使用貸借と消費貸借|無償契約の要件と効果を比較
民法593条の使用貸借と587条の消費貸借を比較解説。改正民法による書面による消費貸借の新設、使用貸借の対抗力、要物契約から諾成契約への変更を整理します。
この記事のポイント
使用貸借は目的物を無償で使用収益させる契約であり、消費貸借は金銭等を消費目的で貸し付ける契約である。 改正民法では消費貸借に諾成的消費貸借(587条の2)が新設され、書面による合意のみで成立する類型が認められた。
使用貸借(593条)
成立要件
改正民法により、使用貸借は諾成契約に変更された(旧法では要物契約)。
項目 改正前 改正後 契約の性質 要物契約 諾成契約 成立時期 目的物の引渡し時 合意時 無償性 必要 必要使用貸借の効力
借主の義務
- 用法に従った使用収益義務(594条1項)
- 善管注意義務(400条)
- 目的物の返還義務
対抗力
- 使用貸借には対抗力がない(605条の適用なし)
- 貸主が目的物を第三者に譲渡した場合、借主は新所有者に対抗できない
使用貸借の終了
終了事由 条文 内容 期間の満了 597条1項 約定期間の経過 目的の達成 597条2項 使用収益の目的に従い使用を終えたとき 相当期間の経過 598条1項 目的が定められていない場合 借主の死亡 597条3項 借主の一身専属的性質 貸主の解除 598条2項・3項 書面によらない場合等消費貸借(587条)
要物的消費貸借(587条)
項目 内容 性質 要物契約 成立 金銭等の交付による 返還義務 種類・品質・数量が同じ物を返還書面による消費貸借(587条の2)【改正民法新設】
- 要件:書面でする消費貸借の合意
- 効果:合意のみで成立(諾成契約)
- 借主の解除権:金銭等の交付を受けるまでは契約を解除できる(587条の2第2項)
- 損害賠償:解除により貸主に損害が生じたときは賠償義務あり
利息
類型 利息の発生 根拠 無利息消費貸借 なし 原則(587条) 利息付消費貸借 あり 特約(589条) 商事消費貸借 当然に発生 商法513条返還時期
- 期限の定めあり:期限到来時
- 期限の定めなし:貸主が相当の期間を定めて催告した後(591条1項)
- 借主からの返還:いつでも可能(591条2項)。ただし期限前返還による損害は賠償義務あり(591条3項)
使用貸借と賃貸借の比較
比較項目 使用貸借 賃貸借 対価 無償 有償 対抗力 なし あり(605条) 借主死亡 終了 承継 存続期間 制限なし 最長50年 借地借家法 適用なし 適用あり 必要費 借主負担(595条) 貸主負担(608条)親族間の使用貸借の問題
内縁関係と使用貸借
内縁関係にある当事者間で住居を使用させている場合、使用貸借の黙示の合意が認定されることがある。内縁解消時の住居明渡しについては、権利濫用法理(1条3項)により保護が図られることもある。
親子間の使用貸借
親が子に土地・建物を無償で使用させている場合、多くは使用貸借と認定される。親の死亡による相続が開始した場合の処理が問題となる(597条3項の適用の有無)。
まとめ
- 使用貸借は改正民法で要物契約から諾成契約に変更された
- 消費貸借は原則要物契約だが、書面による諾成的消費貸借が新設された
- 使用貸借には対抗力がない点が賃貸借との最大の違い
- 使用貸借は借主の死亡により終了する(一身専属性)
- 消費貸借の借主は金銭等の交付前であれば解除可能(改正民法)
FAQ
Q1. 使用貸借と賃貸借の区別基準は?
対価の有無が決定的です。固定資産税相当額の支払いは賃料とは認められず、使用貸借と判断されるのが判例の立場です(最判昭41.10.27)。
Q2. 書面による消費貸借のメリットは?
金銭の交付前に契約の効力を発生させることで、貸主の貸付義務を法的に担保できます。実務上、融資契約の成立時期の明確化に資します。
Q3. 使用貸借の借主は善管注意義務を負いますか?
はい。無償契約ですが、借主は善管注意義務を負います(400条準用)。改正前の「自己の財産と同一の注意」から変更されています。