【判例】共同訴訟の類型と審判(最判昭43.3.15)
通常共同訴訟と必要的共同訴訟の区別に関する最高裁判例を解説。類似必要的共同訴訟・固有必要的共同訴訟の概念と共同訴訟人独立の原則の射程を分析します。
この判例のポイント
共同訴訟には通常共同訴訟と必要的共同訴訟があり、必要的共同訴訟はさらに固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟に分類される。判例は、共有物に関する訴訟や入会権確認訴訟など具体的な場面で、いずれの類型に該当するかを判断してきた。 この類型の区別は、共同訴訟人間の審理・判決の統一の要否を左右する重要な問題であり、当事者適格・既判力・上訴の効力といった民事訴訟法の根幹的な論点と密接に結びついている。
共同訴訟とは、一個の訴訟手続に原告または被告が複数存在する訴訟形態をいう。一人の原告が一人の被告を訴える「単独訴訟」に対し、複数の主体が訴訟当事者となる点に特色がある。複数の紛争主体が関与する以上、各人の訴訟行為が他の共同訴訟人にどのような影響を及ぼすか、判決はそれぞれ別個に確定してよいのか、それとも統一的に確定しなければならないのか、といった固有の問題が生じる。これらの問いに対する答えが訴訟類型ごとに異なるため、まず「目の前の共同訴訟がどの類型に当たるか」を正確に判定することが、民事訴訟法を学ぶうえでも答案を書くうえでも出発点となる。
事案の概要
共有不動産についてXら共有者の一部が、第三者Yに対して所有権確認訴訟を提起した。Yは、共有者の全員が原告として訴えを提起していないことを理由に、当事者適格を欠くとして訴えの却下を求めた。
問題は、共有物に関する訴訟が固有必要的共同訴訟に該当するかであった。固有必要的共同訴訟であれば、共有者全員が共同して訴えを提起しなければ当事者適格を欠くことになるが、共有持分権に基づく請求であれば各共有者が単独で提起できるのではないかが争われた。
共有関係をめぐる紛争は、不動産の利用・処分が複数人の権利の上に成り立っているという点で、典型的に「誰が当事者となるべきか」が問題となる場面である。共有者の一人が単独で第三者と争えるとすれば紛争解決は迅速だが、他の共有者の利益が判決によって事実上左右されかねない。逆に全員の共同提訴を要求すれば判断の統一は図れるが、一人でも非協力的な共有者がいれば訴訟提起そのものが阻まれてしまう。本件はこの緊張関係を、不実登記の抹消という具体的請求を素材として最高裁に問うたものである。
争点
- 共有物に関する訴訟は固有必要的共同訴訟か
- 共有者の一部が単独で所有権確認訴訟・登記抹消請求を提起できるか
- 共同訴訟の類型の判断基準(管理処分権の帰属と合一確定の必要性)
判旨
共有者の一人は、共有不動産について第三者が不実の登記を有するときは、単独で右登記の抹消を求めることができる
― 最高裁判所第二小法廷 昭和43年3月15日 昭和41年(オ)第494号
最高裁は、共有者の一部による訴訟提起を適法と認めた。その理由として、共有物の保存行為(民法252条ただし書)は各共有者が単独で行うことができること、不実の登記の抹消請求は保存行為に該当することを挙げた。
すなわち、共有物に関する訴訟であっても、その請求の性質が保存行為に該当する場合には、固有必要的共同訴訟とはならず、各共有者が単独で訴えを提起できるとした。
この判旨が重要なのは、共同訴訟の類型該当性を「共有」という物権関係の外形から一律に決めるのではなく、当該訴訟で主張される請求の実体法上の性質(保存行為か、管理行為か、処分・変更行為か)に即して個別に判断するという思考枠組みを示した点にある。共有という同じ法律関係を基礎としていても、抹消登記請求のように各共有者が単独で行使できる保存行為に基づく請求であれば固有必要的共同訴訟とはならず、共有物分割請求のように共有関係そのものの解消を求める請求であれば固有必要的共同訴訟となる。請求の内容ごとに類型が分かれるというこの発想は、後続の判例にも一貫して受け継がれている。
