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司法試験短答式試験の全貌|概要・合格率・対策

司法試験の短答式試験の全体像を解説。試験概要、科目配点、合格率の推移、効果的な対策法をまとめて紹介します。

この記事のポイント

司法試験の短答式試験は憲法・民法・刑法の3科目(合計175点満点)で構成され、近年の合格率は約80%前後で推移している。短答式は「足切り」として機能し、ここで一定点に届かないと、せっかく書いた論文式の答案が採点すらされない。さらに、よく混同される予備試験の短答式は法律7科目+一般教養(合計270点満点)と配点構造がまったく異なる。本記事では、「足切りとは何か」「司法試験と予備試験で短答の配点はどう違うのか」という2つの疑問に正面から答えつつ、短答式試験の全体像と効果的な対策法を体系的に解説する。

この記事で特に詳しく扱う論点
- 足切り(短答足切り)とは何か … 定義・仕組み・各科目の最低ライン → 該当セクションへ
- 予備試験短答の配点 … 司法試験との違いを表で整理 → 該当セクションへ


足切りとは何か|司法試験「短答足切り」の完全解説

一言でいうと

「足切り」とは、短答式試験で一定の点数に達しなかった受験者を、その時点で不合格と確定させ、論文式試験の答案を一切採点しない仕組みのことである。正式な法令用語ではなく受験生の俗称だが、司法試験・予備試験の合否を語るうえで欠かせないキーワードである。

司法試験では、短答式と論文式が同じ試験日程の中で実施される。受験者は中日を挟んで論文式も短答式もすべて解答するが、採点の順序は「まず短答式を採点 → 合格基準を満たした人だけ論文式を採点」となっている。つまり、短答式で足切りに遭うと、何時間もかけて書いた論文答案は採点対象から外れ、白紙同然の扱いになる。これが「足切り」と呼ばれる所以である。

足切りには2種類ある

「足切り」と一口に言っても、実は次の2つの基準がある。これを混同すると対策を誤るので、最初に整理しておく。

種類 内容 不合格になる条件 総合点(合格点)による足切り 3科目合計点が、その年に設定される合格点に届かない 合計点 < 合格点 各科目の最低点による足切り 1科目でも、満点の一定割合(後述)を下回る いずれか1科目が基準点未満

重要なのは、総合点が高くても、1科目だけ極端に低いと不合格になる点である。たとえば民法・刑法が満点近くでも、憲法だけが基準点を割れば、その時点でアウトになる。「得意科目で稼いで苦手科目をカバーする」という戦略が、短答式の足切りには通用しない場面があるということだ。

各科目の最低ライン(科目別足切り)

司法試験の短答式では、各科目について満点の40%(おおむね各科目の満点の4割)を下回ると、合計点にかかわらず不合格となる科目別の最低基準が設けられている。具体的な目安は以下のとおりである。

科目 満点 科目別最低ライン(満点の40%) 憲法 50点 20点 民法 75点 30点 刑法 50点 20点

この「満点の40%」という基準は、後述する合格点(総合点)とは別個に課されるハードルである。総合点の足切りラインは年度ごとに変動するが、科目別の最低ラインは「満点の4割」という割合で固定的に運用されている点を押さえておきたい。

なぜ足切り制度があるのか(趣旨)

足切り制度の趣旨は、法律家として最低限必要な基礎知識を、科目に偏りなく備えているかを担保することにある。論文式は思考力・表現力を問う試験だが、その前提として条文・判例の正確な知識が欠けていれば、実務家として通用しない。短答式の足切りは、論文採点に進む前に「基礎知識の最低保証」を確認する関門として機能している。

また、論文答案の採点には多大なコストがかかるため、一定水準に達しない答案を採点対象から外すことで、採点リソースを実質的な合否争いに集中させる、という運用上の合理性もある。

具体例で見る足切り判定(あてはめ)

