/ 刑法

【判例】共謀共同正犯(練馬事件最大判昭33)

共謀共同正犯の理論的根拠と成立要件を解説。練馬事件大法廷判決を中心に、共謀の意義、正犯性の根拠、スワット事件決定等の展開を判例・学説から分析します。

この判例のポイント

共謀共同正犯とは、二人以上の者が犯罪の実行を共謀し、そのうちの一部の者が共謀に基づいて犯罪を実行した場合に、実行行為を分担しなかった者についても共同正犯の成立を認める法理である。練馬事件大法廷判決(最大判昭33.5.28)は共謀共同正犯の理論を正面から承認し、その後のスワット事件決定(最決平15.5.1)は正犯性の根拠としての「正犯意思」と「重要な役割」を明示した。


事案の概要

練馬事件(最大判昭33.5.28)

被告人らは、政治的目的に基づき複数名で共謀の上、ある者が実行行為を担当し、他の者は実行には直接関与せず謀議・指揮等を行った。共謀に加わったが実行行為を分担しなかった者にも共同正犯が成立するかが、最高裁大法廷で正面から争われた。

スワット事件(最決平15.5.1)

暴力団組長である被告人が、スワットと称する配下組員らに対し、日常的に身辺の警護等を指示していたところ、配下組員がけん銃等を携行していた事案。組長は直接けん銃の所持を指示しておらず、実行行為に直接関与していないにもかかわらず、配下組員のけん銃所持について共謀共同正犯が成立するかが争われた。


争点

  • 実行行為を分担しない者に共同正犯が成立するか(共謀共同正犯の適法性)
  • 共謀共同正犯の成立要件は何か
  • 「共謀」の意義と認定方法

判旨

練馬事件大法廷判決

共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が認められなければならない。したがつて右のような関係において共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、その間刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない

― 最高裁判所大法廷 昭和33年5月28日 昭和28年(あ)第4083号

本判決は、共謀共同正犯の法理を大法廷判決として正面から承認した。共謀の内容として、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すという謀議が必要であるとし、このような関係が認められる以上、実行行為を分担しなくても共同正犯が成立するとした。

スワット事件決定

被告人は、スワットらに対してけん銃等を携行して警護するように直接指示を下さなくても、被告人の地位と、被告人とスワットらとの関係に照らし、被告人の警護のためにけん銃等を携行していることを確定的に認識しながら、それを当然のこととして受入れて認容していたものであり、そのことをスワットらも承知していたことなどの事情を総合すると、被告人とスワットらとの間にけん銃等の所持について黙示の意思の連絡があったといえる

― 最高裁判所第一小法廷 平成15年5月1日 平成13年(あ)第2tried号

本決定は、明示的な指示や謀議がなくても、黙示の意思連絡があれば共謀が認められるとした。さらに、被告人の組織における地位・役割、被告人が確定的に認識しながら認容していたこと等を総合的に考慮して、被告人に正犯としての責任を認めた。


ポイント解説

共謀共同正犯の理論的根拠

共謀共同正犯の理論的根拠をめぐっては、以下の学説が対立してきた。

  • 共同意思主体説: 共謀者全員が「共同意思主体」を形成し、この共同意思主体の活動として犯罪が実行されるとする。したがって、実行行為を分担しなくても、共同意思主体の一員として正犯の責任を負う。練馬事件判決の「共同意思の下に一体となって」という文言は、この理論に親和的とされる
  • 間接正犯類似説: 共謀者が他の共謀者を「道具」のように利用して犯罪を実行するという点で、間接正犯に類似した構造を持つとする。練馬事件判決の「他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行った」という文言がこれを示唆する
  • 行為支配説: 犯罪の実行に対して機能的な支配(行為支配)を有する者は正犯であるとする。共謀者は犯罪計画の策定や実行者への指示等を通じて犯罪実行を機能的に支配しており、この支配が正犯性の根拠となる

「共謀」の意義

練馬事件判決は、共謀の内容を「特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議」と定義した。ここから、共謀には以下の要素が含まれる。

  • 特定の犯罪の実行に向けた意思の合致: 犯罪の種類・対象が特定されている必要がある
  • 相互利用・補充関係: 共謀者間で互いの行為を利用・補充する関係が存在すること
  • 犯罪実行の意思の共有: 各共謀者が犯罪の実行を自らの意思として引き受けていること

