予備試験短答式の攻略法|8科目の学習プラン
予備試験の短答式8科目の効率的な攻略法を解説。科目別の配点と出題傾向、優先順位のつけ方、学習プランを紹介します。
この記事のポイント
予備試験の短答式は法律7科目+一般教養の8科目構成で、合計270点満点のうち約160〜170点が合格ラインとなる。司法試験の短答式が3科目であるのに対し、科目数が多い分だけ戦略的な学習プランが合否を左右する。本記事では、8科目それぞれの攻略法と効率的な学習プランを解説する。
予備試験短答式の基本構造
試験の概要
予備試験の短答式試験は、予備試験の第1関門として5月中旬に実施される。ここを突破しなければ論文式試験には進めない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験科目 | 法律7科目(憲法・民法・刑法・商法・民訴法・刑訴法・行政法)+一般教養 |
| 試験時間 | 法律科目3時間30分+一般教養1時間30分 |
| 満点 | 270点(法律各科目30点×7=210点、一般教養60点) |
| 出題形式 | マークシート(五肢択一、組合せ、穴埋めなど) |
| 合格基準 | 総合点の一定割合以上(年度により変動) |
科目別の配点と問題数
各科目の配点と問題数を確認しておこう。
| 科目 | 配点 | 問題数 | 1問あたりの配点 |
|---|---|---|---|
| 憲法 | 30点 | 15問 | 2点 |
| 民法 | 30点 | 15問 | 2点 |
| 刑法 | 30点 | 15問 | 2点 |
| 商法 | 30点 | 15問 | 2点 |
| 民事訴訟法 | 30点 | 15問 | 2点 |
| 刑事訴訟法 | 30点 | 15問 | 2点 |
| 行政法 | 30点 | 15問 | 2点 |
| 一般教養 | 60点 | 30問 | 2点 |
法律7科目は均等に30点ずつであるが、一般教養は60点と比重が大きい点に注意が必要である。
合格ラインと目標設定
過去の合格点推移
予備試験短答式の合格点は、年度によって変動する。
| 年度 | 合格点 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年 | 156点 | 10,608人 | 2,529人 | 23.8% |
| 2021年 | 162点 | 11,717人 | 2,723人 | 23.2% |
| 2022年 | 159点 | 13,004人 | 2,829人 | 21.8% |
| 2023年 | 159点 | 13,372人 | 2,685人 | 20.1% |
| 2024年 | 162点 | 12,569人 | 2,747人 | 21.9% |
| 2025年 | 165点 | 13,200人 | 2,830人 | 21.4% |
合格率は約20〜24%で推移しており、司法試験の短答式(約80%)と比べて格段に低い。合格点は概ね160点前後(得点率約60%)である。
科目別の目標得点
合格ラインを安全に超えるために、科目別の目標得点を設定しよう。
| 科目 | 満点 | 目標得点 | 得点率 |
|---|---|---|---|
| 憲法 | 30点 | 20点 | 67% |
| 民法 | 30点 | 22点 | 73% |
| 刑法 | 30点 | 20点 | 67% |
| 商法 | 30点 | 18点 | 60% |
| 民訴法 | 30点 | 18点 | 60% |
| 刑訴法 | 30点 | 18点 | 60% |
| 行政法 | 30点 | 20点 | 67% |
| 一般教養 | 60点 | 36点 | 60% |
| 合計 | 270点 | 172点 | 64% |
この目標で合計172点となり、合格ラインに十分な余裕がある。ポイントは、得意科目で稼ぎ、苦手科目は最低限を確保するメリハリのある戦略である。
科目別攻略法:基幹3科目
憲法の攻略法
予備試験の憲法は、判例の正確な知識が最重要である。人権分野では最高裁判例の事案と判旨の正確な理解が問われ、統治機構分野では条文の正確な知識が求められる。
頻出分野:
- 表現の自由(検閲の禁止、公務員の政治活動、名誉毀損)
