論文で使える接続語・文末表現一覧
司法試験・予備試験の論文答案で使える接続語と文末表現を一覧形式で紹介。論理の流れを明確にし、読みやすい答案を書くための表現集です。
この記事のポイント
論文式試験の答案は、法的知識だけでなく「文章力」でも差がつく。 適切な接続語と文末表現を使いこなすことで、論理の流れが明確になり、採点者にとって読みやすい答案になる。本記事では、司法試験・予備試験の論文答案で頻出する接続語と文末表現を場面別に分類し、使い方の注意点とともに網羅的に解説する。
接続語の基本と分類
接続語が果たす役割
接続語は、文と文、段落と段落の論理的関係を示す「道標」である。法律の答案においては、以下の役割を果たす。
- 論理展開の方向を示す ── 次に何が来るのかを予告する
- 論証構造を可視化する ── 理由付け・帰結・反論・再反論の関係を明示する
- 読み手の負担を軽減する ── 採点者が答案の論理を追いやすくする
接続語を適切に使えるかどうかは、答案の「読みやすさ」を大きく左右する。同じ内容を書いていても、接続語が適切であれば理解しやすく、不適切であれば読みづらい印象を与える。
法律答案における接続語の分類
法律答案で使う接続語は、機能に応じて以下の7つに分類できる。
分類 機能 代表的な接続語 順接 前の文から当然に導かれる結論を示す したがって、そうすると、よって 逆接 前の文と反対・対立する内容を示す しかし、もっとも、ただし 添加 前の文に情報を加える また、さらに、加えて 理由 後の文の根拠を示す なぜなら、けだし、その理由は 転換 話題を変える なお、ところで、次に 帰結 検討結果をまとめる 以上より、以上を踏まえると 譲歩 相手の主張を一旦認める たしかに、なるほど場面別・接続語の使い方
問題提起の場面
問題提起は論証の出発点であり、何が問題なのかを明確に示す場面である。
接続語・表現 使い方の例 「もっとも」 もっとも、○○が△△に当たるかは明らかでなく、問題となる。 「ここで」 ここで、○○が△△に該当するかが問題となる。 「では」 では、○○の場合にも△△が認められるか。 「この点」 この点、○○の解釈が問題となる。使い分けのポイント: 「もっとも」は前の記述を受けて問題点を浮き彫りにする場合に使う。「では」は新たな検討に入る場合に使う。「ここで」「この点」は汎用性が高い。
規範定立の場面
規範定立は、問題提起に対する自説の法的基準を示す場面である。
接続語・表現 使い方の例 「思うに」 思うに、○○の趣旨は△△にあるから、□□と解すべきである。 「考えるに」 考えるに、○○の趣旨に照らせば、△△と解するのが相当である。 「そこで」 そこで、○○の趣旨を踏まえ、△△と解する。 「この点について」 この点について、○○と解すべきである。使い分けのポイント: 「思うに」は自説を展開する際の定番表現だが、使いすぎると冗長になる。「そこで」は問題提起を受けて解決の方向を示す場面で効果的である。
理由付けの場面
理由付けは、自説の根拠を示す場面であり、論証の核心部分である。
接続語・表現 使い方の例 「なぜなら」 なぜなら、○○であるからである。 「けだし」 けだし、○○だからである。 「すなわち」 すなわち、○○は△△を意味するのであり、□□となる。 「というのは」 というのは、○○の場合には△△となるからである。 「その趣旨は」 その趣旨は、○○にあると解される。使い分けのポイント: 「なぜなら」は理由付けの最も基本的な表現であるが、一つの論証で何度も使うと単調になる。「けだし」はやや古風な表現であるが、法律答案では今でも広く使われている。「すなわち」は前の文を敷衍する場面で使う。
反対説への言及の場面
反対説に言及する場面では、譲歩と反論の接続語が重要になる。
