【判例】取締役の競業避止義務(最判昭56.3.26)
取締役の競業避止義務に関する最高裁判例を解説。競業取引の範囲、取締役会の承認の要否、損害賠償の算定方法をめぐる学説対立を詳しく分析します。
この判例のポイント
取締役が取締役会の承認を得ないで競業取引を行った場合、当該取引によって取締役又は第三者が得た利益の額が会社の損害額と推定される(会社法423条2項)。競業取引の範囲は、会社の事業と市場において競合する取引を広く含むとした判決。取締役の忠実義務の具体的発現としての競業避止義務の内容と射程を明確にした重要判例である。
事案の概要
Y株式会社の取締役であったAは、Y社の事業と同種の事業を営む別会社Bの取締役にも就任し、B社を通じてY社の顧客と取引を行っていた。AはこれらのB社を通じた取引について、Y社の取締役会の承認を得ていなかった。
Y社は、Aの行為が競業避止義務に違反するとして、Aに対し、会社法356条1項1号(当時は商法264条)違反に基づく損害賠償を請求した。Y社は、損害額について会社法423条2項(当時は商法266条4項)の推定規定を援用し、AがB社を通じて得た利益の額をY社の損害額として主張した。
これに対しAは、B社の取引はY社の事業分野とは異なるものであり競業に当たらないと主張するとともに、仮に競業に該当するとしても、Y社に実際の損害は生じていないと主張した。
争点
- Aの行為は「自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引」(競業取引)に該当するか
- 競業取引の範囲はどこまで及ぶか
- 会社法423条2項の損害推定規定の意義と推定の覆し方
判旨
最高裁は、取締役の競業避止義務の趣旨と競業取引の範囲について、以下のように判示した。
取締役の競業避止義務に関する規定は、取締役がその地位を利用して会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ることを防止する趣旨であり、会社の事業と市場において競合し、会社と取締役との間に利益の衝突が生ずるおそれのある取引がこれに該当する
― 最高裁判所第一小法廷 昭和56年3月26日 昭和55年(オ)第195号
そのうえで、AがB社を通じて行った取引がY社の事業と市場において競合するものであるとして、競業取引に該当すると判断した。
また、損害賠償の算定について、423条2項の推定規定を適用し、AがB社を通じて得た利益の額をY社の損害額と推定した。この推定を覆すためには、Aの側で、Y社に実際の損害が生じていないことを立証しなければならないとした。
ポイント解説
競業避止義務の趣旨
取締役の競業避止義務(会社法356条1項1号)は、取締役の忠実義務(同法355条)の具体的発現の一つである。その趣旨は以下の点にある。
- 利益相反の防止: 取締役は会社の業務執行に関する情報・ノウハウ・人脈を有しており、これらを自己又は第三者の利益のために利用することは、会社の利益と衝突する。競業避止義務は、このような利益相反を予防する
- 会社の営業機会の保護: 取締役が会社の事業分野で競業を行うと、会社が獲得すべき営業機会(ビジネスチャンス)が奪われるおそれがある。競業避止義務は、取締役による会社の営業機会の横取りを防止する
- 信認義務の具体化: 取締役は会社に対して信認義務(fiduciary duty)を負っており、自己の利益を会社の利益に優先させてはならない。競業避止義務はこの信認義務の具体的な現れである
「事業の部類に属する取引」の解釈
競業取引に該当するための要件である「会社の事業の部類に属する取引」の範囲について、以下の議論がある。
- 広義説(判例の立場): 会社が現に営んでいる事業と市場において競合する取引を広く含む。会社が将来的に進出を予定している事業分野も含まれうる。本判決はこの立場に立つ
- 狭義説: 会社が現に営んでいる事業と同一の品目・地域における取引に限定する。異なる地域や異なる顧客層を対象とする取引は、たとえ同種の事業であっても競業に当たらないとする
- 中間説: 会社の現在の事業と実質的に競合関係にある取引を基準とし、取引の品目・地域・顧客層を総合的に考慮して判断する
競業取引の承認手続
取締役が競業取引を行うためには、取締役会の承認(取締役会設置会社の場合)又は株主総会の承認(取締役会非設置会社の場合)を得なければならない(会社法356条1項1号、365条1項)。
承認を得るにあたり、取締役は取引について重要な事実を開示しなければならない(356条1項柱書)。開示すべき事実には、取引の相手方、取引の内容、取引の規模等が含まれる。
承認を得た場合であっても、取引後に取締役会に対して取引についての重要な事実の報告を行わなければならない(365条2項)。この事後報告義務は、取締役会による継続的な監視を可能にするためのものである。
損害推定規定の意義
会社法423条2項は、取締役が競業取引によって「自己又は第三者が得た利益」の額を会社に生じた損害の額と推定すると規定する。
この推定規定の趣旨は、以下の点にある。
