株式買取請求権|反対株主の保護と「公正な価格」の算定
株式買取請求権の要件と効果を解説。反対株主の保護制度、「公正な価格」の意義、ナカリセバ価格とシナジー分配価格の判例法理を整理します。
この記事のポイント
株式買取請求権は、組織再編等に反対する株主に退出の機会を保障する制度であり、「公正な価格」の算定が最大の争点となる。 判例はシナジー(組織再編による企業価値の増加分)の分配を含む価格を「公正な価格」と解している。
株式買取請求権が認められる場面
場面 条文 合併 785条・797条 会社分割 785条・797条 株式交換・移転 785条・797条 事業譲渡等 469条 定款変更(譲渡制限の付加等) 116条 全部取得条項付種類株式の取得 116条反対株主の要件
取締役会設置会社の場合
要件 内容 事前の反対通知 株主総会に先立ち反対する旨を通知 株主総会での反対 株主総会で議案に反対の議決権行使 買取請求 効力発生日の20日前から前日までに請求議決権を行使できない株主
議決権を有しない株主は、事前の反対通知なく買取請求が可能。
「公正な価格」の意義
2つの考え方
考え方 内容 ナカリセバ価格 組織再編がなかったならば有していたであろう価格 シナジー分配価格 組織再編によるシナジーの公正な分配を含む価格判例の立場
最決平23.4.19(テクモ事件):組織再編により企業価値の増加が生じる場合、「公正な価格」はシナジーの公正な分配を含む価格。
最決平24.2.29(インテリジェンス事件):組織再編により企業価値の毀損が生じる場合、「公正な価格」はナカリセバ価格。
まとめ表
企業価値への影響 公正な価格 増加する場合 シナジー分配価格 毀損する場合 ナカリセバ価格 変化しない場合 組織再編前の価格価格決定の手続
協議による決定
株主と会社の間で価格の協議を行い、合意が成立すれば当該価格。
裁判所による決定
協議が調わない場合、裁判所に対し価格決定の申立てができる(786条2項等)。
項目 内容 申立期間 効力発生日から30日以内 裁判所の判断 諸般の事情を考慮して「公正な価格」を決定 算定方法 DCF法、市場株価法、類似会社比較法等株式買取請求の撤回
場面 撤回の可否 効力発生日前 会社の承諾なく撤回可能 効力発生日後 会社の承諾が必要(785条6項等)まとめ
- 株式買取請求権は反対株主の退出保障制度
- 「公正な価格」は企業価値が増加する場合はシナジー分配価格
- 企業価値が毀損する場合はナカリセバ価格
- 価格が合意できない場合は裁判所が決定
- 効力発生日前であれば自由に撤回可能
FAQ
Q1. 上場会社の場合、市場株価が「公正な価格」の基準になりますか?
市場株価は重要な参考指標ですが、唯一の基準ではありません。市場株価が企業の客観的価値を反映していない場合は、DCF法等の他の評価方法も用いられます。
Q2. 全員が買取請求をした場合はどうなりますか?
理論的には可能ですが、分配可能額の制約(461条)や資金調達の問題が生じます。
Q3. 買取代金の支払時期は?
効力発生日から60日以内に支払いがない場合、年利3%の利息が付されます。