審裁判所とすべきことまで要求するものではない。よって、国民投票に関し異議がある投票人が最高裁判所にのみ訴訟を提起できるとする点で、本肢は誤りである。
法律は国会の議決のみで成立し、憲法上この点の例外は定められていない。
解説
本肢は誤り。国会単独立法の原則とは、国の立法は国会以外の機関の関与を要することなく国会の議決のみで成立するという原則をいう。憲法59条1項は「法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる」と定め、この原則を明らかにしている。しかし、同項は「この憲法に特別の定のある場合を除いては」との留保を付しており、憲法自身が例外の存在を予定している。その典型が憲法95条である。同条は、一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会はこれを制定することができないと規定する。ここでは住民投票という国会外の意思表示が法律の成立要件とされており、まさに国会単独立法の原則に対する憲法上の例外にほかならない。なお、学説の中には、憲法改正につき国民の承認を要求する憲法96条1項をも国会以外の主体の関与を認めた例として併せて挙げるものがある。もっとも、同項が対象とするのは憲法改正であって法律の制定そのものではないから、法律の成立過程における例外として本来的に問題となるのは憲法95条であると解しておけば足りる。したがって、法律が国会の議決のみで成立し、憲法上この点の例外が定められていないとする本肢の記述は、憲法59条1項の文言および憲法95条の存在に反する。なお、天皇による法律の公布(憲法7条1号)は法律成立後の効力発生に関する手続であって成立要件ではなく、また内閣の法律案提出も国会の審議・議決を拘束するものではないから、これらは同原則の例外とはされない。よって本肢は誤りである。
憲法改正の公布は、天皇が内閣の助言と承認のもとで「国民の名で」行うものとされており、「国民の名で」というのは、憲法改正が主権の存する国民の意思によることを明らかにする趣旨である。
解説
本肢は正しい。憲法96条2項は、憲法改正について国民の承認を経たときは「天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する」と定める。改正憲法の公布は憲法7条1号に列挙された天皇の国事行為の一つであり、内閣の助言と承認に基づいて行われる(3条)から、天皇に改正の内容や成否を左右する実質的決定権はない。公布はあくまで、既に成立した改正の内容を国民に周知させる形式的・儀礼的行為にとどまる。そのうえで「国民の名で」という文言が置かれているのは、当該改正を最終的に決定したのが主権者たる国民であること、すなわち憲法改正権の帰属主体が国民にあることを、公布の形式面においても明示する趣旨であると解されている。日本国憲法は前文において「主権が国民に存する」と宣言し、1条は天皇の地位を「主権の存する日本国民の総意に基く」ものと定めるのであるから、国法秩序の根本たる憲法の変更もまた国民の意思に由来しなければならない。96条1項が国会の発議に加えて国民投票による承認を要求しているのはまさにその制度的現れであり、2項の「国民の名で」はその承認主体が国民であった事実を確認するものである。改正の発議権を天皇に専属させ、帝国議会の議決を経て天皇が裁可した明治憲法73条と対比すれば、この文言が国民主権原理の徹底を示すものであることは一層明瞭である。したがって、本肢の説明は正当である。
憲法改正は、国会が発議し、国民の承認を経ることによって成立するもので、国民主権に関わることから、特別の国民投票又は直近の衆議院議員総選挙の際に行われる投票においてその過半数の賛成を必要とする。
解説
本肢は誤り。憲法96条1項は「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定める。前段の、国会が発議し国民の承認によって改正が成立するという点、および承認には投票の過半数の賛成を要するという点については、本肢の記述は条文と整合する。しかし、承認のための投票の機会について、条文は「特別の国民投票」と「国会の定める選挙の際行はれる投票」という二つの方式を並列的に掲げているところ、後者にいう「国会の定める選挙」は衆議院議員総選挙に限定されていない。参議院議員通常選挙の際に行うことも文言上当然に許され、いかなる選挙に併せて行うかは国会の定めるところに委ねられている。しかも条文には「直近の」という時間的限定も存在しない。本肢は投票の機会を「直近の衆議院議員総選挙の際に行われる投票」に限る趣旨で述べており、この点で96条1項後段の定めに反する。なお、日本国憲法の改正手続に関する法律(平成19年法律第51号)は、国民投票を国会が改正を発議した日から起算して60日以後180日以内において国会の議決した期日に行うものとしており(同法2条1項)、選挙と同時に実施する方式は現行法上採用されていない。以上より、本肢は誤りである。
