既判力の体系|客観的範囲・主観的範囲・時的限界
既判力を体系的に解説。客観的範囲(114条)、主観的範囲(115条)、時的限界(基準時)、既判力の作用、判決理由中の判断の拘束力を整理します。
この論点の詳しい解説は既判力の客観的範囲と時的限界にまとめています。
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この記事のポイント
既判力とは確定判決の判断内容が後訴で当事者を拘束する効力であり、客観的範囲・主観的範囲・時的限界の3つの側面から理解する必要がある。 民事訴訟法で最も重要な概念の一つ。
既判力の意義
定義
確定判決の判断内容について、後訴の裁判所と当事者を拘束する効力。
根拠
| 根拠 | 内容 |
|---|---|
| 制度的効力説(通説) | 紛争の蒸し返し防止という制度的要請 |
| 手続保障説 | 十分な手続保障を受けた上での判断 |
客観的範囲(114条)
原則:主文に包含するものに限る(114条1項)
既判力は判決主文中の判断(訴訟物についての判断)にのみ生じる。
判決理由中の判断
| 判断 | 既判力 |
|---|---|
| 訴訟物についての判断(主文) | あり |
| 先決的権利関係の判断(理由中) | なし(原則) |
| 相殺の抗弁についての判断 | あり(114条2項) |
相殺の抗弁の特則(114条2項)
相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。
主観的範囲(115条)
既判力が及ぶ者
| 対象者 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 当事者 | 115条1項1号 | 原告・被告 |
| 口頭弁論終結後の承継人 | 115条1項3号 | 確定判決後に権利を承継した者 |
| 請求の目的物の所持者 | 115条1項4号 | 当事者のために目的物を所持する者 |
口頭弁論終結後の承継人
| 承継の態様 | 具体例 |
|---|---|
| 特定承継 | 目的不動産の譲受人 |
| 包括承継 | 相続人 |
時的限界(基準時)
基準時
既判力の基準時は事実審の口頭弁論終結時。
基準時の意味
| 基準時前の事由 | 基準時後の事由 |
|---|---|
| 既判力により遮断される | 既判力に抵触しない |
| 後訴で主張できない | 後訴で主張できる |
遮断効
基準時前に存在した事由で既判力ある判断を争うことは、主張したか否かにかかわらず遮断される。
既判力の作用
積極的作用
後訴裁判所は前訴の既判力ある判断を前提として裁判しなければならない。
消極的作用(遮断効)
当事者は既判力ある判断と矛盾する主張をすることができない。
一部請求と既判力
問題の所在
債権の一部について訴えを提起し、請求認容判決が確定した場合、残部について後訴を提起できるか。
判例の立場
最判昭37.8.10:明示的一部請求の場合、残部について既判力は及ばず、後訴を提起できる。ただし、最判平10.6.12は、一部請求が全部棄却された場合の残部請求は信義則上許されないとした。なお、時効の完成猶予及び更新の効力は一部請求にかかる部分にのみ生じる。
まとめ
- 既判力は主文に包含するものに限り生じる(114条1項)
- 例外として相殺の抗弁の判断にも既判力が生じる(114条2項)
- 既判力は当事者・承継人・所持者に及ぶ(115条)
- 基準時は事実審の口頭弁論終結時
- 基準時前の事由は遮断効により後訴で主張不可
FAQ
Q1. 判決理由中の判断に既判力が生じない理由は?
理由中の判断は訴訟物の判断に至る過程の判断にすぎず、当事者はそれ自体を争う機会を十分に与えられていないためです。相殺の抗弁は例外です。
Q2. 既判力と争点効の違いは?
既判力は訴訟物についての判断の拘束力ですが、争点効は理由中の判断の拘束力です。争点効は判例では認められていません。
Q3. 基準時後に発生した事由で前訴判決を争えますか?
争えます。基準時後の新たな事由(弁済、相殺、免除等)は既判力に遮断されず、後訴で主張できます。
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