- 立証困難の緩和: 競業取引によって会社がどれだけの損害を被ったかを立証することは、因果関係の証明が困難である(当該取引が行われなければ会社がその取引を獲得できたかは不確実)。推定規定により、会社側は取締役又は第三者が得た利益の額を立証すれば足りる
- 違法行為の抑止: 取締役が得た利益の額を損害と推定することで、競業取引による不正な利得の吐き出しを促し、競業避止義務違反の抑止力を強化する
学説・議論
推定の覆し方をめぐる議論
423条2項の推定を覆すことがどの程度可能かについては、学説上の対立がある。
- 推定覆滅困難説: 推定規定の趣旨が違法行為の抑止にあることを重視し、推定を覆すことは極めて困難であるべきとする。取締役が競業取引を行った以上、その利益は原則として会社の損害と評価されるべきである
- 推定覆滅可能説: 取締役が得た利益と会社の損害の間に因果関係がないことを立証すれば、推定は覆されうる。例えば、会社が当該取引を行う能力・意思を有していなかった場合、取締役の競業取引と会社の損害との間に因果関係はない
- 部分的覆滅説: 取締役が得た利益の全額ではなく、一部について推定が覆される場合も認める。例えば、取締役が得た利益の一部が競業取引とは無関係な要因(取締役の個人的な能力・人脈等)に基づく場合には、その部分について推定が覆されうる
退任後の競業避止義務
取締役の競業避止義務は、在任中の義務である。退任後の取締役が旧会社と競業する事業を営むことは、原則として自由である。
もっとも、退任後の競業避止について特約(競業避止契約)が締結されている場合には、当該特約の有効性が問題となる。判例は、退任後の競業避止特約について、期間、地域、業種等の限定の有無、代償措置の有無等を考慮して、合理的な範囲内であれば有効であるとしている。
退任後の競業避止義務を課す特約がない場合であっても、退任取締役が在任中に知り得た営業秘密を利用して競業を行う場合には、不正競争防止法(営業秘密の不正使用、同法2条1項7号)や不法行為(民法709条)に基づく責任が問題となりうる。
取締役の兼任と競業
本判決のように、取締役が複数の会社の取締役を兼任する場合に競業避止義務がどのように適用されるかは、実務上重要な問題である。
取締役が競業会社の取締役に就任すること自体は、直ちに競業避止義務違反を構成するわけではない。しかし、競業会社の業務を通じて、会社の事業と競合する取引を実際に行う場合には、取締役会の承認を得る必要がある。この承認を得ないで競業取引を行えば、競業避止義務違反として責任を負う。
判例の射程
介入権との関係
旧商法264条3項は、取締役が取締役会の承認なしに競業取引を行った場合に、会社が介入権(当該取引を会社のためになされたものとみなす権利)を行使できると規定していた。しかし、現行会社法ではこの介入権は廃止されている。廃止の理由として、介入権の行使は法律関係を複雑にし、第三者の利益を害するおそれがあることが挙げられている。現行法のもとでは、損害賠償請求(423条1項)と損害推定規定(423条2項)が主たる救済手段となる。
利益相反取引との関係
競業避止義務は、利益相反取引の規制(会社法356条1項2号・3号)と並列する取締役の義務規制である。両者はいずれも取締役と会社の利益衝突を防止する趣旨であるが、規制の対象が異なる。
- 競業取引: 取締役が会社の事業と同種の取引を行う場合
- 利益相反取引: 取締役が会社と直接取引をする場合(直接取引)、又は取締役の債務を会社が保証する等の場合(間接取引)
使用人兼務取締役の場合
取締役が同時に使用人(従業員)を兼務している場合(使用人兼務取締役)、会社法上の競業避止義務に加えて、雇用契約上の競業避止義務(信義則上の義務)も問題となりうる。両者の義務は併存し、より厳格な義務が適用される。
反対意見・補足意見
本判決には反対意見は付されていない。競業取引の範囲を広く解する立場と、損害推定規定の適用を肯定する判断は、取締役の忠実義務の実効性確保という観点から支持されている。
もっとも、損害推定規定の厳格な適用が取締役の自由な経済活動を過度に制約するのではないかとの懸念も指摘されており、推定の覆し方の具体的基準については、なお判例の蓄積が求められている。
試験対策での位置づけ
取締役の競業避止義務は、司法試験・予備試験の商法(会社法)において最重要テーマの一つであり、利益相反取引の規制と並んで取締役の義務規制の中核を成す。出題科目としては、論文式試験・短答式試験の双方で繰り返し出題されている。
出題実績としては、新司法試験では平成19年、平成24年、平成30年、令和3年など多数回にわたり出題されており、予備試験でも平成27年、令和2年に関連する出題がなされた。
主な出題パターンは、(1)「会社の事業の部類に属する取引」の範囲の認定、(2)取締役会の承認を得ないで行われた競業取引の効力と取締役の責任、(3)423条2項の損害推定規定の適用と推定の覆し方、(4)退任後の競業避止義務の有無と競業避止契約の有効性、の四つが主要な類型である。
