必要的共同訴訟の特殊性
固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟の区別、40条の合一確定の効果、具体例と判例を体系的に整理して解説します。
この記事のポイント
- 必要的共同訴訟は合一確定の要請に基づき40条が適用される特殊な共同訴訟形態である
- 固有必要的共同訴訟では全員が共同して訴え又は訴えられなければ当事者適格を欠く
- 類似必要的共同訴訟では各自が単独で訴えることも可能だが、共同訴訟とした場合に合一確定が要求される
- 判例は固有必要的共同訴訟の範囲を限定する方向に展開している
共同訴訟の体系
共同訴訟の種類
民事訴訟法における共同訴訟は、以下のように分類される。
| 類型 | 意義 | 適用条文 |
|---|---|---|
| 通常共同訴訟 | 数人の原告又は被告が共同して訴訟をする場合で、各自が独立して訴訟を追行できる | 38条・39条 |
| 必要的共同訴訟 | 合一確定の必要がある共同訴訟 | 40条 |
必要的共同訴訟はさらに以下の2種類に分かれる。
- 固有必要的共同訴訟 — 関係者全員が共同して訴え又は訴えられなければならない
- 類似必要的共同訴訟 — 各自が単独で訴えることも可能だが、共同訴訟とした場合に合一確定が要求される
通常共同訴訟との違い
通常共同訴訟の原則(39条)
通常共同訴訟においては、共同訴訟人独立の原則(39条)が適用される。
- 共同訴訟人の一人の訴訟行為は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない
- 共同訴訟人の一人について生じた事由は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない
- 各共同訴訟人について個別に判決をすることができる
必要的共同訴訟の特殊性(40条)
必要的共同訴訟においては、40条が適用され、以下の特殊な取扱いがなされる。
| 40条の内容 | 効果 |
|---|---|
| 1項 | 共同訴訟人の一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみ効力を生ずる |
| 2項 | 共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対して効力を生ずる |
| 3項 | 共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断・中止の原因があるときは、全員についてその効力を生ずる |
| 4項 | 各共同訴訟人は、一体として統一的に扱われる |
固有必要的共同訴訟
固有必要的共同訴訟の意義
固有必要的共同訴訟とは、関係者全員が共同して訴え又は訴えられなければ当事者適格を欠くとされる共同訴訟形態をいう。一部の関係者のみで訴えを提起しても、訴えは不適法として却下される。
固有必要的共同訴訟の根拠
固有必要的共同訴訟が要求される根拠としては、以下が挙げられる。
- 管理処分権の共同行使 — 共有物に関する訴訟など、実体法上の権利を共同でしか行使できない場合
- 判決の合一確定の必要性 — 関係者間で矛盾する判決がなされることを防止する必要がある場合
- 手続保障 — 関係者全員に手続参加の機会を保障する必要がある場合
固有必要的共同訴訟の具体例
| 類型 | 具体例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 共有関係に基づくもの | 共有者全員による共有物の管理に関する訴え | 民法252条 |
| 合有関係に基づくもの | 組合財産に関する訴え | 民法667条以下 |
| 身分関係に基づくもの | 認知の訴え(被告側:検察官) | 人事訴訟法 |
| 団体法関係 | 入会権確認の訴え | 最判平成6年5月31日 |
固有必要的共同訴訟に関する判例の展開
共有物に関する訴訟
共有物に関する訴訟について、判例は以下のように整理している。
| 訴訟類型 | 固有必要的共同訴訟か | 判例 |
|---|---|---|
| 共有物の保存行為(妨害排除請求) | 否 — 各共有者が単独で可能 | 最判昭和31年5月10日 |
| 共有持分権確認の訴え | 否 — 各共有者が単独で可能 | 最判昭和46年10月7日 |
| 共有物の管理に関する訴え | 肯定される場合あり | 事案による |
| 共有物の変更に関する訴え | 肯定される場合あり | 民法251条 |
共有者を被告とする場合
共有者全員を被告として訴える必要があるかについて、以下の判例がある。
- 最判昭和43年3月15日 — 共有者に対する移転登記手続請求は、共有者全員を被告とする固有必要的共同訴訟である
- 最判平成11年11月9日 — 不実の登記の抹消登記手続請求は、保存行為として各共有者が単独で提起可能
入会権に関する訴訟
- 最判平成6年5月31日 — 入会権の確認を求める訴えは、権利者全員が共同して提起すべき固有必要的共同訴訟である
