公務執行妨害罪と賄賂罪|国家法益に対する罪の体系
公務執行妨害罪と賄賂罪を体系的に解説。職務行為の適法性、暴行脅迫の程度、賄賂罪の保護法益と各類型を整理します。
この記事のポイント
公務執行妨害罪(95条1項)と賄賂罪(197条以下)は、国家の作用に対する罪の中核をなす犯罪類型である。 公務執行妨害罪では職務行為の適法性の要否が、賄賂罪では「職務に関し」の範囲と賄賂の意義が中心的論点となる。
公務執行妨害罪(95条1項)
構成要件
- 客体: 公務員
- 行為: 職務を執行するに当たり、暴行または脅迫を加えること
- 故意: 公務員が職務を執行中であることの認識と暴行・脅迫の認識
職務行為の適法性
判例は、公務執行妨害罪の成立には職務行為が適法であることが必要であるとする。
適法性の判断基準:
1. その公務員の抽象的権限に属すること
2. 具体的な職務権限の範囲内であること
3. 法定の重要な手続・方式を履践していること
重要判例: 違法な逮捕に対する抵抗は公務執行妨害罪を構成しない。
暴行・脅迫の程度
公務執行妨害罪の暴行は、公務員の身体に直接向けられる必要はなく、公務員の職務執行を妨害するに足りる程度の有形力の行使で足りる(間接暴行を含む)。
賄賂罪の体系
保護法益
公務員の職務の公正と、それに対する社会一般の信頼を保護する。
賄賂罪の類型
罪名 条文 主体 行為 単純収賄罪 197条1項前段 公務員 職務に関し賄賂を収受等 受託収賄罪 197条1項後段 公務員 請託を受けて賄賂を収受等 事前収賄罪 197条2項 公務員になろうとする者 就任前に賄賂を収受等 第三者供賄罪 197条の2 公務員 第三者に賄賂を供与させる 加重収賄罪 197条の3 公務員 不正な行為をした/正当な行為をしなかった 事後収賄罪 197条の3第3項 公務員であった者 退職後に賄賂を収受等 あっせん収賄罪 197条の4 公務員 他の公務員の職務に関しあっせん 贈賄罪 198条 何人も 賄賂を供与等「賄賂」の意義
賄賂とは、公務員の職務行為に対する対価としての不正な報酬をいう。
- 金銭に限られず、物品、供応、金融の利益、異性間の情交等も含まれる
- 社交的儀礼の範囲を超えるものであること
「職務に関し」の範囲
判例は「職務に関し」を広く解釈し、以下の場合も含むとする。
- 一般的職務権限に属する行為であれば足りる(具体的な担当事務でなくてもよい)
- 過去の職務行為に対する対価も含む
- 将来の職務行為に対する対価も含む
- 転職前の職務に関する対価も含む場合がある
試験での出題ポイント
- 職務行為の適法性: 適法性の判断基準(3要件)
- 間接暴行の肯否: 公務員の身体への直接の暴行でなくてもよいか
- 賄賂の意義: 職務行為との対価関係の認定
- 職務関連性: 一般的職務権限の範囲
- 賄賂罪の類型: 各類型の構成要件の異同
まとめ
- 公務執行妨害罪は適法な職務行為に対する暴行・脅迫を処罰する
- 暴行は公務員の身体への直接的なものに限らず、間接暴行も含む
- 賄賂は職務行為に対する不正な報酬であり、金銭に限られない
- 「職務に関し」は一般的職務権限に属すれば足りるとするのが判例
- 賄賂罪は単純収賄から加重収賄まで段階的な類型が規定されている
FAQ
Q1. 違法な職務行為に対して抵抗しても公務執行妨害罪になりますか?
なりません。公務執行妨害罪の成立には職務行為の適法性が必要であり、違法な職務行為(違法な逮捕等)に対する抵抗は本罪を構成しません。
Q2. お中元やお歳暮は賄賂になりますか?
社交的儀礼の範囲内であれば賄賂に該当しませんが、職務行為との対価関係が認められる場合は賄賂に該当しえます。金額、贈答の時期・経緯等から判断されます。
Q3. 退職後に現職時代の職務に関して金銭を受け取ると犯罪になりますか?
事後収賄罪(197条の3第3項)に該当しえます。公務員であった者が、在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたことに関し、退職後に賄賂を収受した場合に成立します。