ポイント解説
共同訴訟の四類型
民事訴訟法における共同訴訟は、講学上、以下の四つに整理される。前三者が伝統的な三類型、最後の同時審判申出共同訴訟は平成8年改正で明文化された特殊な類型である。
- 通常共同訴訟(38条): 訴訟の目的である権利義務が複数人について共通であるか、同一の事実上・法律上の原因に基づく場合、または同種の事実上・法律上の原因に基づく場合に認められる。共同訴訟人独立の原則(39条)が適用され、各共同訴訟人は独立して訴訟を追行でき、一人の訴訟行為や一人について生じた事項は他の共同訴訟人に影響しない。判決もそれぞれ別個に確定してよい。
- 類似必要的共同訴訟: 訴訟共同が強制されるわけではなく、各人が単独で訴えを提起することも可能だが、共同訴訟として提起された場合には判決の合一確定が必要となる類型である(40条の適用がある)。判決の効力(既判力・形成力)が訴訟当事者以外の第三者に拡張される場合に、矛盾する判決が生じることを防ぐために認められる。株主総会決議取消訴訟(会社法831条・838条の対世効)が典型例である。
- 固有必要的共同訴訟: 権利関係の性質上、関係者全員が共同して訴え、または訴えられなければならない場合。共同訴訟人の一部だけでは当事者適格を欠き、訴えは不適法却下される。共有物分割請求や入会権確認訴訟がこれに当たる。
- 同時審判申出共同訴訟(41条): 通常共同訴訟の一種でありながら、共同被告に対する請求が法律上併存し得ない関係にある場合に、原告の申出により弁論および裁判の分離を禁止し、同時に審判することを保障する制度である。主債務者・保証人を被告とする場合や、代理人・本人を被告とする場合(表見代理が成立すれば本人、成立しなければ無権代理人に責任が及ぶ関係)に用いられる。後述する。
固有必要的共同訴訟の判断基準
どのような訴訟が固有必要的共同訴訟に該当するかは、訴訟物たる権利についての管理処分権の帰属と判決の合一確定の必要性から判断される。
| 判断要素 | 内容 |
|---|---|
| 管理処分権 | 訴訟物たる権利について管理処分権が全員に共同して帰属しているか。一人で処分できるなら単独提訴を認めやすい |
| 合一確定の必要 | 各人ごとにバラバラに判決が確定すると矛盾が生じ、紛争解決として不合理になるか |
| 訴訟経済・当事者の便宜 | 全員を当事者とすることが合理的か。非協力者がいる場合に権利保護が事実上不可能とならないか |
判例は、実体法上の管理処分権の帰属を基準としつつ、訴訟経済や当事者の便宜、権利保護の実効性も考慮して判断する傾向にある。学説には、訴訟物たる権利の管理処分権が共同してのみ行使できるかを重視する「管理処分権説」と、判決の効力が他の関係者に及ぶことや紛争解決の一回性を重視する「紛争解決説(実体法説に対する訴訟法的視点)」があり、判例はその双方の視点を事案に応じて織り込んでいると評価される。
共有物に関する訴訟の類型
共有物に関する訴訟は、請求の内容に応じて類型が異なる。本判決が示したのは、まさにこの「請求内容ごとの類型分け」である。
- 保存行為に基づく請求: 各共有者が単独で提起可能(固有必要的共同訴訟ではない)。不実登記の抹消請求、不法占拠者への明渡請求、妨害排除請求が該当する。保存行為は共有物の現状を維持する行為であり、他の共有者の利益に反することがないから、一人で行使を認めても弊害が小さい。
- 管理行為に基づく請求: 持分の価格の過半数で決定する(民法252条本文)。誰がどのように共有物を使用するかの決定など。訴訟の当事者適格についても、過半数の同意を要するとする見解と、各人の持分に基づく主張は単独でできるとする見解が分かれる。
- 変更・処分行為に基づく請求: 共有物に変更を加える行為(民法251条)や持分の処分は、各共有者が単独で、または全員の同意を要する場面が問題となる。共有関係の解消そのものを求める請求は固有必要的共同訴訟となりやすい。