- 法の下の平等(非嫡出子相続分、再婚禁止期間)
- 生存権・教育を受ける権利
- 国会の権能(議院の権能、国政調査権)
- 司法権の限界(部分社会の法理、統治行為論)
攻略のポイント:
- 判例百選レベルの約80件を正確に整理する
- 統治機構は条文の素読で対応できる部分が多い
- 過去問で出題パターンを把握し、「どの角度から聞かれるか」を意識する
民法の攻略法
民法は条文知識の網羅性が勝負を分ける。予備試験では司法試験以上に幅広い範囲から出題されるため、マイナーな条文も含めた網羅的な学習が必要である。
頻出分野:
- 意思表示(錯誤・詐欺・強迫)、代理(無権代理・表見代理)
- 物権変動(177条・178条)、担保物権(抵当権・質権・留置権)
- 債務不履行、債権者代位権、詐害行為取消権
- 契約各論(売買・賃貸借・請負・委任)
- 親族(婚姻・離婚・親子)、相続(法定相続分・遺言・遺留分)
攻略のポイント:
- 1日15〜20条のペースで条文素読を繰り返す
- 改正民法の新設条文は特に注意して学習する
- 親族相続は短答でしか出ないが配点は大きいので軽視しない
刑法の攻略法
刑法は判例の結論と学説の対立が中心的な出題テーマである。総論と各論のバランスよく出題されるが、各論の財産犯は特に頻出である。
頻出分野:
- 因果関係(相当因果関係説と客観的帰属論)
- 正当防衛(急迫性・防衛の意思・相当性)
- 共犯(共謀共同正犯・教唆犯・幇助犯)
- 窃盗罪・詐欺罪・横領罪の区別
- 文書偽造罪の諸論点
攻略のポイント:
- 判例の結論(有罪/無罪、適用罪名)を正確に記憶する
- 学説対立がある論点では、判例の立場を最優先で押さえる
- 「〜の場合、判例の立場によれば」という出題形式に注意する
科目別攻略法:訴訟法・行政法
商法の攻略法
商法は会社法が中心であり、条文数の多さが最大の障壁である。ただし、頻出論点はパターン化されているため、メリハリをつけた学習が可能である。
頻出分野:
- 設立(発起設立と募集設立)
- 株主総会(決議の瑕疵、株主の権利)
- 取締役・取締役会(義務と責任、利益相反取引)
- 組織再編(合併・分割・株式交換)
- 手形法・小切手法の基本(出題は少ないが注意)
攻略のポイント:
- 条文番号を覚える必要はないが、条文の内容は正確に把握する
- 過去問で頻出の条文を特定し、重点的に学習する
- ガバナンスに関する改正点は要注意
民事訴訟法の攻略法
民事訴訟法は、手続の流れを理解した上での条文知識が求められる。抽象的な概念が多く、実体法の知識を前提とする問題も出題される。
頻出分野:
- 訴訟要件(当事者能力・訴えの利益・管轄)
- 弁論主義と職権主義
- 既判力の範囲(客観的範囲・主観的範囲・時的限界)
- 訴えの変更・反訴・中間確認の訴え
- 上訴(控訴・上告)
攻略のポイント:
- 訴訟の流れを時系列で整理し、各段階の概念を位置づける
- 既判力は最頻出テーマであり、細部まで正確に理解する
- 民法の知識が前提となる問題が多いため、民法との往復学習が効果的
刑事訴訟法の攻略法
刑事訴訟法は、捜査法・公判法・証拠法の3分野から出題される。判例の知識と条文の正確な理解がともに求められる。
頻出分野:
- 任意捜査と強制捜査の区別(任意同行、所持品検査)
- 令状主義の例外(現行犯逮捕、緊急逮捕)
- 違法収集証拠排除法則
- 伝聞法則と伝聞例外(321条〜328条)
- 自白法則と補強法則
攻略のポイント:
- 伝聞法則は条文構造が複雑なので、表にまとめて整理する
- 判例(特に捜査法の判例)の結論を正確に記憶する
- 手続の流れを図示して全体像を把握する
行政法の攻略法
行政法は、判例と条文の両方の知識が均等に問われる。行政事件訴訟法・行政手続法・行政不服審査法の3法を中心に学習する。
頻出分野:
- 処分性(最高裁判例の蓄積が多い)
- 原告適格(法律上の利益を有する者)
- 裁量権の逸脱濫用
- 行政手続法(申請に対する処分、不利益処分)
- 行政不服審査法(審査請求、再調査の請求)
攻略のポイント:
- 処分性と原告適格は判例の結論を一覧表にして暗記する
- 行政手続法・行政不服審査法は条文ベースの出題が多い