参議院の緊急集会は,原則として国会の権能に属する全ての事項を扱うことができるが,各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議が必要とされている憲法改正の発議を行うことはできない。
解説
本肢は正しい。参議院の緊急集会は、衆議院が存在しない期間に国会の機能を暫定的に代行する制度であり(憲法54条2項ただし書)、法律の制定や予算の議決など、原則として国会の権能に属する事項を処理し得ると解されている。もっとも、その権能には二重の限界がある。
第一に、事項的な限界がある。緊急集会で取り上げられるのは、内閣が緊急集会を求めるに際して示した案件(国会法99条2項)及びこれに関連する事項に限られ、議員が発議できる議案もその範囲に限定される(国会法101条)。緊急集会は無限定に国会の代わりを務めるものではないのである。
第二に、参議院のみで構成される合議体である以上、両議院の議決を不可欠の要素とする行為や、暫定的措置という緊急集会の性格に反する行為を行うことはできない。憲法96条1項は、憲法改正の発議につき「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」を要求しており、衆議院の議決を欠いては発議が成立しない以上、衆議院が不存在の状態で開かれる緊急集会において憲法改正の発議を行うことは論理的に不可能である。加えて、憲法改正の発議は、そもそも緊急集会の発動事由である「国に緊急の必要があるとき」(憲法54条2項ただし書)に当たるとはいえない。緊急集会においてとられた措置は臨時のものであって、次の国会開会の後10日以内に衆議院の同意がない場合には将来に向かってその効力を失う(憲法54条3項)のであるから、国の最高法規の改正という恒久的かつ根本的な効果をもたらす行為は、緊急集会の権能になじまないのである。同様の理由から、内閣総理大臣の指名(憲法67条)も緊急集会では行い得ないと解されている。よって本肢は正しい。
「硬性憲法」とは,日本国憲法のように,憲法改正が困難な憲法を指す。これに対して,「軟性憲法」とは,ドイツ連邦共和国基本法のように,憲法改正が容易でこれまで繰り返し改正が成立してきた憲法のことをいう。
解説
本肢は誤り。硬性憲法と軟性憲法の区別は、憲法改正の手続が通常の法律の制定改廃の手続と比較して加重されているか否かという、法形式上の基準によって行われる。改正手続が加重されている憲法が硬性憲法であり、通常の立法手続と同一の手続で改正しうる憲法が軟性憲法である。改正手続が加重されるのは、憲法が国民の憲法制定権力に由来する根本法である以上、憲法によって創設された立法権が通常の法律と同じ手続でこれを変更しうるとすることは背理だからである。日本国憲法は、憲法96条1項において、各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民投票における過半数の賛成を要求しており、法律の議決要件(憲法56条2項の出席議員の過半数)に比して著しく加重されているから、硬性憲法に当たる。この点を述べる本肢の前段は正しい。しかし、ドイツ連邦共和国基本法を軟性憲法の例とする点が誤りである。同基本法79条2項は、改正法律の可決について連邦議会の構成員の3分の2および連邦参議院の票数の3分の2の同意を要求しており、通常の法律の議決手続(同法77条、78条)より重い要件を課しているから、同基本法は典型的な硬性憲法である。同基本法が多数回にわたり改正されてきたことは事実であるが、それは政治的な改正頻度の問題にすぎず、硬性・軟性という法概念上の区別とは次元を異にする。現実の改正回数が多いことによって硬性憲法が軟性憲法になるわけではない。よって本肢は誤りである。
「硬性憲法」とは,日本国憲法のように,憲法改正が困難な憲法を指す。これに対して,「軟性憲法」とは,ドイツ連邦共和国基本法のように,憲法改正が容易でこれまで繰り返し改正が成立してきた憲法のことをいう。
解説