- 共有物分割請求: 判例は共有者全員を当事者とする固有必要的共同訴訟とする(最判昭46.6.18)。分割は共有関係そのものを終了させ、各共有者の権利を再編する行為であり、全員に対して合一的に確定しなければ意味をなさないからである。
同時審判申出共同訴訟(41条)
同時審判申出共同訴訟は、共同被告に対する各請求が「法律上併存し得ない関係」にある場合に、原告の申出によって弁論および裁判を分離せず必ず同時に審判させる制度である(41条)。平成8年(1996年)の現行民事訴訟法制定時に新設された。
典型例は、本人に対する表見代理に基づく請求と、無権代理人に対する民法117条の責任に基づく請求である。表見代理が成立すれば本人が責任を負い、不成立なら無権代理人が責任を負う関係にあり、両請求は論理的にいずれか一方しか認容され得ない。ところが、これらをそれぞれ通常共同訴訟として審理し弁論を分離すると、ある裁判体は「表見代理は不成立」として本人への請求を棄却し、別の裁判体(または別時点の判断)は「表見代理は成立」として無権代理人への請求を棄却する、という事態が起こり得る。その結果、原告は両被告に勝てず、いわゆる「両負け」のリスクを負う。
同時審判申出共同訴訟は、この両負けを防ぐための制度である。原告が同時審判の申出をすれば、裁判所は弁論および裁判を分離することができず(41条1項)、控訴審でも同時審判申出があった事件は併合して審理される(41条3項)。これにより、同一の裁判体が同一の証拠資料に基づいて両請求を判断することが保障され、論理的に矛盾する判断が回避される。
ただし、同時審判申出共同訴訟はあくまで通常共同訴訟である点に注意を要する。必要的共同訴訟ではないため、40条の合一確定の規律(一人の有利な訴訟行為が全員に及ぶ等)は適用されない。各共同被告との関係で証拠の評価や事実認定がなされ、共同訴訟人独立の原則そのものは維持される。同時審判申出が保障するのは「審理・裁判の同時性」であって、「判決内容の論理的拘束」ではないという点が、必要的共同訴訟との決定的な違いである。この区別は答案で頻出するため、確実に押さえておきたい。
学説・議論
固有必要的共同訴訟の範囲をめぐる対立
固有必要的共同訴訟の範囲については、学説上大きな対立がある。
- 限定説(有力説): 固有必要的共同訴訟の範囲を厳格に限定し、可能な限り各権利者の単独提訴を認めるべきとする。この見解は、固有必要的共同訴訟とすると、一部の共有者が訴訟に非協力的な場合に権利保護が事実上不可能になるという弊害を重視する。裁判を受ける権利(憲法32条)の観点からも、訴訟提起の道を不当に閉ざすべきでないとする。
- 広義説: 権利関係の合一確定の必要がある場合には広く固有必要的共同訴訟を認めるべきとする。矛盾判決の防止と紛争解決の一回性を重視する立場である。
判例は、概ね限定説の方向に沿って、共有物に関する訴訟の多くの場面で単独提訴を認める傾向にある。本判決もその一例であり、保存行為に該当する請求について単独提訴を認めることで、固有必要的共同訴訟の範囲を実質的に狭めている。もっとも、共有物分割請求や入会権確認訴訟など、権利関係の合一的確定が紛争解決の本質に関わる場面では、なお固有必要的共同訴訟とされており、判例は機械的な限定説ではなく、請求の性質に応じた柔軟な線引きを行っている。
入会権確認訴訟に関する議論
入会権の確認訴訟は、判例上固有必要的共同訴訟とされている(最判昭41.11.25)。入会権は入会集団の構成員全体に総有的に帰属するものであり、個々の構成員が独立して持分を観念したり単独で行使したりできる権利ではないからである。したがって、入会権の存否を確認するには、構成員全員が当事者となって合一的に確定する必要がある。