答案作成にあたっては、競業避止義務の趣旨(利益相反の防止・営業機会の保護)を正確に記述したうえで、事案に即して「事業の部類に属する取引」該当性を具体的に認定し、損害推定規定の適用まで一貫した論理展開ができることが重要である。
答案での使い方
論証パターン
競業避止義務を答案で展開する際の基本的な論証の流れは以下のとおりである。
まず、問題提起として「取締役Aの行為は、競業避止義務(会社法356条1項1号)に違反するか」と記述する。
次に、規範定立として以下を記述する。
「会社法356条1項1号は、取締役が自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、取締役会の承認を受けなければならないと規定する。同規定の趣旨は、取締役がその地位を利用して会社の利益を犠牲にし自己又は第三者の利益を図ることを防止する点にある。「事業の部類に属する取引」とは、会社の事業と市場において競合し、会社と取締役との間に利益の衝突が生ずるおそれのある取引をいう(最判昭56.3.26)。」
さらに、損害賠償の論証は以下のとおりである。
「取締役会の承認を得ないで競業取引を行った取締役は、423条1項に基づき会社に対して損害賠償責任を負う。この場合、423条2項により、当該取引によって取締役又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定される。この推定規定の趣旨は、競業取引による会社の損害額の立証が困難であることを踏まえ、立証責任を転換して会社の保護を図る点にある。」
答案記述例
「AはY社の取締役であるところ、B社を通じてY社の顧客と同種の取引を行っている。Y社の事業は精密機器の製造販売であり、B社も同種の精密機器を製造販売していることから、両社の事業は市場において競合関係にある。したがって、AのB社を通じた取引は「会社の事業の部類に属する取引」に該当する。AはこのB社を通じた取引についてY社の取締役会の承認を得ていないから、356条1項1号に違反する。よって、Aは423条1項に基づきY社に対して損害賠償責任を負う。損害額については、423条2項の推定規定により、AがB社を通じて得た利益の額がY社の損害額と推定される。Aがこの推定を覆すためには、Y社に実際の損害が生じていないこと、又は損害額が推定額を下回ることを立証しなければならない。」
重要概念の整理
競業取引と利益相反取引の比較
| 比較項目 | 競業取引(356条1項1号) | 直接取引(356条1項2号) | 間接取引(356条1項3号) |
|---|---|---|---|
| 規制対象 | 会社の事業と同種の取引 | 取締役と会社間の取引 | 取締役の利益のための第三者と会社の取引 |
| 典型例 | 取締役が競業会社で同種事業を営む | 取締役が会社から不動産を購入 | 取締役の債務を会社が保証 |
| 承認機関 | 取締役会又は株主総会 | 取締役会又は株主総会 | 取締役会又は株主総会 |
| 事後報告 | 必要(365条2項) | 必要(365条2項) | 必要(365条2項) |
| 損害推定 | あり(423条2項) | なし | なし |
| 任務懈怠の推定 | なし | あり(423条3項) | あり(423条3項) |
| 承認ある場合の取引の効力 | 有効 | 有効 | 有効 |
| 承認なき場合の取引の効力 | 有効(取締役の責任の問題) | 無効の余地あり(相対的無効) | 有効(第三者保護) |
損害推定の構造
| 段階 | 内容 | 立証責任 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 競業取引の存在 | 会社側(原告) |
| 第2段階 | 取締役会承認の不存在 | 会社側(原告) |
| 第3段階 | 取締役又は第三者が得た利益の額 | 会社側(原告) |
| 推定発動 | 得た利益の額=会社の損害額 | ―(推定) |
| 推定の覆滅 | 会社に損害がないこと等 | 取締役側(被告) |
発展的考察
競業避止義務の現代的課題
取締役の競業避止義務は、近年の経済環境の変化に伴い、新たな課題に直面している。
第一に、兼業・副業の増加との関係である。政府が推進する「働き方改革」の一環として兼業・副業が奨励される中、取締役が複数の会社の役員を兼務する場面が増加している。このような場面では、競業避止義務の適用範囲が改めて問われることとなる。特に、スタートアップ企業のエコシステムにおいて、経験豊富な経営者が複数のベンチャー企業の取締役を兼任するケースが増えており、競業避止義務との調整が実務上の課題となっている。
第二に、デジタルプラットフォームビジネスとの関係である。プラットフォーム型ビジネスでは、事業の範囲が従来の業種分類では捉えきれない広がりを持つ。このような事業環境において、「会社の事業の部類に属する取引」の範囲をどのように画定するかは困難な問題である。