本肢は誤り。硬性憲法と軟性憲法の区別は、憲法改正の手続が通常の法律の制定改廃の手続と比較して加重されているか否かという、法形式上の基準によって行われる。改正手続が加重されている憲法が硬性憲法であり、通常の立法手続と同一の手続で改正しうる憲法が軟性憲法である。改正手続が加重されるのは、憲法が国民の憲法制定権力に由来する根本法である以上、憲法によって創設された立法権が通常の法律と同じ手続でこれを変更しうるとすることは背理だからである。日本国憲法は、憲法96条1項において、各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民投票における過半数の賛成を要求しており、法律の議決要件(憲法56条2項の出席議員の過半数)に比して著しく加重されているから、硬性憲法に当たる。この点を述べる本肢の前段は正しい。しかし、ドイツ連邦共和国基本法を軟性憲法の例とする点が誤りである。同基本法79条2項は、改正法律の可決について連邦議会の構成員の3分の2および連邦参議院の票数の3分の2の同意を要求しており、通常の法律の議決手続(同法77条、78条)より重い要件を課しているから、同基本法は典型的な硬性憲法である。同基本法が多数回にわたり改正されてきたことは事実であるが、それは政治的な改正頻度の問題にすぎず、硬性・軟性という法概念上の区別とは次元を異にする。現実の改正回数が多いことによって硬性憲法が軟性憲法になるわけではない。よって本肢は誤りである。
憲法改正の手続において必要とされる発議とは,通常の議案についていわれる発議が原案を提出することを意味するのとは異なり,国民に提案すべき憲法の改正案を国会が決定することを意味している。
解説
本肢は正しい。憲法96条1項は、憲法改正について「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」と定める。ここにいう「発議」は、通常の議案について用いられる発議、すなわち国会法56条1項が議員による議案の提出につき定めるような原案の提出(発案)を意味するものではない。憲法改正手続における発議とは、国民に提案すべき憲法改正案を国会が国家機関としての意思として確定する行為、すなわち改正案の内容そのものを国会が決定することをいう。この決定は、両議院それぞれにおいて総議員の3分の2以上という加重された多数の賛成を得て初めて成立するものであり、単なる審議の端緒たる原案提出とは法的性質を異にする。国会法上も、憲法改正原案の発案(提出)については衆議院議員100人以上、参議院議員50人以上の賛成を要するものとされ(国会法68条の2)、これに続く両議院の議決による改正案の確定が憲法96条1項の発議に当たると整理されており、原案の提出と憲法上の発議とは段階を異にすることが条文上も裏づけられている。本肢は、憲法改正における発議が通常の議案の発議と異なり、国民に提案すべき改正案を国会が決定することを意味する旨を述べるものであって、以上の理解に合致する。よって本肢は正しい。
国民による承認の要件として必要とされる過半数の賛成の意味については,憲法上複数の解釈があり得たが,それらの中から,法律で,有効投票総数の過半数の賛成をいうものと定められた。
解説
本肢は正しい。憲法96条1項後段は、憲法改正につき「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定めるが、「その過半数」の母数を何に求めるかは条文上明らかでなく、①有権者総数の過半数、②投票総数(無効投票を含む)の過半数、③有効投票総数の過半数という複数の解釈があり得た。①によれば棄権が事実上反対と同一の効果を持ち改正の成立が著しく困難となり、②によれば無効票が反対票として作用することになるなど、いずれの解釈にも一長一短があり、憲法の文言自体からは決着がつかないため、その具体化は法律に委ねられていると解された。これを受けて制定された日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)は、憲法改正案に対する賛成の投票の数が、賛成の投票の数と反対の投票の数とを合計した数の2分の1を超えた場合に国民の承認があったものとする旨を定め(同法126条1項、98条2項参照)、③の有効投票総数の過半数という解釈を採用した。本肢は、憲法上複数の解釈があり得た中から法律によって有効投票総数の過半数と定められたという経緯を正確に述べている。よって本肢は正しい。
憲法優位説によれば,条約の承認手続と比べて憲法改正手続が厳格であることは,憲法が優位する効力を有する根拠となると考えることになる。
解説
