論文で使える接続語・文末表現一覧
司法試験・予備試験の論文答案で使える接続語と文末表現を一覧形式で紹介。論理の流れを明確にし、読みやすい答案を書くための表現集です。
この記事のポイント
論文式試験の答案は、法的知識だけでなく「文章力」でも差がつく。 適切な接続語と文末表現を使いこなすことで、論理の流れが明確になり、採点者にとって読みやすい答案になる。本記事では、司法試験・予備試験の論文答案で頻出する接続語(接続詞)と文末表現を一覧形式で網羅し、特に得点に直結する「根拠(理由)を示す接続表現」を重点的に解説する。場面別の言い回し一覧、使い分けの注意点、論証例、そしてよくある誤解までを一気通貫でまとめた。
この記事を読めば、次の疑問にすべて答えが見つかる。
- 論文の言い回しを一覧で確認したい
- 「根拠の接続表現」をどう書けばよいか知りたい
- 答案で使う接続詞・接続語の全体像を整理したい
- 場面ごとにどの表現を選べばよいか迷わないようにしたい
接続語(接続詞)とは何か ── まず定義から
接続語の定義
接続語とは、文と文・段落と段落・語と語をつなぎ、それらの論理的な関係を読み手に示す語句のことをいう。 「したがって」「しかし」「なぜなら」などが代表例である。文法上の品詞としての「接続詞」(しかし・また・だが等)よりも広く、「もっとも」「そうだとすれば」「これを本件についてみると」のような接続表現(つなぎの言い回し)も含めて、本記事では「接続語」と呼ぶ。
法律答案で問われているのは、文法用語の正確さではなく、「論理の関係を正しく示せているか」である。そのため、品詞としての接続詞かどうかにこだわる必要はなく、「前後の文の関係を読み手に伝える言い回しの一覧」として押さえるのが実戦的である。
接続語が果たす3つの役割
接続語は、文と文、段落と段落の論理的関係を示す「道標(みちしるべ)」である。法律の答案においては、以下の役割を果たす。
- 論理展開の方向を示す ── 次に何が来るのか(理由か、反論か、結論か)を予告する
- 論証構造を可視化する ── 理由付け・帰結・反論・再反論の関係を明示する
- 読み手の負担を軽減する ── 採点者が答案の論理を追いやすくする
採点実感や採点雑感の類では、繰り返し「論理が追えない答案」「結論だけで理由がない答案」が低評価とされる。接続語は、まさにこの「論理が追えるか」を左右する装置である。同じ内容を書いていても、接続語が適切であれば理解しやすく、不適切であれば読みづらい印象を与え、結果として評価を下げる。
なぜ接続語で「点が動く」のか
論文式試験の採点は、答案上に書かれた文字情報のみを手がかりに行われる。書き手の頭の中でどれだけ論理が整理されていても、それが文章上に「関係性」として表れていなければ、採点者には伝わらない。 接続語は、頭の中の論理構造を答案上に投影する唯一の手段である。
特に重要なのが「根拠の接続表現」である。後述するとおり、論文の評価は「結論」よりも「理由(根拠)」の説得力で決まる。その理由を、規範・条文・趣旨・事実のどれに基づいて述べているのかを示すのが根拠の接続表現であり、ここが弱い答案は「論証になっていない」と評価される。
接続語の分類 ── 7類型の一覧
法律答案で使う接続語は、機能に応じて以下の7つに分類できる。まずこの全体像を頭に入れておくと、場面ごとの選択が容易になる。
分類 機能 代表的な接続語 順接 前の文から当然に導かれる結論を示す したがって、そうすると、よって、ゆえに 逆接 前の文と反対・対立する内容を示す しかし、もっとも、ただし、とはいえ 添加 前の文に情報を加える また、さらに、加えて、しかも 理由(根拠) 後の文の根拠を示す なぜなら、けだし、その理由は、というのも 転換 話題を変える なお、ところで、次に、これに対し 帰結 検討結果をまとめる 以上より、以上を踏まえると、結局 譲歩 相手の主張を一旦認める たしかに、なるほど、もっともこの7類型のうち、答案の出来を最も左右するのが「理由(根拠)」と「逆接(=反論・批判)」である。順接や添加は機械的に使えるが、理由と逆接は「論理の質」を直接示すため、ここで詳しく扱う。
根拠(理由)を示す接続表現 ── 最重要パート
GSCでも「根拠の接続表現」「論文 接続詞」の検索が多いとおり、受験生が最も知りたいのは「理由をどう切り出すか」である。ここを集中的に解説する。