しかし、入会権確認訴訟を固有必要的共同訴訟とすると、構成員の一部でも原告になることを拒否すれば訴訟を提起できないという深刻な問題が生じる。入会集団内部に対立があるような場合には、権利保護を求める構成員が訴訟の入口で締め出されかねない。この点について、判例は、入会権の確認を求める構成員が原告となり、訴え提起に同調しない構成員を被告に回したうえで、原告と被告の双方を含む構成員全員が訴訟当事者となっていれば、固有必要的共同訴訟の要件を満たすとして、訴えを適法と認めた(最判平20.7.17)。
この法理に対しては、実質的には原告となるべき者を形式的に被告とする点で技巧的にすぎるという批判がある一方、権利保護の必要性と合一確定の要請の調和を図った実践的な解決として評価する見解もある。被告とされた非同調構成員も、判決の効力を受ける以上は当事者として手続保障が及ぶため、合一確定の趣旨にも反しないと説明される。
共同訴訟人独立の原則と合一確定
通常共同訴訟では共同訴訟人独立の原則(39条)が適用され、一人の訴訟行為、一人に対する相手方の訴訟行為、一人について生じた事項は、いずれも他の共同訴訟人に影響しない。各共同訴訟人は手続上独立しており、自白・請求の放棄・認諾なども各人ごとに効力を生じ、判決もそれぞれ別個に確定し得る。
これに対し、必要的共同訴訟では合一確定の要請から、共同訴訟人独立の原則が修正される(40条)。すなわち、一人の有利な訴訟行為は全員に効力が及び、不利な訴訟行為は全員が共同して行わなければ効力を生じない。たとえば、一人の共同訴訟人が請求を認諾しても、それが全員の不利益となる場合には効力を生じず、逆に一人が提出した有利な攻撃防御方法は全員のために効力を有する。
なお、通常共同訴訟においても、ある共同訴訟人が提出した証拠資料を他の共同訴訟人の請求についても事実認定に用いてよいか、という「主張共通・証拠共通」の問題がある。判例・通説は、弁論主義との関係で主張共通は否定しつつ、自由心証主義(247条)の下で証拠共通は認める(共同訴訟人の一人が提出した証拠は、他の共同訴訟人の不利益にも有利にも用いることができる)。これは39条の独立の原則の例外ではなく、自由心証主義の帰結として説明される点に注意したい。
合一確定の規律(40条各項)の解釈
必要的共同訴訟における40条の規律の具体的内容についても議論がある。特に問題となるのが、類似必要的共同訴訟において一部の共同訴訟人のみが上訴した場合の取扱いである。判例は、住民訴訟(地方自治法に基づくもの)について、上訴しなかった共同訴訟人は上訴人とならず、上訴審の判決の名宛人とはならないとしつつも、判決の合一確定の要請から上訴の効力自体は全員に及ぶといった調整を図っている(最判平9.4.2など)。固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟とで、上訴の効力や上訴人の地位に関する扱いに差異が論じられており、答案でも論点として問われ得る。
判例の射程
共有物以外の共同所有形態
本判決は共有物に関する判断であるが、合有や総有に関する訴訟への射程が問題となる。共同所有の三形態(共有・合有・総有)は、持分の独立性や処分の自由度が異なるため、訴訟類型の判断にも差異が生じる。
- 共有(民法249条以下): 各共有者が持分を有し、持分の処分は単独で可能。本判決のとおり、請求の性質(保存行為か変更行為か)に応じて類型が分かれる。
- 組合財産(合有): 組合の財産は組合員の合有に属し、各組合員は持分を有するが単独処分はできない。組合財産に関する訴訟は、原則として組合員全員が当事者となるべき固有必要的共同訴訟とされるが、業務執行組合員が任意的訴訟担当として訴訟を追行できるかが論点となる。判例は、組合規約等で授権がある場合に業務執行組合員による訴訟担当を認めている。
- 権利能力なき社団の財産(総有): 判例は、権利能力なき社団が当事者能力を有することを認めており(最判昭39.10.15、現行法29条)、社団自身が訴訟の当事者となることで、構成員全員を当事者とすべき固有必要的共同訴訟の問題を回避できる。社団の代表者が社団の名で訴訟を追行することが認められる。
遺産確認訴訟