本肢は正しい。憲法優位説の代表的な論拠の一つが、憲法改正手続と条約承認手続との厳格さの対比である。憲法の改正には、96条1項により、各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民投票における過半数の賛成という極めて重い手続が要求される。これに対し条約は、内閣が締結し(73条3号)、国会の承認を得れば成立するところ、その承認については61条が60条2項を準用しており、衆議院が可決した後に参議院が30日以内に議決しないとき、又は両院協議会でも意見が一致しないときは、衆議院の議決がそのまま国会の議決となる。すなわち条約の承認は、法律の制定(59条2項が衆議院の3分の2以上の再可決を要求する)と比べてすら緩やかな場合があり、憲法改正手続とは比較にならないほど簡易である。仮に条約が憲法に優位すると解するならば、このように軽い手続で成立した条約によって憲法の内容が実質的に書き換えられることを認める結果となり、憲法を通常の立法よりも改正困難なものとした硬性憲法の建前(96条)も、憲法改正につき国民投票を通じて主権者たる国民の判断を要求した国民主権原理(前文・1条)も没却されてしまう。したがって、改正手続の厳格性は、憲法が条約に優位する効力を有することの根拠となり、本肢は憲法優位説の理解として正しい。
憲法改正の手続において必要とされる発議とは,通常の議案についていわれる発議が原案を提出することを意味するのとは異なり,国民に提案すべき憲法の改正案を国会が決定することを意味している。
解説
本肢は正しい。憲法96条1項は、憲法改正について「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」と定める。ここにいう「発議」は、通常の議案について用いられる発議、すなわち国会法56条1項が議員による議案の提出につき定めるような原案の提出(発案)を意味するものではない。憲法改正手続における発議とは、国民に提案すべき憲法改正案を国会が国家機関としての意思として確定する行為、すなわち改正案の内容そのものを国会が決定することをいう。この決定は、両議院それぞれにおいて総議員の3分の2以上という加重された多数の賛成を得て初めて成立するものであり、単なる審議の端緒たる原案提出とは法的性質を異にする。国会法上も、憲法改正原案の発案(提出)については衆議院議員100人以上、参議院議員50人以上の賛成を要するものとされ(国会法68条の2)、これに続く両議院の議決による改正案の確定が憲法96条1項の発議に当たると整理されており、原案の提出と憲法上の発議とは段階を異にすることが条文上も裏づけられている。本肢は、憲法改正における発議が通常の議案の発議と異なり、国民に提案すべき改正案を国会が決定することを意味する旨を述べるものであって、以上の理解に合致する。よって本肢は正しい。
国民による承認の要件として必要とされる過半数の賛成の意味については,憲法上複数の解釈があり得たが,それらの中から,法律で,有効投票総数の過半数の賛成をいうものと定められた。
解説
本肢は正しい。憲法96条1項後段は、憲法改正につき「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定めるが、「その過半数」の母数を何に求めるかは条文上明らかでなく、①有権者総数の過半数、②投票総数(無効投票を含む)の過半数、③有効投票総数の過半数という複数の解釈があり得た。①によれば棄権が事実上反対と同一の効果を持ち改正の成立が著しく困難となり、②によれば無効票が反対票として作用することになるなど、いずれの解釈にも一長一短があり、憲法の文言自体からは決着がつかないため、その具体化は法律に委ねられていると解された。これを受けて制定された日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)は、憲法改正案に対する賛成の投票の数が、賛成の投票の数と反対の投票の数とを合計した数の2分の1を超えた場合に国民の承認があったものとする旨を定め(同法126条1項、98条2項参照)、③の有効投票総数の過半数という解釈を採用した。本肢は、憲法上複数の解釈があり得た中から法律によって有効投票総数の過半数と定められたという経緯を正確に述べている。よって本肢は正しい。
憲法改正の発議及び予備費支出の承諾については,議決において衆議院の優越はなく,両議院の議決は対等である。
解説
本肢は正しい。まず憲法改正の発議について、憲法96条1項は「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し」と定めており、両議院がそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成による議決をすることを要求している。ここには、法律案における衆議院の再議決(憲法59条2項)や、予算・条約・内閣総理大臣の指名における衆議院の議決を国会の議決とみなす規定(憲法60条2項、61条、67条2項)に相当するものは一切置かれていない。したがって参議院が所定の多数で賛成しない限り発議は成立せず、両議院の議決は完全に対等である。次に予備費の支出の承諾について、憲法87条1項は予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基づいて予備費を設けうるとし、同条2項は「すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない」と定めるにとどまる。予備費の設置自体は予算の一部として憲法60条の適用を受けるが、事後の承諾については衆議院の優越を認める規定が存在せず、各議院がそれぞれ承諾の議決を行うものと解されている。よって本肢は正しい。
