要件事実入門|請求原因・抗弁・再抗弁の基本構造
要件事実の基本構造を入門的に解説。請求原因・抗弁・再抗弁の攻撃防御構造、主要な訴訟類型の要件事実、立証責任の分配を整理します。
この記事のポイント
要件事実とは、実体法上の法律効果の発生・障害・消滅・阻止に必要な具体的事実をいい、民事訴訟における請求原因・抗弁・再抗弁の骨格を構成する。 司法試験の論文式試験では民事系科目で要件事実的思考が不可欠であり、予備試験の実務基礎科目では直接問われる。
要件事実の基本構造
攻撃防御の構造
レベル 提出者 法律効果 例(売買代金請求) 請求原因 原告 権利の発生 売買契約の締結 抗弁 被告 権利の障害・消滅・阻止 弁済、消滅時効 再抗弁 原告 抗弁の障害・消滅・阻止 時効の更新 再々抗弁 被告 再抗弁の障害・消滅・阻止 -法律要件分類説
要件事実の分配基準として法律要件分類説が通説である。各当事者は自己に有利な法規の要件事実について主張立証責任を負う。
要件の分類 主張立証責任 例 権利根拠規定 原告 709条(不法行為) 権利障害規定 被告 93条ただし書(心裡留保の無効) 権利消滅規定 被告 弁済、免除 権利阻止規定 被告 同時履行の抗弁権主要訴訟類型の要件事実
売買代金請求
請求原因:
1. 売買契約の締結(目的物と代金額の合意)
2. 目的物の引渡し(同時履行の関係を解消するため)
主な抗弁: 弁済、相殺、消滅時効
貸金返還請求
請求原因:
1. 金銭の返還合意
2. 金銭の交付
3. 弁済期の合意と弁済期の到来
主な抗弁: 弁済、相殺、消滅時効
所有権に基づく返還請求
請求原因:
1. 原告の所有(権利自白または取得原因事実)
2. 被告の占有
主な抗弁: 占有権原(賃借権等)、即時取得、取得時効
不法行為に基づく損害賠償請求
請求原因:
1. 被告の故意または過失
2. 権利侵害(違法行為)
3. 損害の発生
4. 因果関係
主な抗弁: 過失相殺、消滅時効
抗弁の主要類型
権利障害の抗弁
権利の発生自体を妨げる事実。
- 公序良俗違反(90条)
- 心裡留保の悪意(93条1項ただし書)
- 錯誤取消し(95条)
権利消滅の抗弁
一旦発生した権利を消滅させる事実。
- 弁済(473条)
- 相殺(505条)
- 免除(519条)
- 消滅時効の援用(145条)
権利阻止の抗弁
権利の行使を阻止する事実。
- 同時履行の抗弁権(533条)
- 留置権(295条)
要件事実的思考の実践
論文答案での活用
- 請求の根拠を特定: 何に基づいて何を請求するかを明確にする
- 要件を分解: 実体法の要件を一つずつ検討する
- 事実のあてはめ: 問題文の事実を各要件にあてはめる
- 抗弁の検討: 被告側の反論(抗弁)を検討する
典型的な検討の流れ
① Xの請求は何か? → 売買代金500万円の支払請求
② 請求原因事実は? → 売買契約の締結、引渡し
③ Yの抗弁は? → 弁済済み / 契約不適合による代金減額
④ Xの再抗弁は? → 弁済の不存在の主張は不要(弁済はYが立証)
試験での出題ポイント
- 請求原因の特定: 実体法上の権利発生要件の把握
- 抗弁の構成: 被告の防御方法の分類
- 立証責任の分配: 法律要件分類説による分配
- 要件事実のあてはめ: 具体的事実の法的評価
まとめ
- 要件事実は法律効果の発生等に必要な具体的事実である
- 請求原因→抗弁→再抗弁の攻撃防御構造を理解することが重要
- 法律要件分類説により立証責任が分配される
- 論文答案では要件事実的思考により論点の漏れを防ぐことができる
- 予備試験の実務基礎科目では直接的に出題される
FAQ
Q1. 要件事実と法律要件はどう違いますか?
法律要件は抽象的な法規の定める要件であり、要件事実はその法律要件に該当する具体的な事実です。例えば「売買契約の締結」が法律要件、「XとYが令和〇年〇月〇日に甲土地を500万円で売買する合意をした」が要件事実です。
Q2. なぜ要件事実を学ぶ必要がありますか?
要件事実的思考は民事系論文答案の骨格となります。請求原因から抗弁まで漏れなく検討し、各要件に事実をあてはめることで、論理的で説得力のある答案が書けます。
Q3. 抗弁はどうやって見つけますか?
被告の主張から、権利の障害・消滅・阻止に該当する事実を特定します。「代金は払った」→弁済の抗弁、「もう時効だ」→消滅時効の抗弁、「同時にやれ」→同時履行の抗弁権です。