遺産確認の訴えについて、判例は共同相続人全員が当事者となるべき固有必要的共同訴訟としている(最判昭61.3.13)。ある財産が被相続人の遺産に属するか否かは、その後の遺産分割の前提となる事項であり、相続人全員に対して合一的に確定される必要があるからである。一部の相続人を欠いて遺産の範囲を確定しても、その者との関係では既判力が及ばず、結局紛争の蒸し返しを招くことになる。
もっとも、この判例に対しても、相続人の一部が非協力的な場合の権利保護の問題が指摘されており、入会権確認訴訟と同様に、非協力的な相続人を被告とする手法が実務上用いられている。また、共同相続した特定の不動産の持分の確認や、相続分に応じた可分債権の請求など、個別の権利主張については単独提訴が認められる場面もあり、「遺産」に関する訴訟一般が固有必要的共同訴訟となるわけではない点に注意を要する。
反対意見・補足意見
本判決には特段の反対意見・補足意見は付されていない。ただし、共同訴訟の類型論は、その後の最高裁判例においてもしばしば問題となり、固有必要的共同訴訟の範囲を拡大する方向と限定する方向の間で判例の展開が見られる。特に、入会権確認訴訟における非同調者の被告化(最判平20.7.17)は、固有必要的共同訴訟という枠組みを維持しながら権利保護の実効性を確保するための工夫として、学説の高い関心を集めた。
試験対策での位置づけ
共同訴訟の類型論は、司法試験・予備試験の民事訴訟法においてA級の重要論点であり、通常共同訴訟・類似必要的共同訴訟・固有必要的共同訴訟・同時審判申出共同訴訟の区別が繰り返し出題されている。
出題実績としては、新司法試験では複数年にわたり共同訴訟の類型・当事者適格・合一確定が問われており、予備試験でも関連する出題が頻繁になされている。論文式では、具体的事案を示して訴訟類型を判定させたうえで、当事者適格の有無、共同訴訟人独立の原則の適用、上訴の効力などを問う複合問題として出題されることが多い。
主な出題パターンは、(1)共有物に関する訴訟が固有必要的共同訴訟に当たるか、(2)入会権確認訴訟・遺産確認訴訟における非協力者の処理、(3)共同訴訟人独立の原則と証拠共通の関係、(4)必要的共同訴訟における上訴の効力(40条の適用)、(5)同時審判申出共同訴訟(41条)の要件と効果、の五つが主な類型である。答案では、訴訟類型の判断基準を示したうえで、具体的事案へのあてはめを丁寧に行うことが重要である。
答案での使い方
論証パターン(固有必要的共同訴訟)
共同訴訟の類型を答案で展開する際の基本的な論証の流れは以下のとおりである。
まず、問題提起として「本件訴訟が固有必要的共同訴訟に該当するか。該当する場合、共有者の一部による訴え提起は当事者適格を欠き不適法となる」と記述する。
次に、固有必要的共同訴訟の判断基準を提示する。
「固有必要的共同訴訟に該当するかは、訴訟物たる権利について管理処分権が共同訴訟人全員に共同して帰属するか、及び判決を合一的に確定する必要性があるかにより判断される。」
保存行為に基づく請求の場合は以下のように論じる。
「もっとも、共有物の保存行為は各共有者が単独で行うことができ(民法252条ただし書)、不実登記の抹消請求は共有物の現状維持を目的とする保存行為に該当するから、各共有者が単独で訴えを提起できる(最判昭43.3.15)。したがって、固有必要的共同訴訟には当たらず、当事者適格は認められる。」
論証パターン(同時審判申出共同訴訟)
「Xが本人Aに対し表見代理に基づく請求を、無権代理人Bに対し民法117条の責任に基づく請求を併合提起した場合、両請求は表見代理の成否によりいずれか一方のみが認容され得る『法律上併存し得ない関係』にある。弁論を分離して別個に審理すると、両請求がともに棄却される『両負け』のリスクが生じる。そこで、Xは同時審判の申出をすることができ(41条1項)、申出があれば裁判所は弁論および裁判を分離できない。ただし、本訴訟は通常共同訴訟であって必要的共同訴訟ではないから、40条の合一確定の規律は適用されず、共同訴訟人独立の原則は維持される。」