抽象論だけではイメージしにくいので、司法試験短答(合格点を仮に99点、各科目最低ラインを満点の40%=憲法20点・民法30点・刑法20点とする)を前提に、具体的な得点パターンで足切り判定を確認してみよう。

ケースA:合計は高いが1科目が基準割れ → 不合格
- 憲法 18点(最低ライン20点を下回る)/民法 60点/刑法 40点 → 合計118点
- 合計118点は合格点99点を上回るが、憲法が18点で科目別最低ライン(20点)未満のため不合格。
- 教訓:苦手科目を捨てて他で稼ぐ戦略は通用しない。

ケースB:全科目が最低ライン以上だが合計が合格点未満 → 不合格
- 憲法 22点/民法 32点/刑法 22点 → 合計76点
- すべての科目で40%は超えているが、合計76点が合格点99点に届かないため不合格。
- 教訓:「各科目4割」だけでは総合点の足切りに引っかかる。

ケースC:全科目が最低ライン以上+合計も合格点以上 → 合格
- 憲法 30点/民法 50点/刑法 30点 → 合計110点
- 全科目が40%以上、かつ合計110点が合格点99点以上 → 短答合格(論文が採点される)。

この3パターンが示すとおり、短答突破には「全科目で最低ラインをクリア」かつ「合計で合格点をクリア」という2条件の同時達成が必要である。

足切りを回避するための実践的な考え方

足切りを「最低限クリアすればよいライン」と捉えるのは危険である。理由は2つある。

  1. 合格点(総合点)の足切りは、満点の40%よりもかなり高い水準に設定される(後述のとおり近年は99点前後=満点175点の約57%)。科目別の40%だけを意識していると、総合点で足切りに遭う。
  2. 本番では緊張やケアレスミスで普段より点数が下がる。安全圏を高めに設定しておかないと、想定外の失点で基準を割り込む。

したがって実践的には、「科目別40%」を最低防衛ラインとしつつ、総合で満点の70%(約123点)以上を目標に据えるのが定石である。詳しくは次のセクションで合格点の推移とともに解説する。


短答式試験の基本情報

試験の概要

司法試験の短答式試験は、法律の基礎知識を広く問うマークシート形式の試験である。論文式試験と同日程で実施され、短答式の得点が一定の基準に達しない場合、論文式の答案は採点されない。

項目 内容 試験科目 憲法・民法・刑法の3科目 試験時間 憲法50分・民法75分・刑法50分 満点 175点(憲法50点・民法75点・刑法50点) 出題形式 マークシート(五肢択一、組合せなど) 合格基準 満点の40%以上(各科目の最低ラインあり)

短答式試験は論文式試験の「前座」と見られがちであるが、ここで落ちると論文式が採点されないため、確実に突破する必要がある。

なお、ここで解説しているのは「司法試験」の短答式である。予備試験の短答式は科目数・配点・一般教養の有無が大きく異なるため、混同しないよう注意してほしい(→ 予備試験短答の配点)。

試験科目と配点の詳細

短答式の3科目は、それぞれ出題の特徴と配点が異なる。

憲法(50点・50分)
- 出題数:約20問
- 人権分野と統治機構分野から出題
- 判例の知識を問う問題が中心
- 正誤の組合せ問題が多い

民法(75点・75分)
- 出題数:約36問
- 総則・物権・債権・親族相続から幅広く出題
- 条文知識を問う問題が多い
- 事例形式の問題も出題される

刑法(50点・刑法50分)
- 出題数:約20問
- 総論・各論から均等に出題
- 判例の結論を問う問題が中心
- 学説対立を問う問題も出題される


合格率の推移と分析

過去10年の合格率データ

短答式試験の合格率は、年度によって変動があるが、概ね65〜75%の範囲で推移している。

年度 受験者数 合格者数 合格率 合格点 2016年 6,899人 4,621人 67.0% 114点 2017年 5,967人 3,937人 66.0% 108点 2018年 5,238人 3,669人 70.0% 108点 2019年 4,466人 3,287人 73.6% 108点 2020年 3,703人 2,793人 75.4% 93点 2021年 3,424人 2,672人 78.0% 99点 2022年 3,082人 2,494人 80.9% 96点 2023年 3,928人 3,149人 80.2% 99点 2024年 3,779人 3,056人 80.9% 99点 2025年 3,865人 3,093人 80.0% 99点