根拠の接続表現とは
根拠の接続表現とは、ある主張(規範・結論・評価)が「なぜそういえるのか」を導く接続語のことをいう。 論文答案における「理由付け」の入口であり、これがないと答案は「結論の羅列」になってしまう。
根拠の接続表現・一覧
接続表現 ニュアンス・使い方 例 「なぜなら」 理由付けの最も基本的・無難な表現 なぜなら、○○だからである。 「けだし」 やや古風だが法律答案で定着。判例引用にも親和的 けだし、○○だからである。 「というのは/というのも」 「なぜなら」のやわらかい言い換え というのも、○○という事情があるからである。 「その趣旨は」 条文・制度の趣旨を根拠にする際の定番 その趣旨は、○○の保護にあると解される。 「○○の趣旨に照らせば」 趣旨を根拠に規範を導く ○○の趣旨に照らせば、△△と解すべきである。 「思うに/考えるに」 自説の理由付けへ入る前置き 思うに、○○の趣旨は△△にある。 「そもそも」 制度・概念の出発点に立ち返って理由を述べる そもそも、○○制度は△△を目的とする。 「すなわち」 前の文を敷衍し、根拠を具体化する すなわち、○○とは△△を意味する。根拠を述べるときの鉄則: 理由は「なぜなら〜だからである」と呼応(対応)させて閉じる。「なぜなら、○○である。」と途中で切れていると、理由として完結しておらず減点対象になりやすい。文末を「〜だからである」「〜にほかならない」で締めることで、理由付けが論理的に完結する。
根拠は「3層」で書き分ける
根拠の接続表現を使いこなすには、「何を根拠にしているか」を意識する必要がある。法律答案における根拠は、おおむね次の3層に整理できる。
根拠の層 典型的な書き出し 性質 条文・文言を根拠にする 「○条の文言上」「条文の文言からすれば」 最も強い根拠。まず文言を確認する 趣旨・目的を根拠にする 「○○の趣旨は△△にあるから」「制度趣旨に照らせば」 解釈の中心。規範定立で多用 利益衡量を根拠にする 「○○の利益と△△の利益を比較衡量すると」 趣旨だけで決まらない場面で補強優れた答案は、いきなり結論を述べず、「文言→趣旨→(必要なら)利益衡量」の順で根拠を積み上げる。根拠の接続表現は、この積み上げの各段を示す道具である。
根拠の接続表現でやりがちな失敗
- 理由が結論の言い換えになっている:「○○と解すべきである。なぜなら、○○と解するのが妥当だからである。」これは理由になっていない。趣旨・文言・利益という外部の根拠に接続させる。
- 「なぜなら」の乱発:一つの論点で何度も「なぜなら」を使うと単調になる。2つ目以降は「また」「さらに」で理由を並列するか、「というのも」で言い換える。
- 理由と結論の順序が逆:「○○だからである。したがって△△と解する。」と書くと読みにくい。原則は「結論→なぜなら→理由」の順で、先に主張を示す方が採点者に伝わりやすい。
添加・並列の接続表現 ── 理由や事実を「重ねる」言い回し
根拠の接続表現と並んでよく使うのが、複数の理由・事実を並べる添加(並列)の接続表現である。あてはめで複数の事実を拾うとき、理由付けで根拠を2つ以上挙げるときに不可欠である。
接続表現 使い方 注意点 「また」 理由・事実を並べる最も基本的な語 連続使用で単調になりやすい 「さらに」 前の内容に積み増す 「より重い事実」を加える際に効果的 「加えて」 「また」のやや硬い言い換え 書面的で締まった印象 「しかも」 程度が強まることを示す 評価を強める場面に向く 「のみならず」 「だけでなく」の硬い表現 範囲を広げる際に使う 「第一に/第二に」 理由・要素を番号で整理 3つ以上の要素を列挙する論点で明快使い分けのコツ: 単に並べるなら「また」、重要度が上がるなら「さらに」「しかも」を使う。理由や要素が3つ以上あるときは「第一に・第二に・第三に」とナンバリングすると、採点者が要素を数えやすくなり、論点落としの印象を避けられる。ただし「また」を3回続けると稚拙に見えるため、2回目以降は「さらに」「加えて」に変化させる。
法律科目ごとの接続語の使いどころ
接続語の基本は全科目共通だが、科目の論証スタイルによって相性のよい表現がある。あくまで一般的な傾向であり、絶対的なルールではない。
民法・商法