共謀の認定方法

共謀は明示的な合意に限られず、黙示の意思連絡によっても認められる(スワット事件決定)。実務上は、以下の事情が共謀の認定に用いられる。

  • 共謀者間の関係性: 組織的上下関係、密接な人的関係等
  • 事前の準備行為: 犯罪計画の策定、凶器・道具の準備、役割分担の決定等
  • 犯行時の行動: 見張り、逃走車両の手配、指示・連絡等
  • 犯行後の行動: 犯行に関する口裏合わせ、利益の分配等

正犯と共犯(教唆犯・幇助犯)の区別

共謀共同正犯の問題は、結局のところ正犯と共犯(教唆犯・幇助犯)の区別の問題に帰着する。実行行為を分担しない者は、教唆犯(刑法61条)または幇助犯(刑法62条)にとどまるのが原則である。共謀共同正犯を認めることは、実行行為を分担しない者を正犯とすることを意味する。

正犯と共犯の区別基準について、以下の見解が対立する。

区別基準 内容 共謀共同正犯との関係 形式的客観説 構成要件該当行為(実行行為)の一部を分担した者が正犯 共謀共同正犯は否定される 実質的客観説 犯罪実現に重要な寄与をした者が正犯 共謀共同正犯を肯定しうる 行為支配説 犯罪の実行を支配・統制した者が正犯 共謀者が支配を有すれば正犯 主観説 正犯意思(自己の犯罪として行う意思)がある者が正犯 正犯意思があれば正犯

学説・議論

共謀共同正犯の肯否をめぐる対立

共謀共同正犯の適法性自体について、学説上は以下の対立がある。

  • 肯定説(判例・多数説): 共謀共同正犯は、犯罪の実現において重要な役割を果たした者を正犯として処罰するために必要な法理であり、刑法60条の解釈として許容される。練馬事件大法廷判決以降、判例は一貫してこの立場をとっている
  • 否定説: 刑法60条の「共同して犯罪を実行した」という文言は、実行行為の分担を前提としており、実行行為を分担しない者を共同正犯とすることは罪刑法定主義に反する。この立場からは、実行行為を分担しない者は教唆犯または幇助犯として処罰すれば足りるとされる

否定説は、かつては有力な学説であったが、現在では判例実務の確立により、否定説を採る論者は少数となっている。もっとも、否定説の問題提起は依然として重要であり、共謀共同正犯の安易な拡大適用に対する歯止めとして機能している。

共謀共同正犯と黙示の共謀

スワット事件決定が黙示の意思連絡による共謀を認めたことに対しては、以下の批判がある。

  • 共謀概念の希薄化: 明示的な合意がなくても共謀が認められるとすれば、共謀の範囲が際限なく拡大するおそれがある。特に組織犯罪の文脈では、組織の上位者が下位者の行為について広く責任を問われることになりかねない
  • 立証の困難と推認の危険: 黙示の共謀は、共謀者間の関係性や犯行前後の行動等の間接事実から推認される。この推認が安易に行われれば、共謀の立証が推定にすり替わる危険がある

これに対し、肯定的に評価する見解は、組織犯罪の実態として首謀者が直接指示を出さないケースは多いのであり、黙示の共謀を認めなければ首謀者の刑事責任を問えなくなるとする。

共謀の射程(共謀の範囲を超えた行為)

共謀に基づいて犯罪が実行された場合であっても、実行者が共謀の範囲を超えた行為(例えば、窃盗の共謀で出かけたのに実行者が強盗を行った場合)を行った場合に、共謀者がどこまで責任を負うかという問題がある。この点については、共謀の具体的内容と実際の実行行為の関係に応じて個別に判断されている。


判例の射程

練馬事件判決の射程

練馬事件判決は、共謀共同正犯の法理を一般的に承認した大法廷判決であり、その射程は極めて広い。判例は、その後も一貫して共謀共同正犯を認めており、殺人、強盗、窃盗、覚醒剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反等、広範な犯罪類型において共謀共同正犯の成立が認められている。

スワット事件決定の射程

スワット事件決定は、暴力団組長と配下組員の関係という特殊な組織的関係を前提とする事案であり、直ちに一般的な共謀共同正犯の事案に適用されるものではない。もっとも、黙示の意思連絡による共謀を認めた点は一般的な法理として重要であり、企業犯罪等の組織的犯罪における首謀者の共謀認定にも影響を与えうる。


