訴訟承継の体系
当然承継と特定承継の区別、参加承継・引受承継の手続、訴訟係属中の権利譲渡と当事者恒定主義の関係を体系的に整理します。
この記事のポイント
- 訴訟承継には当然承継(124条)と特定承継(49条〜51条)の2類型がある
- 参加承継(49条・51条)は承継人が自ら訴訟に参加する方式である
- 引受承継(50条・51条)は相手方の申立てにより承継人を訴訟に引き込む方式である
- 訴訟係属中の権利譲渡については当事者恒定主義が適用される(115条1項3号)
訴訟承継の意義
訴訟承継とは
訴訟承継とは、訴訟の係属中に当事者の地位を第三者が引き継ぐことをいう。訴訟が係属している間に当事者の死亡や訴訟物の譲渡が生じた場合に、訴訟手続の続行を可能にする制度である。
訴訟承継の必要性
訴訟承継が必要となるのは、以下の場面である。
- 当事者の死亡により相続人が権利義務を承継した場合
- 法人の合併により権利義務が包括的に承継された場合
- 訴訟係属中に訴訟物たる権利が第三者に譲渡された場合
- 訴訟係属中に訴訟物たる義務を第三者が引き受けた場合
当然承継(124条)
当然承継の意義
当然承継とは、法律上当然に訴訟の当事者たる地位が承継される場合をいう。民事訴訟法124条が規定する。
当然承継の事由
124条1項は、以下の事由が生じた場合に訴訟手続が中断し、承継人が訴訟を受継すると定める。
号数 中断事由 受継者 1号 当事者の死亡 相続人・相続財産管理人等 2号 当事者である法人の合併による消滅 合併後存続する法人又は合併により設立された法人 3号 当事者の訴訟能力の喪失又は法定代理人の死亡・代理権消滅 法定代理人又は訴訟能力を回復した本人 4号 受託者の任務終了 新たな受託者 5号 選定当事者の資格喪失 選定者全員又は新たな選定当事者 6号 破産手続開始決定 破産管財人中断と受継
当然承継が生じた場合、訴訟手続は中断する。中断後の手続の流れは以下のとおりである。
- 訴訟手続が中断する(124条1項)
- 承継人又は相手方が受継の申立てをする(124条・126条)
- 裁判所が受継を認めると訴訟手続が続行する
- 受継の申立てがない場合、裁判所は職権で相手方に受継を命じることもできる(127条参照)
訴訟代理人がいる場合の例外
訴訟代理人がいる場合、124条1項1号〜3号の事由が生じても訴訟手続は中断しない(124条2項)。訴訟代理人は本人の死亡等によっても代理権を失わないためである(58条参照)。
特定承継
特定承継の意義
特定承継とは、訴訟係属中に訴訟物たる権利義務が特定的に第三者に移転した場合の訴訟承継をいう。包括承継(相続・合併)とは異なり、個別の法律行為(売買・債権譲渡等)による権利の移転がこれに当たる。
当事者恒定主義
訴訟係属中に訴訟物たる権利が譲渡された場合でも、原則として従前の当事者がそのまま訴訟を追行する(当事者恒定主義)。
- 根拠 — 訴訟係属中の権利譲渡により当事者が変わると、訴訟経済に反し、相手方の利益を害する
- 条文上の根拠 — 115条1項3号は「口頭弁論終結後の承継人」に判決の効力が及ぶと定めており、権利譲渡後も従前の当事者が訴訟を追行することを前提としている
当事者恒定主義の例外
当事者恒定主義にかかわらず、以下の方法で承継人が訴訟に参加し、又は引き込まれることがある。
- 参加承継(49条・51条)
- 引受承継(50条・51条)
参加承継(49条・51条)
参加承継の意義
参加承継とは、訴訟係属中に訴訟物たる権利義務を承継した第三者が、自ら訴訟に参加する方式をいう。
参加承継の要件
要件 内容 訴訟係属中の承継 訴訟の係属中に訴訟物たる権利義務の承継があったこと 承継人の申立て 承継人が自ら訴訟参加の申出をすること 権利主張参加(47条)に準じた要件 訴訟の目的の全部又は一部が自己の権利であることを主張すること(49条)参加承継の手続
- 承継人が参加の申出をする
- 従前の当事者(承継させた者)は訴訟から脱退することができる(51条)
- 脱退しない場合は三者間の訴訟となる
51条の脱退
51条は「前二条の規定により訴訟に参加した者がある場合において、参加前の当事者が訴訟から脱退することについて相手方及び参加人が同意したときは、参加前の当事者は、訴訟から脱退することができる」と定める。
脱退の要件は以下のとおりである。
