相続法の全体像|相続人・相続分・遺産分割・遺留分を整理
相続法の全体像を体系的に解説。法定相続人の範囲、法定相続分、遺産分割の方法、遺留分侵害額請求権、2018年改正のポイントを整理します。
この記事のポイント
相続法は、人の死亡により開始する財産の承継を規律する法分野であり、法定相続人の範囲、法定相続分、遺産分割の方法、遺言、遺留分が中核をなす。 2018年の相続法改正は40年ぶりの大改正であり、配偶者居住権の新設、遺留分制度の見直し(金銭債権化)、自筆証書遺言の方式緩和等が含まれる。
相続の開始
開始原因
相続は死亡によって開始する(882条)。失踪宣告(30条・31条)による場合も含む。
相続の場所
相続は被相続人の住所において開始する(883条)。
法定相続人
相続人の順位
順位 相続人 条文 常に相続人 配偶者 890条 第1順位 子(代襲相続あり) 887条1項 第2順位 直系尊属 889条1項1号 第3順位 兄弟姉妹(代襲相続あり・1代限り) 889条1項2号代襲相続(887条2項)
相続開始以前に相続人が死亡・欠格・廃除により相続権を失った場合、その者の子が代わりに相続する。
- 子の代襲相続: 再代襲あり(887条3項)
- 兄弟姉妹の代襲相続: 再代襲なし(889条2項)
相続欠格と廃除
- 相続欠格(891条): 法定の欠格事由に該当する場合に当然に相続権を失う
- 廃除(892条): 被相続人の意思に基づき家庭裁判所の審判により相続権を失わせる
法定相続分
相続人の組合せ 配偶者 他の相続人 配偶者と子 1/2 1/2(子の間で均等) 配偶者と直系尊属 2/3 1/3 配偶者と兄弟姉妹 3/4 1/4特別受益(903条)
共同相続人中に被相続人から遺贈または生前贈与を受けた者がいる場合、その価額を相続財産に加算して(みなし相続財産)各相続分を算定する。
寄与分(904条の2)
共同相続人中に被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者がいる場合、寄与分を控除した残額をみなし相続財産として各相続分を算定する。
特別寄与料(1050条)※改正新設
相続人以外の親族が被相続人の療養看護等に特別の寄与をした場合、相続人に対して金銭の支払いを請求できる。
遺産分割
分割の方法
- 協議分割: 共同相続人全員の協議(907条1項)
- 調停分割: 家庭裁判所の調停
- 審判分割: 家庭裁判所の審判(907条2項)
遺産分割の基準(906条)
遺産に属する物または権利の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活の状況等一切の事情を考慮して行う。
預貯金債権の遺産分割(判例変更)
最大決平28.12.19は、預貯金債権は遺産分割の対象に含まれると判示し、従来の判例(可分債権は当然分割)を変更した。
遺言
遺言の方式
種類 要件 自筆証書遺言 全文・日付・氏名を自書し、印を押す(968条)。改正で財産目録はPC作成可 公正証書遺言 公証人の面前で遺言の趣旨を口授(969条) 秘密証書遺言 封書にして公証人に提出(970条)遺言の撤回(1022条)
遺言者は、いつでも遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回できる。
遺留分
遺留分の割合
遺留分権利者 遺留分の割合 直系尊属のみの場合 被相続人の財産の1/3 その他の場合 被相続人の財産の1/2※兄弟姉妹には遺留分がない
遺留分侵害額請求権(改正)
改正前は「遺留分減殺請求権」として現物返還が原則であったが、改正後は金銭債権として構成された(1046条)。
- 効果: 遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できる
- 行使期間: 相続開始及び遺留分の侵害を知った時から1年、相続開始から10年
配偶者居住権(1028条)※改正新設
被相続人の配偶者が、相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、終身または一定期間、その建物を無償で使用収益できる権利。
- 成立: 遺産分割、遺贈、死因贈与による
- 登記: 対抗要件として登記が必要
- 譲渡禁止: 配偶者居住権は譲渡できない
試験での出題ポイント
- 法定相続分の算定: 特別受益・寄与分の修正
- 代襲相続: 再代襲の可否(子と兄弟姉妹の違い)
- 遺産分割: 預貯金の取扱い(平成28年判例変更)
- 遺留分: 金銭債権化(改正の重要ポイント)
- 配偶者居住権: 成立要件と効力
まとめ
- 法定相続人は配偶者と血族相続人(子→直系尊属→兄弟姉妹の順位)
- 特別受益と寄与分で具体的相続分を修正する
- 預貯金債権は遺産分割の対象に含まれる(判例変更)
- 遺留分は金銭債権として構成された(改正の最重要ポイント)
- 配偶者居住権が新設され、配偶者の居住保護が強化された
FAQ
Q1. 兄弟姉妹に遺留分はありますか?
ありません。遺留分が認められるのは配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属のみです。兄弟姉妹は遺言で相続分をゼロとされても異議を唱えられません。
Q2. 遺留分侵害額請求は金銭でしか請求できませんか?
改正民法により、遺留分侵害額請求権は金銭債権として構成されています。したがって、金銭の支払いのみを請求でき、不動産等の現物返還を請求することはできません。
Q3. 配偶者居住権の評価額はどう決まりますか?
建物の残存耐用年数、配偶者の年齢等を考慮して評価されます。配偶者居住権の価額分は他の遺産の取得額から控除されるため、配偶者は居住を確保しつつ他の財産も取得しやすくなります。