憲法第97条は,憲法の保障する基本的人権を侵すことのできない永久の権利と位置付けており,憲法の最高法規性を実質的に根拠付けるものと見ることができる。
解説
本肢は正しい。憲法97条は、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と定め、基本的人権が歴史の中で勝ち取られてきた不可侵・永久の権利であることを宣言する。ここで、憲法がなぜ国法秩序の頂点に立ち、これに反する法律・命令・詔勅等が効力を有しないのか(98条1項)を問うとき、その答えを効力序列という形式面のみに求めることはできない。憲法が最高法規たり得る実質的な理由は、憲法が自由と人権という人類普遍の価値を保障する規範である点、すなわちその内容の価値の高さに求められるというのが通説的理解である。97条はまさにその価値そのものを宣言する規定であるから、98条1項の定める形式的最高法規性を内容の側から基礎付ける規定、いわば憲法の実質的最高法規性の根拠規定と位置付けられる。97条が「最高法規」と題する第10章の冒頭に置かれ、98条・99条と一体の章を構成していることも、この理解を裏付ける。さらに、96条が憲法改正に通常の立法を超える厳格な手続を要求する硬性憲法の建前を採るのも、人権保障の核心を多数派の一時的意思による改変から守るためであり、97条の価値宣言と結び付いて理解される。したがって、97条を憲法の最高法規性を実質的に根拠付けるものと見ることができるとする本肢は正しい。
憲法改正の発議及び予備費支出の承諾については,議決において衆議院の優越はなく,両議院の議決は対等である。
解説
本肢は正しい。まず憲法改正の発議について、憲法96条1項は「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し」と定めており、両議院がそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成による議決をすることを要求している。ここには、法律案における衆議院の再議決(憲法59条2項)や、予算・条約・内閣総理大臣の指名における衆議院の議決を国会の議決とみなす規定(憲法60条2項、61条、67条2項)に相当するものは一切置かれていない。したがって参議院が所定の多数で賛成しない限り発議は成立せず、両議院の議決は完全に対等である。次に予備費の支出の承諾について、憲法87条1項は予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基づいて予備費を設けうるとし、同条2項は「すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない」と定めるにとどまる。予備費の設置自体は予算の一部として憲法60条の適用を受けるが、事後の承諾については衆議院の優越を認める規定が存在せず、各議院がそれぞれ承諾の議決を行うものと解されている。よって本肢は正しい。
国会法によれば,議員が憲法改正原案を発議するには,衆議院においては議員100人以上,参議院においては議員50人以上の賛成を要するが,その発議に当たっては,内容において関連する事項ごとに区分して行うものとされている。
解説
本肢は正しい。憲法96条1項は、憲法改正について「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」と定めるが、その前提となる憲法改正原案を国会内でどのように発議し審議するかは法律事項であり、日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)の制定に伴って改正された国会法が第6章の2(日本国憲法の改正の発議)にこれを規定している。まず発議要件について、国会法68条の2は「議員が憲法改正原案を発議するには、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要する」と定める。これは通常の議案の発議要件(国会法56条1項。衆議院20人以上・参議院10人以上、予算を伴う法律案については衆議院50人以上・参議院20人以上)と比べて著しく加重されたものであり、国の最高法規の改変を提案する以上、相当の広がりをもった支持を要求する趣旨に出るものである。