新株発行の手続と瑕疵|有利発行・不公正発行の論点
新株発行の手続と瑕疵を体系的に解説。株主割当て・第三者割当ての手続、有利発行の特別決議、不公正発行の差止め、新株発行無効の訴えを整理します。
この記事のポイント
新株発行は会社の資金調達の中核であるが、既存株主の利益を害する可能性があるため、有利発行規制と不公正発行の差止めが重要な論点となる。
新株発行の方法
方法 内容 手続 株主割当て 既存株主に持分に応じて割当て 取締役会決議 第三者割当て 特定の第三者に割当て 取締役会決議(有利発行は特別決議) 公募 不特定多数から募集 取締役会決議有利発行(199条3項)
意義
特に有利な金額で新株を発行すること。既存株主の経済的利益を害するため、株主総会の特別決議が必要。
「特に有利な金額」の判断基準
基準 内容 上場会社 市場価格を基準に10%程度以上のディスカウント 非上場会社 公正な評価額を下回る価格有利発行を特別決議なく行った場合
- 新株発行の無効原因となるか → 学説の対立
- 非公開会社:無効原因(最判平24.4.24)
- 公開会社:無効原因とならないとする見解が有力
不公正発行の差止め(210条)
差止事由
- 法令・定款に違反する場合(210条1号)
- 著しく不公正な方法による場合(210条2号)
「著しく不公正な方法」の判断基準
主要目的ルール:新株発行の主要な目的が不当な目的(支配権維持等)にある場合は「著しく不公正な方法」に当たる。
判例 判断 忠実屋・いなげや事件 資金調達目的か支配権維持目的かで判断 ベルシステム24事件 防衛目的の新株予約権発行は不公正発行差止めの仮処分
- 株主は差止めの仮処分を申し立てることができる
- 発行前でなければ差止めの実効性がない
新株発行の瑕疵
新株発行無効の訴え(828条1項2号)
項目 公開会社 非公開会社 提訴期間 6か月以内 1年以内 提訴権者 株主、取締役、監査役等 同左 効力 将来に向かって無効(対世効)無効原因
瑕疵の類型 公開会社 非公開会社 取締役会決議を欠く 無効原因でない(有力説) 無効原因 有利発行の特別決議を欠く 争いあり 無効原因 通知・公告の欠缺 無効原因(有力説) 無効原因新株発行不存在確認の訴え(829条1号)
- 新株発行の実体がない場合
- 提訴期間の制限なし
新株予約権
意義
会社に対して一定の価額(行使価額)で新株の発行を受けることができる権利。
新株予約権の発行手続
- 有利発行の場合は株主総会特別決議(238条3項)
- 無償発行・ストックオプション等に利用
新株予約権の差止め・無効
- 差止め:247条
- 無効の訴え:828条1項4号
まとめ
- 新株発行は株主割当て・第三者割当て・公募の3方法
- 有利発行には株主総会の特別決議が必要
- 不公正発行は主要目的ルールで判断される
- 新株発行の瑕疵は無効の訴えでのみ争える
- 公開会社と非公開会社で無効原因の範囲が異なる
FAQ
Q1. 新株発行の差止めが間に合わなかった場合は?
新株発行無効の訴えによって争うことになります。ただし、取引の安全の観点から無効原因は制限的に解されます。
Q2. ストックオプションとして新株予約権を発行する場合の手続は?
取締役等に対する報酬として新株予約権を付与する場合、361条に基づく報酬の決定(株主総会決議)が必要です。
Q3. 第三者割当増資における「払込金額が特に有利な金額」かの判断はいつの時点でしますか?
取締役会決議の時点での公正な価額を基準に判断します。上場会社の場合は決議前の一定期間の市場価格の平均値が参考にされます。