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強盗罪の構成要件|暴行脅迫の程度と事後強盗・強盗致死傷

刑法236条の強盗罪を体系的に解説。暴行脅迫の程度、2項強盗、事後強盗罪の法的性質、強盗致死傷罪の構造を判例とともに整理します。

この記事のポイント

強盗罪(刑法236条)は、暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取し、または財産上不法の利益を得る犯罪であり、財産犯の中で最も重い法定刑が定められている。 暴行・脅迫の程度が「反抗を抑圧するに足りる」ものであることが要求され、これに達しない場合は恐喝罪となる。事後強盗罪(238条)、昏酔強盗罪(239条)、強盗致死傷罪(240条)との関連も含めた体系的理解が重要である。


1項強盗

構成要件

  • 行為: 暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取すること
  • 暴行・脅迫の程度: 相手方の反抗を抑圧するに足りる程度
  • 手段と目的の関係: 暴行・脅迫が財物奪取の手段として行われること

反抗抑圧の判断基準

「反抗を抑圧するに足りる」程度の暴行・脅迫かどうかは、以下の事情を客観的に判断する。

  • 暴行・脅迫の態様
  • 犯行の時刻・場所
  • 被害者と行為者の年齢・体格・人数
  • 凶器の有無とその種類

客観的基準: 社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度であれば足り、現実に被害者の反抗が抑圧されたことは要しない。

強盗罪と恐喝罪の区別

比較項目 強盗罪(236条) 恐喝罪(249条) 暴行・脅迫の程度 反抗を抑圧する程度 反抗を抑圧しない程度 財物の移転 強取(意思に反する移転) 交付(瑕疵ある意思による移転) 法定刑 5年以上の有期懲役 10年以下の懲役

2項強盗

構成要件

暴行または脅迫を用いて財産上不法の利益を得た場合に成立する(236条2項)。

財産上の利益の具体例

  • 債務の免除(殺害による債務免脱)
  • 代金の支払いを免れること
  • 不動産の明渡しを強制すること

2項強盗の重要論点

強盗殺人で債務を免脱した場合

債務者が債権者を殺害して債務を免れた場合、2項強盗の成立が問題となる。判例は、殺害行為と利益取得との間に因果関係があれば2項強盗の成立を認める。


事後強盗罪(238条)

構成要件

窃盗犯が、財物を取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、または罪跡を隠滅するために、暴行または脅迫をした場合に成立する。

法的性質

事後強盗罪の法的性質については争いがある。

  • 身分犯説: 窃盗犯という身分に基づく犯罪
  • 結合犯説(判例): 窃盗行為と暴行・脅迫の結合犯

窃盗の機会

暴行・脅迫は窃盗の機会に行われることが必要とされる。窃盗行為と時間的・場所的に近接していることが求められる。

窃盗が未遂の場合

窃盗が未遂に終わった場合でも、事後強盗罪の主体となりうるかについて争いがある。判例は肯定する。

共犯の問題

窃盗犯でない者が事後強盗の暴行・脅迫に加担した場合の処理は、事後強盗罪の法的性質の理解に依存する。

  • 身分犯説: 65条1項により共犯が成立
  • 結合犯説: 暴行・脅迫への加担のみでは共犯不成立

強盗致死傷罪(240条)

構成要件

強盗が人を負傷させた場合は無期または6年以上の懲役、死亡させた場合は死刑または無期懲役に処せられる。

「強盗が」の意義

240条の「強盗が」には、236条の強盗のほか、238条の事後強盗、239条の昏酔強盗が含まれる。

致死傷の結果と暴行の関係

強盗の手段としての暴行・脅迫から致死傷の結果が生じた場合に限られるか、強盗の機会に行われた暴行から致死傷の結果が生じた場合も含むかが問題となる。

  • 手段説: 強盗の手段としての暴行から致死傷が生じた場合に限る
  • 機会説(判例): 強盗の機会に行われた暴行から致死傷が生じた場合も含む

故意の致死傷

強盗殺人罪: 強盗犯人が殺意をもって人を殺害した場合も240条が適用される(判例)。

強盗傷人罪と強盗致傷罪: 傷害の故意がある場合を強盗傷人、過失による場合を強盗致傷と呼んで区別することがある。


昏酔強盗罪(239条)

構成要件

人を昏酔させてその財物を盗取した場合に、強盗として論じられる。

  • 昏酔: 薬物等を使用して意識を失わせ、または抵抗力を著しく減弱させること
  • 暴行・脅迫を用いない点で236条の強盗と異なる

試験での出題ポイント

論文式試験での検討手順

  1. 暴行・脅迫の程度: 反抗を抑圧するに足りるか(強盗か恐喝かの区別)
  2. 財物の強取か利益の取得か: 1項強盗か2項強盗かの区別
  3. 事後強盗の検討: 窃盗後の暴行・脅迫がある場合
  4. 致死傷の結果: 強盗の機会に致死傷が生じた場合の240条の適用
  5. 共犯関係: 承継的共同正犯、事後強盗の共犯の処理

まとめ

  • 強盗罪の暴行・脅迫は反抗を抑圧するに足りる程度が必要であり、客観的に判断される
  • 2項強盗は財産上の利益を客体とし、殺害による債務免脱が典型例である
  • 事後強盗罪は窃盗犯が一定の目的で暴行・脅迫を行う場合に成立する
  • 強盗致死傷罪は強盗の機会に致死傷の結果が生じた場合に適用される
  • 事後強盗罪の法的性質は共犯処理に影響する重要論点である

FAQ

Q1. 暴行の程度が微妙な場合はどう判断しますか?

客観的に判断します。凶器の有無、犯行の時刻・場所、被害者との体格差等を総合的に考慮し、社会通念上反抗を抑圧するに足りる程度であるかを判断します。

Q2. 事後強盗は窃盗未遂でも成立しますか?

判例は、窃盗未遂の場合でも事後強盗罪の成立を認めています。238条の「窃盗が」には窃盗未遂犯も含まれると解されています。

Q3. 強盗致死傷罪に未遂はありますか?

強盗致傷罪に未遂はありません(致傷の結果が生じた時点で既遂)。一方、強盗殺人の故意で殺害に至らなかった場合は、強盗殺人未遂が成立します。


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