反対意見・補足意見

練馬事件における反対意見

練馬事件大法廷判決に対しては、反対意見はなく、裁判官全員一致の意見である。ただし、共謀共同正犯の理論的根拠について各裁判官の考え方が完全に一致していたかどうかは明らかではない。判決文は「共同意思の下に一体となって互に他人の行為を利用し」という表現を用いているが、これが共同意思主体説を採用したものか、間接正犯類似説に立つものかについては解釈が分かれている。

スワット事件における補足意見

スワット事件決定には個別の反対意見は付されていないが、本決定が黙示の共謀を認めたことについては、下級審段階で判断が分かれていた。最高裁は、被告人の組織における地位けん銃携行についての確定的認識と認容、配下組員の被告人の意を体した行動等を総合的に考慮して共謀を認定しており、その判断過程は実務上の指針として重要である。


試験対策での位置づけ

共謀共同正犯は、司法試験・予備試験の刑法科目における最重要論点の一つであり、共犯論の中核として論文式試験でほぼ毎年出題される。短答式においても頻出であり、正犯と共犯の区別は刑法学習の基本中の基本である。

短答式試験では、共謀共同正犯の成立要件、練馬事件判決の判旨の正確な理解、正犯と教唆犯・幇助犯の区別基準が繰り返し出題されている。特に、刑法60条の「共同して犯罪を実行した」の解釈として共謀共同正犯が認められるか、黙示の意思連絡で共謀が成立するかという論点が頻出する。

論文式試験では、平成25年予備試験刑法で共同正犯の成否が正面から問われた。令和4年予備試験でも共謀共同正犯の成否が出題されている。採点実感では、共謀共同正犯の規範を正確に示すことは当然の前提とされ、あてはめにおいて正犯性を基礎づける具体的事実を丁寧に摘示できるかが合否を分けるとされている。特に、(1)共謀の存在、(2)正犯意思(自己の犯罪として行う意思)、(3)犯罪実現における重要な役割の3点を事案に即して論じることが求められる。

共謀の射程の問題(共謀の範囲を超えた犯罪が実行された場合の処理)も重要な出題テーマであり、窃盗の共謀で出かけたが実行者が強盗に及んだ場合などの事案が典型的である。


答案での使い方

基本的な論証パターン

パターン1: 共謀共同正犯の成否を論じる場合

「本件では、甲は犯罪の実行行為を分担しておらず、共謀共同正犯(刑法60条)の成否が問題となる。

この点、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よって犯罪を実行した場合には、直接実行行為に関与しない者でも共同正犯が成立する(練馬事件・最大判昭33.5.28)。共謀共同正犯の成立には、(1)共謀の事実、(2)共謀に基づく実行行為が必要であり、正犯としての責任を負わせる根拠として、正犯意思と犯罪実現における重要な役割が求められる。」

パターン2: 共謀の認定(あてはめ)

「本件では、甲は乙に対して犯行計画の詳細を伝え、役割分担を指示しており、明示的な意思の合致が認められる。また、甲は犯行の首謀者として計画を立案し、利益の大半を取得する立場にあったことから、自己の犯罪として行う意思(正犯意思)が認められる。さらに、甲は犯行の計画策定、実行者の選定、道具の準備等、犯罪実現において重要な役割を果たしている。以上より、甲には共謀共同正犯が成立する。」

パターン3: 共謀の射程が問題となる場合

「本件では、甲乙間で窃盗の共謀がなされたが、乙が実際には強盗を行った。甲に強盗罪の共謀共同正犯が成立するかについて、共謀の射程が問題となる。共謀に基づく実行行為といえるためには、実行された犯罪が共謀の内容と実質的に重なり合う関係にあることが必要である。本件では、窃盗と強盗は財物奪取という点で重なり合うが、暴行・脅迫の有無において質的に異なる。したがって、甲には窃盗罪の限度で共同正犯が成立し、強盗罪の共同正犯は成立しないと解する。」

答案作成上の注意点

  • 共謀共同正犯と幇助犯の区別を意識すること。実行行為を分担しない者が正犯か幇助犯かの区別は、正犯意思の有無と犯罪実現における役割の重要性で判断する
  • 共謀の認定においては、具体的事実を丁寧に拾うこと。抽象的に「共謀があった」と述べるだけでは不十分であり、共謀を基礎づける間接事実を摘示する必要がある
  • 共謀の射程の問題では、構成要件の重なり合い共謀の具体的内容の両面から検討すること