要件を一つずつ検討する積み上げ型の論証が多いため、「まず・次に・さらに」で要件を順に拾い、各要件の充足を「〜が認められる」で締める書き方が安定する。請求の可否を論じる場面では、最終結論に「よって、Xの請求は認められる(認められない)」を用いる。
刑法
構成要件該当性→違法性→責任の順で検討するため、各段階の移行を「次に」「もっとも」で示す。あてはめでは事実を細かく評価するので、事実の認定(「〜と認められる」)と法的評価(「〜と評価できる」)を文末で区別すると、構成要件要素への当てはめが明快になる。犯罪の成否という最終結論には「よって、○○罪が成立する」を用いる。
憲法
審査基準(目的・手段の審査)を立てる論証が中心となるため、「そうだとすれば」「したがって」で基準から審査へ橋渡しする流れが重要である。違憲審査では「たしかに〜しかし〜」で対立利益を示し、利益衡量を根拠にする場面が多い。
民事訴訟法・刑事訴訟法
制度趣旨からの論証が多いため、「その趣旨は」「そもそも」で趣旨に立ち返り、「そうだとすれば」で帰結を導く流れが安定する。手続の各場面を論じるため、論点間の移行に「もっとも」「これに対し」を使うと整理しやすい。
場面別・接続語の使い方 一覧
ここからは、論証の流れ(問題提起→規範定立→反論→理由付け→あてはめ→結論)に沿って、各場面の言い回しを一覧化する。この節をブックマークすれば「論文 言い回し 一覧」として使える。
問題提起の場面
問題提起は論証の出発点であり、何が問題なのかを明確に示す場面である。
接続語・表現 使い方の例 「もっとも」 もっとも、○○が△△に当たるかは明らかでなく、問題となる。 「ここで」 ここで、○○が△△に該当するかが問題となる。 「では」 では、○○の場合にも△△が認められるか。 「この点」 この点、○○の解釈が問題となる。 「そうすると」 そうすると、○○の意義が問題となる。使い分けのポイント: 「もっとも」は前の記述(原則・条文の確認)を受けて問題点を浮き彫りにする場合に使う。「では」は新たな検討に入る場合に使う。「ここで」「この点」は汎用性が高い。問題提起は「○○が△△に当たるか(が問題となる)」と主語を明示し、何が論点かを一文で特定するのがコツである。
規範定立の場面
規範定立は、問題提起に対する自説の法的基準を示す場面である。
接続語・表現 使い方の例 「思うに」 思うに、○○の趣旨は△△にあるから、□□と解すべきである。 「考えるに」 考えるに、○○の趣旨に照らせば、△△と解するのが相当である。 「そこで」 そこで、○○の趣旨を踏まえ、△△と解する。 「そうだとすれば」 そうだとすれば、△△は□□によって判断すべきである。 「この点について」 この点について、○○と解すべきである。使い分けのポイント: 「思うに」は自説を展開する際の定番表現だが、使いすぎると冗長になる。「そこで」は問題提起を受けて解決の方向を示す場面で効果的である。「そうだとすれば」は、趣旨の説明を受けて規範を導く橋渡しに使うと論理が滑らかになる。
理由付けの場面
理由付けは、自説の根拠を示す場面であり、論証の核心部分である(詳細は前掲「根拠の接続表現」を参照)。
接続語・表現 使い方の例 「なぜなら」 なぜなら、○○であるからである。 「けだし」 けだし、○○だからである。 「すなわち」 すなわち、○○は△△を意味するのであり、□□となる。 「というのは」 というのは、○○の場合には△△となるからである。 「その趣旨は」 その趣旨は、○○にあると解される。使い分けのポイント: 「なぜなら」は理由付けの最も基本的な表現であるが、一つの論証で何度も使うと単調になる。「けだし」はやや古風な表現であるが、法律答案では今でも広く使われている。「すなわち」は前の文を敷衍する場面で使う。
反対説への言及の場面
反対説に言及する場面では、譲歩と反論の接続語が重要になる。
接続語・表現 使い方の例 「たしかに」 たしかに、○○と解する見解にも一理ある。 「なるほど」 なるほど、○○との指摘は一面では正当である。 「しかし」 しかし、△△の観点からは○○と解すべきである。 「もっとも」 もっとも、上記見解に対しては△△との批判がある。 「これに対して」 これに対して、○○と解する立場もありうる。使い分けのポイント: 「たしかに〜しかし〜」の構文は論文答案の定番であり、反対説への言及と自説の優位性を一連の流れで示すことができる。ただし、この構文を多用しすぎると機械的な印象を与えるため、変化をつけることが望ましい。譲歩(たしかに)で相手を立てすぎると、自説の批判(しかし)が弱く見えるので、譲歩は1文で簡潔にとどめるのがコツである。