接続語・表現 使い方の例 「たしかに」 たしかに、○○と解する見解にも一理ある。 「なるほど」 なるほど、○○との指摘は一面では正当である。 「しかし」 しかし、△△の観点からは○○と解すべきである。 「もっとも」 もっとも、上記見解に対しては△△との批判がある。 「これに対して」 これに対して、○○と解する立場もありうる。使い分けのポイント: 「たしかに〜しかし〜」の構文は論文答案の定番であり、反対説への言及と自説の優位性を一連の流れで示すことができる。ただし、この構文を多用しすぎると機械的な印象を与えるため、変化をつけることが望ましい。
あてはめの場面
あてはめは、定立した規範を具体的事実に適用する場面である。
接続語・表現 使い方の例 「本件では」 本件では、○○という事実がある。 「本件において」 本件においても、上記基準が妥当する。 「本件についてみると」 本件についてみると、○○であり△△である。 「これを本件についてみると」 これを本件についてみると、○○が認められる。使い分けのポイント: あてはめへの移行は、規範定立との区切りを明確にするために「これを本件についてみると」のような表現で始めると効果的である。
結論の場面
結論は、あてはめの結果を簡潔に示す場面である。
接続語・表現 使い方の例 「したがって」 したがって、○○が認められる。 「よって」 よって、Xの請求は認容される。 「以上より」 以上より、○○である。 「そうすると」 そうすると、○○が成立する。使い分けのポイント: 「したがって」と「よって」はほぼ同義であるが、「よって」は最終的な結論(請求の認容・棄却、犯罪の成否)で使うことが多い。「以上より」は長い検討を経た後の総括に適している。
文末表現の使い分け
断定の文末表現
法律答案では、自説を述べる際には断定的な文末表現を使うのが基本である。
文末表現 ニュアンス 使う場面 「〜と解する」 自説としての解釈を示す 規範定立 「〜と解すべきである」 より強い主張として解釈を示す 規範定立(重要な論点) 「〜と解するのが相当である」 合理的な解釈であることを示す 規範定立 「〜と考える」 自己の見解を示す 自説の展開 「〜である」 客観的な事実・規範を示す 条文の内容、判例の紹介推論の文末表現
事実認定やあてはめの場面では、推論を示す文末表現を使うことがある。
文末表現 ニュアンス 使う場面 「〜といえる」 事実から結論を導く あてはめの結論 「〜と認められる」 事実認定の結果を示す 事実の認定 「〜と評価できる」 法的評価を示す 事実の法的評価 「〜にほかならない」 本質を指摘する 法的性質の認定否定の文末表現
反対説を否定する場面や、要件の不充足を示す場面で使う。
文末表現 ニュアンス 使う場面 「〜と解することはできない」 解釈として成り立たない 反対説の否定 「〜とはいえない」 結論として導けない あてはめでの否定 「〜妥当でない」 合理性がない 反対説への批判 「〜を欠く」 要件を満たさない 要件不充足の指摘使ってはいけない表現・避けるべき表現
口語的な表現
論文答案は法律文書であり、口語的な表現は不適切である。
避けるべき表現 代替表現 「〜だと思います」 「〜と解する」「〜と考える」 「〜ということになります」 「〜となる」「〜と解される」 「〜は当たり前なので」 「〜は明らかであるから」 「結局のところ」 「結局」「畢竟」 「ちなみに」 「なお」「付言すると」曖昧な表現
法律答案では、曖昧な表現を避け、明確な表現を使うべきである。
避けるべき表現 代替表現 「〜のような気がする」 「〜と解する」 「〜かもしれない」 「〜と解する余地がある」 「〜とも考えられなくはない」 「〜と解する見解もありうる」 「〜という感じ」 「〜というものである」主語が不明確な表現
法律答案では、主語を明確にすることが重要である。
避けるべき表現 代替表現 「問題となる」(主語なし) 「○○が△△に該当するかが問題となる」 「認められる」(主語なし) 「○○の成立が認められる」 「許されない」(主語なし) 「○○は△△として許されない」接続語を使った答案構成のモデル