- 最判平成20年7月17日 — 入会集団の構成員が入会権を争う者を被告とする場合も、構成員全員が原告となる固有必要的共同訴訟である
類似必要的共同訴訟
類似必要的共同訴訟の意義
類似必要的共同訴訟とは、各自が単独で訴えを提起することも可能であるが、複数人が共同訴訟人として訴訟を追行する場合には合一確定が要求される共同訴訟形態をいう。
固有必要的共同訴訟との違い
| 比較項目 | 固有必要的共同訴訟 | 類似必要的共同訴訟 |
|---|---|---|
| 単独提訴の可否 | 不可(全員が共同必要) | 可能 |
| 当事者適格 | 全員が揃わないと欠ける | 各自が単独で有する |
| 合一確定の要請 | あり | あり |
| 40条の適用 | あり | あり |
類似必要的共同訴訟の具体例
| 具体例 | 根拠 |
|---|---|
| 株主総会決議取消訴訟 | 会社法831条 |
| 株主総会決議無効・不存在確認訴訟 | 会社法830条 |
| 株主代表訴訟(複数の株主が提起した場合) | 会社法847条 |
| 債権者代位訴訟(複数の債権者が提起した場合) | 民法423条 |
| 取消訴訟(行政事件訴訟法で複数の原告が提起した場合) | 行政事件訴訟法 |
40条の効果の詳細
有利行為のみ効力を生ずる(40条1項)
共同訴訟人の一人がした訴訟行為は、全員の利益においてのみ効力を生ずる。
| 訴訟行為 | 有利な行為 | 不利な行為 |
|---|---|---|
| 上訴 | 全員について上訴の効力が生じる | — |
| 自白 | — | 全員について効力を生じない |
| 請求の放棄・認諾 | — | 全員について効力を生じない |
| 訴えの取下げ | — | 全員が同意しない限り効力を生じない |
有利・不利の判断基準
何が「全員の利益」に当たるかについて、以下の考え方がある。
- 行為説 — 訴訟行為の類型に着目して判断する(通説)
- 結果説 — 訴訟行為の結果に着目して判断する
通説は行為説に立ち、上訴・期日の申立て等は有利な行為、自白・請求の放棄等は不利な行為と類型的に判断する。
相手方の訴訟行為の効力(40条2項)
相手方が共同訴訟人の一人に対してした訴訟行為は、全員に対して効力を生ずる。
- 相手方の自白は全員に対して効力を生ずる
- 相手方の請求の放棄は全員に対して効力を生ずる
中断・中止(40条3項)
共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、全員について手続が中断又は中止する。
固有必要的共同訴訟と訴訟の提起
一部の者が訴えを提起した場合
固有必要的共同訴訟において、関係者の一部のみが訴えを提起した場合の取扱いは以下のとおりである。
- 原則 — 当事者適格を欠き、訴えは不適法却下される
- 裁判所の釈明義務 — 裁判所は釈明権を行使して、原告に対し他の関係者の追加を促すべきである
- 共同訴訟参加 — 他の関係者が52条により共同訴訟参加をすることで瑕疵が治癒される
訴えの主観的追加的併合の可否
一部の者のみで提起した固有必要的共同訴訟について、後から他の関係者を原告として追加できるかが問題となる。
- 否定説(判例) — 民事訴訟法に明文の規定がないことを理由に否定する(最判昭和62年7月17日参照)
- 肯定説 — 訴訟の便宜と手続保障の観点から認めるべきとする
試験対策での位置づけ
必要的共同訴訟は、以下の点が試験で重要である。
- 固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟の区別 — 定義と具体例の正確な理解
- 40条の効果 — 有利行為のみ効力を生ずること、その判断基準
- 共有物に関する訴訟の判例整理 — 保存行為は単独提訴可、管理・変更行為は要検討
- 株主総会決議取消訴訟の性質 — 類似必要的共同訴訟とされる理由
- 論文式試験 — 固有必要的共同訴訟の該当性を具体的事案で判断する問題
関連判例
- 最判昭和31年5月10日 — 共有物の保存行為として妨害排除請求を各共有者が単独提起できる
- 最判昭和43年3月15日 — 共有者に対する移転登記請求は固有必要的共同訴訟
- 最判平成6年5月31日 — 入会権確認訴訟は権利者全員が原告となる固有必要的共同訴訟
- 最判平成11年11月9日 — 不実の抹消登記請求は保存行為として単独提訴可能
- 最判平成20年7月17日 — 入会権確認訴訟の当事者適格
まとめ
必要的共同訴訟は、合一確定の要請に基づき40条が適用される特殊な共同訴訟形態である。固有必要的共同訴訟では全員の共同が当事者適格の要件であるのに対し、類似必要的共同訴訟では単独提訴も可能だが共同訴訟となった場合に合一確定が要求される。判例は固有必要的共同訴訟の範囲を限定する傾向にあり、共有物に関する訴訟では保存行為該当性の判断が重要となる。40条の効果(有利行為のみの効力、相手方行為の全員への効力、中断・中止の全員への波及)を正確に理解することが、試験対策上不可欠である。
科目を選び、肢別演習で知識を確かめられます。