答案記述例
「X1・X2・X3が甲土地を共有しているところ、X1及びX2のみがYに対して所有権確認訴訟を提起した。本件が固有必要的共同訴訟に当たるとすれば、X3を欠く本訴は当事者適格を欠き不適法となる。この点、共有不動産に対する不実登記の抹消請求は保存行為(民法252条ただし書)に該当するから、各共有者が単独で提起できる(最判昭43.3.15)。これに対し、共有物分割請求は共有関係そのものの解消を求めるものであり、共有者全員が当事者となるべき固有必要的共同訴訟である(最判昭46.6.18)。本件は所有権確認訴訟であるところ、共有関係の解消を求めるものではなく、各共有者の持分に基づき第三者に対して所有権の帰属を確認するものであるから、保存行為に準じて各共有者の単独提訴を認めるべきであり、固有必要的共同訴訟には当たらない。したがって、X1及びX2による本訴は適法である。」
重要概念の整理
共同訴訟の類型の比較
| 比較項目 | 通常共同訴訟 | 同時審判申出共同訴訟 | 類似必要的共同訴訟 | 固有必要的共同訴訟 |
|---|---|---|---|---|
| 訴訟共同の要否 | 任意 | 任意 | 任意(共同訴訟にした場合に合一確定) | 必要(全員が当事者でなければ不適法) |
| 合一確定(40条) | 不要(39条・独立の原則) | 不要(通常共同訴訟) | 必要 | 必要 |
| 弁論の分離 | 可能 | 不可(申出時、41条1項) | 可能だが合一確定の制約 | 不可 |
| 典型例 | 交通事故の被害者複数名の損害賠償 | 本人への表見代理請求と無権代理人への117条請求 | 株主総会決議取消訴訟 | 共有物分割請求、入会権確認訴訟 |
| 一人の上訴 | 他の共同訴訟人に効力なし | 他の共同訴訟人に効力なし(併合は維持) | 全員に効力あり | 全員に効力あり |
| 条文 | 38条 | 41条 | 40条 | 40条 |
共有物に関する訴訟の類型別整理
| 請求の類型 | 実体法上の性質 | 訴訟類型 | 単独提訴の可否 |
|---|---|---|---|
| 不実登記の抹消請求 | 保存行為(252条ただし書) | 通常訴訟 | 可能(最判昭43.3.15) |
| 不法占拠者への明渡請求 | 保存行為 | 通常訴訟 | 可能 |
| 共有物の使用方法の決定 | 管理行為(252条本文) | 争いあり | 過半数の同意が必要との見解あり |
| 共有物分割請求 | 共有関係の解消 | 固有必要的共同訴訟 | 不可能(全員が当事者・最判昭46.6.18) |
共同所有形態と訴訟類型
| 共同所有形態 | 実体法上の性質 | 訴訟上の取扱い |
|---|---|---|
| 共有 | 各人が持分を有し単独処分可 | 請求の性質に応じて類型分け |
| 合有(組合財産) | 持分はあるが単独処分不可 | 原則固有必要的共同訴訟(業務執行組合員の訴訟担当あり) |
| 総有(権利能力なき社団) | 持分なし、団体に帰属 | 社団自身が当事者(当事者能力・29条)で回避可 |
発展的考察
共同訴訟類型論の現代的展開
共同訴訟の類型論は、近年の民事訴訟実務の発展に伴い、新たな課題に直面している。
第一に、令和3年(2021年)民法改正による共有制度の見直しとの関係である。改正民法では共有物の管理に関する規律が整備され(民法252条の改正により、軽微変更が管理行為として過半数で決定できる等の整理がなされた)、所在等不明共有者がいる場合の共有物の変更・管理に関する裁判制度が新設された(民法251条2項・252条2項等)。これらの改正は、共有物に関する訴訟の固有必要的共同訴訟該当性の判断や、共有者の一部が所在不明である場合の訴訟追行のあり方にも影響を与える可能性があり、今後の判例・学説の展開が注目される。
