/ 刑法

生命身体に対する罪の応用論点|同意殺人・傷害の共同正犯・危険運転致死傷

刑法各論の生命身体に対する罪の応用論点を解説。同意殺人と自殺関与の区別、傷害の共同正犯における同時傷害の特例、危険運転致死傷罪を整理します。

この記事のポイント

生命身体に対する罪の応用論点は、殺意の認定・同意殺人と自殺関与の区別・傷害の共同正犯と同時傷害の特例が中心である。 近年は危険運転致死傷罪の適用範囲も重要テーマとなっている。


殺意の認定

殺意の判断要素

要素 内容 凶器の種類・用法 刃物・鈍器等の危険性と使用態様 創傷の部位・程度 枢要部(頭部・胸部等)への攻撃か 動機 殺害の動機の有無 犯行後の行動 救護の有無、逃走の態様 犯行前の言動 殺害をほのめかす発言等

未必の故意と認識ある過失の区別

区分 認識 認容 確定的故意 あり あり 未必の故意 あり 消極的認容あり 認識ある過失 あり なし(結果不発生を期待)

同意殺人と自殺関与

202条の4類型

類型 内容 法定刑 自殺教唆 自殺の決意のない者に自殺を決意させる 6月以上7年以下の懲役・禁錮 自殺幇助 自殺の決意のある者の自殺を援助する 同上 嘱託殺人 被殺者の嘱託を受けて殺害する 同上 承諾殺人 被殺者の承諾を得て殺害する 同上

同意の有効性

要件 内容 真意に基づく同意 詐欺・強迫による同意は無効 同意能力 事理を弁識する能力が必要 明示の同意 黙示の同意でも可

偽装心中

自殺する意思がないのに心中するふりをして相手を殺害した場合。
- 相手方の同意は錯誤に基づく無効な同意
- 殺人罪(199条)が成立する(最判昭33.11.21)


同時傷害の特例(207条)

趣旨

2人以上が暴行を加えた場合に、傷害の原因が不明であっても、共同正犯の例により処罰する規定。

要件

  1. 2人以上の暴行が存在すること
  2. 意思の連絡がないこと(共同正犯が成立しない場合)
  3. 傷害の原因が不明であること

効果

各暴行者について、傷害結果全体について共同正犯としての責任を問う(挙証責任の転換)。

最決平28.3.24

項目 内容 事案 共謀関係にある者とそうでない者の暴行が競合した場合の207条の適用 判旨 同時傷害の特例は共謀関係にある一方のグループと他方の間にも適用されうる 意義 207条の適用範囲を拡大

胎児傷害

問題の所在

胎児に対する傷害が出生後に顕在化した場合の処理。

判例の立場

最決昭63.2.29:胎児は「人」ではないため傷害罪の客体にならないが、出生後に傷害が顕在化した場合は、出生した「人」に対する傷害として処理しうる。


危険運転致死傷罪

類型(自動車運転処罰法2条)

類型 内容 アルコール・薬物影響 正常な運転が困難な状態での走行 制御困難高速度 進行を制御することが困難な高速度での走行 未熟運転 進行を制御する技能を有しない走行 妨害運転 人や車の通行を妨害する目的での走行 信号無視 赤色信号等を殊更に無視した走行 通行禁止道路 通行禁止道路の進行

法定刑

  • 致傷:15年以下の懲役
  • 致死:1年以上の有期懲役(上限20年)

まとめ

  • 殺意の認定は凶器・創傷部位・動機・犯行後の行動等の総合判断
  • 同意殺人の同意は真意に基づく有効な同意が必要
  • 偽装心中は同意が無効で通常の殺人罪が成立
  • 同時傷害の特例は意思連絡がない場合の挙証責任転換規定
  • 危険運転致死傷罪は類型ごとの要件の正確な理解が必要

FAQ

Q1. 安楽死は法的にどう扱われますか?

判例(名古屋高判昭37.12.22)は安楽死の許容要件を示しましたが、現在の判例で安楽死が認められた事案はありません。治療中止については最決平21.12.7(川崎協同病院事件)が参考になります。

Q2. 同時傷害の特例は傷害致死にも適用されますか?

判例(最判昭26.9.20)は傷害致死にも207条の適用を肯定しています。ただし学説では批判が強いです。

Q3. 過失運転致死傷罪との区別基準は?

危険運転致死傷罪は故意犯的構成(危険な運転行為の認識が必要)であり、過失運転致死傷罪は過失犯です。「正常な運転が困難な状態」の認識が分水嶺となります。


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