近年の合格率は約80%前後で安定しており、以前と比べて上昇傾向にある。これは法科大学院修了者や予備試験合格者の学力水準が一定であることを反映している。

合格点(足切りライン)の推移

合格点は満点175点の概ね55〜65%程度に設定されることが多い。近年は99点前後で安定している。ただし、この数値はあくまで最低ラインであり、安全圏は120〜130点以上と考えるべきである。

合格点は受験者全体の成績分布に基づいて毎年決定されるため、事前に正確な数値を予測することは困難である。過去のデータを参考にしつつ、満点の70%以上(約123点以上)を目標に設定するのが安全である。

「合格点」と「科目別最低ライン」を混同しない

ここで改めて、足切りに関わる2つの数字を整理しておく。

  • 合格点(総合点の足切り):3科目合計で必要な点数。近年は99点前後。年度ごとに変動する。
  • 科目別最低ライン:各科目で満点の40%(憲法20点・民法30点・刑法20点)。割合は固定的。

合格点は満点の約57%(99点/175点)と、科目別最低ラインの40%よりかなり高い。つまり「各科目4割さえ取ればよい」という発想では総合点の足切りに引っかかる。最終的に効いてくるのは合格点(総合点)の方であり、科目別最低ラインは「どれか1科目で大コケしないための保険」と位置づけるのが正しい理解である。

科目別の平均点と難易度

科目別の難易度は年度によって変動するが、一般的な傾向は以下の通りである。

  • 憲法:平均点は30〜35点程度。判例の知識が決め手となり、点差がつきやすい
  • 民法:平均点は45〜55点程度。範囲が広く、条文知識の蓄積量が得点を左右する
  • 刑法:平均点は30〜38点程度。年度による難易度の変動が比較的大きい

予備試験短答の配点|司法試験との違いを徹底比較

一言でいうと

予備試験の短答式は、法律基本7科目(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)に加えて一般教養科目が出題され、合計270点満点で実施される。司法試験の短答式が「憲法・民法・刑法の3科目・175点満点」であるのに対し、予備試験は科目数・配点ともに大きく異なる。「予備試験短答 配点」を調べている人が最も知りたいのは、この司法試験との配点の違いであろう。まずは結論を表で示す。

司法試験 短答と予備試験 短答の配点比較

項目 司法試験 短答 予備試験 短答 法律基本科目 憲法・民法・刑法の3科目 憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の7科目 一般教養 なし あり(人文・社会・自然・英語等から出題) 配点の構成 憲法50・民法75・刑法50 法律7科目 各30点+一般教養60点 満点 175点 270点 位置づけ 同日程の論文式の足切り 予備試験の第1関門(短答合格者のみ論文へ)

司法試験の短答が「論文と同時に解いて、足切りとして機能する」のに対し、予備試験の短答は独立した第1次試験であり、これに合格しないと論文式に進めない。つまり予備試験では短答そのものが大きな関門になっている。

予備試験 短答の科目別配点(詳細)

予備試験の短答式は、法律基本7科目が各30点(合計210点)、一般教養が60点で、合計270点満点である。

科目 配点 憲法 30点 行政法 30点 民法 30点 商法 30点 民事訴訟法 30点 刑法 30点 刑事訴訟法 30点 一般教養科目 60点 合計 270点

司法試験では出題されない行政法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法が予備試験短答では問われる点が、最大の違いである。いわゆる「下三法」(民訴・刑訴・商法)や行政法まで短答で問われるため、予備試験ルートを目指す人は、司法試験ルートよりも短答で広い範囲をカバーする必要がある。

