株主代表訴訟と多重代表訴訟|847条の体系的理解
株主代表訴訟(847条)の要件と手続を体系的に解説。提訴要件、訴訟参加、和解、不提訴理由の通知、多重代表訴訟を整理します。
この記事のポイント
株主代表訴訟は、取締役の責任追及を会社が怠る場合に株主が会社に代わって訴えを提起する制度である。 2014年改正で多重代表訴訟(特定責任追及の訴え)が新設された。
株主代表訴訟の基本構造
趣旨
取締役の責任追及は本来会社が行うべきだが、取締役間の馴れ合いにより会社が訴えを提起しない場合の株主の救済手段。
提訴要件
要件 内容 株主資格 6か月前から引き続き株式を有する株主(公開会社)/株主(非公開会社) 提訴請求 会社に対し書面で責任追及の訴えの提起を請求 60日の経過 請求の日から60日以内に会社が訴えを提起しないこと 緊急の場合 会社に回復すべからざる損害が生ずるおそれがある場合は直ちに提訴可訴訟手続の特則
訴額と費用
項目 内容 訴額 財産権上の請求でない請求とみなす(手数料軽減) 弁護士費用 勝訴した場合、相当額を会社に請求可能(852条1項)訴訟参加
- 会社の訴訟参加:会社は原告側に補助参加可能(849条1項)
- 被告側への参加:取締役を被告とする場合の被告側参加も可能
- 他の株主の共同訴訟参加:849条
訴訟上の和解
- 和解には会社の承認が必要ではないが、裁判所は会社に通知しなければならない(850条)
- 会社の利益を害する和解は許されない
不提訴理由の通知(847条4項)
株主から請求があった場合、会社は以下の事項を書面で通知しなければならない。
- 調査の内容と結果
- 提訴しない理由
- 被告となるべき者に対する会社の判断
多重代表訴訟(847条の3)
2014年改正で新設
項目 内容 意義 最終完全親会社等の株主が、完全子会社の取締役の責任を追及 趣旨 企業グループ全体のガバナンス強化 要件 完全子会社の株式の帳簿価額が最終完全親会社の総資産の1/5超多重代表訴訟の要件
- 最終完全親会社等の株主であること
- 対象会社が重要な完全子会社等であること(株式帳簿価額が総資産の1/5超)
- 6か月前からの株式保有
- 完全子会社等に対する提訴請求
- 60日間の不提訴
代表訴訟の対象
対象者 責任 取締役 423条責任 監査役 423条責任 会計監査人 423条責任 執行役 423条責任 発起人 53条責任まとめ
- 株主代表訴訟は会社に代わり株主が取締役の責任を追及する制度
- 6か月の保有期間+提訴請求+60日の経過が基本要件
- 多重代表訴訟は完全親会社の株主が子会社取締役の責任を追及
- 訴額は財産権上の請求でない請求として手数料が軽減
- 不提訴理由の通知により会社の判断の透明性を確保
FAQ
Q1. 代表訴訟を提起した株主が株式を売却したらどうなりますか?
訴訟は原則として却下されます(851条1項1号)。ただし、株式交換等により株式を失った場合の特則があります。
Q2. 代表訴訟の和解金は誰が受け取りますか?
会社が受け取ります。株主代表訴訟は会社のための訴訟であり、和解金や賠償金は会社に帰属します。
Q3. 多重代表訴訟の「重要な完全子会社」の判断基準は?
完全子会社等の株式の帳簿価額が最終完全親会社等の総資産額の5分の1を超えるかどうかで形式的に判断されます。