第二に、遺産分割と共同訴訟の問題がある。遺産確認の訴えが固有必要的共同訴訟とされる(最判昭61.3.13)ことは確立しているが、遺産分割前の個々の遺産の処分や、相続分に応じた可分債権・可分債務の帰属をめぐる訴訟の類型については、なお議論がある。可分債権は相続開始と同時に各相続人に分割帰属するとされる一方、預貯金債権については遺産分割の対象となるとした判例(最大決平28.12.19)があり、財産の性質ごとに精緻な検討が求められる。
第三に、権利能力なき社団の訴訟上の取扱いの進展がある。判例は権利能力なき社団に当事者能力を認めることで(29条)、構成員全員を当事者とすべき固有必要的共同訴訟の問題を回避する道を開いた。近年のマンション管理組合をめぐる訴訟など、団体訴訟の需要が高まる中で、固有必要的共同訴訟の範囲の限定は実務的にも重要な課題である。社団の名で登記ができるかという実体法上の論点とも関連し、訴訟法と実体法の交錯領域として位置づけられる。
同時審判申出共同訴訟と必要的共同訴訟の機能的比較
同時審判申出共同訴訟は、必要的共同訴訟とは異なる仕組みで「判断の統一」を図る制度である。必要的共同訴訟が40条によって訴訟行為の効力を結びつけることで合一確定を実現するのに対し、同時審判申出共同訴訟は弁論・裁判の分離を禁止して同一の裁判体による同時審理を保障することで、事実上の判断の統一を図る。両者は「矛盾判断の防止」という目的を共有するが、その手段と効果の射程が大きく異なる。
具体的には、必要的共同訴訟では一人の有利な訴訟行為が全員に及ぶため、共同訴訟人間に「運命共同体」的な結合が生じる。これに対し、同時審判申出共同訴訟では各共同被告との関係は独立しており、原告は一方の被告に勝ち他方の被告に負けることが当然に予定されている(むしろそれが正常な帰結である)。この違いを理解することが、両制度の使い分けと答案上の正確な処理につながる。
よくある質問
Q1: 入会権確認訴訟で非協力者がいる場合はどうしますか。
判例は、入会権確認訴訟は固有必要的共同訴訟であるとしつつ、訴訟提起に同調しない構成員を被告側に回し、原告・被告を合わせて構成員全員が当事者となっていれば訴えは適法であるとした(最判平20.7.17)。この手法は技巧的であるとの批判もあるが、権利保護の必要性と合一確定の要請の調和を図った実践的な解決として評価されている。被告とされた者も判決の効力を受ける当事者として手続保障が及ぶため、合一確定の趣旨に反しない。
Q2: 類似必要的共同訴訟と固有必要的共同訴訟はどう区別しますか。
決定的な区別基準は、訴訟共同が強制されるかどうかである。固有必要的共同訴訟では、全員が共同して訴え又は訴えられなければ当事者適格を欠き訴えは不適法となるが、類似必要的共同訴訟では各人が個別に訴えを提起することも可能であり、共同訴訟として提起された場合にのみ合一確定(40条)が要求される。類似必要的共同訴訟が認められるのは、判決の効力が訴訟当事者以外に拡張される結果、矛盾判決を防ぐ必要がある場合である。
Q3: 40条の合一確定の規律の具体的内容は何ですか。
必要的共同訴訟において、(1)共同訴訟人の一人の訴訟行為は全員の利益においてのみ効力を生じ(40条1項)、(2)相手方の訴訟行為は全員に対してのみ効力を生じ(40条2項)、(3)一人について訴訟手続の中断・中止の原因があれば全員について効力を生ずる(40条3項)。特に重要なのは、一人の有利な訴訟行為(上訴等)は全員に効力が及ぶが、不利な訴訟行為(請求の放棄・認諾、自白等)は全員が共同して行わなければ効力を生じないという点である。
Q4: 株主総会決議取消訴訟はなぜ類似必要的共同訴訟なのですか。
株主総会決議取消訴訟(会社法831条)は、各株主が個別に提起できるため訴訟共同は強制されない。しかし、認容判決(決議取消し)の効力が対世効を有する(会社法838条)ため、複数の株主が訴えを提起した場合に一方で取消し・他方で請求棄却という矛盾した結論が生じることは許されない。よって、共同訴訟として審理される場合には合一確定が必要となり、類似必要的共同訴訟に該当する。
Q5: 同時審判申出共同訴訟は必要的共同訴訟と何が違うのですか。
