少数株主権と単独株主権の体系整理――行使要件を一覧表で確認
単独株主権と少数株主権の一覧表を掲載。議決権・代表訴訟提起権・帳簿閲覧権など行使要件(保有割合・保有期間)を体系的に整理します。
この記事のポイント
株主の権利は、1株でも保有すれば行使できる「単独株主権」と、一定割合以上の株式保有が要件となる「少数株主権」に分類される。さらに、一定期間の保有継続が要件となるものもある。短答式試験では、各権利の行使要件(保有割合・保有期間)が細かく問われるため、体系的な整理が不可欠である。
株主の権利の分類
自益権と共益権
株主の権利は、まず自益権と共益権に大別される。
分類 意義 具体例 自益権 株主が会社から経済的利益を受ける権利 剰余金配当請求権、残余財産分配請求権 共益権 株主が会社の経営に参与する権利 議決権、代表訴訟提起権、株主総会招集請求権単独株主権と少数株主権
共益権はさらに、行使要件の有無により単独株主権と少数株主権に分類される。
分類 意義 単独株主権 1株でも保有していれば行使できる権利 少数株主権 一定割合以上の議決権又は株式を保有する株主のみが行使できる権利少数株主権とした趣旨は、濫用的な権利行使を防止するため、一定規模以上の利害関係を有する株主にのみ行使を認めることにある。
単独株主権の一覧
保有期間の要件なし
以下の権利は、1株の保有のみで、保有期間を問わず行使できる。
権利 条文 備考 議決権 308条1項 1単元につき1個(単元株制度採用の場合) 剰余金配当請求権 453条 自益権 残余財産分配請求権 504条 自益権 株式買取請求権 116条・469条・785条等 組織再編等の場合 株主総会決議取消しの訴え 831条 形成の訴え 設立無効の訴え 828条1項1号 形成の訴え 新株発行無効の訴え 828条1項2号 形成の訴え 合併無効の訴え 828条1項7号・8号 形成の訴え 取締役等の違法行為差止請求権 360条 回復困難な損害のおそれが要件 株主総会での質問権 314条 説明義務の相手方 累積投票請求権 342条 定款で排除可能6か月前から引き続き保有(公開会社の場合)
以下の権利は、公開会社においては6か月前から引き続き株式を保有していることが要件となる(非公開会社では保有期間要件なし)。
権利 条文 備考 株主代表訴訟提起権 847条1項 取締役等の責任追及の訴え 取締役等の違法行為差止請求権 360条1項 回復困難な損害のおそれが要件 募集株式発行等差止請求権 210条 不公正発行の場合等少数株主権の一覧
議決権の1%以上又は300個以上
権利 条文 保有期間 備考 株主提案権(議題提案権) 303条2項 6か月(公開会社) 議題の追加を請求 株主提案権(議案提出権) 304条・305条1項 6か月(公開会社) 議案の要領の通知を請求議決権の3%以上
権利 条文 保有期間 備考 株主総会招集請求権 297条1項 6か月(公開会社) 拒絶された場合は裁判所の許可で自ら招集可能(297条4項) 会計帳簿閲覧請求権 433条1項 なし 拒絶事由あり(433条2項) 業務執行に関する検査役選任請求権 358条1項 なし 裁判所に対する申立て 取締役・監査役の解任の訴え 854条1項 6か月(公開会社) 役員の職務上の義務違反等が要件議決権の10%以上
権利 条文 保有期間 備考 会社解散請求権 833条1項 なし やむを得ない事由が要件議決権の3分の1超
権利 条文 保有期間 備考 特別決議の阻止(事実上の拒否権) 309条2項 なし 権利ではなく事実上の効果重要な行使要件の整理
保有割合の要件
少数株主権の保有割合要件を図式的に整理すると以下のとおりである。
1% ── 株主提案権
3% ── 株主総会招集請求権、帳簿閲覧請求権、検査役選任請求権、役員解任の訴え
10% ── 会社解散請求権
保有期間の要件(公開会社の場合)
保有期間 対象となる権利 なし 帳簿閲覧請求権(433条)、検査役選任請求権(358条)、解散請求権(833条) 6か月 代表訴訟提起権(847条)、株主提案権(303条〜)、株主総会招集請求権(297条)、役員解任の訴え(854条)、違法行為差止請求権(360条)非公開会社の特則
非公開会社では、保有期間の要件は適用されない。これは、非公開会社では株式の流動性が低く、長期保有の株主が多いことから、保有期間要件による濫訴防止の必要性が乏しいためである。
会計帳簿閲覧請求権(433条)の詳細
行使要件
- 議決権の3%以上又は発行済株式の3%以上を有する株主(433条1項)
- 保有期間の要件はない
- 理由の明示が必要(433条1項)
閲覧対象
- 会計帳簿(仕訳帳・総勘定元帳等)
- これに関する資料(伝票・契約書等)
拒絶事由(433条2項)
会社は、以下の事由がある場合には閲覧請求を拒絶できる。
- 株主が権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求した場合(1号)
- 株主が会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求した場合(2号)
- 株主が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事する者である場合(3号)
- 株主が閲覧により知り得た事実を利益を得て第三者に通報するために請求した場合(4号)
- 株主が過去2年以内に閲覧により知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがある場合(5号)
株主代表訴訟(847条)の詳細
行使要件
- 6か月前から引き続き株式を保有する株主(公開会社の場合:847条1項)
- 非公開会社では保有期間要件なし(847条2項)
- まず会社に対して提訴請求を行う必要がある(847条1項)
- 会社が請求の日から60日以内に訴えを提起しない場合に、株主自ら訴えを提起できる(847条3項)
被告
- 取締役(423条1項)
- 監査役(423条1項)
- 執行役(423条1項)
- 会計監査人(423条1項)
- 会計参与(423条1項)
- 清算人
- 発起人(847条1項)
不提訴理由の通知
- 会社が60日以内に訴えを提起しない場合、株主又は取締役の請求により、不提訴理由を書面で通知しなければならない(847条4項)
試験対策での位置づけ
株主の権利の体系整理は、短答式試験で毎年のように出題される超重要分野である。
- 保有割合と保有期間の組合せを正確に暗記する必要がある
- 特に帳簿閲覧請求権の拒絶事由は細かく問われる
- 非公開会社では保有期間要件がないことに注意
- 論文式試験では、代表訴訟の手続要件と実体要件を組み合わせた出題が定番
- 株主提案権の「1%又は300個」という特殊な要件を忘れないこと
- 各権利が「議決権ベース」か「株式数ベース」かの区別も問われることがある
関連判例
- 最判平21.3.10:会計帳簿閲覧請求権の拒絶事由(競業関係)の判断基準
- 最判平21.11.9:株主代表訴訟における提訴請求の要件
- 最判平16.7.1:株主総会招集請求権の行使と裁判所の許可
- 最判平18.9.28:株主提案権の濫用と権利行使の制限
まとめ
株主の権利は、自益権と共益権、単独株主権と少数株主権という2つの軸で分類される。少数株主権については、保有割合(1%・3%・10%)と保有期間(なし・6か月)の組合せを正確に把握することが不可欠である。特に、帳簿閲覧請求権(3%・期間要件なし)と株主総会招集請求権(3%・6か月)のように、同じ保有割合でも保有期間要件が異なるものがあることに注意したい。一覧表を繰り返し参照して、確実に暗記しておくことが試験合格への近道である。