- 相手方の同意 — 相手方が脱退に同意すること
- 参加人の同意 — 参加人が脱退に同意すること
引受承継(50条・51条)
引受承継の意義
引受承継とは、訴訟係属中に訴訟物たる権利義務を承継した第三者を、相手方の申立てによって訴訟に引き込む方式をいう。
引受承継の要件
要件 内容 訴訟係属中の承継 訴訟の係属中に訴訟物たる権利義務の承継があったこと 相手方の申立て 訴訟の相手方(非承継側の当事者)が引受けの申立てをすること 50条の要件 訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継した者に対する引受け引受承継の手続
- 相手方が承継人に対する訴訟引受けの申立てをする(50条1項)
- 裁判所が引受決定をする
- 承継人が新たな当事者として訴訟に加わる
- 従前の当事者は51条により脱退が可能
引受承継の具体例
- 原告Xが被告Yに対し建物収去土地明渡請求をしている訴訟係属中に、Yが建物をZに譲渡した場合、Xは50条によりZの訴訟引受けを申し立てることができる
- 債権者Xが債務者Yに対し貸金返還請求をしている訴訟係属中に、Yが債務をZに引き受けさせた場合
参加承継と引受承継の比較
比較項目 参加承継(49条) 引受承継(50条) 申立権者 承継人自身 相手方(非承継側の当事者) 承継人の意思 自発的な参加 相手方の申立てによる引込み 承継の対象 権利の承継 義務の承継が典型 51条の脱退 可能 可能 準用される規定 47条(権利主張参加) 独自の規定訴訟承継と判決効の拡張
115条1項3号の口頭弁論終結後の承継人
115条1項3号は、確定判決の既判力が「口頭弁論終結後の承継人」にも及ぶと定める。
- 趣旨 — 訴訟係属中に権利を譲渡しても当事者恒定主義により従前の当事者が訴訟を追行するため、その判決の効力は承継人にも及ぶ必要がある
- 「承継人」の意義 — 訴訟物たる権利義務の承継人(特定承継人を含む)
訴訟係属中の承継人への判決効
訴訟係属中に権利を譲り受けた者(口頭弁論終結「前」の承継人)に判決効が及ぶかについては議論がある。
- 当事者恒定主義を前提とすれば — 承継人は実質的に訴訟の結果に拘束される(参加承継・引受承継により手続保障が図られる)
- 115条1項3号の類推 — 口頭弁論終結前の承継人にも判決効が及ぶとする見解がある
訴訟承継が問題となる具体的場面
債権譲渡の場合
原告Xが被告Yに対し貸金返還請求訴訟を提起した後、XがAに債権を譲渡した場合。
- 当事者恒定主義 — Xがそのまま訴訟を追行する
- Aによる参加承継 — Aは49条により訴訟に参加できる
- Yによる引受承継の申立て — Yは50条によりAの引受けを申し立てることもできる
目的物の譲渡の場合
原告Xが被告Yに対し建物明渡請求訴訟を提起した後、Yが建物をBに譲渡した場合。
- 当事者恒定主義 — Yがそのまま訴訟を追行する
- Xによる引受承継の申立て — Xは50条によりBの引受けを申し立てることができる
- 判決効 — Yに対する判決はBにも及ぶ(115条1項3号)
試験対策での位置づけ
訴訟承継は、以下の点が試験で重要である。
- 当然承継と特定承継の区別 — 中断事由の正確な列挙(124条各号)
- 当事者恒定主義の理解 — 115条1項3号との関連
- 参加承継と引受承継の比較 — 申立権者・要件・手続の違い
- 51条の脱退の要件 — 相手方と参加人双方の同意
- 論文式試験 — 訴訟係属中の権利譲渡と判決効の帰趨
関連判例
- 最判昭和41年3月22日 — 訴訟係属中の権利譲渡と当事者恒定主義
- 最判昭和48年6月21日 — 引受承継の要件
- 最判平成6年9月27日 — 口頭弁論終結後の承継人の意義
- 最判昭和51年10月21日 — 債権譲渡と訴訟承継
まとめ
訴訟承継は、訴訟係属中に当事者の変動が生じた場合の手続的対応を定める重要な制度である。当然承継は124条の列挙事由により法律上当然に生じ、特定承継は参加承継(49条)又は引受承継(50条)の方法による。訴訟係属中の権利譲渡については当事者恒定主義が適用され、従前の当事者がそのまま訴訟を追行するが、参加承継・引受承継・脱退(51条)の制度により当事者の変更が可能となっている。115条1項3号の口頭弁論終結後の承継人への既判力拡張と合わせて、体系的に理解することが求められる。