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構成要件の機能と罪刑法定主義|刑法の基本原理

構成要件の機能と罪刑法定主義を解説。派生原則、構成要件の概念と機能、客観的・主観的構成要件要素の区別を体系的に整理します。

この記事のポイント

罪刑法定主義は「法律なければ犯罪なし、法律なければ刑罰なし」の原則であり、近代刑法の根幹をなす。構成要件は犯罪行為の類型的記述であり、犯罪個別化機能・違法推定機能・故意規制機能を有する。罪刑法定主義の派生原則(類推解釈の禁止・明確性の原則等)は、構成要件の解釈において常に意識すべき基本原理である。


罪刑法定主義

意義と沿革

罪刑法定主義とは、いかなる行為が犯罪となり、いかなる刑罰が科せられるかは、あらかじめ法律で定められていなければならないとする原則である。

憲法31条(適正手続の保障)・39条前段(遡及処罰の禁止)・73条6号ただし書(政令への罰則委任の制限)がその憲法上の根拠とされる。

派生原則

派生原則 内容 法律主義 犯罪と刑罰は国会の制定する法律で規定しなければならない 事後法の禁止(遡及処罰の禁止) 行為時に犯罪でなかった行為を事後に制定された法律で処罰してはならない 類推解釈の禁止 刑罰法規を被告人に不利益な方向に類推適用してはならない 明確性の原則 構成要件は一般人が理解可能な程度に明確でなければならない 内容の適正の原則 犯罪と刑罰の内容自体が適正でなければならない(過度に広範な処罰の禁止等)

類推解釈と拡張解釈の区別

類推解釈は禁止されるが、拡張解釈は許容される。両者の区別は、法文の可能な語義の範囲内か否かによる。

  • 拡張解釈: 法文の語義の可能な範囲内で広く解釈すること(許容)
  • 類推解釈: 法文の語義を超えて、類似の事案に適用すること(禁止)

例えば、「電気」を窃盗罪の「財物」に含めることは拡張解釈か類推解釈かが議論されたが、刑法245条で「電気は財物とみなす」と明文化された。


構成要件の概念

構成要件論の展開

学者 構成要件の位置づけ ベーリング 純粋に記述的・没価値的な行為類型(違法性・有責性と無関係) マイヤー 違法性の認識根拠(違法性の徴表) メツガー 違法類型(違法性と一体的に把握) 小野清一郎 違法有責類型(違法かつ有責な行為の類型)

現在の日本の通説は、構成要件を違法有責類型と解している。

構成要件の機能

機能 内容 犯罪個別化機能 各犯罪を相互に区別する(窃盗罪と強盗罪の区別等) 違法推定機能 構成要件に該当する行為は原則として違法と推定される 故意規制機能 故意の認識対象は構成要件該当事実であり、構成要件が故意の内容を規定する

構成要件要素

客観的構成要件要素と主観的構成要件要素

分類 内容 具体例 客観的構成要件要素 行為・結果・因果関係など外形的な要素 殺人罪の「人を殺す」行為、死亡結果 主観的構成要件要素 故意・過失、特別な目的・動機 窃盗罪の「不法領得の意思」

記述的構成要件要素と規範的構成要件要素

分類 内容 具体例 記述的構成要件要素 感覚的・知覚的に認識可能な要素 「人」「物」「殺す」 規範的構成要件要素 裁判官の価値判断・評価を必要とする要素 「わいせつ」「公然」「名誉」

規範的構成要件要素については、明確性の原則との関係で問題が生じうる。


犯罪論の体系

三段階審査

日本の通説的犯罪論は、以下の三段階で犯罪の成否を判断する。

  1. 構成要件該当性: 行為が構成要件に該当するか
  2. 違法性: 違法性阻却事由(正当防衛・緊急避難等)がないか
  3. 有責性(責任): 責任阻却事由(責任能力の欠如等)がないか

構成要件に該当し、違法性阻却事由も責任阻却事由もない場合に犯罪が成立する。


よくある質問

Q1: 罪刑法定主義は慣習刑法を禁止しますか

法律主義の帰結として、慣習法を犯罪・刑罰の根拠とすることは禁止される。ただし、被告人に有利な慣習法(違法性阻却の慣習法等)については認められるとする見解がある。

Q2: 構成要件該当性と違法性の関係はどうなっていますか

構成要件が違法類型であるとする通説的立場によれば、構成要件に該当する行為は原則として違法と推定される。違法性阻却事由の存在が認められる場合にのみ、例外的に違法性が否定される。

Q3: 「不法領得の意思」は構成要件要素ですか

判例・通説は、窃盗罪の成立に不法領得の意思(権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用・処分する意思)を必要とし、これを主観的構成要件要素と位置づけている。


関連条文

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

― 日本国憲法 第31条


まとめ

罪刑法定主義は近代刑法の根幹であり、法律主義・事後法の禁止・類推解釈の禁止・明確性の原則・内容の適正の原則を派生原則とする。構成要件は違法有責類型として犯罪個別化機能・違法推定機能・故意規制機能を有し、三段階審査の出発点となる。構成要件要素の分類を正確に理解することが犯罪論体系の基礎となる。

#刑法 #構成要件 #罪刑法定主義

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