第三に、退任後の競業避止義務に関する判例の蓄積も注目される。退任後の競業避止契約の有効性については、最判平22.3.25が、期間・地域・業種等の限定の有無、代償措置の有無等を総合考慮して合理的範囲で有効性を認める判断枠組みを示している。近年の裁判例では、営業秘密の保護と職業選択の自由との調和が一層重要な課題となっており、不正競争防止法との交錯も見られる。
第四に、ESG経営やサステナビリティの観点から、取締役が環境・社会課題に取り組む他社の役員を兼任する場面で、競業避止義務がどのように機能するかも今後の論点として浮上しつつある。
よくある質問
Q1: 取締役が競業会社の取締役に就任すること自体は競業避止義務に違反しますか。
取締役が競業会社の取締役に就任すること自体は、直ちに356条1項1号の競業避止義務違反を構成するものではない。同号が禁止するのは「取引」であり、就任行為そのものは取引ではないからである。しかし、競業会社の取締役として実際に会社の事業と競合する取引を行う場合には、取締役会の承認が必要となる。なお、就任自体が善管注意義務(330条・民法644条)又は忠実義務(355条)に違反するかは別途問題となりうる。
Q2: 取締役会の承認を得て競業取引を行った場合も損害賠償責任を負いますか。
取締役会の承認を得て競業取引を行った場合、423条2項の損害推定規定は適用されない。しかし、承認を得た場合であっても、取締役は善管注意義務・忠実義務を免れるわけではなく、会社に損害を与えた場合には423条1項に基づく一般的な損害賠償責任を負いうる。ただし、この場合には会社側が損害額と因果関係を立証する必要がある。
Q3: 「自己又は第三者のために」とはどういう意味ですか。
「自己又は第三者のために」の「ために」の解釈については、(1)取引の名義(計算)説と(2)利益帰属説が対立している。名義説は、取引が自己の名義で行われたか第三者の名義で行われたかを基準とする。利益帰属説は、取引の経済的利益が誰に帰属するかを基準とする。通説は名義説を採用しており、本判決もこの立場に立つものと理解されている。
Q4: 現行会社法では「介入権」はまだ認められていますか。
旧商法264条3項が認めていた介入権(取締役が承認なしに競業取引を行った場合に、当該取引を会社のためになされたものとみなす権利)は、現行会社法では廃止されている。廃止の理由は、介入権の行使が法律関係を複雑にし、第三者の利益を害するおそれがあることによる。現行法のもとでは、損害賠償請求(423条1項)と損害推定規定(423条2項)が主たる救済手段となる。
Q5: 退任後に元取締役が在任中に知った営業秘密を利用して競業した場合はどうなりますか。
退任後の競業は原則として自由であるが、在任中に知り得た営業秘密を利用して競業を行う場合には、(1)退任後の競業避止特約がある場合にはその特約に基づく責任、(2)不正競争防止法2条1項7号(営業秘密の不正使用)に基づく差止め・損害賠償、(3)民法709条に基づく不法行為責任が問題となりうる。司法試験の答案では、会社法上の競業避止義務が在任中の義務にとどまることを指摘したうえで、これらの代替的救済手段に言及することが望ましい。
ポイント解説の補足: 競業取引と取締役の善管注意義務
競業避止義務は忠実義務の具体的発現であるが、善管注意義務(会社法330条・民法644条)との関係も重要である。取締役が競業会社の取締役を兼任し、両社の利益が相反する局面で意思決定を行う場合、善管注意義務の観点からも問題が生じうる。
具体的には、取締役が兼任先の競業会社の利益を優先して会社の営業機会を逸失させた場合、356条1項1号の「取引」には該当しなくても、善管注意義務違反として423条1項に基づく損害賠償責任が問われうる。答案では、競業避止義務のみならず善管注意義務の観点からも検討を加えることで、多角的な分析が可能となる。
関連条文
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
― 会社法 第356条第1項第1号
取締役が第三百五十六条第一項の規定に違反して自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしたときは、当該取引によって取締役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
― 会社法 第423条第2項
関連判例
- 利益供与禁止の判例 - 取締役の義務違反の別類型
- 取締役の責任に関する判例 - 取締役の第三者に対する責任
- 法人格否認の法理の判例 - 別会社を利用した義務回避
まとめ
取締役の競業避止義務に関する本判決は、競業取引の範囲を会社の事業と市場において競合する取引として広く捉え、損害推定規定の適用を肯定した重要判例である。競業避止義務は取締役の忠実義務の具体的発現として、会社の営業機会の保護と利益相反の防止を目的とする。退任後の競業避止義務、取締役の兼任と競業、損害推定の覆し方など関連する論点は多く、企業実務においても取締役の行動規範を画する重要な法理として機能し続けている。
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