指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社の比較――3つの機関設計を体系整理
監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の3類型を比較表で整理。各機関の権限・構成・社外取締役の役割を解説します。
この記事のポイント
株式会社の機関設計には、監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の3つの基本類型がある。指名委員会等設置会社は3つの委員会と執行役を置くモニタリング型の機関設計であり、監査等委員会設置会社は監査等委員である取締役が取締役会の構成員として監督機能を果たす折衷的な機関設計である。令和元年改正により社外取締役の設置が義務化され、いずれの類型においてもガバナンスの実効性確保が重要な課題となっている。
3つの機関設計の全体像
大規模公開会社の機関設計
大規模な公開会社(監査役会設置義務のある会社)は、以下の3類型のいずれかを選択する必要がある。
- 監査役会設置会社(伝統的な日本型ガバナンス)
- 指名委員会等設置会社(平成14年商法改正で導入、旧:委員会設置会社)
- 監査等委員会設置会社(平成26年改正で導入)
これらは互いに排他的な関係にあり、併存することはできない(327条4項・5項)。
3類型の基本比較表
項目 監査役会設置会社 指名委員会等設置会社 監査等委員会設置会社 監査役 必置 設置不可 設置不可 取締役会 必置 必置 必置 会計監査人 大会社では必置 必置 必置 執行役 なし 必置 なし 委員会 なし 指名・監査・報酬の3委員会 監査等委員会のみ 社外取締役 令和元年改正で義務化 各委員会の過半数 監査等委員の過半数監査役会設置会社
機関構成
- 取締役会 + 監査役会 + 会計監査人(大会社の場合)
- 日本の上場企業で最も多く採用されてきた伝統的な機関設計
監査役会の構成
- 監査役は3人以上で、その半数以上が社外監査役(335条3項)
- 監査役は常勤監査役を互選で選定する(390条3項)
- 監査役の任期は4年(336条1項)で、短縮不可
監査役の権限
- 業務監査権(381条1項):取締役の職務執行を監査
- 会計監査権(381条1項)
- 取締役会出席義務・意見陳述義務(383条1項)
- 違法行為差止請求権(385条1項)
- 取締役会招集請求権(383条2項・3項)
特徴と課題
- 監査役は取締役会の構成員ではないため、議決権がなく、経営意思決定への直接的関与が限定的
- 社外監査役の独立性確保が実務上の課題
指名委員会等設置会社
制度趣旨
業務執行と監督の分離(モニタリング・モデル)を徹底し、取締役会は経営の基本方針の決定と執行役の監督に専念する機関設計である。
機関構成
- 取締役会 + 指名委員会・監査委員会・報酬委員会 + 執行役 + 会計監査人
- 監査役は設置不可(327条4項)
3つの委員会
委員会 構成 主な権限 指名委員会 取締役3人以上(過半数が社外取締役)(400条) 株主総会に提出する取締役の選解任議案の内容を決定(404条1項) 監査委員会 取締役3人以上(過半数が社外取締役)(400条) 執行役・取締役の職務執行の監査、監査報告の作成(404条2項) 報酬委員会 取締役3人以上(過半数が社外取締役)(400条) 取締役・執行役の個人別の報酬等の内容を決定(404条3項)委員の資格制限
- 監査委員は、当該会社の執行役・業務執行取締役・支配人その他の使用人を兼ねることができない(400条4項)
- 指名委員会・報酬委員会の委員にはこのような兼任禁止規定はない
執行役と代表執行役
- 執行役(402条)は業務の執行を行う
- 取締役会の決議により代表執行役を選定する(420条1項)
- 執行役は取締役を兼ねることができる(402条6項)
- 取締役会は業務執行の決定を大幅に執行役に委任できる(416条4項)
取締役会の権限の特徴
指名委員会等設置会社の取締役会は、以下の事項を除き、業務執行の決定を執行役に委任することができる(416条4項)。
- 経営の基本方針の決定
- 内部統制システムの決定
- その他法定事項
監査等委員会設置会社
制度趣旨
