資本制度と剰余金配当|資本金・準備金・分配可能額の計算
会社法の資本制度を解説。資本金・準備金の意義、剰余金配当の手続と財源規制、分配可能額の計算方法、違法配当の効果を整理します。
この記事のポイント
会社法の資本制度は債権者保護の基盤であり、剰余金配当は分配可能額の範囲内でのみ許される。 分配可能額の計算方法と違法配当の効果は、会社法の計算分野の最重要論点である。
資本金と準備金
資本金
項目 内容 意義 会社財産を確保するための計算上の基準額 最低額 なし(1円でも可) 計上 出資額の1/2を超えない額を資本準備金に計上可能(445条2項・3項)準備金
種類 積立要件 条文 資本準備金 出資額の1/2を超えない額 445条3項 利益準備金 剰余金配当額の1/10を積立て(資本金の1/4に達するまで) 445条4項資本金の増減
行為 手続 増加 準備金の資本組入れ等 減少 株主総会特別決議+債権者保護手続(449条)剰余金配当
手続
原則 例外(中間配当) 株主総会普通決議 取締役会決議(定款の定めが必要・454条5項)配当の基準日
- 定款で定める基準日の株主に配当(124条)
- 通常は事業年度末日
分配可能額の計算
基本計算式
分配可能額 = 剰余金の額 − 自己株式の帳簿価額 − その他の控除額
剰余金の額(446条)
剰余金 = その他資本剰余金 + その他利益剰余金
控除される額
項目 内容 自己株式の帳簿価額 取得した自己株式の帳簿上の価額 のれん等調整額 のれん・繰延資産がある場合の調整違法配当の効果
株主の返還義務(462条1項)
場面 株主の返還義務 善意の株主 配当額を限度に返還義務(462条1項) 悪意の株主 全額返還義務取締役等の責任(462条1項)
- 分配を行った業務執行者は連帯して返還義務を負う
- 注意を怠らなかったことを証明しても免責されない(無過失責任)
欠損填補責任(465条)
- 剰余金配当により欠損が生じた場合、配当に関する職務を行った業務執行者は欠損額を会社に支払う義務を負う
まとめ
- 資本金に最低額の制限はない
- 剰余金配当は分配可能額の範囲内でのみ可能
- 違法配当があった場合、株主には返還義務、業務執行者には無過失の連帯責任
- 準備金は資本準備金と利益準備金に分かれる
- 資本金の減少には特別決議と債権者保護手続が必要
FAQ
Q1. 分配可能額がマイナスの場合はどうなりますか?
配当はできません。分配可能額がマイナスの状態で配当すれば違法配当となり、株主の返還義務と取締役等の責任が生じます。
Q2. 現物配当は可能ですか?
可能です(454条4項)。ただし、金銭分配請求権(株主が金銭での受取りを選択できる権利)を与えない場合は株主総会の特別決議が必要です。
Q3. 自己株式の取得と分配可能額の関係は?
自己株式の取得も分配可能額の範囲内で行う必要があります(461条)。自己株式の取得と剰余金配当は同じ財源規制に服します。