- 国家賠償法・損失補償も出題されるため、忘れずに対策する
一般教養科目の攻略法
一般教養の出題傾向
一般教養科目は60点と大きな配点であるが、出題範囲が広すぎるため体系的な対策は困難である。出題分野は以下の通りである。
- 人文科学(哲学・歴史・文学・芸術)
- 社会科学(政治学・経済学・社会学)
- 自然科学(数学・物理・化学・生物)
- 英語(英文読解)
一般教養の攻略戦略
一般教養に過度な時間を費やすのは非効率である。以下の戦略で最低限の得点を確保しよう。
- 英語が得意なら英語問題で確実に得点する(8〜10問出題、配点大)
- 数学・論理問題は正解しやすいため、基礎的な対策をする
- 時事問題にアンテナを張る(政治・経済・社会のニュース)
- 過去問を5年分解いて出題パターンを把握する
- 法律科目の学習を優先し、一般教養は残り時間で対策する
目標は60点中30〜36点(得点率50〜60%)であり、法律科目で稼いだ分の補完として位置づけるのが現実的である。
8科目の学習プラン
12ヶ月プラン(試験前年5月〜試験当年5月)
Phase 1:基盤構築期(5月〜8月)
- 民法の全範囲をインプット(基本書1周+肢別開始)
- 刑法の全範囲をインプット(基本書1周+肢別開始)
- 1日の学習時間:3〜4時間
Phase 2:範囲拡大期(9月〜12月)
- 憲法のインプット開始(判例中心)
- 商法・民訴法のインプット開始
- 民法・刑法の肢別2周目
- 1日の学習時間:4〜5時間
Phase 3:全科目網羅期(1月〜3月)
- 刑訴法・行政法のインプット開始
- 全法律科目の肢別演習を本格化
- 一般教養の過去問に着手
- 1日の学習時間:5〜6時間
Phase 4:直前仕上げ期(4月〜5月)
- 全科目の過去問を年度別に解く(本番形式)
- 弱点科目の集中補強
- 一般教養の過去問3〜5年分を解く
- 1日の学習時間:6〜8時間
日常の学習ルーティン
8科目を効率的に回すための日常ルーティンの例を示す。
平日(3〜4時間確保の場合):
- 朝(60分):肢別演習(2科目×15問ずつ)
- 昼休み(30分):条文素読(民法or商法)
- 夜(90〜120分):基本書精読orインプット
休日(6〜8時間確保の場合):
- 午前(3時間):基本書精読+判例学習(1科目集中)
- 午後前半(2時間):過去問演習(年度別or科目別)
- 午後後半(2時間):肢別演習+弱点補強
まとめ
- 予備試験短答式は法律7科目+一般教養の8科目270点満点で、合格ラインは約160〜165点(得点率約60%)
- 基幹3科目(民法・刑法・憲法)で高得点を確保し、訴訟法・行政法・商法は最低限の得点を確保する戦略が効果的
- 12ヶ月の学習プランでは、基盤構築→範囲拡大→全科目網羅→直前仕上げの4段階で進め、一般教養は最小限の対策で臨む
よくある質問(FAQ)
Q1: 8科目を同時に勉強すべき?
同時に8科目を進めるのは非効率である。まず民法・刑法・憲法の基幹3科目を固め、その後に訴訟法・行政法・商法を追加し、一般教養は最後に着手するのが効率的である。
Q2: 一般教養はどのくらい対策すべき?
一般教養に割く時間は全体の10%以下が目安である。英語や論理問題で確実に得点し、その他は常識の範囲で対応する。法律科目の対策が十分でない段階で一般教養に時間をかけるのは避けるべきである。
Q3: 司法試験の短答式過去問も使える?
司法試験の短答式過去問は、憲法・民法・刑法の3科目については予備試験対策にも非常に有効である。出題形式や難易度が類似しているため、予備試験の過去問と合わせて活用するのが望ましい。
Q4: 短答式に合格するのに何ヶ月必要?
法学部出身者であれば6〜12ヶ月、非法学部出身者であれば12〜18ヶ月が目安である。ただし、1日の学習時間や学習の質によって大きく変動する。
Q5: 法律科目で1科目でも0点に近いと不合格になる?
科目別の足切りは公式には明示されていないが、1科目でも極端に低い得点の場合、合計点が合格ラインに達しないリスクが高い。全科目でバランスよく得点することが重要である。
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