会社の設立|発起設立と募集設立の要件・手続・瑕疵
会社法の設立手続を体系的に解説。発起設立と募集設立の違い、定款の作成、出資の履行、設立の瑕疵と設立無効の訴えを整理します。
この記事のポイント
株式会社の設立は、定款の作成→出資の履行→設立登記の流れで行われ、発起設立と募集設立の2つの方法がある。 設立手続の瑕疵については、設立無効の訴え(828条1項1号)によってのみ争うことができる。
設立の2つの方法
項目 発起設立 募集設立 株式の引受人 発起人のみ 発起人+募集に応じた者 実務上の利用 大多数 極めて少数 手続 簡易 創立総会の開催等が必要 検査役の調査 現物出資等の場合 同左+創立総会での報告設立手続の流れ
発起設立の手続
- 定款の作成(26条)
- 公証人の認証(30条)
- 出資の履行(34条)
- 設立時取締役等の選任(38条)
- 設立時取締役等による調査(46条)
- 設立登記(49条)
定款の記載事項
種類 内容 具体例 絶対的記載事項 記載がなければ定款無効 目的、商号、本店所在地、設立時の出資額、発起人の氏名住所 相対的記載事項 記載がなければその事項の効力なし 現物出資、財産引受け、発起人の報酬 任意的記載事項 記載がなくても定款は有効 事業年度、株主総会の開催地変態設立事項(28条)
4つの変態設立事項
事項 内容 趣旨 現物出資 金銭以外の財産を出資 過大評価の防止 財産引受け 設立後に特定の財産を譲り受ける契約 設立費用の膨張防止 発起人の報酬 発起人が受ける報酬 利益相反の防止 設立費用 会社が負担する設立費用 会社財産の確保検査役の調査(33条)
- 現物出資・財産引受けについて裁判所が選任する検査役の調査が必要
- ただし、以下の場合は不要:
- 価額の総額が500万円以下
- 市場価格のある有価証券で市場価格を超えない場合
- 弁護士等の証明を受けた場合
発起人の権限と責任
発起人の権限
権限の範囲 具体例 設立に必要な行為 定款の作成、株式の引受け 設立のために必要な行為 事務所の賃借、設備の購入(争いあり) 開業準備行為 原則として権限外財産引受けの制限
- 定款に記載のない財産引受けは無効(28条2号)
- 発起人が会社設立後に追認することは不可(判例)
発起人の責任
責任 条文 内容 出資の履行責任 36条 出資未履行の場合の連帯責任 現物出資の不足額填補責任 52条 不足額を支払う連帯責任 任務懈怠責任 53条 会社に対する損害賠償責任 第三者に対する責任 53条2項 悪意重過失の場合の損害賠償設立の瑕疵
設立無効の訴え(828条1項1号)
項目 内容 提訴権者 株主、取締役、監査役等 提訴期間 設立登記の日から2年以内 効力 将来に向かって無効(対世効) 無効原因 設立手続の重大な瑕疵設立無効原因の例
- 定款の絶対的記載事項の欠缺
- 公証人の認証の欠缺
- 設立登記の欠缺
設立無効原因でないもの
- 発起人の一人の意思表示の瑕疵(他の発起人の設立行為に影響しない)
まとめ
- 設立は発起設立が実務上ほぼ全て
- 変態設立事項は定款への記載と検査役の調査が原則必要
- 財産引受けは定款記載がなければ無効で追認も不可
- 発起人は出資の履行・不足額填補・任務懈怠の責任を負う
- 設立の瑕疵は設立無効の訴えでのみ争える
FAQ
Q1. 事後設立とは何ですか?
会社成立後2年以内に、成立前から存在する財産で事業のために継続して使用するものを純資産額の5分の1を超える対価で取得する行為です(467条1項5号)。株主総会の特別決議が必要です。
Q2. 見せ金による出資はどうなりますか?
見せ金は実質的に出資の履行があったとはいえず、発起人は払込みの責任を負います。設立無効原因になるかは争いがありますが、判例は設立自体の無効原因とはしない傾向です。
Q3. 一人会社の設立は可能ですか?
可能です。会社法は発起人1名による設立を認めており、設立後も株主1名の会社(一人会社)が適法に存続します。