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制限行為能力者制度の全体像|未成年者・被後見人・被保佐人・被補助人

制限行為能力者制度を体系的に解説。未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の法律行為の効力、取消しの効果、相手方保護を整理します。

この記事のポイント

制限行為能力者制度は、判断能力が不十分な者を保護するため、一定の法律行為について取消しを認める制度である。未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の4類型があり、保護の程度が異なる。相手方保護として催告権(20条)と詐術による取消制限(21条)が設けられている。


権利能力・意思能力・行為能力の区別

概念 意味 効果 権利能力 権利義務の主体となりうる資格 すべての人に認められる(3条1項) 意思能力 法律行為の意味を理解する能力 意思能力を欠く法律行為は無効(3条の2) 行為能力 単独で有効に法律行為を行う能力 行為能力の制限に反する法律行為は取消し可能

意思能力の欠如は無効(絶対的に効力なし)、行為能力の制限は取消し(取消しまでは有効)という効果の違いに注意。


未成年者(5条)

法律行為の制限

未成年者が法律行為をするには、原則としてその法定代理人の同意を得なければならない(5条1項)。同意を得ないでした法律行為は取り消すことができる(5条2項)。

例外(同意不要の行為)

  • 単に権利を得、又は義務を免れる法律行為(5条1項ただし書): 贈与を受ける等
  • 処分を許された財産の処分(5条3項): 小遣い等
  • 営業を許された場合のその営業に関する行為(6条)

法定代理人の権限

法定代理人(親権者・未成年後見人)は、同意権・取消権・追認権・代理権を有する。


成年被後見人(9条)

法律行為の制限

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

― 民法 第9条

成年被後見人は事理弁識能力を欠く常況にある者(7条)であり、原則としてすべての法律行為が取消可能である。成年後見人の同意を得た行為であっても取り消せる(同意権がない)。

日常生活に関する行為の例外

食料品の購入、公共料金の支払い等、日常生活に関する行為は取り消せない。本人の自己決定権の尊重と取引安全の保護の観点による。


被保佐人(13条)

同意を要する行為

被保佐人は事理弁識能力が著しく不十分な者(11条)であり、13条1項に列挙された重要な法律行為について保佐人の同意を要する。

号数 同意を要する行為 1号 元本を領収し、又は利用すること 2号 借財又は保証をすること 3号 不動産その他重要な財産の売買 4号 訴訟行為 5号 贈与、和解又は仲裁合意 6号 相続の承認・放棄、遺産分割 7号 贈与・遺贈の拒絶、負担付贈与・遺贈の承認 8号 新築・改築・増築・大修繕 9号 一定期間を超える賃貸借 10号 上記各号の行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること

家庭裁判所は、13条1項に列挙されていない行為についても、審判により保佐人の同意を要するものとすることができる(13条2項)。


被補助人(17条)

同意を要する行為

被補助人は事理弁識能力が不十分な者(15条)であり、13条1項所定の行為の一部について、家庭裁判所の審判により補助人の同意を要するものとされた行為について、同意が必要となる(17条1項)。

被補助人は最も軽い保護類型であり、補助開始の審判には本人の同意が必要である(15条2項)。


4類型の比較

項目 未成年者 成年被後見人 被保佐人 被補助人 判断能力 ― 欠く常況 著しく不十分 不十分 保護の範囲 原則全行為 原則全行為 13条1項列挙行為 審判で定めた一部 同意権 法定代理人 なし 保佐人 補助人 代理権 法定代理人 成年後見人 審判により付与 審判により付与 開始の同意 ― 不要 不要 本人の同意必要

相手方の保護

催告権(20条)

制限行為能力者の相手方は、1か月以上の期間を定めて、追認するかどうかの確答を催告できる。

催告の相手方 確答なしの効果 行為能力者となった本人 追認とみなす 法定代理人・保佐人・補助人 追認とみなす 被保佐人・被補助人本人(特別の方式が必要な場合) 取消しとみなす

詐術(21条)

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

― 民法 第21条

詐術を用いた制限行為能力者は、保護に値しないため取消権を失う。単に制限行為能力者であることを黙秘しただけでは詐術に当たらないが、黙秘が他の言動と相まって相手方を誤信させた場合は詐術に当たりうる(最判昭44.2.13)。


よくある質問

Q1: 成年被後見人に同意権がないのはなぜですか

成年被後見人は事理弁識能力を欠く常況にあるため、同意を与えても本人がその意味を理解して行為できる保証がない。そのため同意権は意味をなさず、代理権による保護が中心となる。

Q2: 取消しの効果はどうなりますか

取消しにより法律行為は遡及的に無効となる(121条)。制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において返還義務を負う(121条の2第3項)。

Q3: 法定代理人の利益相反行為はどう処理されますか

親権者と子の利益が相反する行為については、親権者は特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない(826条)。


関連条文

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。

― 民法 第5条第1項


まとめ

制限行為能力者制度は4類型(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)からなり、判断能力の程度に応じて保護の範囲が異なる。相手方保護として催告権(20条)と詐術による取消制限(21条)が設けられている。各類型の同意権・代理権の有無と範囲の違いを横断的に整理することが試験対策上重要である。

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