1この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
2行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
この条文の過去問 4問
正しい。行政不服審査は行政機関が自ら処分を見直す制度であるから、違法な処分だけでなく、裁量権の範囲内にとどまる不当な処分も審査の対象になる。
行政事件訴訟では、行政事件訴訟法30条が、行政庁の裁量処分については裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り裁判所はその処分を取り消すことができると定める。権力分立の見地から、裁判所の審査は処分の適法か違法かに限られ、裁量権の範囲内での当不当には及ばないという趣旨である。これに対し行政不服審査は、行政機関が自ら処分を見直して国民の権利利益を簡易迅速に救済し、行政の適正な運営を確保する制度であり、審査を適法性の統制に限る必要がない。行政不服審査法1条1項は「違法又は不当な処分」を不服申立ての対象として掲げ、46条1項は審査請求に係る処分が違法又は不当である場合に審査庁が裁決で処分の全部若しくは一部を取り消し、又は変更することを定めている。したがって審査庁は、処分が裁量権の範囲内にあって違法とはいえなくても、不当であると判断すれば取り消し、又は変更することができる。本肢は両制度の審査範囲の違いを正しく述べている。

この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
| 行政事件訴訟(取消訴訟) | 行政不服審査(審査請求) | |
|---|---|---|
| 審査する機関 | 裁判所 | 審査庁(行政機関) |
| 審査の対象 | 違法のみ。裁量処分は逸脱・濫用の場合に限り取消し(行訴法30条) | 違法に加えて不当も対象(行審法1条1項・46条1項) |
| できること | 処分の取消し(変更はできない) | 取消しのほか変更もできる。ただし不利益変更は禁止(48条) |
| 制度の趣旨 | 権力分立の下での適法性の統制 | 行政の自己統制による簡易迅速な救済と適正な運営の確保 |
誤り。違うのは「裁決で、当該処分である事実上の行為の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する」の部分である。事実上の行為については、審査庁は裁決で違法又は不当を宣言し、上級行政庁であれば処分庁に撤廃又は変更を命ずる(行政不服審査法47条1号)。
行政不服審査法1条2項は、審査請求の対象を行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為と定めており、人の収容や物の留置のような公権力の行使に当たる事実上の行為も処分に含まれる。しかし、事実上の行為は既に行われた物理的な状態であって、法的効力を持つ処分のように取り消して効力を消すという操作が観念できない。そこで同法47条は、事実上の行為についての審査請求に理由がある場合には、審査庁は裁決で当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、処分庁以外の審査庁は当該処分庁に対し当該事実上の行為の全部又は一部を撤廃し又は変更すべき旨を命じ(1号)、処分庁である審査庁は自ら全部又は一部を撤廃し又は変更する(2号)と定める。処分庁の上級行政庁である審査庁は1号に当たり、処分庁に命ずるのであって、自ら取り消したり変更したりするのではない。法的効力のある処分については46条1項が審査庁による取消し・変更を定めているのと対照的に、事実上の行為の現状を改める作業は処分庁の手で行わせる仕組みである。本肢は処分についての裁決の内容を事実上の行為に当てはめている。

事実上の行為についての審査請求が理由がある場合(第四十五条第三項の規定の適用がある場合を除く。)には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、次の各号に掲げる審査庁の区分に応じ、当該各号に定める措置をとる。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。一 処分庁以外の審査庁 当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部又は一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずること。二 処分庁である審査庁 当該事実上の行為の全部又は一部を撤廃し、又はこれを変更すること。
| 対象 | 上級行政庁である審査庁 | 処分庁である審査庁 | それ以外の審査庁 |
|---|---|---|---|
| 処分(46条1項) | 取消し、又は変更 | 取消し、又は変更 | 取消しのみ(変更不可) |
| 事実上の行為(47条) | 違法・不当を宣言し、処分庁に撤廃又は変更を命ずる | 違法・不当を宣言し、自ら撤廃又は変更 | 違法・不当を宣言し、処分庁に撤廃を命ずる(変更を命ずることは不可) |
| 申請拒否処分の取消し(46条2項) | 処分庁に一定の処分を命ずることができる | 自ら一定の処分をする | 命ずることはできない |
| 共通の制限 | 審査請求人の不利益への変更は不可(48条) | 同左 | 同左 |
誤り。違うのは「審査請求の審理が開始した以降は,原則として,審査請求人が審査請求を取り下げることはできない」の部分であり、審査請求人は裁決があるまではいつでも審査請求を取り下げることができる(行政不服審査法27条1項)。
行政不服審査法1条1項は、簡易迅速かつ公正な手続の下で国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的に掲げており、本肢の前半は条文どおりである。しかし、行政の適正な運営の確保は不服申立ての制度全体が結果として果たす機能であって、個々の審査請求人に手続を続ける義務を課す根拠にはならない。審査請求は国民が自らの権利利益の救済を求めて申し立てるものであるから、救済を求め続けるかどうかも申立人の意思に委ねられる。そこで27条1項は、審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができると定め、審理の開始の前後を問わず取下げを認めている。取下げは書面でしなければならない(同条2項)。審理が始まった後に取下げを制限する規定はなく、審査庁が職権で審理を続けることもできない。取り下げられた審査請求は初めからなかったものとして扱われるから、審査請求期間が過ぎていれば改めて審査請求をすることはできない。本肢は、目的規定から取下げの制限を導いている点で誤りである。

審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができる。
正しい。行政不服審査法1条1項は違法又は不当な処分を対象とするが、行政事件訴訟法30条は裁量処分について裁量権の範囲の逸脱又は濫用があった場合に限り取り消すことができるとし、裁判所は不当を理由に取り消せない。
行政不服審査法1条1項は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く不服申立てをすることができる制度を定めると明記し、同法46条1項も審査庁は処分が違法又は不当である場合に処分を取り消すと定める。不当とは、裁量権の範囲を超え又はその濫用があるとまではいえないが、裁量の行使が目的に照らして適切を欠くことをいい、審査庁は行政組織の内部にあって処分庁と同じ立場から裁量の当否を判断できるから、不当も是正の対象になる。これに対し裁判所は、行政庁の裁量に属する事項について自らの判断を行政庁の判断に置き換えることができず、行政事件訴訟法30条は、行政庁の裁量処分については裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り裁判所はその処分を取り消すことができると定める。したがって裁量の範囲内にとどまる不当な処分は、取消訴訟では取り消されない。不当性の統制は不服申立てにのみ認められる利点であり、両制度の使い分けの理由になる。本肢はこの違いを正確に述べている。

行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
| 審査請求(行審法) | 取消訴訟(行訴法) | |
|---|---|---|
| 審理の対象 | 違法又は不当(1条1項) | 違法のみ。裁量処分は逸脱・濫用に限る(30条) |
| 適用除外 | 7条1項に列挙(教育上の処分、刑事事件の処分など) | 対応する列挙なし |
| 処分の変更 | 審査庁が上級行政庁・処分庁なら変更可(46条1項)。不利益変更は禁止(48条) | 取消し・棄却のみ。変更はできない |
| 期間 | 知った日の翌日から3か月。正当な理由があればこの限りでない(18条1項) | 知った日から6か月。正当な理由があればこの限りでない(14条1項) |
| 執行停止 | 停止その他の措置。職権でも可(25条) | 停止のみ。申立てが必要(25条) |











