抵当権の応用論点|法定地上権・物上代位・抵当権侵害
抵当権の応用論点を解説。法定地上権の成立要件、物上代位の差押えの趣旨、抵当権に基づく妨害排除請求権、共同抵当の処理を判例とともに整理します。
この記事のポイント
抵当権は担保物権の中で最も出題頻度が高く、法定地上権・物上代位・抵当権侵害は三大応用論点である。 いずれも判例法理が確立しており、判例の射程を正確に理解することが求められる。
法定地上権(388条)
成立要件
- 抵当権設定時に土地上に建物が存在すること
- 抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に属すること
- 土地または建物の一方または双方に抵当権が設定されたこと
- 抵当権の実行により土地と建物の所有者が異なるに至ったこと
応用論点
共同抵当と法定地上権
場面 法定地上権 判例 土地・建物に共同抵当が設定された後、建物が再築された場合 否定 最判平9.2.14 土地のみに抵当権設定後、建物が新築された場合 原則否定 最判昭36.2.10更地への抵当権設定後に建物が建築された場合
- 法定地上権は成立しない(最判昭36.2.10)
- 抵当権設定時に建物が存在しないため、要件①を充たさない
- ただし、一括競売(389条)が可能
抵当権設定後に建物が滅失・再築された場合
- 最判平9.2.14:共同抵当の場合、再築建物について法定地上権は成立しない
- 抵当権者が把握していた担保価値の維持の観点から判断
物上代位(372条・304条)
基本構造
抵当権の効力は目的物の売却代金・賃料・保険金等の代替物に及ぶ。
差押えの要件(304条1項但書)
学説 差押えの趣旨 特定性維持説(判例) 代替物の特定性を維持し、他の債権者との優先関係を確保 優先権保全説 抵当権者の優先権を第三者に対して保全賃料に対する物上代位
- 最判平元.10.27:抵当権に基づく賃料への物上代位を肯定
- 差押えは払渡し前になされる必要がある
転付命令との関係
- 最判平10.1.30:転付命令が第三債務者に送達される前に差押えがなされれば物上代位可能
- 転付命令の確定後は物上代位不可
敷金返還請求権との関係
- 最判平14.3.28:敷金返還請求権に対する物上代位は否定
- 敷金は賃料債権とは異なる性質
抵当権に基づく妨害排除請求権
判例の展開
判例 内容 最大判平11.11.24 抵当権に基づく妨害排除請求権を肯定。不法占拠者に対する明渡請求 最判平17.3.10 抵当権者が所有者の不法占拠者に対する妨害排除請求権を代位行使できることを肯定要件
- 抵当不動産の交換価値の実現が妨げられていること
- 抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となる状態であること
- 所有者が適切な維持管理を怠っていること
占有者に対する引渡請求
- 抵当権者は占有者に対し直接自己への明渡しを請求できる(最判平17.3.10)
- 所有者への明渡しを求めても実効性がない場合の救済
共同抵当(392条)
同時配当の場合(392条1項)
各不動産の価額に応じて按分して負担する。
異時配当の場合(392条2項)
先に配当を受けた不動産の次順位抵当権者は、他の不動産について、共同抵当権者に代位する。
物上保証人所有の不動産との共同抵当
- 最判昭60.5.23:物上保証人所有の不動産が先に競売された場合、物上保証人は債務者所有の不動産について代位できる
- 392条2項の類推適用
抵当権消滅請求(379条〜)
改正前の「滌除」に代わる制度。第三取得者が抵当権の消滅を請求できる。
項目 内容 請求権者 抵当不動産の第三取得者 手続 抵当権者に対して一定の金額を提示し、消滅を請求 抵当権者の対応 承諾するか、競売を申し立てるかまとめ
- 法定地上権は4要件全ての充足が必要で、更地への抵当権設定では成立しない
- 物上代位の差押えは特定性維持のために必要(判例)
- 抵当権に基づく妨害排除請求権は判例で認められている
- 共同抵当は同時配当と異時配当で処理が異なる
- 抵当権消滅請求は第三取得者の保護制度
FAQ
Q1. 法定地上権の成否で最も間違えやすいポイントは?
「抵当権設定時」の土地・建物の所有者の同一性の判断です。設定後に所有者が変わっても影響しませんが、設定時に同一所有者でなければ法定地上権は成立しません。
Q2. 賃料への物上代位と賃借人の相殺の優劣は?
物上代位による差押えの前に賃借人が賃貸人に対する反対債権を取得していれば、賃借人は相殺を対抗できます(最判平13.3.13)。
Q3. 抵当権侵害で損害賠償請求は可能ですか?
可能です。抵当不動産の価値を減少させる行為は抵当権侵害として不法行為に基づく損害賠償請求の対象となります。