重要概念の整理

共謀共同正犯の成立要件

要件 内容 判断のポイント 共謀 特定の犯罪について意思の合致があること 明示的合意のほか黙示の意思連絡も可(スワット事件) 正犯意思 自己の犯罪として行う意思 動機・利益帰属・犯行における地位等から判断 重要な役割 犯罪実現に不可欠又は重要な寄与 計画策定、指示、資金提供、道具準備等 共謀に基づく実行 共謀に基づいて犯罪が実行されたこと 共謀の射程内の行為であること

正犯と共犯の区別基準の比較

区別基準 正犯の判断 長所 短所 判例との関係 形式的客観説 実行行為の分担の有無 明確 共謀共同正犯を説明できない 判例と不整合 実質的客観説 犯罪実現への重要な寄与 共謀共同正犯を説明可能 「重要な寄与」が曖昧 近時の判例に親和的 行為支配説 犯罪の実行に対する支配 理論的整合性が高い 支配の内容が抽象的 学説上有力 主観説 正犯意思の有無 共謀共同正犯を容易に説明 正犯意思の認定が困難 判例の一部に親和的

共謀共同正犯と幇助犯の比較

項目 共謀共同正犯 幇助犯 実行行為の分担 不要 不要 正犯意思 あり(自己の犯罪) なし(他人の犯罪の援助) 犯罪実現への関与 重要な役割 実行を容易にする程度 法定刑 正犯と同じ 正犯の刑を減軽(必要的減軽) 刑法上の根拠 60条 62条

発展的考察

共謀の射程に関する近時の議論

共謀の射程とは、共謀に基づく実行行為といえる範囲の問題であり、共謀された犯罪と異なる犯罪が実行された場合に、共謀者がどこまで責任を負うかが問題となる。判例は、実行された犯罪が共謀された犯罪と構成要件的に重なり合う範囲で共謀者の責任を認める傾向にある。例えば、窃盗の共謀に基づき強盗が実行された場合、共謀者には窃盗の限度で共同正犯が成立する。近時の学説では、共謀の射程を客観的に(構成要件の重なり合いで)判断する見解と、共謀の具体的内容に即して判断する見解が対立している。

過失犯の共同正犯

過失犯について共同正犯が成立するかも重要な問題である。判例は過失の共同正犯を肯定しているが(最決平28.7.12等)、過失犯には共同実行の意思が観念しにくいとの批判がある。この問題は、共同正犯の本質が「意思の連絡に基づく共同実行」にあるとすれば過失犯の共同正犯は否定されるが、共同の注意義務の共同違反に共同正犯の本質を求めれば肯定される。実務上は、建設工事や交通事故等の場面で過失の共同正犯が問題となることが多い。

組織犯罪と共謀共同正犯

組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)との関係では、共謀共同正犯の法理が組織犯罪の首謀者の責任追及において重要な機能を果たしている。暴力団や詐欺グループの首謀者は、自ら実行行為を行わないことが通常であり、共謀共同正犯の法理なくしてはこれらの者の正犯としての責任を問うことが困難となる。もっとも、共謀の認定が組織的関係のみを根拠に安易に行われる危険も指摘されており、個別の意思連絡の認定を慎重に行うべきとの立場が有力である。

共犯と身分

共謀共同正犯が成立する場合に、身分犯の処理がどうなるかも実務上重要な問題である。例えば、業務上横領罪(刑法253条)の共謀共同正犯について、「業務」上の身分を有しない共謀者にいかなる罪が成立するかが問題となる。刑法65条の適用関係が議論され、1項により共犯の成立は認められるが、2項により科刑は単純横領罪の限度にとどまるとするのが判例の立場である。


よくある質問

Q1: 共謀共同正犯と教唆犯はどう違うのですか。

教唆犯は、犯罪の意思がない者に犯罪の実行を決意させる者であり、犯罪の「きっかけ」を作る点に本質がある。これに対し、共謀共同正犯は、他の共謀者と共同して犯罪を遂行する意思をもつ者であり、犯罪の「当事者」としての地位にある。区別の決定的な要素は正犯意思の有無であり、自己の犯罪として行う意思がある場合は共謀共同正犯、他人の犯罪の実行を決意させるにとどまる場合は教唆犯となる。もっとも、両者の区別は実際の事案では微妙な判断を要することがあり、犯行の動機、利益の帰属先、犯行における役割等を総合的に考慮して判断される。