次に、国会法68条の3は「前条の憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする」と定め、いわゆる個別発議(区分発議)の原則を採用している。相互に無関係な複数の改正事項が一括して提案されると、国民は賛成したい部分と反対したい部分とを切り分けられず、抱き合わせによって意思表示が歪められる結果、憲法96条1項が国民投票による承認を要求した趣旨、すなわち主権者が個々の改正内容について自ら判断するという要請が損なわれるからである。国民投票法においても、投票用紙は国会が発議した憲法改正案ごとに調製され、案ごとに賛否を記載する方式が採られており、この個別発議の原則が投票手続の面からも担保されている。以上のとおり、賛成者数の要件も区分発議の点も国会法の規定どおりであるから、本肢は正しい。
国会が発議した憲法改正に関する国民の承認は,衆議院議員総選挙又は参議院議員通常選挙の際に行われる国民投票によることも可能であるが,これらの選挙の際に行われる場合は日本国憲法の改正手続に関する法律は適用されない。
解説
本肢は誤り。憲法96条1項後段は、改正に対する国民の承認について「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定める。ここにいう「国会の定める選挙」とは衆議院議員総選挙・参議院議員通常選挙といった国政選挙を指すと解されているから、憲法改正の承認投票を国政選挙と同一の機会に行うこと自体は憲法上許容されており、本肢の前段部分は誤りではない。誤っているのは後段である。日本国憲法の改正手続に関する法律1条は、同法が憲法96条1項に定める日本国憲法の改正についての国民の承認に係る投票(国民投票)に関する手続を定めるものである旨を明らかにしており、その適用対象を「特別の国民投票」の場合に限定していない。すなわち同法は、承認投票が単独で実施されるか国政選挙と同じ機会に実施されるかを問わず、憲法改正の承認に係る国民投票一般についての手続法として制定されたものである。実際、同法は、国民投票の期日を国会が憲法改正を発議した日から起算して60日以後180日以内において国会の議決した期日とすること(2条1項)、日本国民で年齢満18年以上の者が投票権を有すること(3条)、投票人が憲法改正案ごとに賛成または反対を記載する投票方式によること、承認の要件たる「過半数」の意義を賛成の投票の数が賛成の投票の数と反対の投票の数を合計した数の2分の1を超えることと定めることなどを一律に規定しており、国政選挙と同時に実施される場合を適用除外とする規定はどこにも置かれていない。むしろ同法が適用されなければ、投票期日、投票権者の範囲、投票方式、過半数の算定方法といった承認の根幹をなす事項がすべて未定となり、憲法96条1項の手続を実施することができなくなる。したがって、国政選挙の際に行われる場合には同法が適用されないとする本肢は誤りである。
憲法第96条第2項は,国民の承認を経た憲法改正について,「直ちにこれを公布する」と定めているが,ここで「直ちに」とされているのは,公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものである。
解説
本肢は正しい。憲法96条2項は「憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する」と定める。憲法改正の公布は天皇の国事行為であり(憲法7条1号も公布を国事行為として掲げる)、天皇の国事行為はすべて内閣の助言と承認により行われ、天皇は国政に関する権能を有しない(憲法3条、4条1項)。したがって天皇に公布の可否を判断する実質的裁量は認められない。また、助言と承認を行う内閣も、国民投票による承認という主権者国民の意思決定を受けてその形式を整えるにすぎず、改正の当否を審査して公布を拒否したり留保したりする権限を持たない。96条2項が「直ちに」と定めるのは、こうした趣旨を確認し、国民の承認を経た憲法改正の効力発生を政治的思惑によって引き延ばすことを許さない趣旨、すなわち公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものと解される。本肢はこの理解を正当に述べている。よって本肢は正しい。
憲法第96条第2項は,国民の承認を経た憲法改正について,「直ちにこれを公布する」と定めているが,ここで「直ちに」とされているのは,公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものである。
解説