平成26年改正で導入された、監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の折衷型の機関設計である。3つの委員会ではなく監査等委員会のみを置くことで、導入のハードルを下げつつ、社外取締役による監督機能の強化を図るものである。
機関構成
- 取締役会 + 監査等委員会 + 会計監査人
- 監査役は設置不可(327条4項)
- 執行役は置かない
監査等委員会の構成と権限
項目 内容 構成 取締役3人以上で、その過半数が社外取締役(331条6項) 任期 監査等委員である取締役は2年、それ以外は1年(332条3項・4項) 監査権限 取締役の職務の執行の監査(399条の2第3項1号) 選解任の意見 監査等委員である取締役の選解任・報酬について意見陳述権(342条の2第4項・361条6項) 株主総会での意見 監査等委員以外の取締役の選解任・報酬について株主総会で意見を述べることができる(342条の2第4項・361条6項)監査等委員会設置会社の取締役会の権限
- 取締役の過半数が社外取締役である場合、又は定款で定めた場合には、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができる(399条の13第5項・6項)
- これにより、指名委員会等設置会社に近いモニタリング型のガバナンスが実現可能
3つの機関設計の詳細比較
監督・監査の仕組み
比較項目 監査役会設置 指名委員会等設置 監査等委員会設置 監督の主体 監査役会 3委員会(特に監査委員会) 監査等委員会 議決権の有無 監査役に取締役会での議決権なし 委員は取締役として議決権あり 監査等委員は取締役として議決権あり 業務執行者の選解任 取締役会が決定 指名委員会が議案決定 取締役会が決定 報酬の決定 株主総会で決定 報酬委員会が個人別に決定 株主総会で決定(意見陳述権あり) 常勤者の要否 常勤監査役必置 常勤の監査委員は任意 常勤の監査等委員は任意社外者の要件
比較項目 監査役会設置 指名委員会等設置 監査等委員会設置 社外者の必要数 社外監査役:半数以上 各委員会:過半数が社外取締役 過半数が社外取締役 社外取締役の義務 令和元年改正で1名以上必置(327条の2) 各委員会に過半数 過半数令和元年改正の影響
社外取締役の設置義務化(327条の2)
- 上場会社等(監査役会設置会社で公開会社かつ大会社であって有価証券報告書提出義務のある会社)は、社外取締役を置かなければならない
- 改正前は「置くことが相当でない理由」の説明義務にとどまっていた
- この改正により、監査役会設置会社においても社外取締役によるガバナンス強化が図られた
業務執行の社外取締役への委託(348条の2)
- 令和元年改正で、会社と取締役との利益相反状況における業務執行を社外取締役に委託できる規定が新設された
- 社外取締役の活用範囲が拡大
試験対策での位置づけ
機関設計の比較は、会社法の中でも短答式試験の超頻出分野である。
- 3つの機関設計の名称と基本構造を正確に区別できるようにする
- 社外取締役・社外監査役の員数要件は特に間違えやすいポイント
- 指名委員会等設置会社における3委員会の権限の違いを正確に把握する
- 監査等委員会設置会社の取締役の任期の差異(監査等委員は2年、それ以外は1年)に注意
- 論文式試験では、機関設計の選択と関連付けて取締役の責任や株主総会決議の瑕疵が問われることがある
関連判例
- 最決平19.8.7(ブルドックソース事件):買収防衛策と取締役会の権限行使の適法性
- 最判平22.7.15(アパマンショップ事件):取締役の善管注意義務と経営判断原則
- 最判平21.11.27:監査役の任期と正当な理由のない解任
- 最判平20.1.28:社外取締役の善管注意義務の範囲
まとめ
3つの機関設計は、監督と業務執行の分離の度合いという観点から段階的に整理することができる。監査役会設置会社は監査役が業務執行とは独立に監査を行う伝統型、指名委員会等設置会社は業務執行と監督を完全に分離するモニタリング型、監査等委員会設置会社はその中間に位置する折衷型である。令和元年改正による社外取締役の設置義務化により、いずれの類型においても社外者によるガバナンス機能の強化が進んでいる。各機関設計の構成・権限・社外者要件の違いを比較表で整理し、正確に暗記しておくことが試験対策の鍵となる。