一般教養科目の扱い

予備試験短答の特徴として、法律科目とは別に一般教養科目(60点)が課される点がある。人文科学・社会科学・自然科学・英語など幅広い分野から出題され、対策が立てにくい科目として知られる。

一般教養は配点が大きい一方で範囲が無限に広いため、深追いせず、解ける問題を確実に拾う戦略が一般的である。法律科目で確実に得点し、一般教養は取れるところで上乗せする、という配分が定石となる。

予備試験短答の合格ラインの考え方

予備試験短答の合格点も、受験者の成績分布に応じて年度ごとに決まる。一般的な目安として、満点270点のうち6割前後(おおむね160点台〜170点台)が合格ラインの目安とされることが多いが、年度により変動するため、過去のデータを確認したうえで、余裕を持った得点(7割超)を目標にするのが安全である。

法律7科目で確実に得点できれば一般教養の不確実性をカバーしやすくなるため、配点の安定している法律科目を主戦場に据えるのが、予備試験短答攻略のセオリーである。

司法試験ルートと予備試験ルート、短答対策の違い

観点 司法試験ルート 予備試験ルート 短答の対象科目 憲法・民法・刑法の3科目 法律7科目+一般教養 学習範囲の広さ 比較的絞られる 非常に広い(下三法・行政法・教養まで) 短答の位置づけ 論文と同日の足切り 独立した第1関門 対策の重点 3科目を深く正確に 7科目を広く、教養は割り切り

予備試験ルートで合格して司法試験を受ける場合、司法試験の短答(3科目)は予備試験短答(7科目)の学習で身につけた知識の一部で対応できるため、相対的に負担は小さくなる。逆に、法科大学院ルートの人が予備試験も併願する場合は、行政法・商法・民訴・刑訴の短答対策が追加で必要になる点に注意したい。


出題形式の分析

出題形式の類型

短答式試験の出題形式は、大きく以下の5類型に分類できる。

1. 正誤判定型
各肢の正誤を個別に判断し、正しいものまたは誤っているものを選ぶ形式である。最も基本的な形式であり、正確な知識が問われる。

2. 組合せ型
複数の肢の中から、正しいもの(または誤っているもの)の組合せを選ぶ形式である。すべての肢の正誤を判断する必要があるため、知識の網羅性が試される。

3. 個数判定型
正しい肢(または誤っている肢)の個数を答える形式である。部分的な知識では正解できないため、最も難易度が高い。

4. 穴埋め型
条文や判例の文章の空欄に入る語句を選ぶ形式である。条文の正確な文言や判例の表現を記憶している必要がある。

5. 事例型
具体的な事例を提示し、法的な結論や理由を問う形式である。民法で多く出題され、条文の要件充足性の判断力が試される。

出題形式別の対策

出題形式によって、必要な学習アプローチが異なる。

  • 正誤判定型・組合せ型:肢別問題集で一問一答形式の演習を繰り返す
  • 個数判定型:正確な知識が必要なため、曖昧な知識を排除する学習が重要
  • 穴埋め型:条文の素読と判例の原文に当たる学習が有効
  • 事例型:論文対策と並行して、要件充足性の判断訓練を行う

効果的な短答式対策

対策の基本方針

短答式試験の対策は、以下の3つの柱で構成される。

第1の柱:条文知識の習得
短答式試験の問題の多くは、条文の知識を問うものである。特に民法は条文知識の比重が高く、条文の素読を繰り返すことが最も効果的な対策となる。

  • 民法は1,050条と膨大であるが、頻出条文は約300条に絞られる
  • 条文は「要件→効果」の構造で整理する
  • 改正民法の新設条文は出題されやすいため注意する

第2の柱:判例知識の整理
憲法・刑法では判例の知識が得点を左右する。判例の学習では、以下の要素を整理することが重要である。

  • 事案の概要:どのような事実関係か
  • 判旨(結論):裁判所はどう判断したか
  • 理由の骨子:なぜそう判断したか
  • 射程:この判例はどこまで及ぶか