本肢は正しい。憲法96条2項は「憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する」と定める。憲法改正の公布は天皇の国事行為であり(憲法7条1号も公布を国事行為として掲げる)、天皇の国事行為はすべて内閣の助言と承認により行われ、天皇は国政に関する権能を有しない(憲法3条、4条1項)。したがって天皇に公布の可否を判断する実質的裁量は認められない。また、助言と承認を行う内閣も、国民投票による承認という主権者国民の意思決定を受けてその形式を整えるにすぎず、改正の当否を審査して公布を拒否したり留保したりする権限を持たない。96条2項が「直ちに」と定めるのは、こうした趣旨を確認し、国民の承認を経た憲法改正の効力発生を政治的思惑によって引き延ばすことを許さない趣旨、すなわち公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものと解される。本肢はこの理解を正当に述べている。よって本肢は正しい。
憲法の連続性を維持するための特別な手続を定める憲法改正規定や憲法の最高法規性を確保するために特別な合憲性統制の途を設ける違憲審査制は,ともに憲法の保障の一つの方法として位置付けられる。
解説
本肢は正しい。憲法の保障とは、最高法規である憲法の規範内容が、下位の法規範や国家機関の行為によって侵害され、あるいは実質的に変質させられることを未然に防止し、また事後的に是正するための諸制度・諸方法の総称である。講学上、憲法典自身が用意する保障(憲法内的保障)と、憲法典の外にあって究極的に憲法秩序を支える保障(抵抗権や国家緊急権など、憲法外的保障)とに分けられる。前者に属するものとして、最高法規性の宣言(98条1項)、公務員の憲法尊重擁護義務(99条)、権力分立の仕組みのほか、本肢が挙げる硬性憲法の改正手続と違憲審査制がある。すなわち、憲法改正につき各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民投票における過半数の賛成を要求する96条1項は、通常の法律の制定改廃より加重された手続を課すことで、その時々の議会多数派による安易な改変から憲法を守り、その同一性と連続性を維持する事前の保障として機能する。他方、81条の違憲審査制は、一切の法律・命令・規則・処分について裁判所が憲法適合性を審査することにより、98条1項が宣言する最高法規性を現実に担保する事後的な保障である。もっとも、最大判昭和27年10月8日(警察予備隊違憲訴訟)は、81条の権限は司法権の作用として具体的な争訟事件を前提に行使されるとして抽象的違憲審査を否定しており、その憲法保障機能は個別事件の裁判を通じて果たされる。以上のとおり、憲法改正規定と違憲審査制をいずれも憲法保障の一方法と位置付ける本肢は正しい。
「唯一の立法機関」の意味の一つは,国会単独立法の原則である。それは,国会による立法は,国会以外の機関の参与を必要としないで成立するという原則である。
解説
本肢は正しい。国会単独立法の原則とは、国会による立法が国会の議決のみで完結し、他の国家機関の関与(承認・裁可・同意等)を要しないで成立するという原則をいう。明治憲法の下では、法律の成立に天皇の裁可が必要とされ(明治憲法6条)、帝国議会の議決だけでは法律は成立しなかった。これに対し日本国憲法59条1項は「法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる」と定め、両議院の可決という国会内部の意思決定のみによって法律が成立することを明示している。天皇による法律の公布(7条1号)は内閣の助言と承認に基づく国事行為であって、法律の成立要件ではなく、成立した法律を国民に周知し効力を生じさせるための形式的行為にすぎない。したがって本肢の定義は国会単独立法の原則の内容として正確である。憲法上の例外としては、一の地方公共団体のみに適用される特別法について当該地方公共団体の住民投票における過半数の同意を要求する95条が挙げられる。これは地方自治の本旨(92条)を保障し、特定の地方公共団体を狙い撃ちにする立法から住民を守る趣旨に基づく。なお、内閣に法律案提出権を認める内閣法5条がこの原則に反しないかが議論されるが、提出された法律案について国会は自由に修正・否決できるうえ、議院内閣制(66条3項・67条等)の下では内閣と国会の協働が予定されていることから、原則に反しないとするのが通説である。
憲法第96条第1項の規定する憲法改正手続における国民投票は、国民主権の権力的な契機の表れといえる。
解説
本肢は正しい。国民主権には、国の政治のあり方を正当づける根拠は国民にあるとする正当性の契機と、国民自身が現実に国家意思を決定するという権力的契機の二面がある。憲法96条1項の改正国民投票は、国民が自ら主権を行使して憲法改正の可否を決する場面であり、権力的契機の表れといえる。本肢は正しい。
