行政裁量と司法審査|裁量の逸脱・濫用の判断枠組み
行政裁量と司法審査の関係を解説。裁量の逸脱・濫用の判断枠組み、判断過程統制、社会観念審査、重要判例を整理します。
この記事のポイント
行政裁量の司法審査は行訴法30条を根拠とし、裁量の逸脱・濫用の有無を審査する。 審査手法として社会観念審査と判断過程統制があり、近時は判断過程統制が重視される傾向にある。
行訴法30条の意義
行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合に限り、裁判所は取消しができる(行訴法30条)。
概念 内容 裁量権の逸脱 法律の定める範囲を超えた判断 裁量権の濫用 範囲内であるが不正な目的・不当な考慮による判断司法審査の手法
社会観念審査
処分の結果が社会観念上著しく妥当性を欠くかどうかを審査する手法。
マクリーン事件(最大判昭53.10.4):在留期間更新の拒否について、裁量権の逸脱・濫用の有無を社会観念に照らして審査。
判断過程統制
行政庁の判断過程に着目し、考慮すべき事項を考慮し、考慮すべきでない事項を考慮していないかを審査する手法。
日光太郎杉事件(東京高判昭48.7.13):土地収用の事業認定について、考慮要素の適切な衡量を審査。
裁量統制の重要判例
1. マクリーン事件(最大判昭53.10.4)
法務大臣の在留期間更新拒否は広範な裁量に委ねられ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合にのみ違法となる。
2. 呉市公立学校教組事件(最判昭52.12.20)
懲戒処分の選択について、社会観念上著しく妥当性を欠き裁量権を付与した目的を逸脱した場合に違法となる。
3. エホバの証人剣道受講拒否事件(最判平8.3.8)
信仰上の理由による剣道の履修拒否に対する退学処分は、代替措置の可能性を考慮せず、社会観念上著しく妥当性を欠き裁量権の範囲を超える。
4. 小田急高架訴訟(最大判平18.11.2)
判断過程において考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮した場合、裁量の逸脱・濫用となる。
5. 老齢加算廃止事件(最判平24.2.28)
生活保護の老齢加算廃止は、被保護者の期待的利益を考慮しつつ、判断過程に過誤がないかを審査。
裁量の種類と審査密度
裁量の種類 審査密度 例 効果裁量 処分内容の選択 営業許可の条件付与 要件裁量 要件該当性の判断 不確定概念の解釈 時の裁量 処分の時期の選択 是正命令の発出時期 手続裁量 手続の選択 聴聞の方式 計画裁量 計画策定における裁量 都市計画の決定まとめ
- 裁量審査は行訴法30条が根拠条文
- 社会観念審査と判断過程統制が2つの主要手法
- 近時は判断過程統制が重視される傾向
- 裁量の種類(効果・要件・時・手続・計画)を意識して審査密度を設定
- 判例は事案の類型に応じて審査密度を変えている