/ 民法

所有者不明土地問題と民法改正

所有者不明土地問題に対応する2021年民法改正を解説。共有制度の見直し、相隣関係の改正、相続土地国庫帰属制度など、物権法の重要改正を体系的に整理します。

この記事のポイント

2021年民法改正は、所有者不明土地問題の解決を主要な目的として行われた。共有制度の見直し(管理行為の要件緩和・所在等不明共有者の持分取得制度の新設)、相隣関係の見直し(ライフライン設置権の明文化・越境した枝の切除権の見直し)、財産管理制度の創設など、物権法分野に大きな変更が加えられた。


所有者不明土地問題の背景

問題の規模

国土交通省の調査によると、所有者不明土地は日本の国土面積の約22%(約410万ヘクタール)に上る。これは九州全体の面積を超える規模である。

問題の原因

原因 内容 相続未登記 相続が発生しても登記名義を変更しないまま放置 住所変更未登記 所有者の住所変更が登記に反映されない 土地の低利用 地方の土地の資産価値低下により管理の意欲が減退 多数の共有者 相続が重なり共有者が数十人〜数百人に及ぶケース

改正の全体像

所有者不明土地問題に対応するため、以下の法律が制定・改正された。

  • 民法改正(2021年法律第24号): 共有・相隣関係・財産管理制度の見直し
  • 不動産登記法改正: 相続登記の義務化(2024年4月1日施行)
  • 相続土地国庫帰属法(新法): 不要な土地を国庫に帰属させる制度

共有制度の見直し

管理行為の要件緩和

旧法では、共有物の管理行為には共有者の持分の過半数の同意が必要であった(旧252条)。しかし、共有者の一部が所在不明の場合、過半数の同意を得ることが事実上困難であった。

改正法は、以下の制度を新設した。

所在等不明共有者がいる場合の管理行為(252条2項2号)

裁判所の決定を得て、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により管理に関する事項を決することができる。

変更行為の要件緩和

行為の種類 旧法 改正法 変更行為 共有者全員の同意 軽微変更は持分の過半数、その他は全員の同意 管理行為 持分の過半数 持分の過半数(所在不明者を除外可能) 保存行為 各共有者が単独で可能 変更なし

軽微変更(251条1項括弧書)とは、形状又は効用の著しい変更を伴わないものをいい、例えば砂利道のアスファルト舗装などがこれに当たる。

所在等不明共有者の持分取得(262条の2)

共有者は、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を取得することができる。

  • 不動産が対象
  • 共有者が所在等不明共有者の持分の時価に相当する額を供託する必要がある
  • 相続財産に属する共有持分については、相続開始から10年を経過した場合に限り可能

所在等不明共有者の持分譲渡(262条の3)

共有者全員が持分を第三者に譲渡する場合において、所在等不明共有者がいるときは、裁判所の決定を得て、その持分を含めて譲渡することができる。


共有物の管理者制度(252条の2)

制度趣旨

改正法は、共有物の管理者を選任する制度を新設した。管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。

管理者の権限

  • 管理に関する行為(保存行為を含む)を行うことができる
  • 変更行為(軽微変更を除く)を行うには、共有者全員の同意が必要
  • 軽微変更を行うには、持分の過半数の決定が必要

相隣関係の見直し

ライフライン設置権の明文化(213条の2)

旧法には、電気・ガス・水道等のライフラインを他人の土地に設置する権利について明文規定がなかった。

改正法は、以下の権利を明文化した。

  • 他の土地にライフライン(電気、ガス、水道等)の設備を設置する権利
  • 他人が所有するライフライン設備に接続する権利

設置・接続にあたっては、以下の義務が課される。

  • 事前通知義務(213条の2第3項)
  • 設置場所等は、損害が最も少ないものを選ぶ(213条の2第2項)
  • 償金の支払い(213条の3)

越境した枝の切除(233条の改正)

旧法では、隣地の竹木の根は自ら切り取ることができたが、については所有者に切除を請求するしかなかった(旧233条)。

改正法は、以下の場合に土地の所有者が自ら枝を切り取ることを認めた(233条3項)。

  1. 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したが、相当の期間内に切除しないとき(1号)
  2. 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき(2号)
  3. 急迫の事情があるとき(3号)

財産管理制度の創設

所有者不明土地・建物管理命令(264条の2〜264条の8)

利害関係人の申立てにより、裁判所が所有者不明土地・建物について管理人を選任し、管理を行わせる制度である。

  • 対象: 所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地・建物
  • 管理人の権限: 保存行為、利用・改良行為、裁判所の許可を得た処分行為
  • 効果: 当該不動産及びその管理処分等に必要な動産に及ぶ

管理不全土地・建物管理命令(264条の9〜264条の14)

所有者による管理が不適当であることによって他人の権利・利益が侵害され、又はそのおそれがある場合に、裁判所が管理人を選任する制度である。

項目 所有者不明土地管理命令 管理不全土地管理命令 要件 所有者の所在不明 管理不全による権利侵害 申立権者 利害関係人 利害関係人 管理人の権限 広範(処分も可能) 保存・利用改良が中心 処分の可否 裁判所の許可で可能 所有者の同意が必要

相続土地国庫帰属制度

制度概要

相続又は遺贈により土地を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、当該土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度である(相続土地国庫帰属法)。

要件

以下に該当しない土地が対象となる。

  • 建物が存在する土地
  • 担保権又は使用収益権が設定されている土地
  • 通路等として他人に使用されている土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地
  • 崖がある土地で管理に過分の費用・労力を要するもの

費用

  • 審査手数料(1筆1万4000円)
  • 負担金(原則20万円、一部の土地は面積に応じた額)

試験対策での位置づけ

2021年民法改正は、共有法・物権法の基本構造に関わる重要改正である。

特に押さえるべきポイントは以下の通りである。

  • 共有物の管理行為・変更行為の要件変更(軽微変更の概念)
  • 所在等不明共有者の持分取得・譲渡の要件
  • 共有物の管理者制度の新設
  • ライフライン設置権の要件と効果
  • 越境した枝の切除権(233条3項の3つの場合)
  • 所有者不明土地管理命令と管理不全土地管理命令の比較

関連判例

  • 最判平成10年3月24日: 共有物の管理に関する従前の判例
  • 最判平成25年4月16日: 共有物の変更行為と管理行為の区別

まとめ

2021年民法改正は、所有者不明土地問題という現代的課題に対応するため、共有制度・相隣関係・財産管理制度に大幅な改正を加えたものである。不動産登記法改正による相続登記の義務化や相続土地国庫帰属法の制定とあわせて、包括的な対策が講じられている。試験対策としては、旧法との比較を意識しつつ、改正の趣旨と各制度の要件・効果を正確に理解することが重要である。

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