第3の柱:過去問の反復演習
過去問を繰り返し解くことで、出題傾向の把握と知識の定着を図る。過去問は最低3周、理想は5周以上解くべきである。

科目別の学習法

憲法の短答対策:
- 判例百選を中心に重要判例を約100件整理する
- 統治機構は条文ベースで学習する(国会・内閣・裁判所の権限関係)
- 人権は審査基準の適用判例を分類して整理する

民法の短答対策:
- 条文の素読を最重視し、1日10〜20条のペースで繰り返す
- 頻出分野(意思表示・代理・物権変動・債務不履行・不法行為)を優先する
- 親族相続は後回しにされがちだが、短答では頻出であるため注意する

刑法の短答対策:
- 判例の結論(有罪/無罪・適用罪名)を正確に覚える
- 学説対立がある論点では、判例の立場を中心に整理する
- 各論の構成要件(窃盗・詐欺・横領・背任など)を条文ベースで整理する

足切り回避を意識した優先順位づけ

限られた時間で足切りを確実に回避するには、「どの分野から手をつけるか」の優先順位が重要である。配点と出題頻度を踏まえると、おおむね次の順序で固めるのが効率的である。

  1. 民法の頻出条文(最優先):民法は75点と配点が最も大きく、条文知識で安定して得点できる。意思表示・代理・物権変動・債務不履行・不法行為など頻出分野を最優先で固める。
  2. 刑法・憲法の頻出判例:判例の結論を覚えるだけで取れる問題が一定数あるため、費用対効果が高い。
  3. 各科目の苦手分野の底上げ:科目別最低ライン(満点の40%)割れを防ぐため、極端に弱い分野があれば最低限の補強をする。
  4. 細部・難問:得点源としては後回し。合格点に届く目処が立ってから取り組む。

この順序は、「合計点を伸ばしつつ、科目別最低ラインも割らない」という足切り回避の2条件を同時に満たす設計になっている。

予備試験ルートの場合の追加科目

予備試験短答を受ける場合は、上記の3科目に加えて行政法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の短答対策が必要になる。これらは司法試験短答では問われないため、予備試験併願者は計画的に範囲を広げておく必要がある。とくに下三法(民訴・刑訴・商法)は条文・手続の細部が問われやすいので、条文素読と過去問演習を組み合わせて効率的にカバーしたい。一般教養は範囲が広く費用対効果が読みにくいため、深追いせず法律科目を主戦場に据えるのが現実的である。

短答問題の「解き方」の型

短答式は知識量だけでなく、肢を処理する手順(解法の型)で得点が大きく変わる。とくに足切り回避のためには、確実に取れる問題を取りこぼさない解き方が重要である。

手順1:問題形式を最初に確認する
冒頭で「正しいものを選べ」なのか「誤っているものを選べ」なのか、「個数」なのか「組合せ」なのかを必ず確認する。ここを読み違えると、正しく判断できても誤答になる。問題文の指示語には印をつけておくとよい。

手順2:自信のある肢から確定させる
すべての肢を順番に読むのではなく、明らかに正誤が分かる肢から○×を確定させる。組合せ問題では、確実な1〜2肢が決まれば選択肢を大きく絞れることが多い。

手順3:消去法を活用する
組合せ型では、誤りだと確信できる肢を含む選択肢を消していくと、全肢を判断しなくても正解にたどり着ける。個数型はこの消去法が効きにくいため、最も慎重に取り組む。

手順4:迷ったら飛ばして印をつける
1問に固執せず、迷った問題は印をつけて次へ進む。とくに民法は問題数が多く時間が厳しいので、確実な問題で先に得点を固めるのが鉄則である。

手順5:マークと見直し
問題用紙上での解答とマークシートのずれを防ぐため、一定問数ごとにマーク位置を確認する。

知識を「短答で使える形」に整理するコツ

短答で問われるのは、論文のような大論点ではなく、条文の細かい要件・例外・数字・判例の結論である。したがって、論文用のインプットとは別に、短答で問われやすい「細部」を意識的に拾う必要がある。

