/ 行政法

審査請求の体系 ― 行政不服審査法の基本構造と裁決の効力

行政不服審査法の基本構造、審査請求の対象・期間、審理員制度、裁決の種類と効力、教示義務を体系的に解説。2014年全部改正後の制度を正確に整理します。

この記事のポイント

行政不服審査法は2014年に全部改正され、審理員制度・行政不服審査会への諮問手続の導入等、大幅な制度改正が行われた。審査請求は処分及び不作為を対象とし、審査請求期間内に行わなければならない。裁決には却下・棄却・認容の3種類があり、事情裁決の制度も設けられている。教示義務(82条)は行政庁の義務であり、教示の懈怠・誤りには救済規定がある。


行政不服審査法の基本構造

2014年全部改正の概要

行政不服審査法は、1962年の制定以来約50年ぶりに2014年に全部改正された(2016年4月1日施行)。主な改正点は以下のとおりである。

改正前 改正後 異議申立て・審査請求の二本立て 審査請求に一元化 処分庁への異議申立て 原則廃止(再調査の請求として限定的に存続) 審理の公正性に関する仕組みが不十分 審理員制度の導入 第三者機関の関与なし 行政不服審査会への諮問手続の導入 審査請求期間60日 審査請求期間3か月に延長 不服申立ての対象制限 対象の拡大(概括主義の強化)

不服申立ての種類

改正法における不服申立ての種類は以下のとおりである。

  • 審査請求(原則的な不服申立て)
  • 再調査の請求(処分庁に対する簡易な手続。法律に定めがある場合のみ)
  • 再審査請求(審査請求の裁決に不服がある場合。法律に定めがある場合のみ)

審査請求の対象

処分に対する審査請求

行政不服審査法2条は、「行政庁の処分に不服がある者は、……審査請求をすることができる」と定める。ここでいう「処分」は、行政事件訴訟法における処分と同義であり、公権力の行使として行われる行為をいう。

不作為に対する審査請求

行政不服審査法3条は、「法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為……がある場合には、……当該不作為についての審査請求をすることができる」と定める。

適用除外

以下の処分等については、行政不服審査法の適用が除外される(7条)。

  • 国会・裁判所・会計検査院等の処分
  • 国税・地方税に関する処分(個別法で手続が定められている)
  • 刑事事件に関する処分
  • 国家公務員法・地方公務員法に基づく処分
  • 外国人の出入国に関する処分
  • その他法律で適用除外とされた処分

審査請求の手続

審査請求人

審査請求をすることができるのは、処分に不服がある者(2条)である。「不服がある者」とは、処分により自己の権利利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。

審査請求先(審査庁)

審査請求先は以下のとおりである(4条)。

処分庁の種類 審査庁 主任の大臣又は宮内庁長官 当該処分庁(自庁審査) 宮内庁長官又は外局の長 宮内庁長官又は外局の長 上記以外で上級行政庁がある場合 最上級行政庁 上級行政庁がない場合 当該処分庁(自庁審査)

審査請求期間

  • 主観的請求期間: 処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内(18条1項)
  • 客観的請求期間: 処分があった日の翌日から起算して1年以内(18条2項)
  • いずれの期間も正当な理由があるときは徒過が許される

審理員制度

審理員の意義

審理員とは、審査庁に所属する職員のうちから指名され、審査請求の審理手続を行う者をいう(9条)。2014年改正で導入された制度である。

審理員の除斥事由

以下の者は審理員になることができない(9条2項)。

  • 審査請求に係る処分に関与した者
  • 審査請求人の配偶者、四親等内の親族
  • その他審理の公正性に疑いが生じるおそれのある者

審理手続

審理員は以下の手続を行う。

  • 審理関係人(審査請求人・処分庁等)への主張・証拠の提出の機会の付与
  • 口頭意見陳述の機会の付与(31条)
  • 物件の提出要求・鑑定・検証等(33条-35条)
  • 審理員意見書の作成・審査庁への提出(42条)