あてはめの場面
あてはめは、定立した規範を具体的事実に適用する場面である。
接続語・表現 使い方の例 「本件では」 本件では、○○という事実がある。 「本件において」 本件においても、上記基準が妥当する。 「本件についてみると」 本件についてみると、○○であり△△である。 「これを本件についてみると」 これを本件についてみると、○○が認められる。 「まず/次に/さらに」 まず、○○である。次に、△△である。さらに、□□である。使い分けのポイント: あてはめへの移行は、規範定立との区切りを明確にするために「これを本件についてみると」のような表現で始めると効果的である。複数の事実を評価する場合は「まず・次に・さらに」で事実を一つずつ拾い、規範の各要素に対応させる。事実と評価の接続には「○○である。したがって△△といえる」のように、事実(生の事実)と評価(規範への当てはめ)を接続語で結ぶ。
結論の場面
結論は、あてはめの結果を簡潔に示す場面である。
接続語・表現 使い方の例 「したがって」 したがって、○○が認められる。 「よって」 よって、Xの請求は認容される。 「以上より」 以上より、○○である。 「そうすると」 そうすると、○○が成立する。 「ゆえに」 ゆえに、○○の責任を負う。使い分けのポイント: 「したがって」と「よって」はほぼ同義であるが、「よって」は最終的な結論(請求の認容・棄却、犯罪の成否)で使うことが多い。「以上より」は長い検討を経た後の総括に適している。論点ごとの小結論には「したがって」、設問全体の最終結論には「よって」と使い分けると、答案の階層がはっきりする。
文末表現の使い分け 一覧
接続語と並んで重要なのが文末表現である。文末は「自説か・事実か・評価か」を示すシグナルであり、ここを揃えると答案の説得力が上がる。
断定の文末表現
法律答案では、自説を述べる際には断定的な文末表現を使うのが基本である。
文末表現 ニュアンス 使う場面 「〜と解する」 自説としての解釈を示す 規範定立 「〜と解すべきである」 より強い主張として解釈を示す 規範定立(重要な論点) 「〜と解するのが相当である」 合理的な解釈であることを示す 規範定立 「〜と考える」 自己の見解を示す 自説の展開 「〜である」 客観的な事実・規範を示す 条文の内容、判例の紹介ポイント: 重要論点では「〜と解すべきである」、軽い論点では「〜と解する」と、論点の重さに応じて断定の強さを変えると、メリハリのある答案になる。すべてを最強の断定で書くと、かえって論点の軽重が伝わらない。
推論の文末表現
事実認定やあてはめの場面では、推論を示す文末表現を使うことがある。
文末表現 ニュアンス 使う場面 「〜といえる」 事実から結論を導く あてはめの結論 「〜と認められる」 事実認定の結果を示す 事実の認定 「〜と評価できる」 法的評価を示す 事実の法的評価 「〜にほかならない」 本質を指摘する 法的性質の認定 「〜というべきである」 やや強い評価・結論 あてはめの締めポイント: 生の事実は「〜と認められる」、その事実への法的評価は「〜と評価できる」「〜といえる」と使い分けると、事実認定と評価の区別が明確になる。この区別は、特に事実の多い問題で高評価につながる。
否定の文末表現
反対説を否定する場面や、要件の不充足を示す場面で使う。
文末表現 ニュアンス 使う場面 「〜と解することはできない」 解釈として成り立たない 反対説の否定 「〜とはいえない」 結論として導けない あてはめでの否定 「〜妥当でない」 合理性がない 反対説への批判 「〜を欠く」 要件を満たさない 要件不充足の指摘 「〜は認められない」 法的効果が生じない 結論での否定使ってはいけない表現・避けるべき表現 一覧
接続語・文末表現の「使うべき一覧」と対になるのが「避けるべき一覧」である。論文答案は法律文書であり、日常会話の言葉づかいは減点要因になりうる。
口語的な表現
