刑法答案ワークシート|短い事例1問で要件と事実を結び付ける練習
刑法答案を初めて書く人向けの練習ワークシート。短い傷害事例を使い、条文確認、要件と事実の対応、答案構成、記述、自己点検までを1問で体験できます。
刑法答案の練習は、短い事例について「何罪を検討するか」「どの事実を使うか」「なぜその結論になるか」を順に書くところから始められます。長い論証を暗記してからでなければ、練習できないわけではありません。
この記事では、編集部作成の入門用事例を1問扱います。本試験の過去問や公式解答ではなく、複雑な論点を避けて、要件と事実を対応させるための練習です。答案全体の検討方法は刑法の答案の書き方で確認できます。
紙か普段使うメモを用意してください。先に自分で書き、後半の記述例と照合します。この記事内で答案を送信したり、自動採点を受けたりする機能はありません。
練習問題:甲の行為について説明する
甲(25歳)は、乙に腹を立て、乙にけがをさせようと考えた。甲は、何も攻撃していない乙の顔を拳で1回殴った。その打撃により、乙の鼻の骨が折れた。甲に責任能力その他の責任に関する問題はなく、上記以外に行為を正当化する事情もないものとする。
甲が乙を殴った行為について、傷害罪の成否を説明してください。
今回の目標は、難しい学説を挙げることではありません。殴打・骨折・両者のつながり・甲の認識を、条文上の検討と対応させて説明することです。
ステップ1:条文と事実を別々に書き出す
まず刑法(e-Gov法令検索)を開き、傷害罪を定める204条と、故意に関する38条1項を確認してください。正当防衛を定める36条も、本問でその検討が必要になる事情があるかという観点で読みます。
この練習では、鼻骨の骨折が傷害に当たることを前提に、その傷害が甲の行為によって生じたことを説明します。自分の知っている事実を足さず、問題文に示された事実から書き出しましょう。
| 確認する事項 | 問題文から拾う事実 | 自分のメモ |
|---|---|---|
| 行為 | 誰が、誰に、何をしたか | __________________ |
| 傷害結果 | 身体にどのような変化が生じたか | __________________ |
| 行為と結果のつながり | 結果は何によって生じたか | __________________ |
| 故意 | 甲は何を認識し、意図していたか | __________________ |
| 正当化する事情・責任 | その検討に関係する事情があるか | __________________ |
「乙が悪いことを言ったのかもしれない」といった推測は書き込みません。本問には乙からの攻撃がなく、ほかに行為を正当化する事情もないと示されています。
ステップ2:答案構成を5行で作る
条文と事実を拾えたら、次の空欄を埋めてみてください。見本を見る前に、短い言葉で十分なので自分で書きます。
1. 問題となる罪名・条文:____________________
2. 行為と傷害結果:________________________
3. 行為から結果が生じた理由:______________
4. 故意を認める事実:______________________
5. 正当化する事情・責任の確認と結論:______
書き出せない欄があれば、問題文と条文に戻ります。例えば「3」に迷う場合、この問題では「その打撃により骨折した」と明示されている点を確認します。第三者の行為などが介在する複雑な事案とは区別してください。
刑法の体系を復習したい場合は刑法答案の検討フレームへ戻り、どの段階を説明しようとしているかを確かめます。
ステップ3:構成を短い文章にする
まず200〜400字程度を目安に書いてみましょう。これは本問の練習量の例であり、本試験の字数基準ではありません。文章にするときは、結論だけの行と、理由のある行を見分けます。
| 書き出し | そのままだと足りない点 | 足すもの |
|---|---|---|
| 「傷害罪が成立する」 | どの行為・結果を評価したか分からない | 殴打と骨折の事実 |
| 「因果関係がある」 | 結果とのつながりが説明されていない | 打撃によって骨折したこと |
| 「故意がある」 | 認識・意図の根拠がない | けがをさせようと考えたこと |
事実の引用だけを続けるのも十分ではありません。その事実が、どの検討事項を支えるのかまで書きます。
記述例:自分の答案を書いてから照合する
以下は、本問の説明の一例です。唯一の表現や採点基準を示すものではありません。
甲が乙の顔を拳で殴った行為について、傷害罪(刑法204条)が成立するかを検討する。甲の殴打によって乙の鼻骨が骨折しており、乙の身体に傷害が生じている。問題文はその打撃によって骨折が生じたと明示しているため、甲の行為と傷害結果の間に因果関係が認められる。また、甲は乙にけがをさせようと考えて殴っているから、本問では傷害の故意も認められる(38条1項)。乙からの攻撃はなく、ほかに行為を正当化する事情も示されていない。責任に関する問題もないとの前提である。したがって、甲に傷害罪が成立する。
この例では、傷害の意図が明示されているため、その事実を使っています。「けがをさせる意図がなければ傷害罪は成立しない」という一般論を導く練習ではありません。 暴行の故意にとどまる場合など、前提が異なる事案は別に検討する必要があります。
根拠条文は刑法204条・38条・36条(e-Gov)で確認できます。条文に書かれている内容と、本問の事実を使った評価を分けて読み直してください。
ステップ4:5項目で自己点検する
自分の文章に次の項目が含まれるか、線を引いて確認します。点数を付けるより、足りない説明を一つ見つけるために使ってください。
- 傷害罪と、その根拠条文を示した。
- 殴打と骨折の事実を示した。
- 行為と結果のつながりを説明した。
- 甲の認識・意図を事実から説明した。
- 問題の前提に沿って、正当化する事情・責任と結論を確認した。
例えば「故意がある」とだけ書いていたなら、甲が何を考えていたかを補います。記述例を全部写すのではなく、足りなかった段落だけを自分の言葉で書き直しましょう。
次の練習:論証を思い出すことと、当てはめを分ける
本問が書けたら、次は扱う論点を一つ増やして練習します。論証の再現を練習したい場合は刑法の論証カードへ進めます。ログインが必要です。初めての方は無料アカウントを作成してから利用してください。
論証カードは論点の説明を書き出して見本と比較する練習です。このワークシートの答案全体や、自由に書いた当てはめを自動で評価する機能とは異なります。カードで論証を確かめた後は、事例に戻って、その論証と対応する事実を探します。
知識の正誤確認も必要なら刑法の一問一答の復習法へ、練習を継続する時間を決めたいなら予備試験の週間計画へ進んでください。
よくある質問
記述例と違う順番や表現では誤りですか?
同じ文章にする必要はありません。何を検討し、どの事実を使い、どう結論に至ったかを読み手が追えるかで点検します。具体的な答案評価が必要な場合は、指導者や添削サービスに確認してください。
いきなり本試験の長い問題を解くべきですか?
短い事例は記述の練習に使えますが、これだけでは本試験の問題量や複数論点への対応は練習できません。基礎を確認した後は、受験する試験の過去問や出題趣旨も使って練習範囲を広げます。
論証カードで書き出し、見本と照らし合わせて振り返れます。