行政不服審査会

行政不服審査会の意義

行政不服審査会は、審査庁の判断の公正性を担保するための第三者機関である。国に設置されるのが行政不服審査会であり、地方公共団体にも同様の機関が設置される。

諮問手続

審査庁は、審理員意見書の提出を受けた後、原則として行政不服審査会に諮問しなければならない(43条1項)。ただし、以下の場合は諮問不要である。

  • 審査請求人が諮問を希望しない場合
  • 審査請求が不適法であり却下する場合
  • 審理員意見書に記載された審理員の意見に従い認容裁決をする場合 等

裁決の種類と効力

裁決の種類

裁決の種類 内容 却下裁決 審査請求が不適法である場合(要件不備) 棄却裁決 審査請求に理由がない場合 認容裁決(処分の取消し) 処分が違法・不当である場合に処分を取り消す 認容裁決(処分の変更) 審査庁が処分庁の上級行政庁等である場合に処分を変更する 認容裁決(不作為の違法確認) 不作為が違法・不当である場合

事情裁決

処分が違法又は不当であっても、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度等を考慮して、処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁決で審査請求を棄却することができる(45条3項)。この場合、裁決の主文で処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

裁決の効力

  • 拘束力: 裁決は、関係行政庁を拘束する(52条)
  • 不可争力: 裁決が確定すると、もはやこれを争うことができなくなる
  • 不可変更力: 裁決庁は、自ら裁決を変更することができない

教示義務

教示義務の内容(82条)

行政庁は、審査請求ができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し、以下の事項を書面で教示しなければならない。

  • 審査請求をすることができる旨
  • 審査請求先(審査庁)
  • 審査請求期間

利害関係人に対する教示(82条2項)

行政庁は、利害関係人から教示を求められたときは、教示しなければならない。

教示の懈怠・誤りの救済

  • 教示をしなかった場合: 処分庁に不服申立書を提出することができ、処分庁が適切な審査庁に送付する(83条)
  • 教示を誤った場合: 教示に従って不服申立てがされたときは、適切な審査庁に移送される

試験対策での位置づけ

審査請求の体系は、行政救済法の基本として短答式試験で頻出するテーマである。

  • 2014年改正の内容(審理員制度・行政不服審査会・審査請求への一元化等)は正確に押さえる
  • 審査請求期間(主観的3か月・客観的1年)は数字を正確に覚える
  • 裁決の種類と効力は体系的に整理しておく
  • 教示義務の内容と懈怠・誤りの救済は頻出
  • 論文式では、取消訴訟との関係(自由選択主義・審査請求前置主義)が問われることが多い

行政不服審査法と行政事件訴訟法の対応関係を整理しておくと理解が深まる。

行政不服審査法 行政事件訴訟法 審査請求 取消訴訟 裁決 判決 事情裁決 事情判決(31条) 拘束力(52条) 拘束力(33条) 教示(82条) 教示(46条)

関連判例

  • 主婦連ジュース事件(最判昭53.3.14)― 不服申立ての利益
  • パチンコ球遊器事件(最判昭33.7.1)― 不服申立て適格

まとめ

行政不服審査法は2014年の全部改正により、審理員制度と行政不服審査会の導入、審査請求への一元化、審査請求期間の延長等、大幅に制度が刷新された。審査請求は処分及び不作為を対象とし、主観的期間3か月・客観的期間1年以内に行わなければならない。裁決には却下・棄却・認容の3種類があり、事情裁決の制度も存在する。教示義務は行政庁の重要な義務であり、教示の懈怠・誤りに対する救済規定も整備されている。行政救済法の体系において審査請求制度を正確に理解することは、取消訴訟との関係を含めて不可欠である。

#審査請求 #教示 #行政不服審査法 #行政法 #裁決

無料機能あり!

司法試験の対策は司法試験ブートラボ!

肢別トレーニング・条文ドリル・論証カード・過去問演習を無料で体験できます。

無料でアカウント作成
記事一覧を見る