避けるべき表現 代替表現 「〜だと思います」 「〜と解する」「〜と考える」 「〜ということになります」 「〜となる」「〜と解される」 「〜は当たり前なので」 「〜は明らかであるから」 「結局のところ」 「結局」「畢竟(ひっきょう)」 「ちなみに」 「なお」「付言すると」 「だから」 「したがって」「ゆえに」 「でも/だけど」 「しかし」「もっとも」 「なので」 「であるから」「したがって」曖昧な表現
法律答案では、曖昧な表現を避け、明確な表現を使うべきである。
避けるべき表現 代替表現 「〜のような気がする」 「〜と解する」 「〜かもしれない」 「〜と解する余地がある」 「〜とも考えられなくはない」 「〜と解する見解もありうる」 「〜という感じ」 「〜というものである」 「〜だったりする」 「〜である」主語が不明確な表現
法律答案では、主語(誰の・何の)を明確にすることが重要である。
避けるべき表現 代替表現 「問題となる」(主語なし) 「○○が△△に該当するかが問題となる」 「認められる」(主語なし) 「○○の成立が認められる」 「許されない」(主語なし) 「○○は△△として許されない」接続語を使った答案構成のモデル
典型的な論証パターンの全体像
一つの論点を論じる際の接続語の流れを、モデルとして示す。太字部分が接続語である。
[問題提起] もっとも、○○が△△に当たるかは明らかでなく、問題となる。
[規範定立] この点、○○の趣旨は□□にあると解される。そうだとすれば、△△に当たるか否かは、(判断基準)により判断すべきである。
[反対説への言及] たしかに、○○とする見解もある。しかし、かかる見解は(批判内容)という点で妥当でない。
[理由付け] なぜなら、(理由1)であり、また、(理由2)だからである。
[あてはめ] これを本件についてみると、(事実1)であり、さらに、(事実2)である。そうすると、(評価)といえる。
[結論] したがって、○○は△△に当たる。
このモデルに沿って接続語を配置すれば、論理の流れが明確な答案を書くことができる。各ブロックの冒頭に必ず接続語を置くことで、採点者は「いま答案のどの段階を読んでいるか」を即座に把握できる。
根拠を厚くした論証例(文言→趣旨→帰結)
根拠の接続表現を活かすと、規範定立は次のように厚くなる。
○条は「(文言)」と規定する。もっとも、同条がいかなる場合に適用されるかは条文上明らかでなく、問題となる。
そもそも、同条の趣旨は、○○の保護にある。そうだとすれば、△△の有無は、当該保護の必要性が認められるか否かによって判断すべきである。
なぜなら、形式的に文言に当てはまる場合であっても、保護の必要性を欠くときにまで同条を適用するのは、かえって制度趣旨に反するからである。
したがって、△△に当たるか否かは、(規範)により判断する。
ここでは「もっとも(問題提起)→そもそも・趣旨は(根拠)→そうだとすれば(規範への橋渡し)→なぜなら〜からである(理由の完結)→したがって(小結論)」と、根拠の接続表現が論証の骨格を作っている。
複数の論点を論じる際の接続語
答案全体で複数の論点を論じる場合は、論点間のつなぎ方も重要である。
場面 使う接続語 次の論点に移る 「次に」「続いて」「さらに」 前の論点の結論を前提にする 「以上を前提に」「上記のとおり○○であるから」 前の論点と関連する別の問題に移る 「もっとも」「なお」 設問が変わる 「第2 設問2について」論点をまたぐときは、前の論点の結論を一言引き継いでから次に進む(「上記のとおり○○が認められる。次に、△△が問題となる」)と、答案全体の連続性が生まれる。
よくある誤解・FAQ
Q1. 「思うに」は古い表現で使わない方がよいですか?
「思うに」は法律文書では現在も広く使われている表現であり、使用して問題ない。ただし、一つの答案で何度も使うと単調になるため、「考えるに」「そこで」などと使い分けることが望ましい。近年は「思うに」を使わず、直接趣旨から規範を定立する書き方も増えている。どちらでも採点上の有利不利はない。
Q2. 「けだし」は使うべきですか?
「けだし」は「なぜなら」と同義の接続語であり、法律答案では伝統的に使われてきた。判例の文体にもなじむため、判例の理由付けを引く場面では収まりがよい。使用すること自体に問題はないが、現代の法律文書では「なぜなら」の方が一般的になりつつある。どちらを使っても採点に影響はないため、自分が書きやすい方を選べばよい。
Q3. 同じ接続語を繰り返し使うのはよくないですか?