  • 数字・期間:時効期間、各種の期間制限など、数字で問われる事項をまとめる
  • 原則と例外:条文の原則に対する「ただし書」「例外規定」をセットで覚える
  • 要件の個数・順序:要件が何個あるか、どの順で検討するかを正確に
  • 判例の結論:理由づけより先に、まず「結論(肯定/否定、有罪/無罪)」を正確に

これらは論文の答案作成にも役立つため、短答対策が論文の精度向上に直結する(→ 後述の相乗効果)。


短答式と論文式の学習バランス

短答偏重は禁物

短答式試験はあくまで足切りであり、合否を最終的に決めるのは論文式試験である。したがって、短答式の学習に時間をかけすぎて論文対策が疎かになるのは本末転倒である。

理想的な学習時間の配分は、全体の20〜30%を短答対策に充てるのが目安である。ただし、試験直前の1〜2ヶ月は短答対策の比率を高め、40〜50%程度にシフトするのが一般的である。

短答と論文の相乗効果を狙う

短答の学習と論文の学習は、対立するものではなく相互補完の関係にある。短答で身につけた条文知識や判例知識は、論文の答案作成にそのまま活かせる。

たとえば、民法の短答対策で条文の要件を正確に覚えると、論文で事実のあてはめが精緻になる。刑法の短答対策で判例の結論を覚えると、論文で判例の射程を論じる際に正確な議論ができる。

このように、短答と論文を別々の学習として捉えるのではなく、同じ知識の異なるアウトプットとして一体的に学習するのが効率的である。


試験当日の戦略

時間配分の基本

短答式試験は時間との戦いでもある。科目ごとの時間配分を事前に計画しておくことが重要である。

科目 試験時間 問題数 1問あたりの目安時間 憲法 50分 約20問 約2分30秒 民法 75分 約36問 約2分 刑法 50分 約20問 約2分30秒

時間が足りなくなるリスクがあるのは民法である。36問を75分で解くためには、1問あたり約2分のペースを維持する必要がある。悩む問題は後回しにし、確実に解ける問題から処理していくのが鉄則である。

マーク漏れ・ミスの防止

マークシート方式の試験では、マーク漏れや番号のずれが致命的なミスになりうる。以下の対策を習慣化しておこう。

  • 5問ごとにマーク番号の確認を行う
  • 最後の5〜10分を見直し時間として確保する
  • 迷った問題には印をつけておき、見直し時に再検討する
  • マークシートの塗りつぶしは丁寧に行う(機械読み取りのため)

よくある誤解(短答足切り・予備試験配点)

短答式、とりわけ「足切り」と「予備試験の配点」をめぐっては、受験生の間に根強い誤解がいくつかある。ここで代表的なものを正しておく。

誤解1:「足切り=各科目4割だけ取ればよい」
→ 誤り。各科目4割(憲法20点・民法30点・刑法20点)は科目別の最低ラインに過ぎず、これとは別に総合点の合格点(近年99点前後)を超えなければならない。総合点の足切りの方が実際にはハードルが高い。

誤解2:「総合点さえ高ければ、1科目0点でも受かる」
→ 誤り。たとえ合計点が合格点を上回っていても、1科目でも満点の40%を割れば不合格になる。苦手科目を完全に捨てる戦略は短答では取れない。

誤解3:「司法試験も予備試験も短答の配点は同じ」
→ 誤り。司法試験短答は3科目175点、予備試験短答は法律7科目+一般教養の270点で、科目数も満点もまったく異なる。両者を混同すると学習計画を誤る。

誤解4:「予備試験短答は法律だけ勉強すれば受かる」
→ 注意が必要。一般教養(60点)の配点は無視できない大きさである。ただし範囲が広いため、深追いせず法律科目で確実に稼ぐのが現実的な戦略となる。