同時審判申出共同訴訟(41条)は、共同被告に対する請求が法律上併存し得ない関係にある場合に、原告の申出により弁論・裁判の分離を禁止する制度ですが、あくまで通常共同訴訟です。したがって40条の合一確定の規律は適用されず、共同訴訟人独立の原則が維持されます。保障されるのは「同一の裁判体による同時審理」であって、「判決内容の論理的拘束」ではありません。原告が両被告に対し論理的に矛盾しない判断(一方勝訴・他方敗訴)を得て「両負け」を回避することが目的です。
Q6: 通常共同訴訟で他の共同訴訟人が出した証拠は使えますか。
共同訴訟人独立の原則(39条)により、一人の主張(主張共通)は他の共同訴訟人の請求の判断資料とはなりません(弁論主義との関係)。もっとも、証拠については自由心証主義(247条)の帰結として、一人が提出した証拠を裁判所が他の共同訴訟人の請求についても事実認定に用いることができるとされます(証拠共通の原則)。これは39条の例外ではなく、自由心証主義から導かれるものと説明されます。
ポイント解説の補足: 固有必要的共同訴訟の範囲の限定傾向
判例は近年、固有必要的共同訴訟の範囲を限定する方向に展開している。その背景には、固有必要的共同訴訟とすると、一部の共有者・構成員が訴訟に非協力的な場合に権利保護が事実上不可能になるという深刻な問題がある。裁判を受ける権利(憲法32条)の実効性を確保するためにも、訴訟提起の道を不当に閉ざすべきではない。
この問題に対処するため、(1)保存行為に基づく請求についての単独提訴の拡大(本判決)、(2)非協力者を被告とする手法の承認(最判平20.7.17)、(3)権利能力なき社団の当事者能力の承認による回避(最判昭39.10.15・29条)、(4)任意的訴訟担当による訴訟追行の許容、等の方法が判例上発展してきた。答案では、固有必要的共同訴訟の該当性判断に際して、合一確定の要請と個別の権利保護の必要性のバランスを意識した記述が求められる。
関連条文
訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。
― 民事訴訟法 第40条第1項
共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。
― 民事訴訟法 第41条第1項
関連判例
- 既判力の主観的範囲に関する判例 - 共同訴訟と既判力の関係
- 確認の利益に関する判例 - 所有権確認訴訟の訴えの利益
まとめ
共同訴訟の類型に関する本判決は、共有物に関する訴訟の固有必要的共同訴訟該当性の判断基準を示した重要判例である。判例は、保存行為に該当する請求については各共有者の単独提訴を認め(最判昭43.3.15)、固有必要的共同訴訟の範囲を限定する方向で展開してきた。
共同訴訟は、通常共同訴訟(38条・共同訴訟人独立の原則)、類似必要的共同訴訟(訴訟共同は任意だが合一確定が必要)、固有必要的共同訴訟(全員が当事者でなければ当事者適格を欠く)、そして同時審判申出共同訴訟(41条・通常共同訴訟だが弁論・裁判の分離を禁止)の四つに整理される。各類型は、合一確定の要否・上訴の効力・弁論分離の可否といった点で扱いが異なり、まず目の前の訴訟がどの類型に当たるかを正確に判定することが、当事者適格や審判の方法を論じる前提となる。
学説上は、固有必要的共同訴訟の範囲について限定説と広義説の対立があり、入会権確認訴訟や遺産確認訴訟など具体的な場面で議論が続いている。判例は、非同調者の被告化や権利能力なき社団の当事者能力の承認などの工夫により、合一確定の要請を維持しつつ権利保護の実効性を確保してきた。共同訴訟の類型の判断は、合一確定の要請と個別の権利保護の必要性の調和という民事訴訟法の基本的な課題に関わるものであり、司法試験・予備試験でも繰り返し問われる最重要論点の一つである。
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