契約総論の体系|成立・効力・同時履行・危険負担
民法の契約総論を体系的に解説。契約の成立、申込みと承諾、同時履行の抗弁権、危険負担の改正、第三者のためにする契約を整理します。
この記事のポイント
契約総論は、13種の典型契約に共通するルールを定める分野であり、契約の成立、効力、解除に関する規定を含む。 改正民法は、承諾の期限(521条以下の再編)、定型約款(548条の2以下の新設)、危険負担(534条の削除)など重要な変更を加えた。
契約の成立
申込みと承諾
契約は、一方当事者の申込みと相手方の承諾の意思表示の合致により成立する。
申込みの撤回
場面 撤回の可否 承諾期間を定めた申込み 撤回不可(523条1項) 承諾期間を定めない申込み(対話者間) 対話継続中は撤回不可 承諾期間を定めない申込み(隔地者間) 相当の期間内は撤回不可(525条1項)意思実現による契約成立(527条)
申込みに対して意思表示に代えて事実上の行為がなされた場合にも契約が成立しうる。
同時履行の抗弁権(533条)
要件
- 双務契約から生じた対立する債務が存在すること
- 相手方が履行の提供をしないで履行を請求すること
- 自己の債務が弁済期にあること
効果
相手方が履行の提供をするまで自己の債務の履行を拒絶できる(引換給付判決)。
同時履行の抗弁権が認められる場面(拡張適用)
- 解除による原状回復義務相互間(546条)
- 請負の報酬支払いと目的物の引渡し
- 賃貸借終了時の敷金返還と目的物明渡し → 同時履行の関係なし(判例)
危険負担
改正民法の整理
改正前 改正後 特定物の滅失 債権者主義(534条)→ 債権者が代金支払義務を負う 534条削除 双務契約一般 債務者主義(536条)→ 反対給付義務は消滅 履行拒絶権構成(536条1項)改正後の536条1項
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができる。
- 改正前: 反対給付債務が当然に消滅
- 改正後: 反対給付債務は消滅せず、履行拒絶権が生じる
- 契約関係からの離脱は解除による
定型約款(548条の2以下)
定型約款の定義(548条の2第1項)
定型取引において、契約の内容とすることを目的として準備された条項の総体。
みなし合意(548条の2第1項)
定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合、または定型約款準備者が予め表示していた場合に、個別の条項について合意があったものとみなされる。
不当条項の排除(548条の2第2項)
相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものは、合意しなかったものとみなされる。
変更(548条の4)
定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合するとき、または変更が合理的であるときは、個別の同意なく変更できる。
第三者のためにする契約(537条)
構造
- 要約者: 契約の一方当事者(債権者の立場)
- 諾約者: 契約の他方当事者(債務者の立場)
- 受益者: 第三者(権利を取得する者)
受益の意思表示
受益者が諾約者に対して受益の意思表示をした時に、第三者の権利が確定的に発生する(537条3項)。
試験での出題ポイント
- 同時履行の抗弁権: 拡張適用の範囲(敷金返還との関係)
- 危険負担: 改正による履行拒絶権構成への転換
- 定型約款: 不当条項規制と変更の要件
- 第三者のためにする契約: 受益の意思表示の効果
まとめ
- 契約は申込みと承諾の合致により成立する
- 同時履行の抗弁権は双務契約から生じる対立する債務間に認められる
- 危険負担は改正により履行拒絶権構成に転換され、債権者主義は廃止された
- 定型約款が明文化され、不当条項の排除と一方的変更の要件が規定された
- 第三者のためにする契約は受益の意思表示により権利が確定する
FAQ
Q1. 同時履行の抗弁権と留置権の違いは?
同時履行の抗弁権は双務契約の対価関係にある債務間に認められ、留置権は物と債権の牽連性がある場合に認められます。効果も異なり、同時履行の抗弁権は引換給付判決、留置権は引渡拒絶です。
Q2. 危険負担の改正で何が変わりましたか?
最大の変更は、反対給付債務が当然消滅する構成から履行拒絶権構成への転換です。契約関係からの離脱は解除により行うことになり、債権者主義(旧534条)は廃止されました。
Q3. 定型約款の変更は一方的にできますか?
相手方の一般の利益に適合する場合、または変更が合理的である場合に限り、個別の同意なく変更できます。変更の効力発生時期は予め定めておく必要があります。