Q2: 黙示の共謀はどのような場合に認められますか。

スワット事件決定が示すように、明示的な指示や合意がなくても、行為者が他者の犯罪行為を確定的に認識しながらこれを認容し、相手方もそのことを承知している場合には、黙示の意思連絡による共謀が認められうる。具体的には、組織における上下関係、日常的な指示関係、犯罪行為についての認識と認容の程度、相手方の認識等の事情が総合的に考慮される。もっとも、単なる認識や黙認だけでは共謀は認められず、相互的な意思の連絡が必要である点に注意が必要である。

Q3: 共謀から離脱した場合、その後の犯罪について責任を負いますか。

共謀に参加した者がその後に離脱した場合、離脱後に実行された犯罪について責任を負わない可能性がある。ただし、共謀からの離脱が認められるためには、他の共謀者に離脱の意思を表明し、了承を得るとともに、共謀に基づく因果的寄与を解消することが必要とされる。単に「もうやめた」と述べるだけでは離脱は認められず、既に提供した道具の回収や計画の撤回等、具体的な因果的寄与の解消行為が求められる。

Q4: 共謀共同正犯は罪刑法定主義に反しませんか。

刑法60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と規定しており、「実行した」の解釈として共謀のみの関与者を含めることが罪刑法定主義に反するかが問題となる。否定説はこの点を指摘するが、判例・多数説は、共謀者は他の共謀者の行為を「自己の手段として」犯罪を行ったものであり、60条の「共同して犯罪を実行した」に含まれると解している。練馬事件大法廷判決がこの解釈を正面から是認しており、現在では共謀共同正犯の適法性は判例上確立している。

Q5: 共謀共同正犯の成否を検討する際、何を最も重視すべきですか。

答案作成において最も重要なのは、正犯意思と犯罪実現における役割の重要性を具体的事実に基づいて認定することである。正犯意思は、犯行の動機・目的、犯行による利益の帰属先、犯行計画における地位等から判断する。役割の重要性は、計画の策定、実行者への指示、資金・道具の提供、犯行現場での統制等の具体的事実から認定する。規範部分の正確な記述は前提として、あてはめの具体性と説得力が評価の分かれ目となる。


既存セクションの拡充についての補足

ポイント解説の補足: 共謀の認定における間接事実の類型

実務において共謀は直接証拠によって認定されることは少なく、間接事実の積み重ねによって推認されることが多い。以下の表は、共謀の認定に用いられる間接事実の主な類型である。

時期 間接事実の類型 具体例 犯行前 犯行計画の策定・共有 メール・LINEでの打合せ、会合の開催 犯行前 準備行為への関与 凶器・道具の調達、資金の提供 犯行前 役割分担の決定 実行者・見張り・運転手等の割当て 犯行時 犯行の指示・統制 電話での指示、現場での統率 犯行後 利益の分配 窃取品の分配、報酬の受領 犯行後 罪証隠滅行為 口裏合わせ、証拠の廃棄

学説・議論の補足: 片面的共同正犯の問題

片面的共同正犯とは、一方の行為者のみが共同実行の意思を持ち、他方はこれを認識していない場合をいう。例えば、甲が乙の犯行を知り、乙に知られずに犯行を援助した場合に、甲に共同正犯が成立するかが問題となる。通説は、共同正犯の成立には相互的な意思連絡が必要であるとして片面的共同正犯を否定し、片面的幇助犯のみが成立するとしている。もっとも、因果的共犯論の観点からは片面的共同正犯を肯定する余地もあり、議論が続いている。


関連条文

二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

― 刑法 第60条


関連判例


まとめ

共謀共同正犯は、練馬事件大法廷判決によって法理として確立され、その後の判例においても一貫して承認されている。スワット事件決定は黙示の共謀を認め、組織犯罪における首謀者の責任追及の道を開いた。もっとも、共謀共同正犯の理論的根拠(共同意思主体説・間接正犯類似説・行為支配説)については学説上なお争いがあり、また共謀概念の希薄化に対する懸念も示されている。共謀共同正犯の適切な限界づけは、罪刑法定主義と実質的正義の調和という刑法の根本問題に関わるものである。

#共同正犯 #共謀共同正犯 #大法廷 #最高裁 #重要判例A

論文式対策

論証カードで刑法の論点を整理

重要判例と学説の整理に。論証カードで刑法の論点をスキマ時間に定着させましょう。

論証カードを見る 無料でアカウント作成
記事一覧を見る