共有制度の改正
2021年民法改正による共有制度の見直しを解説。管理行為の範囲拡大、所在等不明共有者の持分取得・譲渡、共有物の管理者制度を体系的に整理します。
この記事のポイント
2021年民法改正により、共有制度が大幅に見直された。変更行為と管理行為の区分が再整理され、軽微変更の概念が導入された(251条・252条改正)。所在等不明共有者がいる場合の管理行為の特則、持分取得制度(262条の2)及び持分譲渡制度(262条の3)が新設され、共有物の管理者制度(252条の2)も創設された。所有者不明土地問題への対応を含め、共有法の基本構造に関わる重要改正である。
改正の背景
旧法の問題点
旧法の共有制度には、以下の問題があった。
問題点 内容 全員同意の困難 共有者の一部が所在不明の場合、変更行為に必要な全員同意を得られない 管理行為の範囲の不明確さ 変更行為と管理行為の区別が必ずしも明確でない 管理の担い手の不在 共有物を継続的に管理する者を選任する制度がない 共有関係の解消困難 所在不明共有者がいる場合に共有関係を解消する手段が限られる変更行為と管理行為の再整理
旧法の規律
行為の種類 旧法の要件 変更行為 共有者全員の同意(旧251条) 管理行為 持分の過半数の同意(旧252条本文) 保存行為 各共有者が単独で可能(旧252条ただし書)改正法の規律
1. 変更行為(251条1項)
共有物の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)には、共有者全員の同意が必要。
2. 軽微変更(251条1項括弧書)
形状又は効用の著しい変更を伴わない変更(軽微変更)は、持分の過半数で決定できる。
3. 管理行為(252条1項)
共有物の管理に関する事項は、持分の過半数で決定する。
4. 保存行為(252条5項)
各共有者が単独で行うことができる。
軽微変更の具体例
行為 分類 砂利道のアスファルト舗装 軽微変更(持分の過半数で可能) 共有建物の外壁塗装 軽微変更 共有建物の建替え 変更行為(全員の同意が必要) 共有土地の農地から宅地への転用 変更行為 共有建物の大規模増改築 変更行為所在等不明共有者がいる場合の特則
管理行為の特則(252条2項)
共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき(所在等不明共有者)は、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により管理に関する事項を決することができる。
手続の流れ
- 共有者が裁判所に申立て
- 裁判所が公告等により所在等不明共有者への通知を試みる
- 一定期間経過後、裁判所が決定
- 所在等不明共有者を除いた残りの共有者の持分の過半数で管理行為を決定
変更行為の特則(251条2項)
所在等不明共有者がいる場合、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により変更行為を行うことができる。
行為の種類 通常 所在等不明共有者がいる場合 変更行為 全員の同意 所在不明者を除く全員の同意(裁判所の決定要) 軽微変更 持分の過半数 所在不明者を除く持分の過半数(裁判所の決定要) 管理行為 持分の過半数 所在不明者を除く持分の過半数(裁判所の決定要) 保存行為 各共有者が単独 変更なし共有者間の賛否が明らかでない場合(252条2項1号)
共有物の管理に関する事項を決する場合において、共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて賛否を明らかにすべき旨を催告したにもかかわらず、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないときは、裁判所の決定を得て、当該他の共有者以外の共有者の持分の過半数により管理に関する事項を決することができる。
所在等不明共有者の持分取得(262条の2)
制度趣旨
所在等不明共有者がいることにより共有関係の解消が困難となる問題に対応するため、共有者が裁判所の決定を得て所在等不明共有者の持分を取得できる制度が新設された。
要件
要件 内容 対象 不動産の共有持分 申立権者 共有者 所在等不明 共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないこと 供託 所在等不明共有者の持分の時価相当額の供託相続財産に属する共有持分の特則
相続財産に属する共有持分については、相続開始から10年を経過した場合に限り、持分取得の申立てが可能である(262条の2第3項)。
これは、10年以内であれば遺産分割により解決すべきとの趣旨である。
所在等不明共有者の持分譲渡(262条の3)
制度趣旨
共有者全員が持分を第三者に譲渡したい場合において、所在等不明共有者がいるときに、その持分も含めて第三者に譲渡できるようにする制度である。
要件と手続
- 共有者全員で持分の全部を第三者に譲渡する場合に限る
- 裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を含めて譲渡
- 所在等不明共有者の持分の時価相当額を供託
- 裁判所の決定から2か月以内に譲渡を行わなければ効力を失う
持分取得と持分譲渡の比較
項目 持分取得(262条の2) 持分譲渡(262条の3) 効果 共有者が持分を取得 第三者に持分を譲渡 対象 不動産の共有持分 不動産の共有持分 供託 時価相当額 時価相当額 期間制限 なし 決定から2か月以内に譲渡 相続財産の特則 相続開始から10年経過後 相続開始から10年経過後共有物の管理者制度(252条の2)
制度趣旨
共有物の管理を継続的に行う者を選任する制度が新設された。従来、共有物の管理は共有者間の協議により行われていたが、管理者を定めることで効率的な管理が可能となる。
管理者の選任・解任
- 管理者の選任及び解任は、持分の過半数で決定(252条の2第1項)
- 管理者は共有者に限られず、第三者でも可能
管理者の権限
権限 内容 管理に関する行為 保存行為及び管理行為を行うことができる(252条の2第2項) 軽微変更 持分の過半数の決定を経て行うことができる 変更行為 共有者全員の同意が必要(252条の2第2項ただし書)管理者の義務
管理者は、共有者に対して善管注意義務を負う(252条の2第4項、644条準用)。管理者が共有者でない場合は、委任の規定が準用される。
共有物の使用に関する改正
使用者の決定(252条1項後段)
共有物を使用する共有者を定める場合は、持分の過半数で決定する。
使用者の変更(252条3項)
共有物を使用する共有者がいる場合であっても、持分の過半数で使用者を変更することができる。ただし、現に共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすときは、当該共有者の承諾が必要である(252条3項)。
使用者の償金支払義務
共有物の全部を使用する共有者は、他の共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を支払う義務を負う(249条2項)。また、善良な管理者の注意義務を負う(249条3項)。
試験対策での位置づけ
共有制度の改正は、物権法の基礎的知識として短答式・論文式の双方で出題可能性が高い。
特に押さえるべきポイントは以下の通りである。
- 変更行為・軽微変更・管理行為・保存行為の区分と要件
- 所在等不明共有者がいる場合の管理行為・変更行為の特則
- 持分取得制度と持分譲渡制度の要件と比較
- 共有物の管理者制度の権限と義務
- 相続財産に属する共有持分の10年経過要件
関連判例
- 最判平成10年3月24日: 共有物の管理行為に関する判例
- 最判昭和39年2月25日: 共有物の変更行為と管理行為の区別
- 最判平成8年11月26日: 共有物の使用と償金
まとめ
2021年民法改正による共有制度の見直しは、所有者不明土地問題への対応を主目的としつつ、共有法全般にわたる改正を行ったものである。軽微変更の概念の導入、所在等不明共有者の持分取得・譲渡制度の新設、管理者制度の創設は、いずれも実務上・試験上の重要論点である。旧法との比較を意識しつつ、改正の趣旨と各制度の要件・効果を正確に理解することが求められる。