誤解5:「短答は論文より簡単だから直前だけやればよい」
→ 危険。近年の合格率は約80%だが、裏を返せば約20%が短答で不合格になっている。直前詰め込みで安定して突破できる試験ではなく、日常的な積み上げが必要である。


まとめ

  • 司法試験の短答式試験は憲法50点・民法75点・刑法50点の合計175点満点で、近年の合格率は約80%、合格点(総合点の足切り)は99点前後で推移している
  • 「足切り」には総合点(合格点)科目別最低ライン(各科目満点の40%)の2種類があり、どちらか一方でも下回ると論文式が採点されず不合格になる
  • 予備試験の短答は法律7科目+一般教養の270点満点で、司法試験短答(3科目175点)とは配点構造が大きく異なる。行政法・商法・民訴・刑訴・教養の有無が分岐点
  • 対策の3本柱は「条文知識の習得」「判例知識の整理」「過去問の反復演習」であり、科目ごとの特徴に応じたアプローチが求められる
  • 短答式は足切りではあるが、論文対策との相乗効果を狙い、全学習時間の20〜30%を短答対策に充てるのがバランスとして適切

よくある質問(FAQ)

Q1: そもそも「足切り」とは何ですか?

短答式試験で一定の点数に届かなかった受験者を、その時点で不合格と確定させ、論文式の答案を採点しない仕組みのことである。法令上の正式名称ではない受験生の俗称だが、司法試験・予備試験ともに事実上この運用がなされている。短答で足切りに遭うと、論文をどれだけ書いても評価されない。

Q2: 司法試験短答の足切りラインは何点ですか?

2つの基準がある。①総合点は年度ごとに変動し、近年は175点満点中99点前後。②科目別最低ラインは各科目満点の40%(憲法20点・民法30点・刑法20点)で、これを1科目でも割ると不合格になる。安全圏としては総合で満点の70%(約123点)以上を目標にしたい。

Q3: 短答式だけで不合格になる人はどのくらいいますか?

近年は受験者の約20%が短答式(足切り)で不合格になっている。合格率は約80%前後であるが、論文に自信がある受験者でも短答対策を怠ると足をすくわれる。

Q4: 予備試験短答の配点・満点は?司法試験とどう違いますか?

予備試験短答は法律7科目(憲法・行政法・民法・商法・民訴・刑法・刑訴)各30点+一般教養60点=合計270点満点。これに対し司法試験短答は憲法50・民法75・刑法50=175点満点の3科目。予備試験は科目数が多く、行政法・下三法・一般教養まで問われる点が大きな違いである。

Q5: 予備試験短答の合格点はどのくらいですか?

年度により変動するが、満点270点の6割前後(おおむね160点台〜170点台)が目安とされることが多い。確実に通過するには7割超を狙いたい。配点の安定する法律科目で得点を固め、一般教養は取れる範囲で上乗せするのがセオリー。

Q6: 短答式の勉強はいつから始めるべき?

本格的な短答対策は試験の6ヶ月前から始めるのが一般的である。ただし、日常的な肢別演習(1日20〜30問)は、学習の初期段階から習慣化しておくのが望ましい。予備試験ルートは科目が多いぶん、早めの着手が安全である。

Q7: 過去問は何年分解くべき?

最低でも過去5年分、理想は過去10年分を解くべきである。同じ論点が繰り返し出題されるため、過去問を通じて出題傾向を把握することが重要である。

Q8: 各科目の足切りライン(科目別最低ライン)はあるの?

ある。満点の40%未満の科目がある場合、合計点が合格点に達していても不合格となる。司法試験では憲法・刑法は20点未満、民法は30点未満が科目別の足切りラインである。

Q9: 短答式の模試は受けるべき?

受けるべきである。模試は本番と同じ形式・時間配分で解く貴重な機会であり、現時点の実力把握と弱点の発見に役立つ。可能であれば3回以上受験し、本番の緊張感に慣れておくことが望ましい。


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