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記事行政法国家賠償法の体系|1条責任・2条責任の要件と判例

国家賠償法の体系|1条責任・2条責任の要件と判例

行政法 読了 約8分

国家賠償法を体系的に解説。1条の公権力責任と2条の営造物責任の要件、違法性の判断基準(職務行為基準説)、規制権限の不行使、費用負担者の責任、国家補償の谷間まで重要判例とともに整理します。

この記事のポイント

国家賠償法は1条(公権力の行使に基づく責任)と2条(公の営造物の設置・管理の瑕疵に基づく責任)を2本柱とし、それぞれ要件・効果が異なる。 試験では1条の「違法性」の判断基準と2条の「瑕疵」の判断が頻出。


国家賠償法1条

要件

要件 内容 公権力の行使 広義(私経済作用・国賠法2条を除くすべて) 公務員 広く公権力行使を委託された者を含む 職務を行うについて 外形標準説(客観的に職務行為の外形を備える行為) 故意又は過失 公務員個人の主観的要件 違法に 違法性の判断基準が問題 他人に損害を加えた 因果関係

違法性の判断基準

学説 内容 行為不法説 公務員の行為の法的評価として違法か 結果不法説 被侵害利益の侵害が法的に許容されないか 職務行為基準説(判例) 公務員が職務上の法的義務に違反したか

公務員の個人責任

国賠法1条に基づく賠償請求は国又は公共団体に対して行う。公務員個人に対する直接請求は認められない(最判昭30.4.19)。詳しくは【判例】公務員の個人責任を参照。

求償権(1条2項)

公務員に故意又は重大な過失があった場合、国又は公共団体は公務員に対して求償権を有する。軽過失の場合に求償できないのは、公務員が萎縮せずに職務を遂行できるようにするためである。

規制権限の不行使(不作為)の違法性

国賠法1条は「行政庁が何かをしたこと」だけでなく、すべきことをしなかったことについても問題となる。行政庁が法律上の規制権限を行使しなかったために損害が生じた場合、その不作為が「違法」といえるかである。

判例は、筑豊じん肺訴訟(最判平16.4.27)で次の枠組みを示した。

規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国賠法1条1項の適用上違法となる。

ポイントは「著しく合理性を欠く」という高いハードルが設定されている点である。行政庁には権限行使について裁量が認められるのが原則であり、行使しなかったことが直ちに違法になるわけではない。あてはめでは次の要素を分けて検討する。

考慮要素 検討の内容 被害の重大性 生命・身体への被害か、財産的被害にとどまるか 予見可能性 行政庁が被害を予見し、又は予見しえたか 結果回避可能性 権限を行使していれば被害を回避できたか 期待可能性 その時点で権限行使を期待できる状況だったか 被害者側の事情 被害者が自ら回避する手段を持っていたか

被害が生命・身体に及ぶ事案では、この枠組みの下でも違法性が肯定されやすい。水俣病関西訴訟(最判平16.10.15)は水質二法に基づく規制権限の不行使を、泉南アスベスト訴訟(最判平26.10.9)は労働大臣による規制権限の不行使を、それぞれ違法と判断している。


国家賠償法2条

要件

要件 内容 公の営造物 道路・河川等国又は公共団体が管理する物的施設 設置又は管理の瑕疵 通常有すべき安全性を欠くこと 他人に損害を生じた 因果関係

瑕疵の判断基準

営造物が通常有すべき安全性を欠いているかどうか(客観説)。設置・管理者の過失は不要(無過失責任)。

重要判例

判例 内容 高知落石事件(最判昭45.8.20) 道路の安全性の判断、予算の制約は免責事由にならない 大東水害訴訟(最判昭59.1.26) 河川の安全性は過渡的安全性で足りる 多摩川水害訴訟(最判平2.12.13) 改修済み河川には通常の安全性が求められる

費用負担者の責任(3条)

営造物の設置者・管理者と費用負担者が異なる場合、被害者は費用負担者に対しても賠償を請求できる(3条1項)。被害者が「誰が本当の管理者か」を突き止められないために救済されない、という事態を避ける趣旨である。

被告 根拠 関係 設置者・管理者 2条 費用負担者と連帯して責任を負う 費用負担者 3条 同上

答案では、国道の管理を都道府県が行い費用を国が負担しているといった事案で、被告の選択を問われる形で登場する。


国家賠償法と民法の関係

場面 適用法 公権力の行使 国賠法1条 公の営造物の瑕疵 国賠法2条 私経済作用 民法709条等

国賠法に定めのない事項については民法が補充的に適用される(4条)。使用者責任(715条)や失火責任法の適用の可否は、この4条を通じて問題となる。


損失補償との関係|国家補償の谷間

国家賠償と損失補償は、あわせて国家補償と呼ばれる。両者は救済の対象が裏返しの関係にある。

制度 根拠 要件 性質 国家賠償 国賠法1条・2条 違法な行為による損害 不法行為責任 損失補償 憲法29条3項 適法な行為による特別の犠牲 公平負担の原則

問題は、この2つのどちらにも当てはまらない損害が生じる場合である。行為は違法とまではいえないが、財産権の収用でもないため損失補償の要件も満たさない——これを国家補償の谷間という。予防接種の副反応被害が典型例として論じられてきた。

学説上は、①国賠法の違法性概念を拡張して救済する方法と、②憲法29条3項を直接適用し、生命・身体への侵害についてもその趣旨を及ぼして補償を認める方法が主張されている。後者については、財産権の規定である29条3項を生命・身体に及ぼしてよいのかという批判があり、答案では自説の理由づけまで示す必要がある。


まとめ

  • 1条は職務行為基準説で違法性を判断(判例)
  • 公務員個人への直接請求は否定される
  • 2条は無過失責任であり通常の安全性が基準
  • 河川の安全性は過渡的安全性論(大東水害判決)
  • 予算の制約は免責事由にならない(高知落石事件)
  • 規制権限の不行使も「著しく合理性を欠く」場合には違法となる(筑豊じん肺訴訟)
  • 費用負担者も3条により連帯して責任を負う

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