典型的な論証パターンの全体像
一つの論点を論じる際の接続語の流れを、モデルとして示す。
[問題提起] もっとも、○○が△△に当たるかは明らかでなく、問題となる。
[規範定立] この点、○○の趣旨は□□にあると解される。そうだとすれば、△△に当たるか否かは、(判断基準)により判断すべきである。
[反対説への言及] たしかに、○○とする見解もある。しかし、かかる見解は(批判内容)という点で妥当でない。
[理由付け] なぜなら、(理由1)であり、また、(理由2)だからである。
[あてはめ] これを本件についてみると、(事実1)であり、さらに、(事実2)である。そうすると、(評価)といえる。
[結論] したがって、○○は△△に当たる。
このモデルに沿って接続語を配置すれば、論理の流れが明確な答案を書くことができる。
複数の論点を論じる際の接続語
答案全体で複数の論点を論じる場合は、論点間のつなぎ方も重要である。
場面 使う接続語 次の論点に移る 「次に」「続いて」「さらに」 前の論点の結論を前提にする 「以上を前提に」「上記のとおり○○であるから」 前の論点と関連する別の問題に移る 「もっとも」「なお」 設問が変わる 「第2 設問2について」まとめ
接続語と文末表現は、論文答案の「骨格」を形成する要素である。本記事のポイントを整理すると以下のとおりである。
- 接続語は順接・逆接・添加・理由・転換・帰結・譲歩の7つに分類でき、場面に応じて使い分ける
- 問題提起→規範定立→理由付け→あてはめ→結論の各段階で、適切な接続語を配置することが重要である
- 文末表現は断定・推論・否定の3類型を場面に応じて使い分ける
- 口語的表現・曖昧な表現・主語が不明確な表現は避けるべきである
- 接続語の適切な使用は、答案の読みやすさと論理性を大きく向上させる
接続語の使い方を意識的に練習することで、答案の質は確実に向上する。過去問の答案練習の際に、接続語の使い方を振り返る習慣をつけてほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「思うに」は古い表現で使わない方がよいですか?
「思うに」は法律文書では現在も広く使われている表現であり、使用して問題ない。ただし、一つの答案で何度も使うと単調になるため、「考えるに」「そこで」などと使い分けることが望ましい。近年は「思うに」を使わず、直接規範を定立する書き方も増えている。
Q2. 「けだし」は使うべきですか?
「けだし」は「なぜなら」と同義の接続語であり、法律答案では伝統的に使われてきた。使用すること自体に問題はないが、現代の法律文書では「なぜなら」の方が一般的になりつつある。どちらを使っても採点に影響はないため、自分が書きやすい方を選べばよい。
Q3. 同じ接続語を繰り返し使うのはよくないですか?
同じ接続語の連続使用は、単調な印象を与えるため避けることが望ましい。特に「また」「さらに」の連続使用は目立ちやすい。ただし、「したがって」を結論部分で使うことや、「本件では」をあてはめ部分で使うことは定型的な使い方であり、問題ない。
Q4. 接続語は多い方がよいですか、少ない方がよいですか?
接続語は多すぎても少なすぎてもよくない。目安としては、3〜4文に1つ程度の頻度で使うのが適切である。論理の転換点(問題提起→規範定立、規範定立→あてはめなど)では必ず接続語を使い、同じ方向の記述が続く場面では省略してもよい。
Q5. 答案で使ってはいけない接続語はありますか?
法律答案にふさわしくない接続語として、「だから」「でも」「なので」などの口語的な表現がある。これらはそれぞれ「したがって」「しかし」「であるから」に置き換えるべきである。また、「ところが」は文学的なニュアンスが強いため、法律答案では「しかし」「もっとも」を使う方が適切である。