憲法優位説の論拠の一つは,条約優位説がもたらす結果に対する批判である。それは,条約締結要件が憲法改正手続よりも緩やかであるので,条約によって実質的に憲法を改正することも可能になることへの批判である。
解説
本肢は正しい。憲法優位説は、憲法が条約に優位するとの立場であり、その論拠の一つとして、条約優位説を採った場合に生ずる帰結の不当性が挙げられる。すなわち、条約の締結は内閣がこれを行い、事前又は時宜によっては事後に国会の承認を経ることを必要とするにとどまる(憲法73条3号)。その国会の承認は各議院の出席議員の過半数による通常の議決で足り、しかも衆議院の優越が認められている(憲法61条、60条2項)。これに対し、憲法の改正には、各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民投票において過半数の賛成を得ることという著しく加重された手続が要求される(憲法96条1項)。したがって、仮に条約が憲法に優位するとすれば、憲法改正よりもはるかに緩やかな要件で成立する条約によって、憲法の内容を実質的に変更することが可能となってしまう。これでは硬性憲法を採用した趣旨が没却され、憲法改正について国民の意思を直接問うこととした国民主権の要請にも反する。憲法優位説はこの不都合を指摘して条約優位説を批判するのであり、本肢はこの論拠を正確に述べている。よって本肢は正しい。
憲法優位説の論拠の一つは,条約優位説がもたらす結果に対する批判である。それは,条約締結要件が憲法改正手続よりも緩やかであるので,条約によって実質的に憲法を改正することも可能になることへの批判である。
解説
本肢は正しい。憲法優位説は、憲法が条約に優位するとの立場であり、その論拠の一つとして、条約優位説を採った場合に生ずる帰結の不当性が挙げられる。すなわち、条約の締結は内閣がこれを行い、事前又は時宜によっては事後に国会の承認を経ることを必要とするにとどまる(憲法73条3号)。その国会の承認は各議院の出席議員の過半数による通常の議決で足り、しかも衆議院の優越が認められている(憲法61条、60条2項)。これに対し、憲法の改正には、各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民投票において過半数の賛成を得ることという著しく加重された手続が要求される(憲法96条1項)。したがって、仮に条約が憲法に優位するとすれば、憲法改正よりもはるかに緩やかな要件で成立する条約によって、憲法の内容を実質的に変更することが可能となってしまう。これでは硬性憲法を採用した趣旨が没却され、憲法改正について国民の意思を直接問うこととした国民主権の要請にも反する。憲法優位説はこの不都合を指摘して条約優位説を批判するのであり、本肢はこの論拠を正確に述べている。よって本肢は正しい。
憲法改正に法律の改正より困難な手続が要求される憲法を「硬性憲法」,法律の改正と同じ手続でよいものを「軟性憲法」として区別することがある。憲法の最高法規性は,憲法が「硬性憲法」として,国法秩序において最も強い形式的効力を持つ点に求められるのであって,憲法がいかなる基本価値を体現しているかということとは関係がない。
解説
本肢は誤り。改正手続の難易に着目して、通常の法律の改正よりも加重された手続によらなければ改正できない憲法を硬性憲法、法律の改正と同一の手続で改正しうる憲法を軟性憲法と呼ぶ点は、本肢の前段のとおりであり正しい。日本国憲法は、96条1項において各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と国民投票における過半数の賛成を要求しており、典型的な硬性憲法である。誤りは後段にある。憲法の最高法規性は、二つの側面から根拠づけられるのが一般的な理解である。一つは形式的な側面であり、98条1項が憲法に反する法律・命令・詔勅等を「その効力を有しない」と定めるように、憲法が国法秩序において最も強い形式的効力をもつことは、96条の加重された改正手続によって支えられている。しかし、それだけでは、なぜ憲法にそのような特別の地位が与えられるのかという実質的な理由は説明できない。そこで、もう一つの側面として、憲法が個人の尊重を出発点とし、国家権力から侵されない権利として基本的人権を保障するという基本価値を体現している点に、最高法規性の実質的な根拠が求められる。97条が基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として位置づけ、これが「最高法規」と題する第10章の冒頭に置かれていることは、まさにこの実質的最高法規性を示すものと解されている。そうすると、憲法の最高法規性は硬性という形式面のみに尽きるものではなく、憲法がいかなる基本価値を体現しているかという実質面とも密接に関係する。この点を「関係がない」と言い切る本肢は誤っている。