同じ接続語の連続使用は、単調な印象を与えるため避けることが望ましい。特に「また」「さらに」の連続使用は目立ちやすい。ただし、「したがって」を結論部分で使うことや、「本件では」をあてはめ部分で使うことは定型的な使い方であり、問題ない。接続語は「変化のための変化」ではなく、論理関係に合っているかで選ぶのが大原則である。
Q4. 接続語は多い方がよいですか、少ない方がよいですか?
接続語は多すぎても少なすぎてもよくない。目安としては、3〜4文に1つ程度の頻度で使うのが適切である。論理の転換点(問題提起→規範定立、規範定立→あてはめなど)では必ず接続語を使い、同じ方向の記述が続く場面では省略してもよい。逆に、すべての文頭に接続語を付けると、かえって論理関係が薄まり読みにくくなる。
Q5. 答案で使ってはいけない接続語はありますか?
法律答案にふさわしくない接続語として、「だから」「でも」「なので」などの口語的な表現がある。これらはそれぞれ「したがって」「しかし」「であるから」に置き換えるべきである。また、「ところが」は文学的なニュアンスが強いため、法律答案では「しかし」「もっとも」を使う方が適切である。
Q6. 「根拠の接続表現」を入れたのに「理由が薄い」と言われます。なぜですか?
接続語(なぜなら)を置いただけで、その後に続く理由が「結論の言い換え」になっているケースが多い。「○○と解すべきである。なぜなら、○○と解するのが妥当だからである」では理由になっていない。文言・趣旨・利益衡量という外部の根拠に接続させることで初めて理由が実質を持つ。接続語は理由の「容器」にすぎず、中身(根拠)を入れるのは別の作業だと意識したい。
Q7. 「たしかに〜しかし〜」は毎回使ってよいですか?
反対説への配慮を示す有効な型だが、全論点で機械的に使うと「型だけの答案」に見える。対立する見解が実在し、検討に値する論点に限って使うのが望ましい。争いのない場面で「たしかに〜しかし〜」を持ち出すと、不要な対立を作り出しているように見え、かえって冗長になる。
接続語セルフチェックリスト
過去問の答案を書いたあと、次の項目で自分の接続語の使い方を点検してほしい。一覧として手元に置いておくと、答案練習のたびに効率よく改善できる。
- 各ブロック(問題提起・規範定立・理由付け・あてはめ・結論)の冒頭に、関係を示す接続語が置かれているか
- 「なぜなら」の後が、結論の言い換えではなく文言・趣旨・利益という外部の根拠になっているか
- 「なぜなら」で始めた理由を、文末の「〜だからである」で閉じているか
- 「たしかに〜しかし〜」を、実際に対立がある論点でのみ使っているか
- 同じ接続語(特に「また」「さらに」)を3回以上連続させていないか
- 「だから」「でも」「なので」などの口語が紛れていないか
- 事実の認定(「〜と認められる」)と法的評価(「〜と評価できる」)を文末で書き分けているか
- 論点をまたぐとき、前の論点の結論を一言引き継いでから次へ進んでいるか
この8項目を満たせば、接続語の面で大きく減点される答案にはまずならない。
まとめ
接続語と文末表現は、論文答案の「骨格」を形成する要素である。本記事のポイントを整理すると以下のとおりである。
- 接続語(接続詞)とは、文・段落の論理関係を読み手に示す言い回しであり、順接・逆接・添加・理由・転換・帰結・譲歩の7類型に分類できる
- 最も得点に直結するのは「根拠(理由)の接続表現」であり、「なぜなら〜だからである」と呼応させて閉じ、文言→趣旨→利益衡量の順で根拠を積み上げる
- 問題提起→規範定立→反論→理由付け→あてはめ→結論の各段階で、場面に合った接続語をブロックの冒頭に配置する
- 文末表現は断定・推論・否定の3類型を、論点の重さや事実・評価の区別に応じて使い分ける
- 口語的表現・曖昧な表現・主語が不明確な表現は避ける
- 接続語は「変化のため」ではなく論理関係に合っているかで選ぶ
接続語の使い方を意識的に練習することで、答案の質は確実に向上する。過去問の答案練習の際に、本記事の一覧を手元に置き、自分の答案の接続語が論理関係と合っているかを振り返る習慣をつけてほしい。